【質問】男にしか扱えない精霊術を鍛える学園と聞いて入学したのですが、俺以外は全員女ってどういう事ですかねー!? ~【学園からの回答】見なかった事にしてください! 何でもしますから!(全裸土下座)~ 作:信頼できる語り手
ほう、精霊抜き精霊術ですか……大したものですね。停止させた霊気はエネルギーの効率が極めて高いらしく、戦闘前に愛飲する学園生もいるくらいです。やはり守護霊……! 守護霊は全てを解決する……!!
「うらぁ! 死にやがれ、メノウの旦那ぁ! ──男爵級『岩盤浴』!!」
最初に攻撃を仕掛けてきたのは、序列4位『メグレズ・オニキス』だった。柔らかい黒のツインテールと対照的に硬い岩が、散弾と化して飛んでくる。
相変わらず、周りの被害を考えない大味な戦い方だ。ま、この模擬戦に参加している奴らなら簡単に避けるだろうけどな。
「せっかくの機会だし、超師匠から習った技術を試してみるかー。……『博愛の桃源郷』」
俺の守護霊は万物を『停止』させる。夢の中で出会った超師匠に潜在能力を引き出され、その出力は劇的に向上していた。
しかし、直接触れないと効果がしょぼい事に変わりはない。だから、対象にするのは敵ではなく周囲を漂う精霊の『霊気』だ。
「霊気抽出。力を借りるぜー」
超師匠の言葉を思い出す。
『この世界の人間は精霊を介してしか『霊気』というエネルギーを操れん。……が、汝の力を使えば霊気を直接、意のままに操る事が可能。その技術を教えてやるかえ』
「霊気を固めて壁に、っとー……。っし、できたー! 錬術『盾』!!」
原理としては、俺の精液を加工した『霊媒強化薬』に近い。
本来、精霊の制御を離れた霊気は瞬く間に霧散する。その不安定な力を一旦『停止』させる事で、扱いやすい形に加工しているのだ。それが超師匠直伝、『基本六術』。
「普通の精霊術よりも圧倒的に発動が早い。更に精霊術と併用すりゃ、相乗効果も見込めると来た。便利な出し得技だぜー。子爵級『停滞前線』」
半透明の壁で岩の礫を無力化する。その隙に俺の横に回り込む人影があった。見なくても分かる。序列3位『フェクダ・ダイヤモンド』だろう。
「アンタはメグレズよりも隙がなさそうだな。加減できなくても恨むなよー。活術『駆』」
「それは僕の台詞だ。子爵級『遺風残香』」
白の姫カットが風に舞った。互いに高速で移動しながら、三節棍と直剣を打ち合わせる。
ひゅー、近距離ではほぼ互角だな。この動き……深追いせずに、間合いを見定めながらヒット・アンド・アウェーで攻める気か。
「何だ、何だー? 逃げ腰でチクチクすんのが、ダイヤモンド家の剣術かー?」
「挑発に乗る気はない。貴様と鍔迫り合うのは危険だと、僕の直感が警告している」
大正解。武器を通して相手を『停止』させ、その隙に縁結びの神『フィラー』の霊気を流し込み、『仲良し』を強制する。これが今の俺の必勝パターン(対女性限定)だ。
やっぱ、フェクダは他の学園生に比べて、戦場での判断が鋭いな。天性の
俺は割りと才能頼りで生きてきたから、こういう努力の結晶には正直萌えるんだよな。だが、勝負は勝負。わざわざ相手の土俵で戦ってやる義理はない。
「准爵級『延縄』」
「ちっ……」
拳状になった縄の結び目がフェクダを死角から殴り飛ばす。咄嗟に剣で防いだ反応速度は流石と褒めておこう。両手を使ったせいで、ボディががら空きになったけどな。
「腹パン狙撃を食らえー! 発術『拳』!」
「がっ……!」
霊気を思い切り放出する。フェクダは体をくの字に曲げ、土の上に膝を付いた。
「フェクダ、ダウン」
審判役の序列6位『ミザール・シトリン』が、ガスマスクの下からくぐもった声で宣言する。
「ほうほう、なるほど。堅実に守りを固め、隙あらばカウンターを狙う。多芸な男じゃったが、そういう方向に舵を切るとはの。しかし、良かったのか?」
