「触手くん……」
茂みから、暗い紫色が現れる。
正気を疑うような、理性が抉られるような、この世にあってはならない、生という生を冒涜するようなナニカ。
「あ、は」
だけど私は知っている。この子が害を為すような存在なんかじゃないって知っている。
「今日も、お願い……ね?」
だから、私はスカートをたくし上げた。
学校からの帰り道。
ショートカットするために、私は日常的にこの大きな公園を横切っている。そうする事で十分くらいは短縮できるし、心和む景色を見れるし、良い事尽くめ。
そう、心和む景色、もう秋。紅葉シーズンで目の保養になる。
でも秋という事は日の入りがだんだん早くなるという事で、部活終わりからの帰宅となるともう辺りは薄暗くなっている。
だから、いつも通り少しだけ足早にそこを、いつも人気のないそこを通り過ぎる……筈だった。
薮の中から、ガサガサという音が鳴った。
ワンちゃんか何かだろうか。
そう思った私は……何故か衝動的に……その茂みを覗き込んでしまった。
「…………え?」
そこには、犬なんて、居なかった。
細い腕のようなものが多数ひしめいている、イソギンチャクのようなモノ。
暗い紫色で、この世の生物とは思えない、いや、この世全ての生物を冒涜するような、見る者の正気を抉るような、そんなナニカがそこにいた。
「ひっ」
逃げ出せなかった。
これに逆らえない。これに出会ってはいけない。これと相対してはならない。
数々の思考が一瞬にして脳内を埋め尽くし、私は、腰を抜かしてしまった。
「ぁ……ぁ……」
そのまま後退る、なんて出来やしない。身体が恐怖で硬直して一歩たりとも動けなくない。
きっとアレから襲われる。食べられる。あぁ、ここで私の人生は終わる。
視界が一気に涙で歪み、だけどソレから目を離せない。目を離したら、何をされるか分からない。
だから、だからどうかこっちに来ないで、かろうじてそう願いながら、それを見詰め続けた。
「……ぇ?」
だけど、それは私の方へは来なかった。
びくびくと細い腕を震わせながらその場に留まっているだけで、その腕を伸ばせば私に届くだろうに、そのカラダを縮こまらせているだけ。
だから、だから、だから。
「っ!」
その事実に気づいた瞬間、脱兎の如く逃げ出した。
後ろなんて振り返らない。
みっともない姿を晒しながら、私はその場を全力で離れた。
あれはきっと何かの見間違い。部活で疲れていたから何かと勘違いしたのかもしれない。
そう自分に言い聞かせながら異変に気付いたのはその夜。
「あれ……スマホ……」
片時も離さないそのアイテムが、無かった。
「うそ……どこ……⁉︎」
カバンをひっくり返しても、制服のポケットを裏返しても、見つからない。
「……まさ、か」
心当たりが、あった。
あの、公園。あの、得体のしれないモノから逃げた時。
変な姿勢で逃げ出したから、きっとその時に落としてしまったに違いない。
「うそ……」
身体が震え上がった。
またアレと出会うかもしれないのに、またあそこに行かなければならないのか、と絶望した。
……現代学生社会において、スマホは切っても切れないもの。だから私の頭には、そのまま放置して諦める、なんて考えは一切浮かばなかった。取りにいかなければならない、という頭の固い思考しかなかった。
だけどそこで思い出した。
アレは、腰を抜かす私を前にしても何もしなかった。ならきっとまた遭遇したとしても平気。
それに、落としたのがアレの目の前と限ったわけじゃない。もしかしたら道端にあるかもしれない。
だから、大丈夫。
「どこ……」
懐中電灯片手に公園内を探す。
けれど、見つからない。逃げ出した時のルートを逆に辿っても、それらしきものすら見つからない。
「やっぱり……あそこ……?」
探していない場所は、もう
正面には茂み。今は何の音も発していない茂み。
静か、という事が逆に恐ろしく思うのと同時、もうアレは居ないんだなって謎の確信を抱く。
だから、恐る恐る、ライトで照らしながら、そこを覗き込んだ。
「……ひ」
だけど、いた。そこにいた。
うぞうぞと、細い腕を蠢かせる奇怪なナニカが、まだそこにいた。
そして、ソレの目の前に、スマホが落ちていた。
「ぅ……」
思わず、口から悲鳴のようなものが出そうになる。
けれど今声を発してしまったら、コレからきっと襲われる。
動けない。ライトで照らした瞬間動きを停止したコレと同様、私も動けない。
そう、停止している。まるで、私の存在にびっくりしたかのようにして、コレも動きを止めている。
びっくり、している……?
