※この作品はR-18です。

「精霊と日本一うゎぁーな男の自由すぎる冒険日誌」   作:めがねモエ

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「ぶらりフルチン途中下車の旅」の巻、その8(エピローグ)

    「ぶらりフルチン途中下車の旅」の巻、その8(エピローグ)

 

 

 「努力しても報われないことがあるだろうか。たとえ結果に結びつかなくても、努力したということが必ずや生きてくるのではないだろうか。それでも報われないとしたら、それはまだ、努力とはいえないのではないだろうか」 

 

 漢の魂に、心の奥底のリビドーの泉に、まるで陣触れの銅鑼のように、まさにガツンと響く言葉である。所謂ちょーシビレル名言ってやつであろう。

 

 それはまるで思春期頃の、中二病をやや患いつつもそれでいて授業はかったるい、放課後は眠い、女子達は眩しい(制服姿もチラッと覗くおみ足も)などとただ漫然と貴重な青春期の日々を無駄に消化し、帰宅直後のベッドの上で怠惰にイキさらばえた股間、それを車に轢かれた蛙のようにだらりと晒しているところに──何故もまたこれ程までに残酷にも絶妙なのかと思うのだが──部屋のドアに無遠慮に打ち撞けられるオカンの唐突なノックのようで──、そうそれは、だらけてふやけた己と股間に、ドスンと喝を入れられ叩き起こされるような荒々しさでもって鋭く響き、己の中の”なにか”を目覚めさせるのだ。

 

 心中のどこかにいるもう一人の俺、賢者たる俺。俺の中の三悪人、良い子悪い子普通の子のうちの良い子、つまり俺賢者担当、俺の俺たりうる賢者のアイデンティティ、いわばアイデンティティ賢者君を目覚めさせるのだ。

 

 一日のうちに2回も3回も4回も5回も、多い時で7回8回、時には9回もっ! って、野球かっ! 青春真っただ中でアホみたいにシコシコとコキまくってる場合ちゃうでぇーっ!! っと。

 

 先に述べた”お言葉”は、俺が敬愛しそしてその背中を追って止まない、スポーツマンとして──元プロ野球選手(読売ジャイアンツ栄光の4番)であり元日本代表監督でもあり、ホームラン世界記録保持者として──だけでなく、その人間性にも深く畏敬の念をいだく、世界の王、ワンちゃんこと王貞治氏の金言である。

   

 そうなのだ、努力は必ずや意味を成す。そして俺は努力してきた。エロに対して真摯に紳士に、変態紳士にっ! そのスケベな思いが今や結実したと言っていいだろう。俺は確実にどエロく超絶変態紳士に進化したのだっ!

 

 銀髪の美少女にして鬱々の美少女、ロボ子こと傀儡の精霊キレスとの”乙女のおっきいお花摘みプレイ”である。

 

 あの後──、まあ「その7別紙添付資料」を御覧になっていない変態紳士諸氏にはなんのことやらかもしれないが、ロボ子ちゃんとの仲直りチョメチョメ3回戦目を終えて、俺は超絶ド変態の上級プレイを彼女と完遂したのだった。

 

 ま、それについては月並みな弁明だが、筆舌に尽くし難いものがあり──てか「その7別紙添付資料」に詳細を書いてますけど──また、内容が内容なだけに、変態紳士諸氏それぞれエロ好みが分かれることもあろうかと、この場では語らず、未読の方々にはご想像にお任せするということで、お茶を濁します。悪しからず。

 

 それでだ──、

 

 そして、さらに仲直りチョメチョメ4回戦目というか、もう俺とロボ子はお互いに新たなエロ境地に到達したわけで、真の愛をドロドロに舐めあい確かめあうような4回目のチョメチョメでもって、二人の精神と魂を完全に重ね合わせ、一期一会のエロ、一生消せない程のどスケベの証し、ド変態の相互マーキングによって心を一つにしたのだった。

 

 それからいつの間にやら二人は、夕日に赤く染まる無人島南国リゾートの浜辺でまったりとしていた。柔らかな夕陽の濃い橙色の光に包まれ、日中とは打って変って穏やかな暖かさと、母親が我が子の頬を撫でるような柔らかな潮風が心地よい。

 

