格下無双のダンジョンテイマー、レベルドレインサキュバスをテイムする 〜格上にも勝てるようになって人生逆転ハーレム生活を送っていたら、いつの間にかレベルが逆転して言うことを聞いてくれなくなっちゃった話〜 作:屍蜂朽一
オレの名前はシャックル。ダンジョン攻略者だ。
攻略者としてのユニークスキルは【テイマー】。かなりのレアスキルで、オレは自分以外のテイマーに会ったことがない。
効果は強力で、「自分よりレベルが低いモンスターであれば強制的に仲間にすることができる」というもの。可能性を感じるだろ?
ただし、強力な効果と引き換えに基礎ステータスがしょぼい。コツコツとレベルを上げた今でも、油断すれば雑魚モンスター相手に一撃でやられかねない貧弱さだ。
それに、【テイマー】のスキルにはもっとはっきりとした弱点がある。
格上のモンスター相手には、何もできないってことだ。
ダンジョン攻略を成功させるためには、一定階層ごとに出現するボスモンスターの討伐が必要不可欠だ。しかしボスモンスターというのは大抵、レベルがとんでもなく高い。本体であるオレが貧弱なこともあって、テイムの条件を満たせることはたとえ比較的浅層に出現するボス相手でも皆無だ。
だったら、雑魚モンスターであろうと何匹も集めて、数的有利を作って戦えばいいのでは?
それはオレもやってみた。結果は惨敗。
まず、さっきも言ったようにボスモンスターはレベルがとんでもなく高い。つまりステータスも尋常じゃなく高い。オレのレベルで仲間にできるモンスターなんて、一発か二発耐えられればいいほうだ。
しかも、ボスモンスターにはたいてい、オレの【テイマー】のようなユニークスキルが備わっている。こちらを弱体化させたり、あるいは自らをパワーアップさせたり、果ては極太のビームを撃ってきたり……。
加えて、相手はその階層のボス。時間経過で、仲間のモンスターを呼び集める習性を持つ。
そうなると、数的有利なんてものはあっという間に消えてしまう。オレの【テイマー】で一度に仲間にできる数は、限られているからだ。
そこで、普通のダンジョン攻略者はパーティーを組んで戦う。
ダンジョン攻略者同士で協力し合って、ボスモンスターの討伐、ダンジョンの深層到達を目指す。
そして、モンスター討伐で得られる素材や、ダンジョン内に眠る財宝、深層にあるという神話の時代の遺物を持ち帰り、換金して生計を立てる。
そのためにダンジョン攻略者の互助会であるギルドが存在し、日々仲間集めや情報交換が行われている。
「ギルドに所属してパーティーを組むことさえできれば、ボスモンスターであろうと討伐することができる!」
「レアスキルを持った一流のダンジョン攻略者として、名を上げることができる!」
【テイマー】として目覚めたばかりのオレは、そんな風に夢を見ていた。
だが現実は──クソだった。
◇◇◇
「……換金」
「あ……シャックルさん。毎度どうも」
「換金」
あからさまな営業スマイルを浮かべたギルドの受付嬢に、オレはぶっきらぼうに革袋を差し出す。中には、浅層で討伐した雑魚モンスター由来の素材が、たっぷりと詰まっている。
「……いつもご苦労様です~」
オレの態度に気を悪くしたのか、受付嬢は引きつった笑みを浮かべながら、革袋の重さを天秤で量り始めた。
ここは、オレが所属しているギルドの建物だ。ダンジョン攻略者向けの軽食堂も兼ねており、夕食時なこともあってテーブルは埋まっていた。脂っこい料理と強い酒の臭いが、木格子の天井に届かんばかりにむんと漂っている。
「……あの人が噂の、テイマーのシャックルさんですか?」
背後のテーブルから、新参者らしいダンジョン攻略者の青年の囁きが聞こえた。たとえ夕食時の喧騒に紛れていても、自分の名前を呼ばれるとどうしても耳が反応してしまう。
「モンスターを仲間にできるなんて、すごいですよね。誘ってみようかな……」
「シャックルかぁ? あいつは止めとけ」
