※この作品はR-18です。

「精霊と日本一うゎぁーな男の自由すぎる冒険日誌」   作:めがねモエ

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前篇「ウェンディーはピロートークがお好き」の巻、その7

    前篇「ウェンディーはピロートークがお好き」の巻、その7

 

 

「今夜はマスターの子供の頃の話を聞かせて。マスターってどんな子だったの?」

 

 これは恋人同士にとって、とても純粋かつ素朴な質問で、ある意味定番ともいうべきやりとりだと思う。お互いの過去や子供時代の話ほど、単純明快で想像するに容易く、相手を理解するうえでまず最初に知っておくべき最良のファクターは他にないだろう。そして一番重要なのは、なにより楽しい。

 

 俺は精霊界に来てもう一年になる。

 だが、果たして俺は彼女達をどれほど理解しただろうか。

 

 彼女達は基本的に寛大であり、男心がすっぽりと軽く収まってしまうほどに懐が深い。このダンプリ世界にいると、俺はまるで有袋動物の赤ちゃんのように、そのお腹の袋に、まさに愛情に包まれるようにしっぽりと抱きしめられているようだ。

 

 常日頃、救世主だのマスターだの、まさにハーレム系漫画の主人公のように女の子に囲まれ(とは言え、カワイ子ちゃん達に囲まれながらも、全く手が出せず、あせあせ、おどおどとする阿呆なステレオタイプ的主人公野郎とは一線を画する。俺は違うっ! 断じて!)ともすれば、あれやこれや、イチャイチャ、チョメチョメと、手を伸ばせばすぐに乙女の柔肌に触れられ、もみしだき、ペロペロちゅっちゅとやれるわけだが──、

 

 それは、この俺がただただ、唯一無二の存在ともいうべき、この世界を救うための精霊達のエネルギー供給源、いわば救国のホルモンタンクになっているからだけなのか。

 

 ダンプリ界にとって、精霊達にとって、その能力を引き出す「特別のナニか」を俺が持っているからだけなのだろうか。

 

 もしこの俺にそんな特別の力がなければ──、もし──、もしこの俺が変態紳士でなかったならば。

 

 そうつまり、ただのムッツリスケベ程度の、──例えば各クラスのナンバーワン美少女の体操着を盗んで、嗅いで、かぶって、使って、汚して、そして返さず、記念としてコレクションする不届き者のエロ男、そんな変態の風上に置けないレベル程度の奴だったら──、

 てか、真の変態紳士ならば、正々堂々とクラスのナンバーワン女子相手に(というか本気で恋した女子に!)、熱き漢の愛の告白を、きっちり夏休み前にして、そしてフラれたらならば(てか、十中八九フラれるのだが)、渾身の漢の土下座でもって、「その麗しの愛を下さらないならばせめてっ! 古くなった体操着或はサイズの小さくなった制服を、この無様な俺に何卒、慈悲の心でもって、お恵み下さいませっ! マイラブリー女神さまっ!」っと懇願に懇願しまくって、なんとかオフィシャルに清く正しく譲り受けるものであるっ!

 そしてモチのロン、実際に譲り受けるとき、体操着も制服も、一度授業で少なくとも一時限以上は着てもらってから、絶対に洗濯せずにそのまま手渡ししてもらうという絶対条件を確約しておくことは、言うまでもないだろう。

 

 さらにはモチのロン、とはいえそもそも乙女が自らのフェロモンを染みこませた体操着やセーラーを、そう易々と譲ってくれるわけはない。そもそも恥ずかしいに決まっている。もしそんなことを大っぴらにやってのけたならば、それこそその乙女は次の日から「ブルセラ〇〇」とあだ名がついてしまうこと間違いないっ! 俺のせいで屈辱の称号を授与されるわけだ。だからそうならないように、譲り受ける約束も、表向きは断られたとして裏で秘密裏に交わすのである。その際、これまたモチのロン、ミシュラン三ツ星級有名店の極上スイーツなどを袖の下として使うのは、もはや常套手段である。

 

 ここまでで、乙女のブルセラ入手大作戦! その極意を語ってしまったわけだが、実はこの極意、ブルセラ以上に重要なことを内包してるっ! もちろん乙女のブルセラは何物にも代えがたいお宝、プライスレスだが、だがしかしっ! 最も重要なことは、フラれたとしても最愛の乙女と、二人だけの「約束&秘密」を交わすことにあるのだっ! 

