【質問】男にしか扱えない精霊術を鍛える学園と聞いて入学したのですが、俺以外は全員女ってどういう事ですかねー!? ~【学園からの回答】見なかった事にしてください! 何でもしますから!(全裸土下座)~ 作:信頼できる語り手
「隠秘哲学に属する霊能者の身柄拘束。序列持ち総出で後始末をさせるとは、便利に使われておるようで少々気に食わんな」
カウンターフィト霊脈学園の序列1位『ドゥーベ・ルビー』は昨日の
威厳に溢れる凛々しい顔が鏡に映っていた。後はもう少し……ほんの少しだけ肉体が成長すれば、真に完璧な存在となれるだろう。
「しかし、
ドゥーベは頭の中で利害を計算する。メモは不要だ。悪巧みの証拠を残すなど、二流のやる事。帝王学を叩き込まれた彼女は記録など残さない。
「新たなる輝きは王国の『偽り』を暴くか、それとも守護者となるか……。かかか、世紀の賭けじゃ。特等席で見るしかあるまい」
ルビー家は伝統ある旧家を追い落とし、王国の中枢まで駆け上がった謀略の家系。
王国の暗部を担うローズクォーツ家も、最優の血と謳われるサファイア家も、王国の剣を自称するダイヤモンド家も、そこで満足しているようでは話にならない。
「のう、貴公ら……平穏無事な生涯など何になる? 儂は真っ平お断りじゃぞ」
求めるはゼロか100。心・技・体・知・徳、全てを賭けての大博打。
奪うのも良い。奪われるのも良い。体の芯がゾクゾクする。
「序列も、学園も、王国も、世界も、精霊も」
それが、ドゥーベの人生哲学。
「──この儂が、総盗りじゃ」
序列2位『メラク・サファイア』は布団を目深に被って物思いに耽る。
他人と接するのが苦手な彼女にとって、暗くて狭い布団の中は心安らぐ聖域だ。ここなら何も背負わなくて良い。価値を比べなくて良い。
ドゥーベ達には分かって貰えないだろう。だけど、メノウなら理解してくれる。だって、彼もきっと。
……人間が、嫌いだから。
「『泥濘の双耳壺』」
メラクの守護霊は対象に目印を付けて追尾できる。見えない監視カメラや盗聴機のような固有特性だ。
現状、同時に使いこなせる
普段は背後の死角潰し、高所からの俯瞰、手元の予備に1個ずつ置いている。だが、この守護霊が真価を発揮するのは戦闘時ではない。
「姉さんが学園に持ってきた『アレキサンドライト』に関する記録。あの時代の記録には必ず解読不能箇所がある」
時代を経て忘れられた古い言語だとか様々な説が囁かれているが、重要な事は1つ。
「妾なら、読める」
そこに意味のあるメッセージが含まれていれば、メラクの守護霊は情報を『感じる』事ができる。
姉と廊下で擦れ違った際、文書の束に目印を付けておいた。準備はできている。
「……『大罪のナサヤより、未来の誰かへ』。ん、やっぱり読み取れた」
(ナサヤ。ベネトナシュが信仰するナサヤ教と何か関係が……?)