同席している中堅ダンジョン攻略者の男が、こちらに聞こえるほどの声量で言った。どうやら、酔っ払っているらしい。
「あいつは能力の強さにかまけて性格の矯正をしてこなかった、クソ雑魚ダンジョン攻略者だからよ」
「性格の矯正?」
「協調性ってもんがないんだよ、あいつは」
酒杯を傾けながら、男がせせら笑う。
「あいつのスキルは確かにすげぇ。だから物珍しさで、最初は引く手数多だったのよ。でも、それもよくなかったんだろうなぁ。あいつ勘違いしやがった。すげぇのはスキルじゃなくて自分だってな。『オレを仲間にしたかったら、オレが活躍できる作戦を、オレが納得できるように説明してみせろ』ってな」
「うわ、それはキツイですね」
青年が真顔で言ったので、他のテーブルも巻き込んだ大爆笑が起こった。オレは奥歯をギリギリと噛み締める。
「そうだよなぁ、キツイよなぁ。とてもダンジョンで背中を預けるパーティーメンバーには選びたくねぇよなぁ」
中堅ダンジョン攻略者の男は、ゲラゲラと笑っていた。
「それでもスキルは強ぇからよ、試しにパーティーに入れてみたやつもいたのよ。そしたらどうなったと思う? やっこさん、ダンジョン内でもその調子だったのよ。『オレを保護しろ』だの、『オレのことを最優先に行動しろ』だの、それでいてボスモンスターと敵対したらビビりやがってよぉ、それでいて参謀気取りで後ろからとんちんかんな指示を出すわけよ。『おい、オレが攻撃しようとしたんだぞ』『おい、オレのモンスターを殺す気か?』『ここまで最小限の戦闘で来られたのは、誰のお蔭だと思ってるんだ?』」
「キツイですねぇ」
またしても真顔で言った青年に、大爆笑の連鎖が起こる。今度の大爆笑は明確にオレに向けられている気がした。忌々しいことに、勝手に顔が熱くなる。
「そういうわけでよ、他のパーティメンバーも調子を乱されて結果は敗走。自分のせいだとわからないやっこさんは文句たらたら。それでいて帰還時の雑魚モンスターの相手は元気いっぱいに引き受けて、後になってその時のことを武勇伝として吹聴しやがった。もちろん、他のパーティメンバーの情けなさを誇張した上でな。さて、お前はそんなやつと仲間になりたいか?」
「なりたくありませんね」
真顔と、大爆笑。
オレは怒りで身体が震えていた。
馬鹿にしやがって、馬鹿にしやがって。
雑魚スキルしか持ってない雑魚どもが。
「シャックルさん、用意できましたよ。こちら今回の報酬で……あっ」
オレは受付嬢から報酬の入った皮袋をひったくるように受け取り、出口へと急いだ。
「あばよ、
テーブルにたむろする男たちが、最後にそんな言葉を浴びせてきた。
ダンジョン生活者──それは、貧困などで行き場がなく、ダンジョンの浅層を住処にしている者を指す侮蔑語だった。
オレはダンジョン生活者じゃない、ダンジョン攻略者だ。
しかし現実問題として、テイムしたモンスターをダンジョン外に連れ出すことのできるオレに、住居を貸す人間はいなかった。
いや、昔はいたのだが、オレの悪評を聞いて、誰もいなくなってしまったのだ。クソみたいなダンジョン攻略者どものせいで……!
こうしてオレは、ギルドに所属するも誰からも相手にされず、ダンジョンの浅層に独りで潜って日銭を稼ぐ、ダンジョン攻略者となっていた。
現在、オレはほとんどダンジョンの浅層で暮らしている。だがダンジョン生活者に落ちぶれたつもりはない。魂はいつだってダンジョン攻略者だ。
浅層で日銭を稼いでいるのも、コツコツとレベルを上げて、いつかボスモンスターであってもテイムできるほどのレベルになって、ダンジョンの深層を目指すためだった。
幸い、オレの【テイマー】の能力は、格下相手には無敵だった。異常個体と呼ばれる妙にレベルの高いモンスターや、モンスターの大量発生などに注意すれば、単独でもほとんど安全にダンジョンの探索ができる。生活には、困らない。
だからいつか、あんなクソどもを見返せるような成果を、ダンジョン攻略者として──
(いつになったら、それができる?)