 

 男女間において、約束を交わすこと、そしてさらにはその上位レベルのファクターである、秘密を共有することは、これ非常に重要っ! もはや口説き落とす上での必須条件、あるいは登竜門といっても過言では無いだろう。そう、約束が親しくなるファーストステップならば、秘密は一気に距離を縮めるがぶり寄りであり、恋愛の魔法の呪文、あるいは、悪い言い方をすれば呪縛にもなりうるのだ。

 てか、まあフラれているわけだから、なにをこのメタボは言っとんだと思うかもしれないが、男女間において、二人だけの秘密を共有することは、そこだけは何者にも不可侵なアンタッチャブルな絆、そして延いては腐れ縁にもなってしまうということなのだ。だから、現状ではフラれたとしても中学、高校、大学、社会人と人生のステップを歩みながらも、その縁は永遠に途切れることはなく、つまり、その乙女とその後、なんとなぁーくも、ずーっと縁は続いていくことになるのであるっ! 素晴らしいではないかっ!

 

 つまりは、その後チャンスは幾らでもあるということなのだっ! これでいいのだぁっ!

 

 って、あれ──、

 いささか話が逸れまくってしまったが──、 

 

 話を戻して、極論として、俺から変態を取ってしまえば、たぶんなにも残らない──。

 

 だがしかし! 変態ではない俺は、そもそも俺ではないのだ!

 

 そう、そもそも俺でなかったらでは話にならない。たらればの思考は、その逆も或は裏も結局は無意味なのだ。

 

 そう考えてみると、──今はただ、なにも小難しく頭を捻ることはせず、俺はこの精霊達との出逢いに黙然と万謝すればいいだけなのかもしれない。

 

 ──とはいえだ、では俺自身は、目の前のウェンディやその他多くの精霊ちゃん達を、どれほど理解しているというのだろうか。

 

 現実の俺の世界であっても、漢は女を、女は漢を、一体どれだけ理解しているというのか。

 

 ──いや、まてまて、そんな一般論なんて、自分に当てはまらなければてんで意味はないな。

 

 きっと大切なのは、己がいま目の前にいる相手をどれだけ理解しているか、というよりも、どれだけ理解したいと考えているか、望んでいるか、なのかもしれないな。

 

 俺は、ウェンディをもっともっと深く深く、チョメに深く深くグリグリとジョニーを突き押すのと同じくらいに、激しく正しく誠実に理解したい。そして俺のことももっともっと深く、日本海溝よりも深く、一か月溜めこんだ黄色い漢汁よりも濃く、理解して欲しい。願わくば。

 

 なんて俺は、ピクピックンピクピックンと幸福の地に屹立しているジョニーを、その優しい眼差しで、そしてその白魚のお手手でもってナデナデしているウェンディを見つめながら、しみじみと考えた。大股開きで、チョメチョメ全開&エロ蜜ドロリの状態で、品よくワイングラスを傾け、シャブリをそっと味わいながらの、クールビューティーな女神さまのウェンディを。

 

 ──だが、今はこんなセンチに、酒と泪と漢と女について、思いを巡らせている場合では──、

 

「忘れてぇしまいたいぃ事やぁ~♪ どうしようもないぃ寂しさにぃ~♪ 包まれたぁ時にぃ漢はぁ~♪ エロ本を♪ 読むぅのでしょ~♪ ヌイてぇ~♪ ヌイてぇ~♪ ヌカれてぇ~♪ ヌイてぇ~♪ ヌイてぇヌキ疲れて眠るまでぇヌイてぇ♪ やぁがてぇ漢はぁ~♪ 静かにぃ眠るのぉでしょう♪」

 

 と、俺は心で呟いた。

 

 リス公よ、この勝負が終わったら──。

 

 テーブルの上では、ウェンディにジョニーをナデナデ&ネトネトと漢の我慢汁の糸を引かれて弄ばれて、下では、じりじりと間合いを詰めつつ&睨みつつ、リス公と対峙している俺。まさに、漢と雄の乙女(雌)をめぐる睨み合いの殺気が、沸々とマグマのように渦巻いていた。己の漢(雄)をかけたエロ本能のぶつかり合いだった。

 

 いや違うな、今は四の五の考えてる暇はねぇ、どうヤルか、どうヌクか、それだけだっ!

 

 俺はグイッとシャブリをやって、トンッと威勢よくグラスをテーブルに置いた。

 

「俺は、物心ついたときには盛り場にいた。俺を育ててくれた女郎屋のおっさんは、腰の振り方以外何も教えちゃくれなかった──、俺にはこいつしかなかったんだ」

 っと、俺は前方にそそり立つようにジョニーをグッと掴んだ。

 

「マスター?」

 俺は軽くフッと息を吐いた。

「先にイキたかねぇさ。だけど、ただ先にイキたかねぇってだけで、ただ、腰を振りまわすしか知らねぇってだけで、俺はチョメチョメをやってきたんだ。そして何より、一番肝心なチョメチョメする理由(愛)ってやつを、俺は下心に預けようとしてたのかもしれねぇ」

「マスター?」

「フッ、あぁあっ、しまんねぇよなぁ」

「マ、マスター? まさか──」

 

 クククっと笑うかのように、ピクピクと跳ねるジョニー。

 

「と、いうのは、真っ赤な嘘ぴょんっ」

 と、勢いよくお茶目に言って、俺はまた得意のテヘペロを決めた。

 

 そう、これは俺の師匠、「黒い剣士」──ではなく、「黒光りのディック」との異名を持つ、アンドレ・ザ・ドスカラス・ブギーナイツ師匠の生い立ち。──だったっけかな? あれ?

