「精霊と日本一うゎぁーな男の自由すぎる冒険日誌」 作:めがねモエ
前篇「ウェンディーはピロートークがお好き」の巻、その5
パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ──。
その真っ黒い瞳でもって、射抜くがごとく、鋭く俺をにらみつけるリス公──。
パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ──。
そして俺(エロバイン)も、それを迎え撃つがごとく、これでもかと眼力を全開にメンチを切り返す。
パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ──。
そう、俺はいつの間にやら、故ポール牧師匠ばりの指パッチンをしていたっ!
パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ──。
先に動き出したのは奴の方だった。おもむろに、ぴょんと、椅子から飛び降りる。(チヤーチャランッ♪)
(チャラララァァァンッー♪ タララララァン♪ タララララララァンッ♪ タンタンッ)
ふわりと跳ねるように歩み出し、そして素早く止まって警戒の姿勢、そしてまた歩む──。
躍動感あふれる全身を使った跳躍、そしてまた立ち止まり、再び警戒の姿勢、リズミカルに──。
俺も厳かに、そしてさらっとスキップするように踏み出す───。
じりじりと歩み寄り、間合いを詰めていく俺とリス公──。
パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ、パチンッ──。
どこからともなくメロディが──、そんな気がする──。てか、俺には聞こえるぜぃっ!
チャララララァン♪ チャラララララランッ♪ ファンファンッ、ファンファンッ、ファンファンッ、ファンファンッ、タララララァ♪ チャララララァン♪ チャラララララランッ♪
素早立ち止まり──。
「キキィィッ!」その鋭い自慢の前歯を向いて威嚇するリス公。
「ハァァァッ!」俺(エロバイン)も負けじと腕を振り上げ、ベストキッド張りの『鶴の構え』で威嚇する。
チャチャァーン♪ チャンッ♪
「ヘイッ! チキンッ! ヘイッ!」
俺は構わず挑発し続けた。
そう、つまりは、さながらウエストサイドのジェット団とジャーク団の小競り合いのごとく。
漆黒の闇のような瞳で睨みつけるリス公も、流石にこの『鶴の構え』にたじろいだのか、やや警戒してその場でで硬直する。(そして、バックのメロディーもとまる。)
勝負は一瞬っ!
次の瞬間に決まるかッ!
俺は軽く息を吸い込んだ。
ほんの束の間の静寂が、俺とリス公を包む──。
一撃で仕留めるッ!
そう俺が心に思ったその刹那──。
「ねぇマスター、えらく大人しくしているわね。こんな恰好を私にさせておいて、フフフ──」
不意にウェンディがエロ優しい声を俺にかけてきたぁぁぁっ!
うぉぉぉっとぉっ! 俺もリス公もビクッとなって、サッと椅子の影に隠れる。
流石にこの状況を、愛しのウェンディに見られるわけにはいかない。それは、俺もリス公も同じなのだ。
互いにテーブルのぶっとい脚に隠れて、ふぅと胸を撫で下ろす。が、すぐさまにらみ合う。
「キキキキキッ」っとリス公。
「ま、こりゃひとまず休戦もやむなしだな」と俺はリス公を睨みながらつぶやいた。
今まさに、自慢の手料理を仕上げにかかるウェンディの、あふれんばかりの愛情ルンルン気分を害する訳にはいかねぇ。折角のラブラブディナーを台無しにする争い事は厳禁なのだ。それはリス公も同じだろう。
だがしかしっ! その愛情たっぷりのウェンディの手料理を食べられるのは、この俺様なんだぜいっ!
ざまあみろっ! リス公めっ! 今宵もてなされているのは、この俺なんだからなぁぁぁっ!