オレは報酬の入った皮袋を手に、拠点へと帰還した。
《
中古の家具を寄せ集めた、街にある最安値の貸し部屋よりもさらに下回る生活環境。筋肉量を保つことを優先した、ぎりぎりの食事メニュー。
ボスモンスターも倒せない単独攻略では、経験値などほとんど手に入らない。
レベルが上がる速度よりも、年を重ねる速度の方が早い。
ダンジョン攻略者としてのランクも、初心者を辛うじて脱したE級のままだ。
もう、二十代も後半になろうとしている。見た目は、それ以上に老けている。ダンジョン攻略者としてのピークが、何の成果も出せないまま終わろうとしている。
【テイマー】の能力は、格下相手には無敵だ。しかし、いつまで単独攻略で無事に帰還できるかどうか。
「──クソがッ!」
オレは報酬の入った皮袋を、隠し部屋の岩壁に投げつけた。じゃりんじゃりんと音を立てて、袋の口から硬貨が溢れる。
イライラを鎮めるために、オレは懐から煙草入れを取り出した。
しかし中身は煙草ではない。麻薬だ。ダンジョンに生える幻覚植物の葉を乾燥させたもので、深層産は副作用のない超高級品なのだが、オレが手に入れられるのは浅層産でしかも混ぜ物の多い安物だった。
それでも、効果は覿面。本物のダンジョン生活者から教わった、現実の恐怖から逃れる魔法の薬。
パイプに乾燥した葉を詰め込み、火を点ける。口に咥え、魔法の煙をたっぷりと吸い込む。
たちまち身体中に、多幸感が漲る。苛つきが引いていく。ギルドで騒いでいたクソどものことも、今なら寛大な心で許せてしまう。
「いつか絶対に、ダンジョン攻略者として名を上げてやる……!」
オレの決意の言葉は誰にも届くことなく、煙と一緒に宙へと消えた。
◇◇◇
さて、そんなある日のことだった。
オレはいつものように、安物の麻薬を使った後遺症である頭痛に苦しみながら、拠点にしている《岩鎧のダンジョン》内の探索を行っていた。もちろん、オレ独りでだ。
目当ては、《
地中の金属を取り込んだ外皮はまさしく鎧のようで、下手な攻撃は通らず、多くの状態異常を無効化する上に毒まで持っている。極めつけに防御魔法の展開までできるという、非常に倒しにくいモンスターだ。そのため、通常では討伐の手間と換金後の値段が割に合わないモンスターとされている。
しかしオレの【テイマー】の力さえあれば、簡単に狩ることができる。テイムして無抵抗になったそいつをダンジョン内で解体し、武具の素材になる外皮はギルドで、薬の素材になる毒腺は薬屋で換金してもらうのが、オレの日課になっていた。
索敵は、テイムしたモンスターに任せている。こちらは《
このモンスターを三匹テイムしておいて、前方と後方、そして頭上で索敵させ安全を確保するのが、オレのいつものやり方だった。
……そう、だからその日も、いつも通り索敵は万全だった。麻薬の後遺症に苦しんではいたが、それさえもいつものこと。油断していたわけじゃない。
なのにそいつは、本当にいきなり現れた。
ダンジョン内にある四つ辻に来たときだった。《岩鎧のダンジョン》は初心者向け、つまり探索がかなり進んだダンジョンである。浅層の通路には発光性のコケである《
それでも、死角の多い場所だ。索敵は、念入りに行う。オレは、安全を確保して進んだつもりだった。
ぬるりと曲がり角の向こうから、背の高い半裸の女性が現れた。
「────うわぁあああぁあああぁあああぁあああっ!?」
情けないことに、オレは馬鹿みたいにデカい悲鳴を上げてその場で飛び上がっていた。完全に不意を突かれてしまったからだ。
その剣幕に驚いたのか、現れた女もビクッと全身を硬直させてこちらを見下ろしていた。
一目見て、美しすぎる女だと思った。まるで降り注ぐ光のような金髪のロングヘアー。女神の彫像よりもなお整った、奇跡のような美貌。どんな高級娼婦であっても及びもつかない、肉感的な曲線を描いた肢体。
そして──
額から生えた、ピンク色の角。横に長く尖った耳。背中から生えた小さな翼も、腰から生えた先の尖った尻尾も、角と同じピンク色。
白い肌はまるで、高級なシルクのよう。たわわに実りすぎた乳の果実と、すぐ上の肌に紋様の刻まれた股間は、極限まで布地を削った黒いレオタードのようなものによって、辛うじて隠されている。
ダンジョン攻略者ではあり得ない、ほとんど裸に近い軽装。
(人間型の、モンスター!?)
