「精霊と日本一うゎぁーな男の自由すぎる冒険日誌」 作:めがねモエ
前篇「ウェンディーはピロートークがお好き」の巻、その14
戦いというのは常に非情である。そこにあるのはただ二つ、勝つ者と負ける者。
勝敗の一瞬ですべてが決まり、それは光と影、ともすれば生と死のような対極の宇宙を出現させる。
観る者により色合いを変える双極宇宙。奈落の底か天界か──。
だがそこに人は魅かれ酔いしれる。さも芸術を愉しむように、さも娯楽を楽しむように──。
敗者の忸怩たる思いがより深ければ深いほど、勝者の栄光はより輝きを増し、それを鮮明に浮かび上がらせる輪郭となるのだ。それこそが観る者を魅了する美である。
そう、戦いは非情であるが故に美しい。
変態が破廉恥であるが故に美しいのに似ている──。
ま、それはさておき、その非情な戦いを乗り越えた先には、感動というものがある。
俺は、そんな漢と一匹、いや二匹、いや大群との戦いを乗り越えるべく──、ある一つの戦いを思い出していた。かの2009年ワールドベースボールクラッシク決勝戦、日本対韓国の延長10回ツーアウト2、3塁、カウントツーエンドツーから迎えた8球目っ! 見事センター返しの2点タイムリーを放ったあの正に真の侍ジャパンこと、日本球界のみならずメジャーリーグでももはやレジェンドであるイチロー選手のあの一打を。
あの超絶ド感動は忘れられない。
そして、その超絶ド感動の一打までの苦難の道のりもまた、忘れられないのだ。
その大会では、あの世紀の天才バッターであるイチロー選手が、その野球人生において一度も味わったことのない深刻かつ信じられない程の大不振に陥っていたのだった。
WBC第2ラウンド第一戦から、実に12打席連続ノーヒット。その12打席目は、ベンチからのサインではない、自ら不振だからと判断しおこなった送りバントも失敗っ! というどん底っぷり。後にその打席を振り返って彼は、ほぼ心が折れかけた(いや、ほぼ折れた)瞬間と語っていた。だが、そんなイチロー選手の落ち込んだマインドを盛り上げようと、チームメイトの侍ジャパン達は、ほぼ全選手があのストッキングを膝まですべて出すイチロースタイルでユニフォームを着こなし、彼の心を鼓舞していたのである。そしてその仲間侍達の思いが彼を支えたのか、これ以上のないどん底を味わったその次の13打席目、イチロー選手はようやく初ヒットを打つのである──。そして、その1本が出たあとはグイグイと調子を取り戻し、そしてあの感動の一打へとつながるのである。あぁ、感動──。
いかなる大選手やレジェンドでも、ここぞという大舞台で心が折れかける瞬間があるのである。それが、絶対に負けられない漢の戦いというものだ。
この俺も、ここ一番のチョメチョメで何度中折れしかけたであろうか──。
あの大阪道頓堀の通称ひっかけ橋での戦い。夏休み全日ゲッターロボ成功がかかったその年は、浪速の岩鬼と悪球打ちで名を馳せた俺だが、これまでにないトンデモナイビーンボールにもフルスイングで挑んでいたのだった。流石のジョニーもふて寝しかねないところを、なんとか奮い立たせて、辛くも悪球女子達を遥かなるアクメに昇天させまくったのだった。
だがしかしっ! 今まさに、そんな戦いをも単なる過去のものとさせるほどのプレッシャーが、もろ差し&がぶり寄りで俺と俺の相棒17センチのジョニーを攻めたてていた。
耐えるんだエロバイン(≒俺)、かのイチロー選手のようにここで決めなければ、侍ジャパンならぬ変態ジャパンの名折れ、いやっ! 中折れだぁっ!
とはいえ──、
フライングエロバイン(≒俺)と変態ストーカーリス公アナ&ルーwith灰色ネズミ軍団との戦闘は、一層激しさを増していた。
俺はいつの間にやら体育館の壁際に追い詰められ、壁を背にして、タタタンッ、タタタンッ、タタタンッ、とバスターアサルトライフルをぶっ放していた。さすがに破壊力を増した発芽玄米弾である。喰らったネズ公どもは、悶絶するかのように泡を吹いてその場で倒れてピクピクを足を震わせる。
だが、パッと見無尽蔵の軍勢ともいえる灰色ネズミ軍団である。それはまるでコミケ開場一時間前の隊列のように果てしなく、この体育館が全て埋め尽くされてるのではと錯覚するほどのカオスっぷりである。こりゃ絶対に弾が足りないと思われ──、俺(≒エロバイン)の額から汗がつたう。
だがぁ、灰色ネズミ軍団の捨て身突進波状攻撃はさらに激しさを増すばかりであり、俺はまるで映画「ブラックホークダウン」に出てくるデルタフォースの狙撃手のように、四方から迫りくる灰色ネズ公どもを素早く正確無比にバッタバッタと銃撃し続けた
。
だがぁっ、このままじゃぁ埒があかねぇっ!