 ヤシの木にもたれかかり、フルチンで、豪快に股を開きくつろぐ。隣には銀髪の美少女たるロボ子ちゃん。股間でうたた寝をする相棒17センチのジョニーのやつが、優しい潮風に撫でられるたびに寝ぼけたようにピクンピクンと震える。あぁ心地良い。俺はふとロボ子ちゃんのまさに美少女らしい白魚のお手手をとって、ジョニーを握らせた。このめちゃ柔らかくもすべすべでキメの細かい肌のお手手。握ってもらうだけでマジで極楽。

 

「うぅ、また──」

「股間のこいつはロボ子に握ってもらっててほしいんやって」

「うぅぅ、マスタぁーの変態──」

「ええんやでぇ。そういいながら、ムギュってしてもらうの、めちゃええんやでぇ」

「うぅ、バカですぅ──」

「マスタぁ―は、ほんとうにどうしようもないド変態キモ豚ですが──、その、でも、そんなキモ豚マスタぁーだからこそ、その、わたしの特殊な機能の、ヘンな秘密、を知られても、そんなには恥ずかしくないかも知れないですぅ。その、ヘンな感じですけど。その──、うぅぅ」

「なんやねんそれ、ロボ子よ。てか俺褒められてへんやろそれ、地味に、いや、もろに貶されとるっちゅーねん。キモ豚キモ豚てっ」

「うぅ、そ、そんなことないですぅ。わ、わたしはぁ、そのぉ、うぅぅ、(蚊の鳴くような小声)キモ豚マスタぁーじゃないと、他の誰でもなくぅ、マスタぁーじゃないと無理です。ほんとうは、やっぱり、その、マスタぁー以外だめなんですぅ。マスタぁーで良かったんですぅ。うぅぅ」

「えっ? なんてぇ? ロボ子ちゃん、そんなん何ゆーてんのか聞こえへんわぁ。全然聞こえへんでぇ、蚊の鳴くような声でゆーてもやなぁ、ええ? せやろぉ?」

「そ、そのぉ──」

「えぇ? なんやてぇ? もっと大きい声で堂々とゆうてやぁ? なぁて」

「そ、その、うぅぅ──」

「(蚊の鳴くような小声)うぅぅ、わたし、その、ま、ま、マス──、キモ豚マスタぁーに出会えて良かったのですぅ。うぅぅ──」

 

 なんやねん。恥じらいよってからにぃ。でもかわええでぇ。ロボ子ちゃんよ。てか”キモ豚”は余計やっちゅーねん。

 

 自分の変態的機能で自己嫌悪に陥ってたロボ子ちゃんだが──、そうは言っても、この俺も何故己がこれほどまでにどスケベなのか、これほどまでにド変態(キモ豚とは言わないぞ、断じてっ!)なのか、自分でもよくわからない。だが、こんな俺だからこそ、ロボ子ちゃんを受け止められるんだというそんな変態的な自負はある。

 そして、お互いにこの変態を、俺の場合は己のド変態の根源たる心の奥底のリビドーの泉を、ロボ子ちゃんは生まれ持ったド変態機能(お花摘み方式による非常食供給機能)を相互に理解しあってと、真面目にド変態に思う。誰よりも上手く彼女を愛しヌク。いやむしろそう出来るのは俺しかいない。俺が必ず彼女を、真に心の底から”なんの迷いも懸念もない幸せ”にするのだ。いつまでも優しさに包まれたエロ極楽気分にさせるのだ。

 

 そんなことを考えながら、夕陽に赤く染まる銀髪の美少女の横顔を眺めた。その眼差しは何かを吹っ切ったような、聡明でありながら熱も帯びた、達観した大人女性のそれにも見えた。俺は不意にドキッとした。いわゆる惚れ直すということか、ドキッとして、心臓を乙女にギュッと鷲掴みされるかのような、重い鈍痛にも似た心の疼きを感じ、心揺さぶられた。そして、股間の相棒17センチのジョニーがピクッとして鎌首を擡げた。

 俺は徐にロボ子の頬にキスをした。彼女の柔肌と流れるシルクのように滑らかな長い髪、そしてなにより、乙女の甘く情欲を誘うエロい香り、この世のどんなフレグランスも遠く及ばない、甘くも爽やかな、月並みな言葉で青春系甘酸っぱいレモンの香りとでも言おうか、エロと幸福感を帯び思わず舌なめずりしちまう、まさに天然の美少女の香りが鼻孔に広がり、俺をエロ夢心地に襲った。

 

 俺はその香りに完全にノックアウトされ、いつも間にか極楽夢心地に眠ってしまっていた。

  