人間型のモンスターは、ダンジョンの深層にしか発生しない。
ボスモンスターと同様に特殊なスキルを持ち、レベルが高く、何より人間並みの知能を有しているとされている。
たとえ上位クラスのダンジョン攻略者パーティーであっても苦戦を強いられる、人類の宿敵。
それが、どうしてこんな浅層に?
(──異常個体!)
異常個体とはその名の通り、本来出現しない場所に出現したレアモンスターのことだ。
一番よくあるパターンが、個体としては雑魚モンスターなのだがレベルが異常に高いパターン。その次が、ボスモンスターとほとんど同一の個体が何でもない浅層に出現するパターンだ。
どちらも初心者パーティーであれば全滅しかねないような事態であるため、確認されしだい討伐クエストが発生する。
オレが単独攻略しかしないのにわざわざギルドに籍を置いているのは、こういったイレギュラーを事前に把握しておくためでもあるのだ。
しかし今回は、何の報告も受けていない。
(発生したばかりの異常個体ってことか!?)
それにしたって、初心者向けと呼ばれるほど探索の進んだダンジョンに人型のモンスターが出現するなど、聞いたことがない。とんでもないイレギュラーに遭遇してしまったものだ。
──いや、待て。
オレは何を、悠長に考えている……?
目の前の女──人型のモンスターが、攻撃態勢に入った。
(あっ、死ぬ)
視界がスローモーションになる。女の手刀が、ゆっくりとこちらに迫ってくる。
何度か経験がある。死線の前で、時間間隔が狂う現象。
驚いて、飛び上がって、悠長に物思いに耽って、対応が遅れた。
目の前の女も驚いていたが、オレよりも早く臨戦態勢を取り戻していた。
(《
索敵用の《
索敵していた先で殺されても、また別の個体をテイムすればいい。
だから、身代わりだとか、
しかし、
(いや、間に合わない──)
たとえ頭上にいる個体に今から命令を出したとしても、攻撃は防げない。それほどまでに、オレと人型のモンスターとの距離は差し迫っていた。
なら、
否、そちらも絶対に間に合わない。
状況は、完全に詰んでいた。
(こんな、ところでっ──!)
だから、あとはもう──
ゆるやかに進む時間の中、
オレはほとんど反射的に、目の前の人型モンスターに手の平を向け、
「──テイム!」
その瞬間、世界は動きを止めた。
「────っはーっ……! はーっ……! あっ、あっ……はあっ……うわぁぁっ……!?」
時間の流れが、元の速さに戻る。
恐怖心が遅れてやってきて、オレはその場にへたり込んでしまう。腰が抜けてしまったのだ。慌てて索敵用の《
ちなみにオレの奥の手とは、ダンジョン内の壁に設置されている《
しかし、そんな心配は無用のようだった。人型モンスターはオレに攻撃しようとした体勢のまま、ピタリと動きを止めていた。そんな姿さえあまりにも美しく、まるで最高峰の芸術作品が目の前にあるかのようだった。
「……通った、のか……?」
人型モンスターに、オレの【テイマー】の能力が通用した。
しかし、そんなはずはない。人型モンスターといえば、深層にボスモンスターとして登場することもある強力な個体だ。そんなやつ、オレよりもレベルがずっと高いに決まって──
「──いや、違う、
オレは、思い出していた。
異常個体には、ボスモンスターとほとんど同一の個体が何でもない浅層に出現するパターンが──
つまり、
「……確かめてみるか!」
オレは目の前の人型モンスターを対象に、ステータスウィンドウを開いた。
ずらりと情報が表示される。この時点で、オレがこの人型モンスターをテイムできていることが確定した。初見のモンスターが相手の場合、ステータスウィンドウを開いてもほとんど何も表示されないからだ。
オレは重要な項目を確認する。こいつのレベルは……18!