「うっしっ! ここから一気に平均台まで飛ぶぜぇっ! ティルちゃんよぉっ! 騎馬合体アナ&ルーのスリングショットザクロ弾が当たらねぇように援護たのむぜぇっ!」
「了解したわマスタぁーっ! あのザクロ弾はこっちの射撃管制システムで確実に落とせるから安心してね!」
「あんがとよぉっ! さぁっ! いっくぜぇぇぇっ!」
俺はその場でズバッと飛んだ。
ロケットのようにほぼ垂直に、天井の水銀灯に届かんばかりの高さまで一気に上昇し、そこから放物線を描くように反対側の壁際の平均台を目指して滑空した。
飛行中、リス公アナが放つスリングショットのザクロ弾が、何発も何発もそれこそ弾幕のように見えたのだが、それはことごとく空中で破裂し、甘い香りを放つ赤い果汁がまるで血飛沫のように宙に舞った。ティルちゃんがM14バトルライフルで撃ち落としてくれているのだろう。その知識のみならず射撃センスもまた、いつの間にか都合よく華麗にキャラチェンジしたミリタリーっ娘ティルちゃんのそれであった。
さすがは王道ファンタジーたるダンジョンズ&プリンセス精霊界、の同人である。
そんな、ちっこく可愛くノリもよくたまに人をエロ小馬鹿にするユーモアもあり、でもホントは俺のためにいつも一生懸命になってくれるコケティッシュな相棒、最愛のマスコット的精霊のティルちゃんの、愛情たっぷり援護射撃のおかげで俺は、無事に平均台の上に内村航平選手にも褒めてもらえるであろう10.0の着地を決めた。
さて、ここで俺が何故わざわざ平均台の上に来たかって?
それはもう、察しのいい戦い慣れしたミリタリー大好き変態紳士諸氏にはお分かりであろう。
この体育用具の配置をよく考察してみれば簡単である。平均台の端の片側は跳び箱で塞ぎ、もう片方には踏切台が設置してあるのである。つまり馬鹿なネズ公どもはきっとこの踏切台を使ってピョンピョンと平均台に上がって来るに違いないっ! そしてこの幅の狭い平均台である。当然、どんな大軍勢でもエロバイン(≒俺)相手に一対一の戦いとならざるを得ない。これぞっ! 俺流テルモピュライの戦いだぁっ!
気分はまさにスパルタのレオニダス王!
さてさてぇ、どうやら、騎馬合体アナ&ルーと灰色ネズミ軍団は出し抜かれたとばかりに馬鹿面でこちらに猛進してくるぞぉ──、そしてやはり俺の予想通り馬鹿な小野獣どもは踏切台の方へまわり込み──、おぉぉっ! ピョンピョンと平均台に上ってくるではないかぁっ!!
ふはははっ! 馬鹿どもめぇっ!!!
そこを俺はタンッタンッタンッと真正面から銃撃するのみであった。なんて楽な戦いかぁっ! それこそ次々と襲いかかってくるネズ公どもではあるが、発芽玄米弾をもろに喰らいバタバタとそして「チュチュチュゥッー」と呻きながら次々と、まるでゴミのように落ちていきピクピクと泡を吹くばかりであるっ!
あのコミケ三日目東エリアのカオスの渦ような軍勢相手に、圧倒的ではないかぁっ!
