side槍田日巡璃
「…………。」
「お嬢様は絶対こっちです!」
「こっちに決まってんでしょ!!」
「ん!!」
「私は……どれでも……」
「「「よくない!!」」」
「はぃ!」
カナのご両親行きつけの百貨店にて……私の彼女達が私の化粧品でどれがいいか喧嘩してる。……なんで???
「あらあら……愛されてるのね?」
「…………よく分からないのでなんでもいいんですけど……」
「はっはっは!いいじゃないか。青春だぞ。」
「えぇ〜……?」
「いーや!絶対こっち!粘液で身体保護できる日巡璃には潤い成分なんて少なくていいんだから!美容と保湿をしっかりと……!」
「そんなことありません!全部バランス良く入ってるものが1番いいんです!お嬢様のタマゴ肌を未来永劫守るためには潤い成分も必要です!」
「ん!……ひまひまは……面倒くさがりだから……オールインワンがいい!……これで慣れて……他のに手を出してもらうのが……先決!」
「「オールインワンなんて時短でしかないんだから全部1本づつ使った方がいい!」です!」
「そんなこと……ない!…………ひまひまの事……1番理解してるのは……私!」
「何言ってるの!負けないわよ!!」
「そもそもお嬢様のスキンケアは私がします!」
ヒートアップしてるなぁ……途中途中の用語は全く意味わかんないけど。潤い……は何となくわかるけど美容と保湿って分かれてるんだ。未知の世界すぎる。オールインワンってなんぞ??
「そもそも潤い成分にも〜……」
「そんなこと言い出したらそっちよりも〜……」
「だから……ひまひまは……〜」
長い……店員さんも困ってるよこれ!
「……これは日巡璃ちゃんが間に入らないと終わらないね?」
「えぇ…………そうなんですか?私化粧品わかんないですけど……あんまり高いの買えないですし……」
「よく見てみるんだ日巡璃ちゃん。そのうえで3人の言い分を聞いて、自分に合ってるものを選ぶんだ。みんなも理解してくれるよ。」
「もうパパったら。化粧品なんてこれっぽっちもわかんない癖に。」
「あっはっは!バレたかい?」
「……よく見る……か。」
みんなの言い分を……よく聞く。
商品を見る。…………うーん……?
……あ
そういう事か。何となくわかった気がする。
「……日巡璃ちゃん?」
「どうかしたかい?」
私は皆の方に歩みを進め……ひとつの商品を手に取る。
「私これがいいかも。」
「日巡璃……それ……」
「……お嬢様……」
「ひまひま……!」
私が手に取ったのは天捻ちゃんが選んでくれてたおーるいんわん?ってやつ。
「天捻ちゃん。これって全部入ってるの?」
「ん!……化粧水……乳液……美容液が入ってる!」
「それはよくわかんないけど……これ1本でいいんだ?」
「……欲を言えば……クリームとかも……欲しいけど……」
「わかった。これにする。」
「!……いいの!?」
「うっ……やっぱり簡単なのが……」
「お嬢様の……好みを把握しきれないとは……」
カナも愛ちゃんも悔しがってるけど……違うんだな!
「だって天捻ちゃんのがいちばん安いし。私もこれなら買える。」
「「!!」」
「……ひまひま…………気付いてくれたんだ……!」
天捻ちゃんの顔がパァっと明るくなる。
「へへへ……カナのお父さんに言われてからだけどね?……2人のは……いいやつなんだろうけど、今は手が出ないかなって。」
「「ぐぎぎ……」」
「これが……庶民感覚。私の勝ち。」
「「……くそおおっ!!」」
なんか天捻ちゃんが2人にブイサインしてるけどあんまり煽っちゃダメだよ?
「これ1個ください。」
「かしこまりました。」
店員さんに頼んで購入。
「いい買い物できたかも。天捻ちゃんのおかげだね。」
「ん!……だからもっと……『私を』頼ってね?」
天捻ちゃんが私の手を握る。優しく……私を見上げてくる。
「……わかった。」
天捻ちゃんって……時々ママに見えるんだよね。母性があるっていうかなんていうか。
「お嬢様!次こそは!次こそは私めに!」
「いや!今度こそ私よ!もう庶民価格を理解したわ!絶対負けないから!」
「あはは!こういうのわかんないから楽しみにしてるね?」
「「任せて!」ください!」
「ん!」
「うふふふ。うちの子も張り切ってるわ?」
「そうだねママ!青春だよ!」
「私達もあんな頃あったわね。パパ。」
「ああ。ママ。懐かしいね!」
「……あの子……本当にカナちゃんを愛してるのね。」
「ああ。カナに頼めばお金くらい出してやるだろうに。」
「私達の娘だから……じゃなくて、カナちゃんだから好きなのね。……嬉しいわ。」
「はっはっは!僕らの目が曇ったことあるかい?彼女はカナのこと幸せにしてくれるよ!」
「うふふ。……カナちゃんもいい相手見つけたわね?」
時間が少し経って帰りの車内。
「……いっぱい買ったね!」
「ぐぐぐ……3人とも2つづつ……」
「引き分け……ですね。」
「手強い……」
3人にオススメされたのを私が感じて、見た中で良かったものを買っていったら……なんか3等分された。ちょうど良かったかな?