「…………」
でも、やっぱり動けない。
私とソレの中間地点にスマホは落ちている。だから、それを取るには近付かなければならない。ならないんだけど、動く事が出来ない。ソレに近付く事を本能が拒否している。
「っ⁉︎」
そんな中、ようやくソレが、動きを見せた。
「ぁ、ちょ……!」
ぷるぷる震えながら、私のスマホに幾つかの細い腕を伸ばしていくソレ。
その姿を見て私も腕を伸ばすけれど、脚は動かないまま。
だからスマホは、ソレの腕に絡め取られた。
終わった。もう終わった。取り戻せない。このままきっとバラバラに壊される。食べられてしまう。そして私も。
……なんて、更に絶望していると、
「……ぇ?」
スマホが、私に、差し出された。
「いい、の……?」
まるで私にスマホを返すような仕草に、思わずそう問い掛ける。
そんな私の言葉が通じたのかは分からないけれど、スマホを絡め取っているその細い腕が、ゆっくりと縦に振られた。
「ぁ……ぁり、がと……?」
だから、私はそれを受け取った。
「わっ⁉︎」
スマホを私が握った瞬間、その細い腕はしゅるんっと引っ込み、ソレは身体を更に小さく縮こまらせる。
それ以上、何かをしてくる様子はない。
……怖がって、る?
そんな印象を抱いた。冒涜的な見た目のくせに、そんな、小動物に対するような感情を感じた。
「……ありがとね」
だから、そんな言葉が自然と出ていた。
今度は何の反応もない。
「じゃあ……ね」
スマホを取り戻す、という目的は達せられた。
だけどソレの怯えているような反応が気にかかって、そんな言葉を小さく残して私は帰り道を急いだ。
スマホは少しぬるぬるになっていた。
きっとアレの体液……か何か。
……嗅いでみても、特に匂いはしなかった。
次の日。
「…………」
いつもの帰り道。公園を横切るコース。
あんな事があったというのに、私はこの道を選んでいた。
見た目はあんなにも悍ましいというのに、あんな態度を取られてしまっては恐怖心も薄れる。
だから私の手には、リンゴが一つあった。
「……いる、かな」
昨日と同じところに辿り着く。例の茂み。アレが居た場所。
ガサガサ、という音は昨夜同様聞こえない。
「……ね、ねぇ。いるんでしょ……?」
だけど、そこに居ると確信していた。
茂みの中に入り、辺りを見渡す。
いた。
「……ぅ」
まだ明るさの残った夕方に見るそれは、相変わらず悍ましい見た目をしていた。
けれど、やっぱり襲ってくる気配はない。
「……ぁ、あのね?」
それどころか、私が声を発した瞬間、びくっ、とカラダを震わせる。
……間違いない。やっぱりコレ、怖がってる。
「き、昨日の、お礼……」
昨日。私のスマホを返してくれた昨日の出来事。おっかなびっくり、という言葉が似合うような挙動で返してくれた昨日。
そんな出来事があったからこそ、恐怖心は少し薄れていた。
「こ、これ、食べる……?」
だから、リンゴを持ってきた。
コレが何を食べるかなんて知らない。知らないけど、リンゴならたぶん食べるだろうって浅はかな考えでリンゴを買ってきた。
私が恐る恐るリンゴを差し出すと、またぴくっと反応するソレ。
だけど、それ以上何もしないって分かると、おずおずと細い腕を伸ばしてきた。
「……っ」
そして、絡め取られるリンゴ。そのままイソギンチャクみたいな、本体のようなところまで持っていった。
けれど、
「……あれ?」
食べるでもなく、傍に置かれてしまった。
「食べない、の?」
てっきりこう、ムシャムシャッて恐怖を感じるようなビジュアルで食べると思っていたのに、拍子抜け。
だけどソレはプルプルとカラダを震わせている。
……嬉しい、って表現、なのかな。
何故か、そんな印象を抱いた。
けれど、それ以上の動きはない。
「……じゃ、じゃあね」
だから私はちょっとだけもにょもにょした気持ちを抱えながら、その場を後にした。