このまま後はティルちゃんに弾を補充してもらうか、或は格闘戦でもイケんじゃねぇっ?! ってな余裕が俺の脳裏をよぎる。うっし! これでまずは灰色ネズミ軍団を始末して、そして騎馬合体アナ&ルーとの最終決戦だ。
と考えた矢先に──、俺の皮算用が獲らぬ狸ならぬ、獲らぬネズミの皮算用となってしまうのだった──。
「マスタぁー! 後ろっ!! 跳び箱を無理やり登ってくるネズミがいるいよぉーっ!」
そう、灰色ネズ公どもはそれほど馬鹿ではなかった。てか、俺が馬鹿だった──。
「なにぃぃぃっ! くそったれめぇーっ!」
つっか、レオニダス王って最後は戦死してねぇ!? ──まさに自爆フラグをおっ立てていた俺だった。
後ろを振り返ると、他の個体よりやや体の大きなネズ公──ガンバの冒険でいうところのヨイショみたいな奴──がとうとう跳び箱側から平均台の上に立った。こちらを睨みつけながら首を捻り「ゴキリッ」と鳴らす。そして、不敵にほくそ笑むかのように「チュチュチュー!!」っと雄叫びを上げるが早いか、エロバイン(≒俺)に向かって猛進してきた──。
「ま、マスタぁー!!!」
ティルちゃんの悲痛な叫びが俺の耳に響いたが──、ま、そんなに焦んなってのティルちゃんてば。ほんまに可愛い奴やなぁ──。
「オラァァァァァァァッ!」
っと気合一発ジョジョ張りの奇声でもって、俺は前方のリス公どもをタタタンッ、タタタンッ、タタタッと三点バーストでまとめて倒し、左手に持つハンドガードを強く握りしめ、ライフルを小脇に抱えるように体を丸め、そのままぐるっと勢いをつけて左回りに反転し、振り向きざまに後方から突進してくるヨイショ似の灰色ネズ公を右フックで──、
「ゴブゥッ!!」──っと、ヨイショ似ネズ公が呻いたのか、或は奴の左顎をとらえたエロバイン(≒俺)の拳がうなったのか、鈍い音が一瞬響き、そしてヨイショ似ネズ公は平均台の下に無様に落ちていった。
「よっしゃぁっ! いけるぜぇっ! こんなことでビビる俺様じゃねぇぜぇっ!! なぁ、ティルちゃんよぉっ!」
「マスタぁー」
格闘戦でもいけるぜぇっ! なんたって俺の師匠はあのエロレスリングのレジェンド、アンドレ・ザ・ドスカラス・ブギーナイツ終身名誉レスラーなんだからなぁっ!!
やや遠くで「キキキキキキキキキィッ!!」「グギギギギギギギギィッ!!」というやや苦悩に満ちた咆哮が轟く。きっとこの様子を安全な所に陣取って見ていたのだろう、アナ&ルーのリス公どもが。こんなチャチな軍勢でやられる俺じゃねぇぜ、エロ馬鹿変態ストーカー小野獣どもめっ!!
ここで俺の戦闘テンションは最高潮に達し、やはりと言ってはなんだが謡わずにはいられなかった──。
「ドーンガドーンガドンガラガッタァッ♪ ドーンガドーンガドンガラガッタァッ♪ エロ松ぅさまのおぉ通りぃだいっ♪ オーッス! 性戯のぉ味方のぉおぉ通りぃだぁいっ♪ となりのぉ変態やぁっつけて♪ そのとなりの変態やぁつけて♪ そのまたとなりの変態やぁつけぇてぇぇぇ♪ ティルちゃんが怒ってぇ♪ エロエロチョメチョメ♪ エロチョメチョメ♪ ピィックピックッ♪ 相棒ぉ♪ ジョニーィだぁぜぇっ♪」
俺はアニメ「国松さまのお通りだい」主題歌を俺流バージョンで滔々と心の奥底のリビドーの泉ではもちろん、そのままエロバイン(≒俺)のマウスで体育館に響き渡るほどの大音量で歌った。
そしてその歌のリズムに合わせるように、灰色ネズ公どもの悶絶ピクピクの山が築かれていった。
前後両方から突進してくるネズ公どもを、銃撃も拳も蹴りも頭突きも肘鉄も膝蹴りもすべて繰り出し、まさに暴れ狂うように戦う。さすがにこの猛攻、エロバイン(≒俺)も何発かいいパンチを喰らったが、このエロ松さまテンションは止まらない。このまま一気に灰色ネズミ軍団を全滅させてやるつもりであった。もちろん勝算はある、そもそもエロバインのエネルギー源は俺の精神力、つまりリビドーの泉のエロパワーそのものだからである。俺が気疲れ、動悸息切れ目眩、或は遥かなるアクメにイキ果ててイキ寝しない限り問題ないのだ。