 南国の浜辺で、下半身全開のフルチンスタイルで、銀髪の美少女にもたれかかりながら、てか、多分優しく抱きかかえられながらだったであろう。それこそ、母に抱かれる赤子か幼児のように。眠りながらもどスケベに顔を歪め、ほくそ笑みながら。

 

 

 

 それから俺が目を覚ましたのは──、

 

 とてつもない轟音によってたたき起こされたのだった。

 

 それこそ、陣触れの銅鑼のような。

 

 そして、それはまさしく戦いの始まりを意味していた。

 

 そういえば──、

 

 俺は思いだした。そうそう、てか、俺とロボ子は南国リゾートのこの無人島で二人でバカンスしてたのではない。精霊水上列車が突然運休してしまって、一緒に来てた他の精霊ちゃん達(アステアやキャロルレンやケノン達)は先に帰って──、そして、いつになったら迎えに来るんだろうかと、そしていきなり無人島でロボ子と二人サバイバルかよっ! 黄金伝説かよっ! と半ギレだったのだ。てか、これってまさか誰かの仕掛けたドッキリか? などとも勘ぐってもいたのだ。

 

 ギャオォォォンッ!!!

 

 とんでもないベタな怪獣っぽい咆哮が、辺りに響いた。てか、映画「シンゴジラ」に影響されたんかっ!?

 

 ギャギャギャギャギャオォォォォンッ!

 

 これまたひときわデカい咆哮と共に、目の前がカッととてつもない閃光に包まれ真っ白になった。かと思うとすぐさまそれは消え去り、不意に一瞬辺りは暗くなった。が、これは閃光のせいで目がくらんだか、霞む視界を目をしばたたきなんとか正常にもどしたのだが、間髪入れずに今度はスババババッと、雷撃音のような不気味な響きと共に──、海と空が青一色で一体をなす南国特有の楽園のような青空を、薄気味悪いほどに濃い紫色の眩しい光──光というか稲光というか、プラズマのうようなもの──の一筋が、まるで空間を切り裂くように走った。それも、俺とロボ子がいる無人島の真上の上空を。

 

 げっ!! なんやあれっ?! プラズマビーム? とでもいうんか? オイ!

 

 マジでシンゴジラに影響されたんか!? これって下ネタギャグストーリーじゃなかったのかっ?! ここにきてまさかまさかの、マジもん本格的異世界転生勇者バトルが始まるんかいなっ!? てゆーか俺は勇者ではないし、そもそも普段戦ってないしぃっ!! などと自問自答してると──、

 

「マスタァ―!! 下がってくださいですぅっ!!」

 

 というロボ子ちゃんの声が響いた。てか下がるってどこにやねんっ!!

 

 ッと俺がツッコミを入れるが早いか──、先ほどの濃い紫色の光り、プラズマビームのような光がこちらに向かってぃっ!! すべてがまるでスローモーションのように見えるぅっ!! この動体視力、俺凄くねぇ? てゆーか!! えぇっ!! やべぇっ!!! 俺は顔を伏せ目をつぶった。

 

 バリバリバリバリバリッ!!!

 

 強烈な放電音に目を開けると、俺はロボ子ちゃんの背中に隠れていた。可憐な銀髪の美少女の華奢な背中に、どっぷりとしたメタボな人間雪見大福なこの俺が。

 

 そう、ロボ子ちゃんが例の浮遊型謎ユニットで作った巨大なシールドというか盾で、その薄気味悪い紫プラズマビームを防いでいた。てか、でけぇ盾!

 

「くっ、この光りっ、マスタァ―、超魔ですっ!」

「なっ、なんやてぇっ!?」

 てかっ! いまさらダンジョンズ&プリンセスのレイドバトルの巨大魔獣って、懐かしすぎやろーっ!

 

 ギャオォォォンッ!!!