という気持ちを思いっきり込めて、やさぐれリス公に向かって、これでもかとドヤ顔をしてみせた俺。
「キキキキキキキキキィィィィィッ」
と、自慢の前歯が折れんばかりに歯を食いしばり悔しがるリス公っ! ってか、めちゃ笑えるわぁ、その悔しがりっぷりっ! ザブングル加藤氏にも負けない程の、見事な悔しがりっぷりであった。
俺(エロバイン)は猛烈に腹が痛くなり、ククククククククともはや腹筋崩壊寸前で、今にも笑い転げてしまいそうなのを必死で耐えているのだが、ウェンディの手前それをなんとか押し殺しつつ返事をする。
「い、い、いやね、あまりにもウェンディの後ろ姿が美しくて、う、う、動けなかったのさぁぁっ!」
「フフ、マスターったら、調子のいいこと言って。私がこんな恥ずかしい恰好をするのも、今夜だけの大サービスよ。いい? 特別なのよ」とチラッと振り返るその愛らしいお顔と来たら──。
俺はグイッとグラスのティオペペを一気に飲み干し、立ち上がった。
ウェンディの元へふらふらと歩み寄り、そして後ろから抱きしめる。「あんっ」と小さく声をあげる彼女がたまらなく可愛い。途端にジョニーはバッキバキだ。そして後ろから彼女の頬に軽くキスをする。
彼女もキスがしやすいように、少しこちらに顔を向けて首を傾げる。
「もう。何か硬いものが当たってるわ。──でも、本当は私も、常にあなたに触れられていたいのよ。マスター」
と言ってウェンディは、後ろ手にジョニーを優しく撫でる。
ジョニーときたら、ご主人様に褒められたバカ犬がピョンピョンとジャンプしてはしゃぐように、ピクンピクンとはねまわる。完全に手なずけられてやがるな、ジョニーのやつ。
そして俺はそのまま、うなじ、首筋、肩、背中と暴れる鰻を這わせて、ウェンディの柔肌をペロペロとやりながら、少しづつ腰を下げて、愛しの桃尻に向かう。
「むっふぅぅぅっ!」っと俺は、ウェンディのキュートなヒップに顔を埋め、そして深呼吸をする。
その柔らかなお尻の二つの膨らみに顔をサンドイッチされて、幸せを頬張るように顔を小刻みに揺らして、俺もまたバカ犬がごとく喜びを表現する。「あん、もうっ」っと優しく俺の頭を撫でるウェンディ。
すーはぁー、すぅーはぁー、すぅぅぅーはぁぁぁーと深呼吸を繰り返す俺。
「あぁぁ、落ち着くぅ、こうしてると落ち着くわぁぁ、ウェンディィィ」
「もう、マスターったら、そんなところで落ち着かないで」
「あぁぁぁっ! ウェンディィィ、ウェンディィッ、ウェンディィィィィッ」
と俺は名前を連呼する。
「そんなことしながら落ち着いて、そして名前を連呼しないで。マスターったらぁ──」
鼻先をぴとっと菊門につけて、というか殆どめり込ませて、クンカクンカもする。もちろん。すこぶる丹念に。
「あんっ、もう、本当に女の子が恥ずかしいこと、するんだから。マスターは」
こうやって俺とウェンディがイチャイチャするところを目の当りにして、もう怒り心頭どころか、すでに血管が切れているのではと思うほど、もはやリスの原型をとどめていない鬼の形相で、こちらを睨みつけてくるリス公。だか、奴は手出しが出来ない。そう、今夜はウェンディが待ち望んだ俺との特別の時間なのだ。ザマァッ!