「やっぱり、レベルが低い状態でボスモンスターが出現するタイプの、異常個体……!」
オレの【テイマー】は、「自分よりレベルが低いモンスターであれば強制的に仲間にすることができる」ユニークスキル。
条件さえ満たされていれば、たとえ人類の宿敵と呼ばれる人型モンスターであっても、テイムすることが可能というわけだ。
オレのレベルは、30。レベル29以下という条件は、満たされている。
「た、助かったぁ……」
オレは本気で胸をなでおろす。というのも、人型モンスターであってもテイムできるとは、この瞬間までオレ自身も理解できていなかったからだ。
人型モンスターに遭遇したのが初めてなのもあるが、そもそも【テイマー】自体ががレアすぎるユニークスキルで、情報がほとんど存在しないのだ。
ともあれ、危機は脱した。オレは三匹の《
さて、次の問題だった。
「……人型モンスターを、テイムしちまったよ……!」
自分のユニークスキルが【テイマー】だと判明したその日から、妄想しない日はなかった。
もし、美しい女性型のモンスターを、仲間にすることができたなら……。
絶対服従させて、従順な性奴隷として調教することができたなら……。
しかも目の前にいる個体は、ステータスウィンドウによると《サキュバス》らしい。
《サキュバス》! 酒場で男が憧れを口にしない日はない、《サキュバス》!
オレは、しきりに唇を舐める。
落ち着いてから眺めるサキュバスの艶めかしい姿は、荒れた肌の安い娼婦しか抱いたことのないオレにとっては毒そのものだった。
オレは、とんでもないことをしようとしていた。索敵させている《
「お、おい……」
オレは目の前のサキュバスに呼びかける。
「お前は、誰だ」
「……わたくしの名前は、ディモート。種族は、《サキュバス》……」
ステータスウィンドウで確認した通りの情報を、サキュバス──個体名:ディモートは素直に話した。
「お前は、オレの、何だ?」
「わたくしは──ご主人様の、忠実なる僕でございます♥」
柔和な笑みさえ浮かべて、ディモートは言った。
「──ッ!?」
オレは全身に痺れが走ったように感激していた。
人型のモンスター。人間と同等の知能があるとされているモンスター。
(そいつをテイムすると、こんな反応になるのか……!)
《サキュバス》だからこそなのだろうか、ディモートはあからさまにオレに対して媚びを売ってきていた。視線だけで、仕草だけで、こちらを誘ってきている。高級娼婦も真っ青だろう。
情欲に塗れた視線を向けられて、女日照りだったオレは、我慢ができなくなった。
その場でズボンを脱ぐ。硬く膨れ上がったチンポを取り出す。
「しゃぶれ」
あまりにも明け透けな命令。しかし、ディモートは嫌な顔ひとつすることもなく、
「畏まりました、ご主人様……♥」
オレの目の前で恭しく跪き、オレのチンポをそっと口に含んだ。
温かい感触に、亀頭部が包まれた瞬間──
「──おっほぉおおおぉおおおぉおおおぉおおおっ!?♡♡♡」
ぶびゅっ、ぶびゅっ、ぶびゅびゅぅっ!♡♡♡ と、オレは一瞬で射精してしまっていた。
なんだこれ、気持ちよすぎるっ……!
ぶびゅぶびゅと次から次へと溢れ出る精液を、ディモートは当然のことのように、喉を鳴らして淡々と呑み込んでいる。その姿にエロさを感じた瞬間に──ぶびゅっ、ぶびゅうっ♡♡♡ とさらなる射精。
「な、なんだこれっ!? おいやめろ、いったんしゃぶるのは終わりだっ!」
「はい、ご主人様♥」
命令を訊いたディモートが口を離す。それでも、射精はすぐには終わらない。ぶぴゅっ、ぶっぴゅうっ!♡♡♡ と勢いよく白濁液が飛び出す。
それを、口を開け舌を突き出したディモートが、目を閉じた状態で受け止める。整いすぎるほどに整った《サキュバス》の顔面を、オレの白濁液がぼたぼたっと重たい音を立てながら汚していく。鮮やかに濡れ光る舌腹を、こってりとした種汁が覆い尽くしていく。
それを見たオレの心臓がドグンと高鳴り、金玉がぐぐっと吊り上がって──ぶぴゅぶぴゅぶぴゅぶぴゅぅっ♡♡♡
「おい、なんなんだよこれっ! 射精が止まらねぇ!」
「《サキュバス》の体液には、催淫作用がありますので♥」
オレの言葉を質問と捉えたのか、ディモートがオレの精液を浴びながら答えた。
まさかあの唇に咥えられた一瞬で、唾液の催淫作用がオレのチンポをこんな風にしてしまったのか?