 

 再びベタな宇宙怪獣のように吠える超魔。プラズマビームが消え、ロボ子ちゃんがこちらに振り返る。

「マスタァー、全力で森の中へ走りますよ! いいですかっ?」

「お、おうよっ!」

 と答えたすぐさま後、再びプラズマビームが飛んでくる。ロボ子ちゃんが巨大な盾を左手一本でかざし防いだ。

 おぉうっ! 可憐な美少女なのになんちゅう怪力。てか、盾が軽いのか? とにかく流石は万能精霊ちゃんだ。

「この雷撃がやんだら走りますよっ! いいですね、マスタァー!」

 もうそこにはいつものややおどおどした鬱々の美少女精霊はいなかった。完全に戦闘モードに入ったロボ子の精悍さよ。てか、カッコよすぎなぐらい変わりよるなぁ。

 

 そして雷撃が止み──、

 

「マスタァ―、今ですっ! 走りますっ!!」

「おうよぉぉぉっ!!」

 と、二人で浜辺を駆け出した。しかし、なんてこった。アステア達が迎えに来ると思いきや、よりにもよって超魔がこの南国リゾートに現れるなんて。日頃の行いがエロすぎるからか。と反省していると──、

 

 ギャオォォォンッ!!!

 

 というゴジラ風の咆哮とともに辺りが閃光に包まれ、つまり再びプラズマビームが飛んでくる──、

 

「マスタァ―っ!!! 伏せてェっ!!!」

 と俺の頭を掴んで砂浜に突っ伏せさせたロボ子ちゃん。「うゲッ!」口に砂がァっ!! 手荒いよぉー、ロボ子ちゃんてば手荒いよぉ、と泣き言を声なくパクパクと口を動かし訴え顔を上げた。盾を構えてプラズマビームを防いでくれているロボ子ちゃんに運動音痴のヘタレのごとくしがみつき、辺りの状況を確認する。

 よく見るとプラズマビームは紫色ではなく、いわゆる稲光のような光であった。あれは閃光で目がくらんでそう見えていただけか──。

 

 あっ! てゆーか?!

「あれ?!」

 ロボ子ちゃんは盾を真横に構えていた。つまり、プラズマビームは俺達が走っていた方向の真横から飛んできていたのだった。

 

 超魔が移動したのか?! いやっ! 違うっ!!! 超魔は二体いるぅっ!!!

 

 ベタなゴジラ風の咆哮は背後からも聞こえる。今プラズマビームを放っているのとは別の奴だっ!!

 

 やべぇっ!!! こりゃやべぇぞおぉぉぉっ!!!

 

 全身から冷や汗が噴き出してきた。やべぇっ!! 流石の俺も、これはマジで危機を感じ始めている。普段の戦闘では少なくともフォーマンセルで行動し戦う。つまり、いざという時は四人の精霊ちゃん達が四方を囲んで俺を守るのだ。だが今はロボ子ちゃんこと傀儡の精霊キレスのみ。でもって俺には剣術も魔法もなにもなく、まったくもって戦えない。単なるメタボなオッサンだ。対して敵は超大型の魔獣、超魔二体。いくら万能の精霊キレスといえど、これはマジでやべぇっ!! やべぇってもんじゃねぇっ!!!

 

 ギャギャギャギャギャオォォォォンッ!

 

 そして、後方の超魔が一際大きく咆哮する。

 

「ロボ子やべぇっ!! 後ろからもくるぞぉっ!!!」

 真横からくるプラズマビームはまだ途絶えない。どうするっ!!! 俺っ!!! 単なるメタボなオッサンの俺がプラズマなんか喰らったら、一瞬で灰になってまうでぇええっ!!

 

「マスタァ―! 私の後ろに隠れてぇ! 早くっ!!」

「てか! ロボ子お前はどうすんねんっ! 盾は一つしかないし、てかもう一個あんのか?!」

「いいえ、でも、私は魔術とテクノロジーで生み出された傀儡の精霊、体も普通の精霊と違ってこの盾のように頑丈なんですっ!」

「うそこけっ、ロボ子、こんなん食らったらいくらなんでもお前──」

「傀儡の精霊は伊達じゃないんですっ!!」

「なっ」

「マスタァ―早くっ!! 私の後ろへっ!!」

 

 まじかよっ!! 体を盾にするなんてぇっ!!! そんなんいくらなんでもでけへんてぇっ!!! と、考えている暇もなく、凄まじい閃光が辺りを包む。

 

 やべぇぇぇっ!! ちょーデカい一発くるぞぉッ!!! ヤバすぎるぅっ!!!