帰った後、なんか悔しいからイソギンチャクの生態を調べた。
そこで判明した事実。イソギンチャクの主食はエビとか小魚。超肉食。
……だけど、陸上に住んでいるアレがそんなもの食べるだろうか。
と思ったので、
「……や」
次の日、肉を片手にアレの下へと来ていた。相変わらず狂気的な見た目。
私が姿を見せた瞬間、びくんってカラダを跳ねさせたけれど、私の顔を覚えていたのか、その硬直は一瞬で解けた。
「今日は……お肉、だよ?」
リンゴはソレの傍に置かれたまま。……やっぱり食べないんだ。
だけど今日は違う。なんと手羽先。
「……どう、ぞ?」
白いトレイから取り出して、手羽先を差し出す。
そうすると、ぴくんって跳ねるような反応はしたものの、昨日より早めにするすると細い腕を伸ばしてきた。
……少し、慣れてくれたのかな。
けれど、
「……む、これもダメ?」
手羽先はまたソレの傍に置かれてしまった。
カラダがプルプル震えているあたりちょっと嬉しそうなんだけど、食べるといった感じはない。
「むー」
スマホのお礼、という名目だったのに、こうなるとなんか意地になってしまう。
なんとしてでもコレに何かを食べさせてやる、なんて意味の分からない情熱が発生した。
「よしっ! ……あ、ごめん」
だから気合いを入れたのに、そんな声に驚いたのか、ソレはびくぅっと縮こまってしまった。どんだけ繊細なんだこの生物……生物?
「ん……また今度ね」
だからそれ以上びっくりさせないよう、静かに語りかけて、手を振ってその場を後に、しようとしたら細い腕が振り返された。
……なんか、かわいいかもしれない。見た目はキモいけど。
という訳で色々調べてみた。
どうやらアレは界隈で「触手」と呼ばれているらしい。
と言っても現実に存在する概念じゃなく、主に空想の世界の住民。……なんだけど実際目にしたし実際あそこに居たから、私にとっては現実世界の住民。
というか触手。エロ生物らしい。なんかいろんなエロ漫画で題材にされてるっぽい。主食、女の子、みたいな。
でもアレから、あの触手からはそんな感じはしない。だって女の私に怯えてる感満載だったもん。
「うわぁ……うわぁ……」
興味本意でそんなエロ漫画を読んでみた。
なんとまぁ、うん、エロいというか……キモい?
身体中に触手が絡みついて、おっぱいとか、あそことかをぐちょぐちょにされて、悍ましさしか感じない。
……けど、なんか読んじゃう。
だってなんか、女の子達がすっごい気持ちよさそうで、アンアン言ってて、やっぱりコレ、エロいんじゃないかって。
ふと、あの触手から、あの子からされるのを想像してみた。
細い触手があそこに群がって、敏感な場所をぐちょぐちょにされて……。
「……っ」
身体が、ぶるっ、て震えた。
それを想像してしまって、ナニカを感じた。
「~~~~っ!」
そんな自分が信じられなくて、思わずベッドにダイブしてゴロゴロ転がる。
そんなわけ、そんなわけがない。あの子にそんな事をされて気持ちよくなっちゃうなんて、ありえない。
だから、だからきっと、このムラムラは気のせい。最近シてなかったから、あんなえっちな漫画読んじゃったからそうなっているだけで、きっと違う。
「……んっ」
だから、それを発散するために、下着の中に手を伸ばした。
次の日は、なんとなく顔を合わせづらくて、公園から外れるルートで帰宅した。
「触手くん、いる……?」
けれど好奇心は抑えられないもので、その次の日は公園に顔を出してしまった。
「あ、いた」
あの茂みの向こう側、いつもの場所に触手くんはうねうねしながら待ち構えていた。
……なんかちょっと嬉しそう。あれかな、昨日私に会えなかったから寂しかった、とか。
「じー……」
そんな触手くんがなんとなく可愛く感じて、しゃがんで目線……目線?……を合わせる。
一瞬びくっとしたけど、何もしない私に安心したのか、弛緩しながらうねうねを再開した。