「ご主人様に慣れていただくためにも、ここはわたくしのお口の中で、最後までお射精してしまうことをおすすめいたしますが……♥」
「わ、わかった、そうしてくれっ!」
「かしこまりました♥」
ディモートが、オレのチンポの先っちょを、キスするかのように浅く咥える。
「ぐほぉっ……♡♡♡」
ぶぴぶぴぶぴゅぴゅっ!♡♡♡ と、たったそれだけの刺激で射精が加速した。
三十秒以上も続く長い射精が、二度三度と繰り返された。ようやくチンポが落ち着いてくる。まるで金玉の中身を洗いざらい吐き出して、新しく作られた分もまた洗いざらい吐き出して、それを何度も繰り返すことで、身体が作り変えられてしまったかのようだった。じんじんと、金玉が痛い。
「きっ、気持ちよすぎたぁ……」
精液塗れのディモートがオレを上目遣いに見て、にこりと微笑む。金玉をひっくり返したようなあの長い射精を、こいつは全部口で受け止めて、全部腹の中に収めてしまったのだ。さすがは《サキュバス》。これこそが、本物の《サキュバス》なのだ。
オレはようやく冷静になってきた頭で、ディモートのステータスを今更ながら確認することにした。
……いや、全然まだまだ興奮しているのだが。指先で顔についた精液を拭ったディモートが、チンポの先を、ちゅ、ちゅ、と軽く啄むのも、腰がわななくほど気持ちがいい。これが《サキュバス》の催淫作用か……。
ともあれ、ステータスウィンドウを開いてその中身を子細に確認する。実際、スキル欄にも記載されていた。催淫にまつわるスキルが、いくつも備わっている。
「うわ、【
ディモートと遭遇したときのことを思い出す。
オレがディモートの存在に気づけなかったのは、こいつが【隠密】のスキルを持っていたから。
では逆に、どうしてこいつはオレに気づけなかったのか?
単純に、まだレベル18で経験不足なのが大きいのだろう。オレの悲鳴に、一瞬とはいえ固まっていたわけだし。しかし何より、モンスターである《
これは、人間相手でもよくあることだ。《
ともあれ、タイミングが違っていれば即攻撃を仕掛けられたこともあり得たに違いない。本当に、つくづく幸運に恵まれ──
「うん?」
そこでオレは、ディモートのユニークスキル欄に気づいた。
「【レベルドレイン】……?」
聞いたことのないスキルだった。
いや、噂だけは聞いたことがある。
《サキュバス》は、相手の精気を吸い取る能力を持つ。ステータスで言えば、体力(HP)や魔力(MP)だ。
しかし中には、経験値やレベルといった数値にまで干渉する《サキュバス》がいるという、噂があった。
「まさか、これがそれなのか……?」
説明には確かに、「相手のレベルを吸収する」とある。発動すると相手のレベルが下がり、経験値に変換されてディモートのものになるようだ。さすがに、奪ったレベルをそのまま加算するものではないようだが……。
「いや、それにしても強すぎるだろ。あっぶねぇ。最初にこれを食らってたら、テイムできなくなってた可能性も……うん?」
オレは、チンポの先をしゃぶり続けているディモートのことを見下ろす。
「?」
ディモートは不思議そうに、小首を傾げる。
ユニークスキル【テイマー】──自分よりレベルが低いモンスターであれば、強制的に仲間にすることができる能力。
ただし、格上のモンスターには何もできないという、はっきりとした弱点が──
「──通用するじゃん、格上」
オレは、興奮で震える声で呟いていた。
「相手のレベルを、下げさえすれば……!」
全4話の中編作品です。