 

 緊急事態というのは、恐ろしく非情で考える暇もない──。

 

 再び、すべてがスローモーションのように見える。これは俺の能力なのか? いや、走馬燈というやつか。最後の時に見るというあれか。そんなアホな。俺の人生は下ネタギャグストーリーそのものじゃなかったのか──、あぁ、でも、最後にロボ子ちゃんと超絶ド変態プレイも完遂できて、これは良かった思うべきなのか。

 あぁぁ、でももっとやりたかったかもしれん。他の精霊ちゃん達とも──、てか、このプレイはそう簡単にやらせてくれんやろうなぁ。やっぱロボ子ちゃんやから出来たんやろうなぁ──。

 

 などと、最後の語りをし始めていた俺。プラズマビームが真っ直ぐにこちらに向かて来る。南無三。

 

「マスタァ―っ!!!! 早く隠れてぇっ!!!」

 というロボ子ちゃんの、なかば叫びのような声もスローに聞こえる。

 

 あぁぁ、見える、プラズマビームがこちらに向かって──、俺はこれで焼かれて灰になるんかいなぁ、変態紳士たるこの俺、最後は異世界で灰になるか。俺が灰になったら、それを原料にスキンクリームにしてもらって、精霊ちゃん達のスキンケアに使ってほしいなぁ──。体中に、チョメチョメにも丹念に塗り込んでお肌の手入れしてやぁ。

 

 俺は、嘘偽りなく真面目にこう考えた。暴れる鰻も熟練炭坑夫の強腰も、そして相棒17センチのジョニーも「うんうん」と頷くように跳ねたのだった。

 

 そして、あっ!!! 焼かれるぅっ!!! と思ったその刹那──!!!!

 

 真っ直ぐに飛んでくるプラズマビームを──、何かが──、

 

 なんというか──、

 

 斬った──。

 

 それはまさに一刀両断と言おうか、斜め上から来た衝撃波のような鋭い煌めきは、スパンっとプラズマを斬り裂き、斬られたソレはその衝撃で方向を変え、俺とロボ子の頭上を通り過ぎて行った。

 

 そして間髪入れずにその衝撃波のような煌めきが左側に回りこんで、ロボ子が盾で防いでいたプラズマビームをも切り裂き、かき消してしまったのだった。

 

 なっ!!! にぃっ!!!

 

 こ、これはまさかっ!!

 

 これはまさか、アレかぁっ!!! 

 

 うぉぉっ! 「吸血鬼ハンターDの剣はレーザーをも斬る」ってやつかぁっ!!!!

 

 てゆーか、これ、一度は言ってみたかったんやわぁ。マジで。

 

 尊敬し敬愛してやまないというか、勝手に心の師匠とまでいう菊池秀行氏の、俺が中二病の頃に愛読していたSFファンタジー小説の金字塔「吸血鬼ハンターD」その名文句である。というのは置いといて、

 

「ロボ子ちゃんてば、これはなにごとやぁっ!!」

「……」

 俺とロボ子の前に、ザシッと砂浜に足をつけ現れたのは、剣豪”神姫”の称号を持つ、剣士の精霊アステアであったっ!

 

「マスターお待たせ! 危なかったわね!」

「おぉぉぉっ!! アステアぁぁぁっ!!!」

 

 俺ってば思わず叫び、バカ犬のごとく彼女に擦り寄って行った。

 

「遅くなってごめんね。さっきの怖くなかった? 大丈夫? びちってない?」

 と言ってアステアは俺のフルチンの股間に目をやり、引き潮のイソギンチャクのように縮み上がった相棒17センチのジョニーをちょんちょんと軽く撫でてくれた。

「おぅふっ!」

 ジョニーの奴と来たら、これまたバカ犬が尾っぽを振るようにビクンビクンと跳ねやがった。「怖かったよぉ、めっちゃ怖かったよぉ、アステア、今すぐ抱きしめてぇ、抱きしめてぇ、チョメチョメで抱きしめてワイをよしよししてくれぇーっ!」と言わんばかりに。ったくジョニーの奴め。

 

「でも、さっきのは本当に危なかったわね。やっぱり先に帰らず私もマスターの側にいた方がよかったかしらね」

 と、チラッとロボ子ちゃんに一瞥を入れるアステア。

 俺はそれにつられて振り返り、ロボ子ちゃんを見た。

 

 ほんの少し──、これはきっと俺しか気づかないかも知れないが、つまり俺とロボ子二人の関係だからこそ気づくことだといえる類のものだが、ほんの少し下唇を噛みしめている銀髪の美少女がそこにいた。「チッ」今にも聞こえてきそうなほどの(これも俺にだけしか聞こえない類のものだけど)。

 

 ロボ子ちゃんてば、ちょっと、あれかな、その、嫉妬的な──。

 

「大丈夫です。マスタァーは何があろうとも私が絶対に守り抜きますから」

「そう、ふーん」

 

 しばしの沈黙があり、そして見つめ合うアステアとキレス。てか、睨み合ってるのか?! うぅぅ、流石の俺っちもこの微妙な空気感気まずいっちゅーねん。

 

「いやしかし、あれやねぇ、誰も怪我せんで、大事に至らんで、よかった、よかったわぁー。あははははー」

 と、さらに空気を悪くしかねない程しらこ過ぎる俺の和ませトーク。やべぇ──。話しベタかよっ!