それになんたって、俺(本体)は今まさに、最愛の精霊ウェンディちゃんとの永遠の愛を誓いあうチョメチョメの真っ最中なのだから──。
とは言っても、さすがにコミケレベルの軍勢である灰色ネズミ軍団、その突進の圧力は半端なく、少しばかり手練のネズ公が混じるとやや押され気味にネズ公パンチを喰らうのもやむなしであった。
「マスタぁー、あたしも援護する! ここからじゃ上手く狙えないから反対側に回って狙撃で援護するぅ!!」
そう叫ぶとティルちゃんは彼女には大きすぎるM14を担いで、体育館の二階から飛び出したのだった。
「あっ! ティルちゃんてばっ!! ちょっ、まて──」
と俺の警告ももはや遅し、ティルちゃんは体育館の広い天井を可愛く飛行する。
「ティルちゃんてば、不用意に飛ぶのはマズイっ! アナ&ルーは飛び道具をもってんだぞぉっ!」
「平気平気、へっちゃらだよ! マスタぁー。エヘ、だってあたし、飛びながら狙撃できるもんねぇ!」
「M14の反動の大きさ、取り回しの悪さをなめたらあかんてぇ──」
と言う俺の心配は見事的中し──、ここぞとばかりに「キキキキィーッ! グギギギギィーッ!」と雄叫びをあげ苛烈な勢いでスリングショットを撃ち込むリス公アナ。最初の2、3発のザクロ弾は撃ち落としたものの、M14の強烈な反動でフラフラと体勢を崩すティルちゃんにベチョリッ! っとザクロ弾がヒットしたのだった。
「きゃぁぁぁぁーっ!! マスタぁー! 当たっちゃったぁ!! 粘々するよぉぉぉっ!!」
言わんこっちゃない。
ティルちゃんの、しなやかな身体ながらも程よくムッチリしたエロ可愛い太ももやオシリに、赤いザクロの果汁がまるでマットプレイのエロローションのようにベチョリと絡みつく。って、なんかエロいぃっ!! てか、まだ羽に命中してないだけマシかっ!!
「ティルちゃんてばっ!! 危険だ!! 羽に喰らう前にM14捨ててすぐ戻ってこい!!」
「駄目だよぉ、だってあたしマスタぁーを援護しなきゃ! もう少しで反対側に辿り着くし、このままあたしイクーッ!!」
「イクーッ!! って、それはチョメチョメの時だけにしてくれぇぇ!! やべぇってのっ!! 俺の事はええからぁ──」
これは──、そうティルちゃんの配置場所が問題だったのではなく、俺が決戦用に平均台を配置したその場所の選定のミスだった。体育用具三点セットが壁際に近すぎたのだった。あきらかに俺のミス。体育館の中央あたりに設置していれば、ティルちゃんはどこからでも援護射撃が出来たはずだったのである。俺のエロ馬鹿野郎っ!!
と言ってるそばから──、
ベチョリッ!! っとティルちゃんの羽にもろにザクロ弾がヒット! 「キキキキキィィィィッ!」っと下衆く雄叫びをあげるリス公ルー。
「キャァァァァァァァッ!!! マスタァァァァー」
「ティルゥゥゥゥゥッ!!!」
ティルちゃんはもはや全身ザクロ果汁まみれになって、さあこれからマットプレイをやっちゃうよぉっ! みたいなエロい姿になって、フラフラと高度を下げていく。そこへ、さらに追撃ちをかけるようにザクロ弾がビチャッ! ベチョリッ! っと襲う。なんだか彼女の小振りながらも形よく可愛い胸の辺りやら、エロエロの股間やらプリップリのオシリを執拗に狙っているかのようなリス公アナのショットである。って、こいつめぇっ!! どこまで粘着質な変態小野獣なんだよっ!!
さらにティルちゃんがフラフラと下降するその落下予測地点には、灰色ネズミ軍団が嬉々と集結しつつあった。「チュウチュウチュウチュウチュウ、チュチュチュチュゥゥゥッ!」っと、まるで獲物を待ち構える変態痴漢軍団のように。その己の、小野獣のさらにミニマムだが狂暴な股間の小野獣をギンギンに滾らせて。
ってぇ!!! やべぇっ!!! やべぇぇぇぇぇってのぉぉぉっ!!! あの変態ネズ公ども、まさかティルちゃんをっ!!
