【質問】男にしか扱えない精霊術を鍛える学園と聞いて入学したのですが、俺以外は全員女ってどういう事ですかねー!? ~【学園からの回答】見なかった事にしてください! 何でもしますから!(全裸土下座)~ 作:信頼できる語り手
昔々……ってほどでもないが、俺がまだ師匠との2人旅を始めた頃の話をしよう。
買って貰えたばかりの携帯端末でネットサーフィンをしていると、見覚えのない相手からのメールが届いた。
冷静に考えれば色んな意味で怪しさの見本市だが、思慮に欠けていた俺は安易に中身を確認した。してしまった。
……文章だけで気分が悪くなったのは、初めての経験だったかもしれない。
まず目に入ったのは百足のように長大な文字列。俺の中の本能的な部分が、ソレは『人知を越えた何か』の名前だと訴えた。
文章の中で、ソレが見た事もない地名を移動していく。俺の指は自らの意思を離れて画面をスクロールした。
■■■■は✕✕✕に着いた。
■■■■は△△△に着いた。
■■■■は○○○に着いた。
途中下車はできないらしい。そして最後に、ソレはよく知っている名前に辿り着いた。
■■■■はメノウに。
──あの日から、俺は追われ続けている。
「アレキサンドライト……思想を感じる名乗りやねぇ……」
俺は親の顔より見た学園長室に来ていた。慣れ親しんだソファの手触りが実家のような安心感を与えてくれる。
俺、孤児だし実家ないけど。
「せやけど、精霊術の祖『アレキサンドライト』が活躍してはったのは『咎殃大戦』より昔の話やさかい。残念ながら記録もほとんど残っとらんのやわぁ」
ポラリス学園長の言葉を引き継いだのは、ソファに腰掛けた青髪の女性だった。
「ただ、確実に言える事が3つある。1つ、彼は精霊術の普及に貢献した偉人。2つ、彼は既に死亡が確認されている。3つ……」
襟足だけ伸ばしたクラゲヘアの騎士団長『メンカリナン・サファイア』──通称カリナは、抑揚のない声で静かに言葉を締める。
「──彼は、史上最強」
俺は肩を竦めた。
「つっても、精霊術は日進月歩だぜー? 大戦前の化石みたいな霊能者が史上最強ってのは、流石に思い出補正じゃないか?」
「サファイア家の記録によると、彼は3体の神格精霊を従えていた」
「あー、それが本当なら確かに最強かもなー」
俺が適当に生返事をすると、資料を捲っていたカリナの手が止まる。
「もしかして、某の話、信じてない?」
怒っている様子ではない。むしろ、冷静に見定めるような視線だ。
「まあなー。神格精霊は自我の強さも能力もそこらの精霊とは桁が違う。人間の下に付くなんて……あり得ないだろ」
神格精霊。
存在の格を神の領域まで押し上げ、強固な自我を得た精霊。
悪霊と違って必ずしも人間に害を及ぼすわけではない。気性の穏やかな神格精霊もいるし、気に入られれば力も貸してくれる。
だが、神の名を冠するに相応しい強大なソレは、ただ世界に存在するというだけで
土地、建物、動物。神が宿る場所に踏み入ってはならない。それはカウンターフィト王国の……いや、この『世界』の常識だ。
「汝は
「……あー、少しだけなー」
おかげで平穏とは無縁の人生を歩む事が内定している。辞退はできない。
今思うと、師匠が生きてた頃は守られてたんだな、俺。亡くして分かる育ての親の愛だぜ。この学園に来てから、ここぞとばかりに本領を発揮しやがって、あのエロ兎め。
「ん、やっぱり汝が……」
カリナは資料の束をテーブルに置き、ソファから立ち上がる。そして、自身の騎士服の隙間から手を突っ込んだ。
パチッとブラのホックが外れる小さな音が響く。ゴソゴソと衣擦れの音が続いた。窮屈な何かから解放されたように、騎士服の胸元と臀部が膨らむ。
「どう思う?」
カリナが両手を横に広げたまま、ゆっくりと1回転する。その間、彼女の顔は冷たさすら感じる無表情だった。
「……はー?」
どう、とは……? ってか、妹のメラクとの初対面もこんな感覚だったな。コミュニケーション下手一族か?