これは好機と見た俺は、というかエロバインで俺は、これでもかとドヤ顔をしてみせて、奴の心をポッキリと折る作戦に出てみたのだった。
だが奴は、ストーキングするほどウェンディに入れ込んでいた──、そして今はどうやらウェンディに餌付けされているのだろうリス公は、己の股間の漢玉を握りしめ、むんずと堪えていた。
ならばと、俺はさらにイチャイチャをエスカレートさせる。
今度は、ウェンディの股間に下から食いつくように仰向けになり、彼女の深窓の泉、麗しのチョメチョメに吸い付く。たっぷりとエロ蜜を湛えた、ウェンディのチョメチョメ。ごっくんごっくんと飲んでも飲んでも、枯れることのない奇跡のエロ泉、その神秘のエロ蜜。これぞ愛の源泉。このエロ蜜、飲めば万病に効くのではと思うほどに、その神秘的かつエロティックかつ神々しくもスケベな味は、俺の心の奥底のリビドーの泉と、股間のジョニーをこれでもかと潤す。
「あぁぁぁっ、ウェンディィィ──」
もうその名を叫ぶしか俺には出来ない程、恍惚となるのだ。
先ほど一口に飲んだティオペペの後味と、ウェンディのエロ蜜が俺の口内でハーモニーを奏で、これまたエロ美味いカクテルとなる。こりゃ、どんなマリアージュも及ばない、究極の愛のカクテルだ。
こりゃぁ、今度真面目にお願いして、マジでミキシング・グラスを使って作らせてもらおう。
と、俺が愛の蜜を貪りまくっていると、「ち、ちくしょぉぉぉぉっ!」っと「いつもいつも俺を出し抜きやがってぇっ、このエロ野郎ォォォっ!」っとベジータばりに怒髪天を衝くリス公の、何かがブッチブチと切れまくってしまって──、
「キキキキキキィィィッ!」っとエロバインではなく?! 俺(本体の)に、というか本体のジョニーに飛びかかろうとぉぉぉっ──、
「ちょっ、ま、まてっ、リス公、やべっ、ウェンディに見つかっちまうっちゅーねんっ! おいっ! 落ちつけぇぇぇっ──」
とすかさずエロバインで止めようとしたがぁぁぁぁ──、
やべぇぇぇっ、間に合わねぇっ──、
と思ったその刹那──、
カチャンッ──、と、音が響く。
「んっ、あんっ、マスター、求められるのは嬉しいけど、でも、そんなにしたらお料理が出来ないわ。もう少しで完成するから、お願いだから大人しくテーブルで待っててくれるかしら」
と、色っぽくも優しく俺を窘めるウェンディ。
あっ、なんだ、──ウェンディが菜箸を落としたのだった。
ハッと我に返り、再び椅子の影に隠れるリス公。
ふぅ──。やべぇ、やべぇ──。マジでヤバかったっ。ウェンディに見つかるのもそうだが、あの鋭い前歯でガチンとジョニーをやられたらと思うと──、と考えるが早いか、ジョニーはすでに、引き潮で海中から出たイソギンチャクのように縮こまり、全力防御の構え(縮み上がり)であった。
「はーいっ! わかったよん」
と最後に一際大きくジュルジュルと蜜をすすって、ぐはっと手で口を拭い、それから俺は立ち上がった。
軽く「チュッ」とウェンディとキスを交わして、テーブルに戻る。
いやしかし、あぶないところだったぜい。ったくリス公めっ! 所詮は小動物風情だなっ。飛びかかるとしか能がねえっ、てめぇはそこで大人しくしてなっ! これからウェンディの手料理を堪能する、スペシャルエロエロディナータイムなんだからなっ!
奴が無茶しねぇように、エロバインでキッチリ監視してなくてはな。てか、そもそも今夜はこんな事態を想定していなかったから、戦闘用装備は一切換装してないし、冷静に考えて、やべぇなぁ。やっぱ、作戦本部の彼女(ティル)に救援を依頼するか──。
しかしだ、今夜ウェンディとの夜なのだ。俺の変態紳士としての恋愛ルールでは、他の精霊を呼ぶなんて御法度。
俺はとりあえず席について、グラスにティオペペを手酌で注ぎ、クイっと一口飲む。
そしておもむろに、テーブルにあったクルミを──、てか、クルミとかハシバミの実とか、何でこんなにいっぱい盛ってあんだ?