あんな変態灰色ネズミ痴漢軍団の中にティルちゃんが落っこちてしまったらぁっ!! しかもエロローションのようなザクロ果汁まみれでぇっ!! ──不謹慎にもちょっとそれを想像して、ややエロバイン(≒俺)の17ミリのジミー(≒17センチのジョニー)がピクリッ! と反応しやがった。
ばっ、馬鹿ヤロウメェッ! くそったれめぇーっ! なに考えとんだァァァァァッ!
「ティルゥゥゥッ!!」
俺は思わず自分の前方の敵を無視して、まずは騎馬合体アナ&ルーを! そして、ティルちゃんの落下予測地点で待ち構える灰色ネズミ軍団を銃撃した。タタタンッ、タタタンッ、タタタンッ──。
「これ以上ザクロ弾は撃たせねぇっ!!」
「ま、マスタぁー、ごめんなさいィィィィッ」
泣きべそで怯えるティルちゃんを見て、俺の心の奥底のリビドーの泉はプッツン──。
ドドドドドドドォオオオッ! っとリビドーの泉は噴火し、俺は思わずフルオートでバスターアサルトライフルをぶっ放してしまった──。
タタタタタタタタタタタタタタタタタタッ、チッ──。
あっ、やべぇ、やっちったぁっ──ジャムった。
やっべぇぇぇぇぇっ!!! 俺ってばフルオートじゃ駄目ってあれほどぉぉぉっ!!
再びエロ馬鹿な俺、二度目の痛恨のミス──。ちくょぉぉぉぉぉっ!!
変態灰色ネズミ痴漢軍団はいつの間にか、体育祭でのクライマックス、男子組体操による最終技の五重の塔のようなものを急造していた。一番上のネズ公がキモくも天に向かって両手を伸ばし、もがく様に、宙を搔く様に腕を振るい今か今かと獲物を狙い掴まんかと、掌をそれこそ飢えた変態のようにガクガクと震わせていた。天使の羽のようにふわふわと降りてくるティルちゃんを、絶対に我が物にせんと必死に──、それはまるで、天使を天界から引きずり降ろそうとする地獄の下衆な餓鬼どものようにも見えて──、
「ティルゥゥゥッ!!」
俺は思わず叫び、そして彼女に向かって飛ぼうとしたのだがっ──! それを阻止すべく前後から濁流のように灰色ネズ公どもが押し寄せ、もう無茶苦茶なタックルで俺に覆いかぶさり押さえつけるっ!!
うぐぐぐぐっ!! やべぇぇぇぇっ!!! マジでやべぇぇぇぇっ!!!
「ま、マスタぁーっ!!!! い、嫌ぁァァァァッ!」
ティルの悲痛な叫びが体育館内に響き渡り、俺の耳(≒エロバインのイヤーセンサー)に突き刺さるっ!
「ま、まさかっ! そんなぁっ! ティ、ティルゥゥゥゥッ!!!」
そんな、嘘だろぉぉぉっ! っと、マジで絶望寸前の、あのイチロー選手が12打席目のバント失敗で味わったであろう”心の折れる瞬間”ってやつが俺の心の奥底のリビドーの泉に、それこそ落雷のごとく天罰のごとく落とされかけたぁっ、まさにその刹那──、
バスッ! バスッバスッ! バスッバスッバスッ! っと──、
変態灰色ネズミ痴漢軍団五重の塔てっぺんのキモイ餓鬼ネズ公はおろか、その下の段のネズ公も、そのまた下の段のネズ公も、まるでダルマ落としを下からではなく上からやっているかのように、真横に吹っ飛んでいった。
一体何が──、
これは──、
狙撃!?
俺は一流スナイパーの本能のごとく、ネズ公が吹っ飛んだ方向とその角度から推測される狙撃可能ポイントに目をやった。
それは、体育館の正面舞台中央辺り、ちょうどセンタースポットライトが一番映える場所であった。
そこにいたのは──!? エロバインのサーチスコープが超望遠ズームアップし──!!
人形!? 操り人形? マリオネット!!!
なんとっそれはぁっ! あの忘れもしないあの時の、マリオネット!
そう、このエロバインを──てか元々このエロバインは、小妖狐精霊の春車菊が作ったその名もヌシ様人形というオモチャの藁人形だったのだが──それを彼女から頂戴するために、勝手に身代わりにさせてもらったマリオネット。──チョコレートが大好きで、というよりもチョコレートを染みこませた糸で編まれたゴスロリ衣装を身に纏うというパンキッシュさで、またゴスロリチックな眼帯がチャームポイントの人形使い、不思議少女精霊フラウのマリオネットだったのだぁっ!!!