 

「でもまぁ冗談はさておきとしてもや、実際、似たようなもんかな。俺は大阪で生まれた。新人類、ジェネレーションx、団塊ジュニア世代、なんて色々呼ばれた世代だ。その世代はめちゃくちゃ出生数が高くて、つまり同世代の人口が多い訳だ。だからすべてが競争、いわゆる競争社会、勝ち組やら負け組と線引きされる社会の原点さ。それはすなわち戦争だった。落ちこぼれ、ツッパリ、暴走族、ヤンキー、引きこもり、非行少年、イジメ問題、校内暴力、家庭内暴力、ビー・バップ・ハイスクール、ろくでなしBLUES、湘南爆走族、スクールウォーズ、15の夜、ドラゴンクエスト、ストリートファイター、受験戦争、就職戦争、一年戦争、ア・バオア・クー、風雲!たけし城、ふぞろいの林檎たち、男女7人夏物語、バブル崩壊、オレオレ詐欺等々、──様々な戦いがあった。少年時代、思春期、青春、キャンパスライフ、成人とそれらの戦いを潜り抜けてきたんだ。俺は」

 と、ややドヤ顔気味の俺ってば。

「マスター」

 ジョニーをナデナデしていたお手手を止めて、キュッと優しく亀頭を掴むウェンディ。

 って、その柔掴み、おぅふっ!

「この世界しか知らない精霊の私には、想像もつかないことかもしれないけれど──」

「でも、マスターのもといた世界も、妖魔との戦いのように、いやそれ以上に、悪意と憎悪渦巻く混沌とした、それこそ退廃と無秩序がお風呂場のタイルの目地に浸透したしつこいカビ汚れのように、どうしようもないほど蔓延してしまった大変な世界だったのね。そんなに多くのヒドイ争いがあったなんて──」

 

 おーいっ! てか、なんちゅう真面目&深刻すぎる反応っ! ウェンディィッ!

 

「い、いや、そんな深刻なもんでもないんだけど、てか、お風呂場のカビて──」

 しかし、彼女はジョニーの頭をひしと握りしめ、真剣な眼差しで俺を見据える。

「いいえマスター、──いつも明るく振舞って、笑わせて、周りを和ませて、妖魔との戦闘に疲れた私たち精霊を癒してくれて──、でも、ほんとうに心身共に疲れて、疲れ果てていたのは、マスターのほうなのね! だからこんなにも強烈にド変態に、肉体の交わりを求めて──」

「ぶっふぅーっ! いやいやいや、わしゃストレス性性依存症かっ!」

 っと突っ込むと、ほんのりムフッと口元に笑みを浮かべる女神さま。

「フフフッ、冗談よ、マスター」

「どぉぉぉーっ!」

 まったくっ! 可愛らしいのぉっ! こん畜生っ! 

 そんなクールビューティー顔でお茶目さんをやられると、まじやべぇわ。やられるわぁ──。

「ほんとは精霊界にも似たような社会問題はあるわ。一部の精霊の、いわゆるイジメ問題はマスターも聞いているでしょう?」

「あぁ、まぁ──」

 レスアとかのことかな。

「でも、一般的に精霊達はみんな争い事が好きではないの。だからちょっとした誤解が原因で、それを解けば解決することが多いわね。みんな平和が大好きなの。心安らぐ癒しの世界をみんなが目指しているのよ。この理念は、どの精霊にも共通するゆるぎないものだわ」

「なるほど。だから精霊ちゃん達はみな根っこのところで寛大なのかな」

 それに比べて人間ときたら──。

「せやねぇ、まぁ、大袈裟ではないけど、俺の元いた世界はね、例えば目玉焼き一つとっても、醤油で食べるかソースで食べるか、或は塩コショウか、それはもう永遠に終わらない三つ巴の論戦になるからねぇ」

「フフ、でもなんだか、可愛らしい議論ね。ちなみにマスターはなに派なの?」

「え? あぁ、俺はなんだっていいよ。そこにあるもので食う。その時その場所で、俺と目玉焼きと調味料、これも一期一会だっ!」

「なんだかとてもマスターらしいわ」

 とても麗しい笑みを浮かべたウェンディ。おぅふっ!