まあ、いい。とにかくそれらのナッツ類をひとつまみ、テーブルの下のリス公に向かって放り投げた。
もちろん、指先に残っていたウェンディのエロ蜜を少しクルミに塗り付けるのも忘れずに。
そして、「リス公め、それでも食って大人しくしてろっ!」というジェスチャーを、奴に向かってエロバインでして見せたのだった。ウェンディに免じて、後生だっつうことで、今夜は特別だから、彼女のエロ蜜もつけてやったんだからな、大人しくしてろっ!
これから大切なエロエロディナータイムだ。こんな小動物風情と遊んでなんかいられねえっつーの。
ジョニーも「うんうん」と、そのいきり立った巨体をピクンピクンと震わせた。
ほどなく、麗しの声が俺の耳に届く。
その情報は脳へ伝達され、すぐさま俺の全身へと、電気信号というよりま、まるでスパークするプラズマのように怒涛の稲妻となって流れ、その愛のお知らせを体の隅々まで伝えられる。俺は、愛を実感する。
俺はどっぷりと、この世の深淵ともとれる幸福感に満たされたのである。
「マスター、お待たせしたわ。完成よ。今夜の、あなたのためのスペシャルディナー。お誕生日おめでとう、マスター」
「うん。ありがとう。ウェンディ」
その時の彼女の微笑みは、本当に忘れられない。
たぶんそれは、俺にしか分からないかもしれないが、その時のウェンディの笑顔は、本当にかけがえのないものであった。そんな彼女を見つめて、俺は、俺の中で何かが変わるのを感じた。それはまるで、今まで知らなかった人生の秘密、そう、秘密の階段のようなものであった。俺はここで今まさに、一つ登れたのだ。漢として。
ウェンディは俺の元に来て、一枚の綺麗なリーフレットのようなものを差し出した。
「ん?」
「どうぞ」
それは──、
マスターの低カロリーお誕生日スペシャルディナー
❀❀お品書き❀❀
❀前菜(アンティパスト) 真鯛のカルパッチョ活造り風
❀パスタ(プリモピアット) 堅豆腐とナスのボロネーゼ(パスタとこんにゃくパスタのハーフ&ハーフ)
❀主菜(セコンドピアット) アワビのステーキwith白子のソース仕立て濃厚バルサミコ
❀副菜サラダ(コントルノ) ルッコラとフルーツトマト&モッツァレラチーズのオリーブオイルサラダ
❀ふわふわ&しっとりフォッカチャ(チーズは無しよ♡)
❀エスプレッソwithハニー(ドルチェは無しよ♡)
❀さて、食後のデザートは何かしら?
おおおおおっ! こ、これはぁぁっ!!
なんだか、本格的なイタリアンじゃねぇかっ! すげぇぇぇっ!
しかもメタボな俺に配慮して、チーズとデザートは無しってぇぇっ、嬉しいやら悲しいやら、チョコやカリントウを肴にして酒が飲めるほどの甘いモノ好きで、かつ無類のチーズ好きでもあるのにぃぃっ。
でも、お情けで、低カロリーのモッツァレラをサラダに使ってくれたんだ。うぅぅ、ウェンディィィ。
「うぉぉぉぉっ! なんだか本格的で、すごくね?! ウェンディ!」
「でも、元プロのマスターのお口にあうかしらね」
「なになに、俺なんて、なんちゃってだから。ウェンディの作るお料理ってだけで、もうほっぺた落ちまくりで、ビンビンになっちまうちゅーのっ!」
「もうっ、また変なこと言って」
「さぁ、早速食おうぜっ! やっぱウェンディはよくわかってるなぁ。俺が魚介類が好きって言ったから、メインはアワビで、しかも白子のソースってっ! なんちゅーエロい組み合わせだっ! エロ美味そうじゃねぇかぁ! いやぁ、白ワイン選んでおいてよかったぜいっ! 今夜は俺ってば、ちょうど辛口のシャブリが飲みたい気分だったんだからね」
俺は、食糧庫の地下のワインセラーから吟味に吟味を重ねて選んだシャブリを、氷のぎっしり詰まったワインクーラーから持ち上げてみせた。
「マスターのエッチな思考が少し伝染してしまったのかもしれないわ。変なものね」
少しはにかむように微笑むクールビューティーが、「おうぅっ」と叫びたくなるほど愛おしい。熱いモノが俺の心を、ジョニーを、ギンギンに直撃する。
さあさあさあ、食うぜぇっ!