「……触手くんって、何食べるの?」
だからなんとなく、話しかけてみたり。
けど言葉が伝わる筈もなく、触手くんの動きは変わらない。
「……触って、みようかな」
ゆっくり、触手くんに手を伸ばす。けど少し距離をとっているから、直接は届かない。
そんな私の挙動にびっくりしたのか、びくっと反応した直後、少しだけ後退された。え、動けるんだ。
そのまま、そのまま待ってみる。猫ちゃんに対しておいでおいでってするような感じで待ってみる。
「……お」
暫くそうしていると私の意志が伝わったのか、触手くんは細い腕をゆっくり、おずおずと伸ばしてきた。
そして、
「おぉ」
ぷにっ、とした感触と共に、私達は触れ合った。
なんか映画でこういうシーンあったな、と密かに感動しながらぷにぷにとした感触を楽しむ。
そうしていると触手くんも私が害を為さないと分かったのか慣れたのか、あっちからも私の手に何度もタッチしてきた。
「てい」
ので、きゅっ、と触手くんの腕を掴んでみた。
「おぉ……」
触手くんは驚愕も拒否もしなかった。
私に捕まれるままにされて、にぎにぎしても逃げない。
……なんか、癖になる感触。
「わ」
なんて楽しんでいると、今度は触手くんの方からアプローチされた。
私の手が、絡め取られた。
「おー」
ちょっとだけぬめっとした感触のものが手を這いずり回る。
正直キモいと思ったのは一瞬だけ。なんかマッサージされているような感触と、私に興味を示しているって姿がなんか可愛くて、ついされるがままになってしまった。
「マッサージ上手だねキミ」
それは思わず褒めてしまうほど。
痛くなく、擽ったくなく、丁度いい塩梅。
そのまま引き寄せられる事もなく、食べられるわけでもなく、ただ握手しているような状態。はたから見たら絶対頭がおかしいと思われるような光景だろうけど、意思疎通出来たようでちょっと嬉しい。
「……お?」
そんな風にニギニギを続けていると、別の細い腕が伸ばされてきた。
……ちなみに、私はしゃがんだ体勢。制服だからスカートの中身を、パンツを触手くんに見せているような格好。今日は白です。
その白に、触手くんは、正にこっそり、といった感じで、腕を伸ばしてきた。
「こらっ」
ので叱った。
びっくーん、みたいな反応をしたかと思った次の瞬間、その伸ばされていた腕は引っ込んでいき、私の手に絡みついていた腕もしゅるんって引っ込んでいった。
「もー、そんな事しちゃダメなんだからねー」
だから、これ以上怖がられないよう、今度は優しく諭した。
私の言葉が伝わっているのかは本当に分からない。分からないけれど、そのキモい身体をぷるぷると震わせて小さく縮こまっている。その姿はごめんなさい、と言っているかのよう。
むぅ、そんなだからちょっと可愛いんだこんちくしょう。
「…………」
だけど、さっきの動作で、何故かこの間のエロ漫画を思い出してしまう。
まるで、私のそこが気になると、私のそこに触れたいと言っている、気がした。
「……触手くんってさ、えっちな触手なの?」
だから、つい口に出して問いかけてしまった。
けれど触手くんは小さくプルプル震えるだけで、何も言う筈がない。
脳裏をよぎるのは、触手からえっちな場所を攻め立てられてアンアン言いながら気持ちよくなってる女の子。
……少しだけ、興味が湧いた。
「……んっ」
また、手を伸ばした。
怒ってないよ、もう一回手を繋ごう。そう言い聞かせるようにして、触手くんにおいでってするように手を伸ばす。
「……んーっ」
最初は頑なに縮こまる触手くんだったけど、私の気持ちが伝わったのか、ようやくおずおずと腕を伸ばしてきた。
「ていっ」
ので、捕まえた。おーびっくりしてる。めっちゃブルブルしとる。
そんな僅かな抵抗を受けながらニギニギと触手くんと握手を続けると、ようやく落ち着いたのか、くたっ、と力が抜けた。