固有特性『調和の常香炉』。俺達の戦闘で発生したエネルギーが、序列1位『ドゥーベ・ルビー』の小さな体に余さず吸収されていく。
「そんな悠長な戦い方をして。持久戦は儂の得意分野じゃぞ? 子爵級『気炎万丈』」
目の痛くなるような眩い業火が、鷲と獅子の合成獣を象る。大雑把なメグレズとは正反対。精霊を緻密に制御し、味方を巻き込まない自信があるからこその極大火力だ。
簡単には倒されない総合力と、長期戦になるほど威力を増す大技。『カウンターフィト霊脈学園』の首席に相応しい実力者である。
「来いよー。ふーっと、吹き消してやる」
「まったく、生意気な1年坊主よ……!」
次の瞬間、演習場が凄まじい熱に包まれた。
「めっっっちゃ怒られたなー」
「ちと、派手に戦り過ぎたの」
俺達は今、スポーツドリンクを片手に反省会っぽい何かをしている。
場所は俺の部屋だ。ドゥーベの部屋は物が少な過ぎるし、逆にメグレズの部屋は足の踏み場がなく、フェクダの私室は出禁中。なので、消去法でここが溜まり場と化している。
「アタイは納得できねぇな。『精霊倫理』のババア、いっつも教科書読み上げるだけの適当授業かましてる癖に、こういう時だけガミガミ喧しく言いやがってよぉ……」
服をパタパタするだけでは飽き足らず、びろーんと生乳を解放するメグレズ。俺がガン見しているとニヤニヤし始めた。
「うりうり、勝者へのサービスでぇ。眼福だろぃ、旦那ぁ?」
「目線が乳首を追い掛けておるのじゃ。ケダモノなのじゃ」
反対方向からドゥーベもうりうりしてくるが、身長が低過ぎて遊具で遊ぶ子供みたいになってんだよな。
「学園内だからと言って、だらしない格好をするな。行儀が悪いぞ、オニキス」
シャワー室で汗を流してきたフェクダが、ブラジャー姿で注意する。どうやら、この学園では下着を見せるまではセーフらしい。
「んな事言っても、降霊後はエロい気分になんだから仕方ねぇだろぃ。男の味を知ったら余計に抑えらんねぇよ。なぁ、旦那ぁ」
「人の味を覚えた熊みたいだなー」
「がおぉ、アタイは愛に飢えた野生動物でぇ。猟師に狩られる前に、丁重に保護しろや」
メグレズは悪ふざけしながら、俺の腕にスライム爆乳を擦り付けた。気持ち良い。
「っつうか、おめぇらだって霊媒なんだから性欲は変わんねぇだろ、あぁん? ぶっちゃけ、どうやって処理してんだ?」
「儂は指で弄る派じゃな。婚約者のエクスクラに頼んで、ズリネタ用の破廉恥な音声を送って貰ったりもするの」
「普通に答えるのかよー……」
少しは恥じらえ。見た目以外はマジで男子のノリだな。男として教育された学園生の性感覚、恐るべし。
「次、フェクダぁ。とっとと白状しやがれぃ」
「言うわけないだろう。死ね」
「これ、メグレズ、察してやらぬか。かかか、どうせムッツリ助平の貴公は、人に言えぬマニアックな自慰でもしておるのじゃろ?」
ドゥーベが卑猥なジェスチャーで揶揄うと、フェクダは額に青筋を立てた。
「……僕は想像だけで慰める。手も道具も使わない。これで満足か?」
はー、妙なこだわりだぜー。
「僕の手は王国の敵を斬る為のものだ。自慰行為に使う事は主義に反する」
「おめぇ……一周回って普通に馬鹿なんじゃねぇの? アタイよりも」
「ドン引きなんじゃが」
「貴様ら……! 本当に死にたいか……!?」
「俺はちょっと尊敬するわ。自分で脳イキできるとか上級者過ぎるだろー。あー、でも、俺の時は手コキを……痛っ!」
何か修学旅行の夜みたいなテンションになってるな。行った事ないけど。
意外と付き合いの良いフェクダのおかげもあるが、メグレズにはそういう緩い雰囲気を作り出すムードメーカーの素質がありそうだ。
「ちなみに、私は道具派だよ」
誰も訊いていないのに、ミザールが自分から宣言する。もしかして、実は会話に混ざりたかったのだろうか……?