「さあさあ、ウェンディ、もう料理全部仕上げちまって。ま、コース料理だけど、いちいち席立って仕上げ調理して出すのも面倒だろうし、一気に全部テーブルに並べてガツガツ食おうぜっ! さあさあ」
「もう、せっかちなんだから、マスターは」
「いいじゃん、いいじゃん、もう食べたくてたまんねぇんだ! ディナーもウェンディもっ! 貪っちゃうぜぇっ!」
と俺はウェンディを急かして、そして今度は俺が給仕役のように、せっせとお料理をテーブルに運ぶ。ナプキンにフォークとナイフと、そして俺はやっぱ箸で食うのが好きなんでぇ──。
テーブルはもちろん対面でセットするのではなく、角にお互いが直角になるように配置し座るのがいい。ってか俺はそれが好きなのだ。
ちなみに、恋人同士のディナーで対面式の食事は御法度。真正面で向き合うと、人間というものは緊張してしまうからだ。緊張すると正直にはなれないし、うまく自分を出せない。リラックスしないと面白い会話も出来ないのだ。そしてなにより、エロモードにもっていきにくいっ! ここ重要! だから、これは多くの漢達に伝えたい。
※重要!!
デートでの食事は、カウンター席で横に並んでが望ましいっ! 本音で語り合えるはず。表面的なカッコよさだけを気にしたうわべトークだと、到底エロモードにはいかないのだ。本音だからこそ、エロくなれるっ! これは、初デートならなおさらだ。例えば、寿司とか焼き鳥屋とかがよいかなぁ。もうつきあい始めて一年以上のカップルなら(チョメチョメ回数100回以上なら)対面式でフレンチ、イタリアンでもどんなスタイルでもいいけどねぇ。
なんてぇ、『精霊ちゃんとデート完全攻略マニュアル』でも読んだのかっ! このエロメタボがっ! って突っ込まれそうなほどの、偉そうな能書きを垂れ流してしまった俺だが──、ジョニーはもう男の我慢汁を、ゴハンを前にお預けを食らったバカ犬がよだれたらすがごとく垂れ流す。
そして、俺はソムリエナイフで得意げにジャブリを開ける。
コットコットコットと、心地よい音を響かせて注がれる辛口の白ワイン、シャブリ。
「どうしてそんなテーブルの角に? マスター」
「だって、こうやって座ると、ウェンディを間近で見つめられるし、食事の最中でも、手を伸ばせばすぐ触れることも出来るだろ」
「マスターらしいわね。エッチなんだから。恰好もこのままじゃないとダメなのかしら」
「そうだよ、ウェンディ。今度はエプロンも取って」
「お互いに下が丸見えだわ」
「だからいいんじゃないか。さぁっ!」
俺はウェンディをお姫様のようにエスコートする。
椅子を引いて座ってもらい、グラスにシャブリを注ぐ。コットコットコットと注がれる音に呼応するかのように、ジョニーのやつがピクンピクンと跳ねる。まったく、イタズラ坊主が。
それを見てウェンディが微笑み、ジョニーの亀頭を優しく撫でる。おぅふっ!