 

 あぁ──、

 その麗しの微笑みと、その大股開きのエロ蜜滴るチョメチョメと、そのアンビバレントな美の共演が、もはや神秘的ともいうべきエロ可愛さであった。

 

 俺はなんだか嬉しくなって、ワイングラスを手に取り、チンッと乾杯のようにウェンディのグラスに当てた。

「フフ、なに? それ、マスター」

「いや、いいんだ」

 心の琴線に触れた響きを表現してみました。なんちってぇ──。

 

「うむ、せやねぇ、ま、もう少しホンマの俺の話をするとやなぁ、──実際、俺の家庭も複雑で、オヤジは3日に一度しか帰ってこえへんような荒くれ者やったよ。だからほとんど母子家庭みたいなもんや。ちょいワルおやじ、てか、ダメおやじ? の生きざま以外、何も教えちゃくれなかったのさ。これホンマ。でもまあ、そんな深刻な雰囲気ではなかったけど」

 

 しかし、家族は──、おかんもオヤジも、あと俺の大切なマイラブリー妹のケメ子も、元気でやってるかなぁ──。

 ホンマ、たまには実家に顔出さなあかんかなぁ。しかし、正月とか帰省できんのかな。そういえば、そういうことティルに聞いたことがなかったなぁ。と、改めて今の俺の立場について考えてしまった。

 ってか、今頃かっ! このダンプリ世界にきて一年たつっちゅーねん。俺ってば。

 

「でも、マスターはきっとお母さんの愛情をたっぷりともらったのよね」

「えっ?! なんで? ──さぁ、どうだかなぁ──」

「うんん、きっとそうなのよ。マスターは」

「えええ? なんでぇ?」

「だって、マスターはこんなにもまっすぐで、自分の気持ちをまるで隠すことなく、とても素直に表現できる人だからよ。ぶちまけるほどにね」

「ほぉ、──ほぉ?」

「それはね、きっと、マスターが人を信頼できる人だからなの。──人は、幼い頃にお母様からたっぷり愛情をもらって育っていないと、──他人を信用することなんてできないわ。──できなくなってしまうものなの」

「ほぉー、愛情ねぇ──」

「幼い頃に愛情をもらうことで、人に対する愛や、寛容、信頼を学ぶんだと思うわ、人というものは。そしてそのもらった愛情と同じ分だけしか、人は人に愛情を注げないの。母の愛は無上だから」

「ほっほぉー、母から受ける愛が、その人の愛の、つまり色んな意味でリミットになっとるってぇ、ことなん?」

「だからお母さんというのは、とても重要な存在なのよ。つまりは女というものはね」

「じゃぁ、おかんがいなければ?」

「お父さんでも同じことよ、愛情は。」

「じゃ、オヤジもいなければ?」

「育ての親でも、同じことよ」

 なるほど、とにかく幼少期に育ててくれる人か。

「でも、俺がなにも隠さず素直でいられるのは、俺が心底愛するウェンディだからかもしれないよ。そんなウェンディやから──」

「でも、恋愛感情があっても、──ほんとに人として心を通わせるには、人を信頼するという人間関係の本質的な愛が必要だわ。母親または父でも、その愛情をもらわずに育った人は──、だから、好きな人にも素直になれないのよ」

「ふむ、──それは、──不幸だな」

 ま、ツンデレってやつ? でもツンデレも、二人きりになったり、打ち解けてくるとデレるわけで──。

 ツンドラちゃんか?

「てか、ウェンディちゃん? まるで心理学者のようやわぁ。そのクールビューティーそのままに、ほんとに難しいこと考えてるんやねぇ。俺ってば、そんなこと、これっぽっちも考えたことなかったよ。俺の人間関係のアンテナは、基本ジョニーの担当やからねぇ。俺の場合、こいつのビビットな反応で決まるな。何事も」

 と言うと、ジョニーはこれ見よがしに、誇らしげにピクッと跳ねやがった。

 

「マスターは、まったく意識せずに、ほんとに自然にありのままでいられるから──」

 と再び、その誇らしげにそそり立つジョニーを撫でるウェンディ。おぅふっ!