けど、私の身体からは力が抜けない。ドキドキが、止まらない。
「……ここに、触りたい、の?」
だから、触手くんと手を繋いだまま、その手を、ゆっくり、ゆっくりと、私のあそこへと導いた。
ぴくんっ、と微かに跳ねる細い腕。それはまるで、良いの? と伺っているかのよう。
「……ちょっとだけなら、良い、よ」
だから、あそこの近くまで導いた後、少しずつ、少しずつ握っている力を弱めていった。
「……っ」
そして、完全に手を離す。
触手くんは、動かない。
「……良いから、ね?」
静かに、語り掛ける。
心臓がバクバクいってる。自分からそんな事をしてしまうなんて、ハレンチにもほどがある。
けど、けど、けど、どうしても、少しだけ、ほんの少しだけ興味があって、だから、触手くんから目を離せない。
「……ぁ」
動い、た。
「は……ぁ……ぅ……」
勝手に息があがる。どんな事をされちゃうんだろう、と想像が止められなくて、勝手に興奮してしまう。
触手くんは、その細い先端を彷徨わせる。
本当に良いの? 怒らない? そう、言っているようで、だけどそれ以上私が導くのも恥ずかしくて、そのまま、しゃがんだままに、待つ。
だから、そんな私の反応を窺いつつ、触手くんは、ゆっくりと、動いた。
「……んっ」
ちょん、とした感触があそこに伝わる。
触れた。触れさせちゃった。触手くんに、私の大事な場所を、触れさせちゃった。
触れられた、じゃない。触れさせた。私が、私の意思で、触手くんにあそこを差し出した。その事実で一気に頭が沸騰しそうになる。
「ん……ん……ん……」
そんな私の内心なんて知る筈もない触手くんは、ちょん、ちょん、ちょん、とおっかなびっくり私のあそこに触れてくる。
下着の上から、あそこに。だけど決定的なところじゃない場所におずおずとタッチしてきて、ドキドキが、止まらない。
いつ触られてしまうんだろう。いつ
触手くんは焦らす、なんて事はたぶんしていない。きっと興味津々で触っているだけに違いない。
だから、もどかしい。
「は……ん、ふ……ん……」
下着に包まれたいろんな場所がタッチされる。
握った時に初めてその感触を知ったけど、触手くんの細い腕は柔らかいお肉みたいな感じ。
だから、痛みなんて全然なくて、どっちかというと、気持ち、いい。
「ぁ……」
なんて考えた瞬間、触手くんが、私のあそこの中心に、触れた。
「ぅ……?」
けど、それは一瞬の事。
触手くんはまたいろんなところをタッチし始める。
まるで探るような仕草。どこに何があるのかを確かめているような動作。ちょん、ちょん、と恐る恐るといった感じの、まるで初めてそういった行為をするような確認作業。
「ん……ふ……」
……何をしているんだろう私。
こんな茂みの中で、下着を見せつけて、触らせているだなんて、どうかしている。
なんて、素に戻りかけた時だった。
「んっ⁉︎」
触手くんの細い腕が、そこに、敏感な場所に、とん、とタッチした。
別の事を考えていたからこそ予想外の感覚にびっくりして、その瞬間ちょっと大きな声を出してしまった。
「ぁ……」
そんな私にびっくりしたんだろう。
今まで興味津々に触れていたその細い腕がしゅるっと引いていって、触手くんはまたプルプルし始めた。
……ホント繊細だなこの子。
「あー、違うの。怒ってないから、ね?」
そう出来るだけ優しく伝えると、その声色から判断してくれたのか、だんだんプルプルは収まっていった。
けど、う、うん。
「きょ、今日はこのくらいで、ねっ」
そう言って、私は立ち上がった。
今日はおしまい。その意志が伝わったのか、触手くんはそれ以上腕を伸ばしてくる事はなかった。
「また、ね?」
だから、私はバイバイってしながら茂みから抜け出した。
……あそこが、タッチされたあそこが、ジンジンする。
早く、早く帰らなきゃ。
早くコレを、どうにかしなきゃ。