「『俺達は摂理の崩壊という危機に直面した。再発防止の為、異界の神々の力を借りて幾つかのシステムを世界に組み込む事にする』。……摂理の崩壊?」
摂理とは物理法則を逸脱した精霊を縛る、より高次の
例えば、精霊は物理法則を無視して炎や水を発生させる。しかし、それで何らかの弊害が出る事はない。摂理が世界を支えているからだ。
枝が折れても幹さえ無事なら、世界という樹が完全に死ぬ事はない。逆説的に、摂理の崩壊は世界そのものの終焉を意味する。
「『俺は
メラクは息を呑んだ。
「僕の前に立つな」
序列3位『フェクダ・ダイヤモンド』は愛用の直剣を動く死体に突き立てた。
「アアアア……!」
胸を貫かれた拍子に依代から出てきた悪霊を返す刀で両断する。
「これで報告にあった分は全部か。『霊媒強化薬』を服用するまでもなかったな」
フェクダが舌に残る精液の後味に顔を顰めた。一瞬、ムカつく男の間抜け面を幻視し、白の姫カットが羞恥で震える。
「落ち着け。僕は王国の剣だ。心を乱すな」
彼女の固有特性『環流の風切羽』は触れたモノを強化できる。シンプルな守護霊だが、剣術の達人であるフェクダには最良の能力。ほとんどの霊害は剣を振るだけで終わる。
それでも万が一に備え、使えるモノは全て使うのが彼女の信念だった。手段よりも結果を、個の感情よりも国益を優先しなくてはならない。
「もう1体、隠れていたようだな。子爵級『遺風残香』」
少し離れた場所に悪霊の気配を感じ、フェクダは強風に乗って飛ぶ。
「なあ、悪霊。この世で最も酷い地獄は何処か、貴様は知っているか?」
鎧袖一触。直剣を鞘に仕舞う。今度こそ任務は完了した。
「霊害の対処には王国の維持が不可欠だ。その為なら僕は……個人の犠牲を容認する」
霊脈学園から遠く離れた山中にて、序列4位『メグレズ・オニキス』の鼻歌が響く。
「さぁて、今日も野外エロ自撮りを始めようかねぇ。……なぁんてな」
『何をふざけた事を言っている、メグレズ・オニキス工作員。王国と学園の内情を報告せよ』
「へぇい、了解でぃ」
(『そういう趣味』って事にしといた方が勘繰られずに動けんだよなぁ。まぁ、現場に出やがらねぇインテリ連中には分かんねぇか)
世間話の1つもない事務的な報告を終わらせ、メグレズは即席で組み立てた通信装置を分解する。部品は小分けにしてジーンズのポケットと鞄に押し込んだ。
彼女の固有特性『投錨の変成岩』は様々なモノを封印・無効化できる。強度はそれほどでもないが、上手く使えば監視の目を欺く程度は簡単だ。
「学生の身分に憧れはあれど、これも社畜の辛いとこだねぇ。やれやれ、どうなる事やら」
黒のツインテールが風に靡く。
「王国は飯が美味かったんだけどなぁ……」
「きゅふふ、ごちそうさま☆」
序列5位『アリオト・アメシスト』の肉体は今、左目に宿る呪いの神格精霊『フォビア』に支配権を奪われていた。
そして、彼女のセックス三昧に付き合わされたのが、この俺。超ハンサム伊達男、メノウ・ルースケース様である。
「少しは加減してくれよー。昨日は一晩中、発情期の
「でも、気持ち良かったでしょ? 妊娠の心配がない、神様相手の
フォビアは俺の陰茎を生で咥え込んだまま、腰を左右にゆったりと揺する。同じアリオトの肉体でも、中身が変わると別人を抱いてる気になるから不思議だ。
俺が年相応の青少年なら罪悪感を抱いていたかもしれない。生憎、そういう真っ当な性倫理は幼少期に
「いや、そんな事よりもさっきの話だぜ。俺達に協力するって話、何だありゃ?」
「言葉通りの意味よ。仲間になってあげる☆」
フォビアはピエロ風の装飾が追加されたレザーワンピースをパタパタ振ってみせる。
「アレキサンドライトちゃんが何を企んでるのか、完全には分からないけど……お父様が修復してくださったシステムを壊されると、あたしが困るのよね☆」
序列6位『ミザール・シトリン』は学生街のカラオケボックスで人を待っていた。
仰向けに寝転んで数人分のソファを占有し、頭よりも高い位置で足を組む。後から入室した初老の紳士が苦笑した。
「ほほ、行儀が悪いですな」
「こんな姿勢でも中身が見えないのがゴスロリの良いところだよ。スカートが長いからね」
はあ、と老紳士は肩を落とす。それから、ミザールの手首に巻かれた包帯に目を遣った。
「……その傷、治さないので?」
「この体の持ち主には申し訳ないけど、少し調べたくてね。どういうカラクリで私の神格精霊を突破したのか、気になるじゃないか」
「左様ですか」
探究心を擽られた主には何を言っても無駄だろう。そう考えた老紳士は必要な確認を手短に済ませ、カラオケボックスを出ていった。
「ははは、未知とは素晴らしいね。……ナサヤ君が死んで永い時が経った。君には新しい
序列7位『ベネトナシュ・エメラルド』がナサヤ教の遺物保管庫に入れるのは、彼女が聖女だからではない。古来より遺物の扱いに長けた血族として信頼されているからだ。
「……ナサヤ様。初代エメラルド様」