「ちなみに、母は……」
「おい、やめろ」
国王の秘密を暴露しようとしたミザールは、フェクダの容赦ない一撃で沈黙した。
「学園長の行き先なら……んっ、確かに知っているが……。そういう真面目な用件は……あっ、さ、先に……っ! 先に、言え……!」
「いやー、一応、さっきの模擬戦も大事な用ではあったんだけどなー?」
序列持ちの実践データを総括して、学園長に報告する事。それが俺に与えられていた課題だった。時期は指定されていないが、そろそろ提出しても良い頃合いだろう。
個人的に、こういうのは後回しにするとモヤモヤする。『プレイスホルダー深層学園』に入学し、フィラーの力が安定した今こそ、心の重荷を片付けてしまいたい。
「学園長は忍びの里に……く、ぉ……! おい、話しづらいから男根を抜け!」
毎度恒例、降霊後の発情タイム。
俺の霊気をたっぷり叩き込まれたフェクダはベッドに横になり、俵締めの名器に陰茎を迎え入れていた。俺が腰を振る度に、精霊制御用の装飾具がジャラジャラと鳴る。
「挿入アンコールしてきたのはアンタだろー? ドゥーベ達はもう満足して帰ったのに、淫乱だよなー。むっつりなのは知ってたけ、ど!」
「づ、ぁ……!? きゅ、急に抜くな……! 入り口に亀頭が引っ掛かって……ぁ、感じている最中に……キスはやめろ……!」
白い頭を包むように抱き締め、ディープキスで舌ピアスをなぞってやると、彼女の下着から露出した肌が赤みを増した。
舌を結び合ったまま、空いた手で耳ピアス、チョーカー、へそピアスを順番に撫でていく。最後に指輪の着用部を優しく愛撫すると、フェクダは自分から指を絡めてきた。
「可愛いとこあるじゃーん」
「……うるさい。図に乗るな。貴様との交尾など、ダイヤモンド家の世継ぎを産む時の為の予行練習に過ぎない。どうすれば交配相手を興奮させられるか、貴様で試しているだけだ」
「照れるなってー。これでも俺は、学園生主催の『抱かれたいイケメン投票』で上位に入ってる公式イケメンなんだぜー」
ついでに言うと、アンタもランクインしてるぜ。俺より上の順位で。女子にイケメン度で負けるのは流石にちょっと悔しい。
「何だ、そのふざけた企画は……。少なくとも、貴様は僕の趣味ではない」
「え、フェクダにも好きなタイプとかあんの?」
「失礼だな。僕だって生物学的には女性なのだから、理想の男性像くらいは持っている。無論、現実では私情よりも政略を優先するが」
「で、その理想像とはー?」
「ふん、馬鹿か。教えるわけがないだろう」
俺から離れたフェクダが、セックス中に床に落ちたショーツを拾おうとする。その無防備に突き出された生尻を後ろから掴み、勃起した陰茎を捩じ込んでやった。
「ほ、ぉ゛……!?」
パンパンと高速ピストンを食らわせる。簡素なブラジャーを片手で奪い、ロケット爆乳の先端を飾る乳首ピアスを摘まんだ。
「ぃ……っ! そこ、や、め゛……っ!」
がむしゃらな責めに弱い彼女の膣奥が、亀頭に吸い付いて強く咥え込む。ベロチューされてる気分だ。