「某は霊脈学園を首席で卒業した。性的にも成熟してるし、名声も財産もある。汝となら、優秀な霊能者の子孫を残せる」
カリナの視線が圧を増す。
「どう思う?」
怖い。滅茶苦茶、怖い。
だが、一流の霊能者たるもの、こういう時の対処法も心得ている。
「ちょっと、トイレ行ってくるぜー」
俺はスマートに逃げ出した。
「うおー、はーなーせー!」
「何やってるのよ、貴方……」
遅れて入室してきたアリオト・アメシストが、ソファの上で口をパクパクさせる俺に白けた目を向ける。
いや、ふざけてるわけじゃない。割りと本気で抵抗しているのに、体がほとんど動かないんだ。これは……。
「む、ゅ……。某の守護霊は精霊を暴走させる。汝を押さえているのは、汝自身の守護霊」
俺の陰茎を頬張っていたカリナが、ちゅぷっと口を離す。『博愛の桃源郷』の停止効果により、フェラチオをされた感覚はない。
だが、停止が解ければ一気に快感が襲ってくるはずだ。やめて欲しい。男の潮吹きとか需要ないだろ。
「んっ……?」
「ちょい、待った、待ったー! アンタ、何をしようとしてるー!?」
「挿入」
「せめて、ゴムは着けろー!」
自由に生きるのが俺の信条。初対面の女を孕ませてサファイア家に取り込まれたくはない。
俺は普段のセックスでも、射精した精子が生殖能力を失うように細工してるくらいの慎重派なんだぜ?
守護霊が使えない今は意味ないけどな。そんな限定的なパターンまで考慮できるか!
「どうして? 生ハメしないと子供ができない」
心底、不思議そうな顔で陰茎に女性器を擦り付けてくるカリナ。これはもう……色んな意味で駄目かもしれない。
「あの、メンカリナン騎士団長……!」
見かねたアリオトが割って入る……前に。
「はぁい、そこまでにしとってねぇ」
学園長が手を叩く。瞬間、嘘のようにあっさりとカリナは身を離した。
「何が視えた?」
「何も。やから、あんさんは気にせんでええよ」
「……そう」
カリナが乱れた男装を整え始める。その切り替えの早さに、俺は呆れるしかなかった。
「この国の貴族はネジの外れた女ばっかだぜー」
俺の言葉に学園長が苦笑する。
「ある意味では正常な証拠やけどねぇ。偽りの霊能者、偽りの血統、偽りの平和。王国の
外面を取り繕っていても、この国の内情は第一印象そのままって事だな。ま、明るい未来への展望があるなら、学園が俺という異物をあっさり受け入れるはずがない。
「そんな先々を考えて動かないといけないのか。貴族の皆さんは大変だなー。俺なんて明日の事しか考えてないぜ」
「同感やねぇ……。せやけど、どんな人間にも未来は平等にやって来るんよ」
学園長が細い糸目を薄っすらと開く。燃えるような赤い瞳が俺を映している。
「喜んでも、怒っても、哀しんでも、楽しんでも、ただ1つの未来が」
隠秘哲学に招待されたパーティー会場の入り口は、海沿いにある大きな慰霊碑だった。
「ほほ、この慰霊碑の裏側から会場に移動できる仕組みですな」
案内人は片眼鏡の老紳士。俺が取り逃がした手練れの爺さんだ。彼がステッキを伸ばすと、先端が慰霊碑の中に沈んでいく。
「元素型以外の精霊とは珍しいぜー。アンタの
「ご想像にお任せします」
精霊とは『概念』が寄り集まったエネルギー体の総称だ。
その中でも地水火風に代表される元素型はあらゆる場所に存在し、人間が扱いやすい精霊の代表格である。現代ではコイツらを指して精霊と呼ぶ者も珍しくない。