「しかし、そうなれば、めちゃめちゃ寛大で慈愛の女神のようなウェンディも、きっと愛情をたっぷりに──」

「私は、少し大きくなってから、──学んだことよ。めいいっぱい意識して、ようやくできること。頭では分かっていても──」

 どこか話を途中で切ったような物言いで、そっとワイングラスに口を付ける彼女。

 それって──。

 俺もシャブリをコクっと一口飲んだ。

 

 彼女の過去や、生い立ち、青春時代の恋やら。俺の知らないことはいっぱいだ。そして、俺が彼女と初めてチョメチョメした時、そう、彼女は初体験ではなかった──。

 俺のチームの精霊ちゃん達は、全体として初体験の娘が多かったが──。

 

 って、俺ってば、初めてのお相手になれなかったことに嫉妬してるのかっ!

 なんてケツの穴の小さいっ! 漢の独占欲&征服欲ってやつか、初めての相手だろうが、そうでなかろうが、そんな事いいじゃねぇかっ! 今の彼女が俺をまっすぐに見てくれれば、それでいいじゃねぇかっ!

 

 とまぁ、頭ではわかっててもねぇ、やはりウェンディちゃんの初恋の相手や、ファーストキスの相手とか、そりゃあぁ気になるっちゅーねんっ! マジで。 ああそりゃそうさっ! だって、「お と こ だ も の」ってやつだ。

正直、些か情けない。

 

 あれ? 俺もなんだかんだ言って、オツムではわかってても、割り切れない心ってやつ、あるわなぁ。

 ウェンディちゃんよ。不肖この俺も、キミがいうほど心のすべてが自由奔放で器の大きな漢じゃないぜよ。

 

 「またひとつぅ♪ 女の方がぁ♪ 偉くぅ思えてぇ来たぁ♪ またひとつぅ♪ 漢のぉ♪ ずるさがぁ♪ 見えてぇきたぁ♪ 俺はぁ漢ぉ♪ 考え通すなんてぇ♪ できないよぉ♪ 今夜もぉエロ本をぉめくってぇ♪ 眠ってぇしまぁうのさぁ♪ 俺はぁ漢ぉ♪ 泪はぁみせられぇないものぉ♪ ヌイてぇ~♪ ヌイてぇ~♪ ヌカれてぇ~♪ ヌイてぇ~♪ ヌイてぇ~♪ ヌキ疲れて眠るまでぇヌイてぇ♪ やぁがてぇ漢はぁ~♪ 静かにぃ眠るのぉでしょう♪」

 っと、俺は心で唄った。

 

 ウェンディ、ここはほんの少し掘り下げて話を深めるべきか──、あるいは──、いや、そう急ぐな俺。今日はウェンディが俺の話を聞きたいと、そう言っているんだ。だから、ウェンディが話したい範囲で、そっと聞いてあげるにとどめよう──。時間はこれからも、まだあるのだから。

 

 俺は手酌でシャブリをグラスにドボドボ注ぎ、そしてグイッと威勢よくやった。

「ぷはぁーっ! せやねぇ、やっぱり、ウェンディちゃんの初恋の相手とか、やっぱ気になるなぁ。どんなイケメンやったんやろうかなぁ。そんな少女時代のウェンディちゃんと出会えて、青春期を少女ウェンディちゃんの傍で歩めた漢どもに、俺ってば、ちょっと嫉妬やねぇ。そうや、もしこの俺がウェンディちゃんの幼馴染やったら、もうそりゃ、誰にも指一本触れさせへんとこやったんやけどなぁ──。他の糞エロ野郎どもは誰も5メートル以内には近づけさせへんでぇ、マジで。あぁ、少女ウェンディちゃんてぇ、めちゃ可愛いぃ──てか、今も可愛いけどね──ちょーめちゃめちゃ可憐な少女やったんやろなぁ──」

 

 たぶん、嫉妬心をかき消すためだろうか、俺は俺らしくもなくつまらんことをべらべらとじゃべり続けた。

 うぅぅ、情けない──。

 流石のジョニーもややこうべ垂れ始めやがった。てか、こういう時こそ胸を、裏筋を張れっ! ギンギンに!

 

「私にはとっても歳の離れた兄と、とっても歳の離れた弟がいたの。だから、極端な言い方をすると、一人っ子みたいな環境だったわ。私も、そうね、近所にマスターのような幼馴染がいたら、よかったわ。うん。きっと。いつも元気な幼馴染の男の子。きっと、まったく違った子供時代を送ったと、そう思うわ」

 

「へぇー、そっかぁー、いや、なんか、意外。でも、ウェンディちゃんもそう言ってくれるならばっ! よし! それじゃぁ、やり直そうか! 少年少女時代を。なんか魔法とかでなんとかならんかな? タイムマシンとか?」

 なんて都合の良いとこだけ、ダンプリのファンタジー世界に頼ってしまう俺。

 

「フフ、いくら精霊でも、時間と空間を操るなんて無理よ。でも、若返ることなら、魔力で──。でも、いけないわ。お互いに少年少女になってしまうなんて。だって、中身は今と同じだし、──マスターが、イケナイことしそうだし」

 ──てかっ!