そして、俺も席につく。
「ウェンディ、そんなにちょこんとお行儀よく座るのも可愛いけど、今夜は特別の夜だろ? さぁ、こうして──」
と俺はウエンディのおみ足をグイッと持ち上げ、ちょうど彼女の太もも(俺よりもはるかに長いおみ足)が俺の太ももに乗っかるように、つまり大股開きにさせた。
「はぅっ、こんな、大股開きで座らせるの? はしたないし、恥ずかしいわ」
「でもとってもエロ可愛いよ、ウェンディ。それにずっとお互いの脚を絡ませながら食事すんのも、ええやろう、これ。ウェンディかて、ずっと触れ合っていたいって、さっきゆーとったやん、なぁ、ええやろう?」ってか、すーみーみたく調子のええことゆーとるな俺。
この時、頬をほんのり赤らめるウェンデイを俺は見つめつつ、テーブルの下で目を見開いて呆然と、或は驚愕か、刺激が強すぎて心臓発作、俗に言うキュン死してしまったのか、勃起さながら屹立している奴を俺は見逃さなかった。そう、リス公である。彼奴奴、ウェンディのチョメチョメをここまではっきりくっきり生で見るのは初めてかっ? どんだ大サービスになってしまったなぁ。ま、冥土の土産にでもするがいい。この後の勝負でお前を必ず仕留めるのだからなぁっ!
「わかったわ。マスターがこうしたいのならいいわよ。今夜はマスターのしたいこと、私は何でも叶えるつもりで覚悟を決めているの」
「覚悟て、そんな俺、アレか、強烈なんかな」
「そうよ。マスターは女の子にとって強烈に恥ずかしいこと、いつもするんだから」
「いやぁ、ウェンディにそんな褒められると嬉しいなぁ」なぁ、ジョニーよ。
「褒めてないわ」
「でもね、ウェンディ。俺のしたいことを何でも叶えてくれるのはとっても嬉しいけど、ウェンディはどうなん? こうやって、脚を絡めて、お互いにベタベタとイチャイチャしながらのディナーって、どう? イヤ? それとも、もし、あれなら──」
と言いかけて、俺は最後まで言うのをやめて待った。すると彼女は、俺をまたその透き通るような美しい眼差しでジッと見つめ、ほんのり唇をムフッと弓なりにさせ、クールに微笑みながら言った。
「好きよ。──私もこうやってマスターとエッチなスキンシップしたいわ」
そう言って、彼女は俺の手をとり胸に当てた。
「本当は、私、マスターとどこまでも行ってみたいの。あなたといると私、とてもドキドキして、たまらなくなるの」
「俺も、ウェンディを見つめるとドキドキするよ。心も股間も」
「あなたといると、本当の自分をさらけ出せるの。みんなが思っているような、静かで大人しくて真面目なだけじゃない、私もまだ知らない、本当の自分を」
俺は無言でうなずいた。
そして、俺とウェンディは口づけを交わし、チンッとグラスを合わせ、乾杯した。
「お誕生日おめでとうマスター」
「おうよっ! さぁ、食うぞぉぉぉっ!」
ジョニーも大喜びでビクンビクンと跳ねるっ!
この時、俺とウェンディはまさに初夜の契前の新婚さんのように、すべてがバラ色の幸せに包まれていたのだが、そんな二人を、ベジータ或はザブングル加藤氏以上の悔しさでもって、その漆黒の瞳を更にどす黒くして睨みつけ、斜に構えてクルミを齧る、一匹の小野獣の存在を、俺は無視することは出来なかった。
流石、元ストーカーのリス公、その粘着質の眼差しは、食らいついたら離さない異様な威圧感と異常性を宿していた。
そう、奴がいる限り俺とウェンディの本当の幸せは訪れない。ディナーの最中ひと時も警戒を怠れないな。そうだろ、ジョニーよ。
ウェンディは絶対に渡さないっ! 俺は、ジョニーと暴れる鰻と心の奥底のリビドーの泉にそう誓った。
そしてジョニーは、リス公を威嚇するようにビクンビクンと漢の我慢汁をまき散らし、大きく跳ねるのであったっ!