彼女は大司教と対等に宗教談義を交わせるほどに、ナサヤ教に纏わる事柄全てに精通している。それ故に、独自の
「ナサヤ教の悲願は『失われた神』を取り戻す事。……わたくしは少々、思い違いをしていたのかもしれません」
ベネトナシュは1つ1つの遺物を手に取り、状態を確認する。
「失われた神は
彼女は恋人に贈るプレゼントを選ぶような慎重さで、『彼』と相性の良い遺物を選別していた。
「これは運命でございます。共に試練を乗り越え、其方を高みへと導く事。それこそが、わたくしの聖女としての使命に他なりません。だって……」
ベネトナシュが恋する乙女のように頬を紅潮させ、緑のポニーテールを指でなぞる。下腹部に彫り込まれたタトゥーが熱を帯びた。
「──人は神に至れるのでしょう?」
「ひっ……! ば、化け物……!」
「ふぇ?」
小規模な悪霊討伐の帰り道。通行人の青年から悲鳴を上げられて、灰色髪の1年生『スピカ・ゴッシェナイト』が首を傾げた。
スピカはトレンジスタグラマーな自身の体をペタペタ触り、胸元に穴が空いている事に気付く。
「あっ、ヤバっ! ミスったっす! 人間って、心臓を破壊されたら死なないといけないんでしたっけ? 血液の循環がなんちゃらかんちゃらで……!」
スピカの目がバッテンになった。
「うわ、どうしよう! あーし、どうしたら良いっすか!?」
背中の曲刀をカチャカチャしたり、学生鞄で胸元を隠してみたりと、お手本のような取り乱し方である。
「え、マザーがどうにか誤魔化してくれる? やったー! あ、いや、反省はしてるっすよ!? 本当、本当! 今度から気を付けるっす!」
「き、君……何を1人、で……? ……ぁ」
通行人の青年は後退りながら状況を窺っていたが、その顔から急に強張りが抜け落ちた。操り人形のように直立姿勢で踵を返し、スピカに背を向けて歩き去っていく。
「ふいー、助かったっす」
スピカ的には『人通りの少ない道を選んだのに目撃されたのは運が悪かっただけ』と自己弁護したいところだ。
「でも、師匠……メノウ君に言ったら『そういう小さな敗因を潰すのが一流』とか返されそうっすね。……師匠、師匠かぁ……』
彼女は学園の方角に目を向ける。
「あーしが人間じゃないって知っても、友達でいてくれるっすかね……?」
あまり知られていないが、学園長『ポラリス・ローズクォーツ』の趣味は絵を描く事である。唯一の楽しみと言って良い。
自身の思い通りに彩色される
「これが……! 無敗のポラリス……!」
初撃で両足を失った男が呻く。地獄のパーティー会場から逃げ延びた隠秘哲学の構成員。悪運の強さのみならず、実力も頭1つ抜けた霊能者だ。
年齢はまだ若い。学園生と同じくらいか。1人の少年の顔が重なる。ポラリスの中にささやかな同情心が芽生えた。
それでも、殺せる。人の心を持ったまま、冷徹に人を殺せてしまう。だから、そうならないような絵図を描いた。
「無敗、ねぇ。うちほど敗北を経験した人間はそうおらんよ?」
「くっ……! せめて一撃……!」
彼が床を叩くと金属の槍が飛び出す。ポラリスは両足を大きく開き、ポールダンスのような動きで槍の隙間を抜ける。
「当たらない……!」
「左、左、右。次は上からの奇襲。もう見飽きたわぁ。──准爵級『闇雲』」
黒い霧が標的を捕えた。手首をしならせて手裏剣を投げ、完全に身動きを封じる。
大技は使わない。ポラリスの武器は精霊術ではなく、ローズクォーツに伝わる『忍術』と『瞳』であった。
「7回。霊能者は手強いねぇ」
ポラリスは呟く。
「せやけど、手に負える問題はこっちで片付けんと、向こうの絵の具が乾いてしまいますよってからに。……ねぇ、メノウはん?」
その瞳は何処か遠くを見詰めていた。
「──ほな、誰から攻略しはります?」
第3回ヒロイン人気投票(殿堂入り除外)
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①赤:ドゥーベ・ルビー
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③白:フェクダ・ダイヤモンド
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④黒:メグレズ・オニキス
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⑤紫:アリオト・アメシスト
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⑥黄:ミザール・シトリン
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⑦緑:ベネトナシュ・エメラルド
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◎灰:スピカ・ゴッシェナイト