「えぇ! 若返るとかっ! 出来んの?! うぉぉっ! それいいっ! てか、イケナイことってぇ、そんな、あれやて、そんな、お互いに少年少女の姿で、そんな、ストレートにモロにはねぇ、その、あれやこれや──、チョメチョメなんてぇねぇ──」

 と言いつつ、俺はめちゃアホ面でにやけているのが自分でも分かる。

 いやいやいや、それ、ええんちゃう? それめちゃ興奮するんちゃうぅ? やっべぇぇぇっ!!

 

「あれやて、その、ウェンディちゃんて、そりゃお医者さんごっこぐらいはぁ、したいやろ? ん?」

「いいえ。マスターのお医者さんごっこなんて、きっととんでもないレベルのお医者さんごっこで、ちょっとコワいわ」

「そんなことあらへんて、実際、妹のケメ子とガキの頃よくやったしぃ。それでも、そのケメ子もちゃんとした女の子に成長しよったし」

 と言いつつ俺は、アワビのステーキを一切れ、たっぷりと白子のソースと絡めて口に放り込んだ。

 うむぅっ! めちゃ美味、美味っ! 

「うぉぉ、この濃厚バルサミコソースと肉厚アワビのこりこり食感! そして、それを包むように白子ソースのクリーミーな風味が覆いかぶさって、混ざり合って、たまらんなぁっ! こりゃ、ウェンディのエロ蜜グッショリのチョメチョメのように甘美な逸品やでぇっ!」

 俺は更にもぐもぐと食い、ジャブリをグイグイとやった。

 

「シャブリとの相性もバッチリやなぁ、流石はウェンディちゃん! 俺ってば、こんな美味いもんも食えて、ホントに幸せ者やわぁっ!」

「マスター、堅豆腐とナスのボロネーゼの方はどう? 堅豆腐を沢山入れるから、少し味加減が難しかったの」

「お、おうおう、いくでぇ!」

 っと、俺はパスタも箸でぐわっとつかみ、サイコロ状にカットされた堅豆腐をよく絡めてハグッと口に放り込む。そして、まるでジブリアニメの食事シーンの躍動感さながら、もぐもぐと頬張る。

「これまたボロネーゼのソースの味が抜群にいいっ! それに、うんっ! 挽肉と堅豆腐の相性がまたええなぁっ! 豆腐がこんなにもパスタのよい具材になるなんてぇ、ホンマにウマ──」

 

 っと、得意の食レポを饒舌に締めくくろうとしたその刹那──、

 

 ぐぼぉぉっ!!

 

 俺の右わき腹を、深々とえぐるような重い衝撃が突き刺さった! 

 

 ぐぶぅぅぅっ!! 鼻孔からピロンっとパスタが、──バカボンパパの鼻毛のように伸びる! 「これでいいのだ」と言わんばかりに。ってか、よくねぇっ!

 

 その、ややコークスクリューがかかっていたとおぼしき、わき腹に手榴弾を押し付けて爆発させたような衝撃っ!

 

 そう奴の、憎いあんちくしょうたるリス公の速攻が俺(≒エロバイン)を襲ったのだったっ!

 

 常に奴を監視していたはずだったが、ウェンディとのラブラブディナートークで気が緩んだのか、その間隙をついて奴は、自慢の俊敏さを生かした鬼の速攻を仕掛けたのだった。

 

 俺としたことが、完全に抜かったぁっ! ウェンディの幼馴染だったらぁトークに、お互いに少年少女に若返ってからぁーのお医者さんごっこにぃっ、完全に気も漢のエロ心もお稲荷さんも緩み過ぎた。

 

 しかもましてや、戦いの最中に酒をグイグイやるなんて、酔拳の免許皆伝も受けていない俺が、ちとリス公を舐め過ぎたのだ。まさにコンマ数秒の、エロバインの索敵目力が緩んだところを、奴の漆黒の野獣の目、戦士の目は見逃さなかったのだった。

 そりゃそうだろう、こんなにまで、楽しそうにウェンディとぺちゃくちゃ&エロエロとやってるんだ。奴は絶対にそれを阻止してやるぞと、ずっとチャンスを伺っていたに違いない。

 

 その俊敏さを生かして、一気に前方へダッシュしたかと思うと、フッと視界から消え、そして俺の右側に回り込んでの、下からえぐるようなボディアッパー。まるであの力石徹のアッパーのような、己を限界にまで追い込んだ凄みを帯びた鋭さ。それをボディにっ! 俺の雪見大福と呼ばれた自慢のぽよぽよ太鼓腹の脇にぃっ! ──てか、エロバインはスリムボディだが──そんな事は関係ない。この小動物特有の猛ダッシュ、そう簡単には躱せない。

 

 ぶっふぅっー、ごほごほごほと咽る俺は、慌ててシャブリを飲み誤魔化す。ってか、もう酒はやるなっての、俺っ!