「……ありがとね?みんな!」
「当然よ!日巡璃の為だもの。」
「私はお嬢様の事をもっと理解せねばなりません。もっと精進いたします!」
「……負けないよ!」
「勝負じゃないんだけどなぁ……?……でもでも……皆が私の事大好きなのがいっぱい伝わったよ。……本当に嬉しい。」
「日巡璃……」「お嬢様……」「ひまひま……」
「「「私も日巡璃(お嬢様)(ひまひま)の事大好き!」です!」」
みんなから抱きしめられる。
その勢いでぎゅうぎゅう詰めに……さすがに3人一気には無理!!
「もうっ!カナのご両親がいるんだから!恥ずかしいよ!!すっごい見てるから!!」
「うふふ。私の目潰しましょうか?」
「それがいいねママ!僕もお供するよ!」
「そんな物騒なこと言わないでください!!」
「冗談よ。」「冗談さ。」
「ブラックジョークが過ぎますって!」
帰り道ずーっと3人にもみくちゃにされてた。……正直嬉しかったからいいんだけどね?すこーし場所をわきまえて欲しかったのは内緒。
あの2人すっごい生暖かい目で見てくるんだもん。……少しは止めてくれたっていいのに。
「…………おぉ……これがオールインワン……早いね。」
お風呂上がりのスキンケア。愛ちゃんにしてもらってるけど……早い!これはいいね!
「……ですが……やっぱり……うぐぐ……お嬢様には良いものを……」
「ふふん。」
「…………くっ……やはりあの時……」
「もー……悔しがらないの。私……愛ちゃんがいないとそもそもスキンケアするかどうか怪しいのに……いつもありがとうね?」
「お嬢様……!!私……一生お嬢様のお傍を離れません!!」
「ふふっ……嬉しいなぁ。」
愛ちゃんのスキンケアが終わるのを待ってから皆で部屋に。
愛ちゃんは少し私用があると部屋を出ていった。
「…………えーっと……」
「日巡璃……何してるの?」
「ん〜?明後日で終わりだから……一応帰る準備だけしとこうかなって。」
荷物の整理は早めの方が楽だしね。こういうのはこまめにやっとくのが吉。
「……そうね。……また日巡璃と離れ離れだわ。」
「もー……今度は私の家に来るんだよ?…………寂しくないでしょ?」
「嫌よ……一分一秒も離れたくないわ。」
カナが抱きついてくる。
「……私もだよ。カナ。……でもまだ私たちは学生だから……一緒に暮らせないの。……わかって?」
カナを抱きしめて、囁くように諭す。……私だってカナとずーっと一緒に居たい。でもそれは難しいから。
「…………。」
「カノカノ……」
天捻ちゃんもカナを抱きしめる。天捻ちゃんなりの気遣いだよね。
「ひまひまは……ほぼ毎日カノカノと……通話してるよ……?……ひまひまは……カノカノのこと……すっごく大事だよ……?」
「わかってるわよ……わかってるけど……寂しいの。」
「…………うん。……ごめんね。」
「いいの……天捻は悪くないから。」
少しだけ……静かな時間。私たちじゃ出来ないことだから。私達だけじゃ……どうしようもないことだから。
「今日も一緒に寝よ?」
「うん。」「ん。」
「愛してる。カナ。天捻ちゃん。」
「私も。」「ん!」
「愛ちゃん待とうね。」
「……何してるのかしら。」
「…………遅いね。」
結局愛ちゃんが帰ってきたのは30分くらい過ぎてからで、何してるのか聞いても言ってくれないし……
とりあえず今日もみんなで寝た。
この後……というかもう少しだけ経ってから、愛ちゃんがすごいことしてたなんて夢にも思わずに。