「ひ、ぎっ……! あ……ぉ゛ん……っ!」
フェクダは狼の遠吠えのように喘ぐ。後背位で突かれながらも、全身を使った反撃を披露してきた。内側まで鍛えぬかれた肉体は、膣の中まで強烈な圧迫刺激を与えてくる。
「情熱的なおねだりだぜー」
「よ、欲求の処理も武芸の内……! 万が一にも煩悩や邪念を残さない為だ、愚か者……! くっ……! イっ、グ……っ!」
「あー、精液吸われるー」
取っ組み合いの喧嘩にも似たパワフルな性交を終え、フェクダが火照った顔で立ち上がった。
「もう一度、シャワーを借りるぞ。……あっ!」
性感の余韻が残った足がもつれ、彼女が倒れそうになる。俺は反射的に肩を支えた。
「はぁ……。すまない。助かった」
「惚れたかー?」
「あり得ないから安心しろ。だが……もう少しこのまま支えていてくれ。貴様の体格は背中を預けるのに丁度良い。それだけは認めてやる」
「あいよー」
事後の処理を済ませて私服を着た俺は、熱気を冷ます為に窓を開ける。
「何か……外がザワザワしてるなー」
「ああ、学生寮の周辺がやけに騒がしい。直近で行事予定はなかったはずだが……」
フェクダがホットパンツのポケットからメモ帳を取り出し、ペラペラと捲った。……学園のスケジュールを全部記録してんのかよ。真面目ちゃんにも程があるだろ。
「あれは『霊光騎士団』だよ。この部屋に向かってるみたいだ。羨ましいくらいモテるね、メノウ君。……いや、ある意味では当然か」
「どわー、ビックリしたー!」
いつの間にか隣に立っていたミザールに驚かされる。とっくに帰ったと思ってたぜ。
「シトリン。国王から何か聞いていないか? 騎士団の主力が完全武装して学園に来るなんて、パフォーマンスにしてもやり過ぎだ」
「私も寝耳に水だよ。さて、何の用事かな?」
その言葉を受けて目を凝らすと、確かにこれまで犯罪者を引き渡してきた団員達とは、纏う霊気の滑らかさが違う。
特にメラクの姉ちゃん……クラゲ髪の騎士団長『メンカリナン・サファイア』と、その脇を固める奴らがヤバい。ありゃマジモンの精鋭だ。
「なー、カリナの斜め後ろにいるピンク髪の糸目ちゃん、学園長に似てないかー?」
「親戚だな。副団長『フェルカド・ローズクォーツ』。実家とは縁を切ったらしいが、忍びの里で学んだ『忍術』を忘れたわけではない。恐ろしい人だ」
「へー、アンタでも怖い相手がいるんだな」
「……忍者は精霊使いを狩る専門家だ。その技能は対人戦に大きく偏っている。戦闘能力はダイヤモンドが上だが、何でもありならローズクォーツに軍配が上がるだろう」
フェクダが冷静に分析する。
「邪道。故に、必勝。僕達では精霊を宿すどころか、剣を抜く前に殺されかねない」
彼女はネクタイを整え、玄関の扉を開けた。
「おや、わざわざ迎えに行くのかい?」
「知らない顔でもないからな。貴様ら問題児コンビはここで待っていろ。話が拗れる」
「「嫌だ」」
説明しよう! 来るなと言われたら行きたくなるのが問題児の習性なのである!