「どうしたの、マスター? 大丈夫?」

「あ、ああっ、だ、大丈夫大丈夫、ちっ、ちょっと、口に放り込み過ぎちゃった。あまりの美味しさに、がっつき過ぎちゃったんだよねぇ──、あははははっ!」

 と、またテヘペロで誤魔化すが、ちと苦しいか。しかし、もうリス公の野郎はとまらない。

 

 すかさず、さながら霊長類最強女子とうたわれる女子レスリング吉田沙保里選手の鋭いタックルのように、低く低く前方に猛ダッシュしてからぁーの、力石徹張りの強烈なボディアッパー! しかも連打で!

 俺は最初の一撃の苦痛に耐えながらも、慌ててスウェーバックで逃げる。が、ジョーのように躱せないぃっ! 奴の小動物特有の俊敏さを生かした攻撃は、もはや愛玩動物として常に人気上位のリスのそれではなかった。

 

 しかも右に左に自在に動き、併せて右わき腹左わき腹と鋭いボディアッパーを打ち込んでくる。

 俺の雪見大福はもはやサンドバックのように連打を食らい、ぷるるんゼリーのようにプルルンプルルンと揺れまくる。その連打を浴びつつも、ウェンディにはばれないようにディナーを続ける俺ってば──。

 

 って、出来るかぁーっ!!

 

 奴め、このエロエロディナーを俺にとっての悪夢のディナーにしてやろうと、わざとボディばかり狙ってやがるなっ! 食ったものを全て吐き出させて、そして、もう一口も食えないぃ、っとなるように。

 敵ながら、なんたる極悪な作戦。でも分かるぜその漢(雄)の強烈な嫉妬心をっ!

 しかし、まさかリス公の野郎がこんな突進&ラッシュラッシュのブルファイターだったとは。

 

 俺はなんとか距離をとって、ってか、もうほとんど逃げ回っているだけだった。無様に。

 てゆーかっ! これ以上ボディアッパーを食らって、楽しくディナーで談笑なんか出来るわけがねぇだろぉっ!

 

 だがしかしっ! このまま逃げ回ってても、リス公には勝てねぇんだっ!

 ちくしょうっ! どうすればっ──。俺はどうすればぁーっ! うぉぉぉぉっ!

 

 

 だが、──答えは案外あっさりと見つかった。

 

 そう、ジョニーもクククと笑うようにピクピク跳ねて、リビドーの泉も穏やかな噴水のように欲望に波打つ。暴れる鰻に至っては、楽勝と言わんばかりに料理を堪能するのに夢中で、気にも留めない。

 

 そうなのだ。

 この俺様は知っているのだ。この場合の有効な対処方法を!

 

 この「蝶のように舞い、鉢のように刺す」まるでモハメド・アリのような攻撃に対処する方法を! 伊達に団塊ジュニア世代ではない。そう、その答えは俺の敬愛するヒーロー、燃える闘魂ことアントニオ猪木氏がすでに闘いの中で、当時ガキンチョだった俺達に教えてくれていたじゃねぇかっ!

 

 あの格闘技世界一決定戦、伝説の異種格闘戦、アントニオ猪木VSモハメド・アリだ! そうこの時あみ出された技こそが、かの有名なアリキック!! ボクシングスタイルには、スライディング気味の寝ながらのローキックが絶対的に有効なのだっ! つまり、寝そべって戦えば、パンチを食らうことはないっ!

 

 俺は突進してくるリス公に公然と向かって、奴の低いダッシュの、その更に下を攻めるべく、スライディング気味の回し蹴りを繰り出したのだったっ!!

 

 いっけぇぇぇっ、ガキの頃に観て覚えた俺的アリキィックーッ!

 キキキキキィィィッー!

 

 勝負は一瞬──。

 

 その刹那、俺の脳裏にまさしく走馬燈のように、当時テレビにかじりついて観たアントニオ猪木氏の熱き一戦と、それとあともう一つ、アニメ「侍ジャイアンツ」に出てきた我らが阪神タイガースの助っ人外国人、ウルフチーフが繰り出すあの殺人スライディングが、鮮明に駆け巡ったっ!

 

 あぁ、俺は多くのヒーローから力をもらってるんだなぁ、しみじみ──。

 

 バチコンッ! と鈍い音が響いた。(注.ちっこいエロバインとリス公の戦いなので、基本的には大した音ではない)

 

 キュキキュゥゥゥーッ。

 

 俺的アリキック+殺人スライディングは見事に奴の左大腿部辺りにヒットしたのだった!