だが、真に精霊術を極めようとするなら、森羅万象に対応する精霊がいる事を忘れるなよ、ってのが師匠の教えだ。
天使には天使の精霊が。夜には夜の精霊が。銃には銃の精霊が。ロリ巨乳にはロリ巨乳の精霊がいる。
得体が知れなくて扱いにくそう? そりゃそうだ。そもそも、精霊が遥か格下である人間の尺度に合わせる理由なんかないからな。
「思ってたより本格的なパーティー会場ね……」
慰霊碑を抜けた先で、レザーワンピース姿のアリオトが呟く。
学園生の中から彼女が
「料理、美味しそう」
ワイン片手に談笑する若者達を見て、騎士服のカリナが呑気な発言をする。素で言ってるのか判断に迷うぜ。
しかし、2人の感想は分からなくもない。パーティーとは聞いていたが、本当に華やかな立食パーティーが行われているとは思わなかった。1本取られたぜ。
惜しむらくは。
「殺気が隠せてないなー、
「ぐ、おお……っ!」
席を移動するフリをして背後に回り込んでいた男を炎で丸焼きにする。食事用とは思えない肉厚なナイフが床に落ちた。
「ひゅ、が……っ!」
俺の足元に追加で四肢と喉を潰されたマッチョが転がってくる。
「霊能者って言っても、先手を打てば大した事ないわね。やっぱりアンタとパパが異常なのよ」
「食事の席で攻撃なんて、行儀が悪い」
「き、貴様らぁ……!」
どよめく雑魚共を無視して、俺はステージに立つ黒ローブの人物に指を向ける。
「なー、隠秘哲学のパーティーってのは、ゲストに刃物を向けるのが伝統なのかー?」
「いや、失敬。どうにも、うちの若い連中が君達と踊りたかったそうでね。招待に応じてくれて感謝するよ」
無機質な声。奴が喋りだした途端、会場の全員が恐れるように口を噤んだ。
間違いない。コイツが。
「──私が、アレキサンドライトだ」
「かつて、精霊術の真価は精霊の組み合わせから出力される無限のパターンだ、と私に語った男がいた」
俺達の返答を待たずに、アレキサンドライトは話を続ける。
「理論の蓄積が基本である科学と違い、霊能者は直接『概念』に触れて検証できる。着想から実用までの速度こそが精霊術の強み。精霊術は多くの人々を救う為の術だ、と」
奴がローブの下で笑ったように見えた。
「その時、私は彼を殺す事に決めた。残念だったよ。相反する思想を持っていなければ、配下に勧誘しても良かった」
アレキサンドライトの霊気が高まる。俺達は各々の武器を取り出した。
「男の名をジャスパー・ルースケースと言う」
銃声。霊気を込めたアリオトの弾丸が何かに弾かれる。
「子爵級『屠毒筆墨』……っ!!」
「偽・侯爵級『浅水波浅海波』」
「公爵級『万緑叢中紅一点』……!!」
殺すつもりで撃った。建物ごと吹き飛ばすつもりで撃った。周囲の被害など考えなかった。
だが、何かに掻き消された。
「精霊術とはそもそも、
「アレキ、サンド……ライトぁぉぉぉ!!」
「君主級『鬼面仏心枯木死灰』」
会場を灰が舞う。運悪く触れた者が目を見開いたまま死んだ。霊能者達が出口に殺到する。
「──これが『精霊術』だ。アレキサンドライトの秘奥を見よ」
黒ローブの人物は俺達の実力を把握している。そして、その上で確実に勝てる算段がある。
そう確信した瞬間から、俺はソレを喚び出す準備を始めていた。
(縁フ換ィ六友ラァビ顕浄ヲォベ則ノ律守……)
ソレの長い長い
そうしないと奴は機嫌を損ねる。その代償を支払う事になるのは、
さあ、見せてやるよ、
(……結ト識!!)