俺とミザールは機敏に靴を履き、溜め息を吐くフェクダと肩を組んで廊下に出た。霊脈学園の施設は豪華なので、学生寮の廊下も3人が並べる程度には広い。
「鬱陶しい……! 僕の足なら直ぐに往復できると言っているだろう! 大人しくしていろ!」
「いいえ、ご足労には及ばなくてよ、フェクダ。私達が足を運んで頂きたいのは貴方だけですわ」
「っ! 副団長……」
学園長の親戚らしいルカなんちゃら副団長が、廊下をカツカツと歩いてくる。その手がすいっと俺を指差す。
「子爵級『過怠手錠』」
気付いた時には、俺の両手は手錠で拘束されていた。マジか。攻撃の意思を隠す技術が高過ぎる。フェクダの言葉の意味が理解できた。
「メノウ・ルースケース。貴方を国家反逆罪とその他の罪で無期懲役刑に処します」
……は?
頭が真っ白になる。俺が……無期懲役……?
「そりゃまた、どういう冗談……」
「心当たりはあるでしょう? 貴方が王国の盾『ジャスパー・ルースケース』を殺害し、我が国に重大な損害を与えた事は把握していますわ」
ジャス、パー……? 師匠を殺したのが俺って言いたいのか? それも容疑じゃなくて、いきなり実刑……?
俺は勿論、身に覚えがない。冤罪だ。にも拘わらず、確定クロとして扱われている。つまり……どっかの誰かが俺を陥れる口実に師匠の名を使いやがったって事だ。
「ルカ、独断専行は良くない」
「失敬、カリナ団長。ですが、この通り。目的の人物は捕縛しましたわ。貴女達、連行なさい」
「「はっ!」」
なぁ、師匠。アンタは温厚な人だったよな。
行く先々で色んな人と仲良くなって、ついでに精霊からはその数百倍くらい気に入られてた。それは人として立派な生き方だと思うし、尊敬もしてる。だけど……なぁ、おい。
──俺は、違うぞ。
「副団長!」
殺気立つ俺の前に白髪の少女が割り込んだ。
「此度の件、形式に則った沙汰とはとても思えません。現場の独断……越権行為と判断してもよろしいか?」
おそらく、フェクダは俺を庇っているつもりはない。単純に、権力の暴走を見過ごせないだけだ。度胸のあるおもしれー女に免じて、俺は少し怒りを抑える事にする。
「せめて、上層部の意思を確認し……」
「フェクダ。疑問に思った事はありませんの? 霊媒に男装させた程度で、王国が国際的な地位を維持できている現状。……あまりにも都合が良過ぎですわ」
「きゅ、急に何を……」
「ルカ」
騎士団長のカリナが鋭く諌めた。
「ごめん遊ばせ。私は生来、お喋りな気質でして。でも、覚えておいてくださいな。これこそが『王国の意思』。貴女にもいずれ理解できる日が来ますわ」
一触即発の空気。フェクダは剣を握り締める。その横で俺は手錠を睨んでいた。
「全っ然、外れないぜ……! この手錠に精霊術を阻害されてる感じがする……! ミザール、どうにかしてくれー。……ミザール?」
「……帝国ではない。私の知らない第三勢力……? 誰が……いや、何が動いている……?」
「おーい、ミザール! アンタ、手先が器用なんだから、手錠の鍵とか開けられないかー!?」
「ん? ああ、これは無理だね。拘束という用途に特化させた術だろう。物理的にどうこうできるモノじゃないよ」
完。……学友の危機に対して、あまりにもドライな対応ではないだろうか。
「メノウ、覚悟」
カリナが精霊を宿す。同じ水精霊使いのメラク達と深く接したからこそ、その圧倒的な基礎能力の高さがよく分かった。
どうする? 一か八かに賭けて暴れるか? だが、濡れ衣を着せられたまま罪を増やすとややこしくなりそうだ。
カリナの手に水が集まる。……贅沢言ってる場合じゃない。まずはこの場を切り抜けよう。俺はそう覚悟し……。
「あ、術が滑った。准爵級『力水』」
巨大な水の塊に突き飛ばされた。俺の体が空中をびゅんと飛び、高速で走ってきた誰かにキャッチされる。
「ごめんなさい、ごめんなさい! 私は『忍びの里』の中忍『コイキ』……って言っても外の人には分かんないですよね、すみません!」
仮面を被った女性は謎に謝り倒していた。
「頭領……ポラリス・ローズクォーツ様の元にお連れします! ごめんなさい!」