そんな傀儡が今や、セミオートマチック方式だが高い命中精度を誇る狙撃銃ワルサーWA2000を颯爽と構え、どこぞの特殊部隊のような黒ずくめの特殊装備に身を包み──、
バスッ! バスッ! バスッバスッ! と狙撃を続けているっ!!!
てかぁっ!! その横にはそのフラウがぁ、まさにアイドルグループのセンターをとったかのように堂々と仁王立ちとなってぇ、──てか、マリオネットなんだから当たり前だけど。
「フ、フラウなのかっ?! フラウとフラウのマリオネットなのかぁっ!?」
っと、俺は叫んでいた。
「フフフ、マスター。いえ、マスターなのよね? ごきげんよう。こんな夜中に、こんな体育館で、そんな傀儡の姿と成り果てて、不気味なネズミの大群とマスターが一体なにをしているのか、皆目見当がつかないし、もうわけが分からないけれども──、でも、助太刀するわ」
といいながらも、次々とティルの落下予想地点で待ち構えていた灰色ネズ公軍団を撃ちまくっていた。
恐るべき人形サイズのワルサーWA2000の命中精度、てか恐るべき特務仕様マリオネットの射撃能力、てか恐るべきフラウの傀儡操り術。てゆーかっ! もう挙げればキリがないほどのわけわからん状況。
ネズ公どももこりゃたまらんとばかりに、散り散りに逃げ始めたのだった。
「てか、何でフラウっ! お前こそこんな夜中に、そんな物騒なマリオネットを擁して──」
「フフフ、マスター、何を言っているの、私を誰だと思ってるの。あなたも、そして私も、すべての人は運命という見えない糸に操られているのよ。だからマスターが今宵ここに来ることは分かっていたわ。そして、私がわけのわからない戦いの助太刀をすることもまた運命なのよ。フフフ──」
相変わらず意味不明なことをいう不思議精霊ちゃんだな。てか、確かにこの状況を見れば誰だってわけが分からないだろう。確かに──。だがっ! わけが分からないのはっ! お前の方こそだぁっ! フラウっ!!
「てゆーかっ!! わけが分からないのはお前の方だぞっ! フラウっ! なんだお前その格好っ! いつものチョコレートゴスロリはどうした? ってかぁっ!! それ、おまえっ! その姿、その衣装、まぎれもないっ! あの、あの伝説のストリッパー”おでんちゃん”の恰好じゃぁぁねぇぇかぁぁっ!!!」
「フフフフフ、マスターったら。思った通りね。その驚きようったら。面白いわ。フフフ。今宵マスターがここに来ることは分かっていたのよ。だから、私の大切なこの子、このマリオネットのマリオ君をとんでもなくイカ臭くしてくれたいつぞやの仕返しに、マスターの度肝を抜いてやろうと思ったのよ。フフフ」
度肝っていうか、その”おでんちゃん”スタイル、マジでエロ可愛すぎでぇ、17ミリのジミー(≒17センチのジョニー)がヌキさらばえるやろがぁっ──、
「一応念のために教えておくけれども、このマリオ君、アレ以来、マスターのアレのイカ臭さがどんな強力な洗剤や消臭剤を用いても消えないほど染み込んでしまったのよ。だから、ひとたび外に連れ出したら野良猫達がすり寄って来て大変なのよ。でもね、このイカ臭さ、私は嫌いでもないけれども。フフフ」
も、もはや──、
俺(≒エロバイン)はおろか、騎馬合体アナ&ルーの野郎どももスリングショットを下げて、しばし茫然としてしまったのだが──。
漢と雄ども、小野獣どもとの熱い戦いが、まったくもってわけが分からない戦況へと突入し始めてしまった──。
だがそんな大混乱というか混沌、もはや大人のおもちゃ箱をひっくり返したようなカオスな戦場において、17ミリのジミー(≒17センチのジョニー)だけは、フラウの”おでんちゃん”スタイルに大興奮し、ドクドクと歓喜の漢汁を垂れ流し、ビクビックッ、ビクビックッとこれまた一際大きく漢のリビドーそのままに雄叫びをあげるように跳ねるのだった。
ったく、最愛の精霊と愛のチョメチョメ真っ最中だというのに、この滾りが別の刺激によるものだと、ややもするとウェンディちゃんにばれやしないかと、少々冷や冷やする俺であった──。