身勝手な人間の……
「来いよ、『フィラー』! 俺はここだ!!」
俺が叫ぶと同時に、死の灰が俺達を避け始める。アレキサンドライトは愉快げに口笛を吹いた。
「君もこちら側か。メノウ・ルースケース」
「……メノウを虐めないで」
白い肩と上乳を大胆に露出したボディスーツ。兎を模した長耳と丸い尻尾。蝶ネクタイに網タイツ。
神格精霊の依代となったメンカリナン・サファイアは、バニーガールのような姿に変貌していた。
「カリナに憑依したのか……」
神格精霊『フィラー』。何故か俺に強く執着している『縁結び』の神。
俺の
俺との繋がりの強さで言うと、アリオトの方に憑くと思っていたが……。いや、驚いてる場合じゃない。
「ふむ、そちらが神に縋ると言うのなら、こちらも神の力をお見せしよう」
アレキサンドライトが見えない弓に矢をつがえるような仕草をした。パーティー会場の壁がギリギリと軋みを上げる。
不味いな。
神格精霊と神格精霊の対決。だが、こちらは一方的に依代を知られている。……
「アリオト! 師匠の件でキレる気持ちは分かるが、一旦冷静になれ! とりあえず、今はカリナを全力で守る! 左目を解放し……」
「きゅふふ☆」
俺は言葉を止めた。紫髪に隠れていても見えるほどに、アリオトの金眼が輝いている。
「結構ピンチみたいね☆」
彼女の目の下に涙のマークが浮かび上がった。それだけではない。ピエロを思わせる派手な装飾が全身に施されている。
「完全復活まで時間がかかったけど……ここで登場したら激メロじゃない☆」
ああ、俺が自分で言った事だ。神格精霊は人間が思い通りに操れるようなタマじゃない。
だから、できれば二度と関わりたくなかった。
「……馬鹿な」
「久し振りね、アレキサンドライトちゃん。それと……初めまして、メノウちゃん☆」
狼狽するアレキサンドライトに対して、アリオトの容貌をした何かが顔の横でピースサインを作る。
「あたしは呪いの神格精霊、フォビア。よろ☆」
肌を撫でるような、妖しい霊気。
「痛……っ!」
俺は受け身も取れずに、顔から床に倒れ込んだ。暴力的な倦怠感が全身を包んでいる。
「か……っ……」
手足の筋肉に力が入らない。思考が回らない。音が聴こえない。呼吸ができな……。
「……メノウ、大丈夫?」
フィラーに声を掛けられた事で、俺は息を吹き返した。ゼェゼェと荒い呼吸を繰り返し、引き攣る体を気合いで起こす。
「やっぱり、力加減って難しいわね☆」
パーティー会場は死屍累々だった。神の気紛れは人の無力さを痛感させる。
「ちっ……退くぞ、爺。目的は果たした」
アレキサンドライトが舌打ちをした。
「よろしいので?」
「どうせ、ここにいる霊能者は失敗作だ。元から処分するつもりだった。王国に身柄を奪われても痛手にはならない」
「ほほ、委細承知。……? 主よ、血が……」
ローブからポタリと滴る赤色に、爺さんが眉を顰める。アレキサンドライトは自身の手首に刻まれた切り傷を観察した。
「これは……メノウ・ルースケースの公爵級が掠っていたのか……! ははは、確かに防いだはずなのに……興味深い……!」
去り際に、奴は俺の方を見る。
「どういう理屈かな?」
「教えるか、馬ーーーーー鹿!!」
俺は史上最強に中指を立ててやった。
「また会おう、メノウ・ルースケース。そして、フォビア」
「貴方は気持ち悪い事ばっかり企んでるから、嫌。そんな風だからナサヤしか友達がいなかったのよ☆」
「俺も会いたくないぜー。どっかで勝手に野垂れ死んでくれ」
俺は軽口を叩きながら霊気を練る。奴の無防備な背中にもう1発、叩き込んでやる。
「いや、直ぐに会う事になるさ。……ところで、君は自分の背後にも気を付けた方が良いと思うが」
「……え? むぎゅ……いっ!?」
俺の背中にバニーガールの胸が押し当てられる。アレキサンドライトに向けていた意識が、無理矢理そっちに奪われた。
「……メノウ、お腹空いた。縁、頂戴?」
「分かった! 後で腹一杯やるから! 今は大人しくしてろ、
そうだ。コイツはこういう奴だった。神は人の事情を考慮しない。合わせるのはいつも、人間の側でなくてはならない。それが、自然の摂理。
「……駄目。今、欲しい」
「あ、ついでに、あたしも貰っちゃお☆」
「助けてー! おーかーさーれーるー!!」
一度目を付けられれば、俺達
第3回ヒロイン人気投票(殿堂入り除外)
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①赤:ドゥーベ・ルビー
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③白:フェクダ・ダイヤモンド
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④黒:メグレズ・オニキス
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⑤紫:アリオト・アメシスト
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⑥黄:ミザール・シトリン
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⑦緑:ベネトナシュ・エメラルド
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◎灰:スピカ・ゴッシェナイト