「かっ……! カリナぁぁぁ……ッ!!」
ルカ副団長の怒声と共に、様々な精霊の攻撃が飛来する。その嵐の真っ只中を中忍コイキはバイクのような勢いで駆け抜けた。
「ふいー、どうなってんだ、ありゃー」
壁や障害物を使って跳ね回っていたコイキが、ようやく僅かに速度を落とす。ここは……一応まだ王都内のはずだが、まともな方法では辿り着けない系の入り組んだ路地裏だな。
「アンタ……めっちゃ直撃してたけど、体の方は大丈夫かー?」
「あ、ご心配なく。忍者は特殊な修行で『祝福』を授かっているので、精霊による攻撃は効きにくいんです。えへへ」
彼女が仮面を半分押し上げると、隙間から薄桃色の髪が覗いた。やっぱ、学園長の血縁者か。
「でも、擦り傷はできてるぜー? ほら、腕見せてみろー。……活術『癒』」
「え……傷が治……!? って、これ! 初代ローズクォーツが異界の神様から授かった『基本六術』じゃないですか!! 貴方も忍者だったんですか!?」
「いや、最近独学で身に付けた技だけど……」
追っ手を警戒しているのか、コイキは囁くような小声で器用に叫んでくる。
「そんなはずはありません! 私達忍びは産まれた瞬間から『秘湯』と『崩脈』で肉体を調整し、10年以上の苦行を経て、やっと霊気を操れるようになるんですよ!?」
そう言われると、ちょっと申し訳ない気分だ。天才で悪いな。
「って、コイキ。そんな事より前、前ー。この先は行き止まりだぜ」
「そんな事……。いえ、そうですね。すみません。逃げ切ってから考えましょうか」
彼女は抱えていた俺を地面に降ろす。途端に体が浮くような感覚に襲われ、ふっと視界が真っ暗になった。
「……なー、コイキ。俺の気のせいじゃなけりゃ、俺達……『落ちて』ないか?」
「その認識で合ってますよ。忍びの里は王国の『地下』にあるんです。カモフラージュの為に毎回入り口は変えてますけどね」
コイキが悪戯っぽく笑う。
「えへへ、暗くて何も見えないでしょう? お姉さんが先導するので、手を繋いでても良いですよ。なーんて……」
「あー、ようやく『目』が慣れてきたー。デッカい迷路みたいになってんな、ここ」
「適応、早っ!? ご、ごめんなさい!!」
何を驚いて……あ、なるほど。今の王国にはまともな霊能者がいないから、『精霊が見える』ってのがどういう状態なのか想像できないのか。
俺的にはむしろ、視認すらできない高エネルギー存在を扱ってるアンタらにビビってたけどな。事故ったら死ぬ目隠し作業だぜ……? 命が惜しくないのかよ。
「……にしても、アンタ。俺を助けるような真似して本当に良かったのかー? 場合によっては、王国を敵に回す事になりそうだぜ?」
「そういう指令でしたから」
コイキは付近の壁と俺の体に手を添え、落下の衝撃を殺しながら闇の中にストンと着地する。
「忍者になった瞬間に『人の生』は捨てました。命令の遂行に必要であれば何でもするのが、私達『忍び』の生き方です」
そうか。……俺とは真逆の信条だな。
第3回ヒロイン人気投票(殿堂入り除外)
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①赤:ドゥーベ・ルビー
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③白:フェクダ・ダイヤモンド
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④黒:メグレズ・オニキス
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⑤紫:アリオト・アメシスト
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⑥黄:ミザール・シトリン
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⑦緑:ベネトナシュ・エメラルド
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◎灰:スピカ・ゴッシェナイト