 そしてそれは、今この戦いの、まさにたった今、俺の必殺技の一つとして「俺的アリキック+殺人スライディング」が完成した瞬間でもあった。

 

 アントニオ猪木氏とウルフチーフの闘魂を元に編み出した必殺技。奇跡の闘魂マリアージュ。その重い一撃を食らったリス公は、もはや力なく「キュゥキキキュ」と呻き、その場でよろよろと倒れる。その漆黒の目も、やや白みがかってさえ見えた。

 

 てか、一撃で! 俺の必殺技の破壊力が凄まじいのか、それとも、リス公の耐久力が低すぎるのかっ!?

 奴はこちらを睨みながら、なにやら悪態をつくかのようにキィキィと言っている。泣き言か、或は文句を言っているのか──。どうやら後者の方が正解か──。

 

 ま、どうでもいいけど、流石小動物、打たれ弱っ!

 

「さて、お遊びは終わりだぁ! リス公っ!」

 っと、エロバインを通して俺は叫んだ。(注.ウェンディには聞こえない程度の声量で)

 

 俺は素早く近づき、無様に這いつくばる奴の背後をとった。いわゆるマウントである。

 そして、リス公の手と足を絡めて取って、そう、つまりはこれだぁっ!

 

 いくぜぇっ!! これがトドメだぁっ! アンドレ・ザ・ドスカラス・ブギーナイツ師匠直伝究極奥義っ!

 

 必殺っ!! ロメロスペシャルゥゥゥゥッ!!!

 

 オラァァァァァッ!!!!

 キュキュェェェェェッ!!

 

 と、俺(≒エロバイン)がリス公をぐるりんぱっと、後方に転がるようにして、天に向かって突き上げようとした、その刹那っ!!!!

 

 エロバイン(≒俺)の顔面に何かかぶち当たったぁっ!! (って、またかぁっ!)

 

 うぐはぁーっ!!!!

 

 思わずリス公を放してしまって、そして後方に吹っ飛ぶエロバイン(≒俺)。

 

 ちっ、ちくしょっ! なんだっ!? なにが起きやがったんだっ! まさか、俺のロメロスペシャルが破られたっ?!

 

 気が動顛する俺の目の前にコロコロと転がるものが──、それは、やたらと大振りのドングリであった。

 

 つまりは、それが俺の顔面を直撃したのだが──、何故っ! てか、どこからっ!

 

 俺の吹っ飛んだ方向、および顔面をめがけてドングリが飛来した角度等を計算し、エロバインのサーチアイが周囲を索敵する。

 

 すると──、俺とウェンディが座っている席の反対側の椅子の上にぃっ!! なんと、リス公が?! ふてぶてしくも仁王立ちしていた! 脇に大振りのドングリを数個抱えながら、その殺気漂う漆黒の目でこちらを睨み、不敵にまるでジョーカーのように口角を上げてニヤつきながら。まるで「ガンバの冒険」のラスボス、ノロイのように小動物の枠を超えたやさぐれオーラをまとって。

 

 なっ、何故だぁっ! いつの間にそんなところに、リス公の野郎っ!! 

 

 ──いやっ、ちょっとまて、いやいや、まてまてぇっ! よく見ると、俺が「俺的アリキック+殺人スライディング」で仕留めたリス公はまだ床に這いつくばっていた。

 

 ってことは、ナニィィィッ!!!

 

 リ、リス公がぁ、二匹だとぉぉぉぉ!!!!

 

 あっちもこっちもくるくると、行ったり来たり、二度見三度見してしまったが、間違いないっ!

 

 リス公が二匹いやがるっ!! しかもグルかっ! 何故なんだ、こいつら元々二匹だったのかっ!? それとも──、って、そんな事はもうどうでもいい。

 

 今あるのは、たった今から二対一で戦うことになったってこどだっ!!

 

 こいつは──、

 

 流石のジョニーも緊張したかのようにカッチンカチンに怒張し、暴れる鰻は動きを止めた。リビドーの泉はぐつぐつと煮えたぎり、温泉に変わってゆく。硫黄の強い温泉のように、漢臭を立ち昇らせて。

 

 やべぇぜジョニーよ、こりゃきな臭くなってきやがったぜぇっ! 

 ちくしょうめ、面白くなってきやがったじゃねぇかぁっ!!!

 

 俺は、否応なしにエロバカテンションを更にもう一段階上げるしかなかった。

 

 そして、ジョニーは「もぅ勘弁してくれよぉ」っと、やや泣き言をいうかのように、漢の我慢汁を情けなく垂らすのだった。

 

 

 

 

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