 

「そうマスター、今はとにかくここから避難して。超魔が同じ地点に二体同時に出現してしまっては、さすがに危険すぎるの。私の他に師匠とソルモンテ、それにヘルマ、あとケノンとカミッサも来て戦ってくれてるわ。後からもさらに増援も来るのよ」

「せやかて、俺が”マナ”を皆に供給せんと戦えんだろうに?」

「それは──」とアステアが話そうとして、それに被せるように声が聞こえた。

「それは、大丈夫なのよぉ。フフフ、マスタぁー」

 その声のする方へ振り向くと──、

「おわっ! フラウっ!! 人形使い精霊のフラウっ!!」

「あぁぁっ、フラウちゃん!」

 先ほどまでキッと鋭い視線でアステアを見つめていたロボ子ちゃんが、パァっと柔らかくほほ笑み、フラウの元に歩み寄って、そして手を握り合った。オィ、百合百合しすぎっ!!

 

 てゆーかっ! 変わり過ぎやっちゅーねん。あからさまやろロボ子。クラスの親友と、あんまし係わったことが無い女子っていうか、寧ろあんまし好きじゃない女子とのこの対応の違いっ! 丸出しやろがっ!! ったく、メンヘラちゃんめ。ほらみろ、アステアが「ふんっ」って感じの表情なっとるがなっ!! 「ったくなによ、クラスの影キャラコンビがっ!」ってな感じの表情しとるがなっ! (て、言いたい放題の俺)

 

 少々、二人の百合百合としたやりとりを黙って見ていた俺とアステアだが、とうとうアステアが痺れを切らして──、

 

「フラウ、あなたから話すならちゃんとマスターに説明して、超魔との戦闘中よ」

「フフフ、そうね戦闘中だったわねぇ。ごめんなさい。フフフ──」

「なんやねん、それっ」

「フフフ、いいかしらマスタぁー、マスタぁーのマナは”この子”からも供給されるのよ。この子、マスタぁーと一心同体でしょう? 私が独自にこの子を調節して、マスタぁー本人よりもより強力にその精神エネルギーたるマナを供給できるように、ちょっぴり魔改造したのぉ、フフフ」

 と、人形らしきものを懐から取り出すフラウ。

 

 ってかっ!! それはっ!!! 俺の、ヌシ様人形改二「エロバイン」なんとぉっ!! (てか、ヌシ様人形は元は妖狐精霊秋桜の娘、春車菊のものだったんだけど──)

 

「たしかに、エロバインは俺と100%シンクロするいわば分身のような存在、だがしかし、今はシンクロしてないぞ?」

「フフフ、そうよ、だから言ったでしょぉマスタぁー。わたくしが独自に調節してシンクロしなくても”マナ”だけ同期させることが出来るようにしたのよぉ、フフフ」

「そんなことが!!」

 てか、そんな風に使われたら、今後エロバインを精霊ちゃん達へのエッチな悪戯に使えんだろうがぁっ!!

 いやだぁーっ!!!

 

 そんな俺をよそに、コホンと咳払いをしてアステアがまとめた。

 

「わかった? マスター、つまりフラウがこの場にいてくれればマスターと同じように私達はマナを受け取れるの。今回の超魔は何故かマスターを狙い撃ちしてくるわ。だから、いったんマスターは屋敷に避難して、この場は私達に任せて。いい?」

「しかし、仮にエロバインが故障でもしたら──」

「その時はその時よ。私達精霊を信じて。それに、今回の超魔は今までとは桁違いに強力なの。人形が壊れるより、マスターが怪我でもしたら大変なの。分かってマスター」

「うーむ、そやかて、どうやって屋敷に戻るんや? 水上列車は未だに運休してるやろ?」

「カミッサがヘビーアーマーを駆って来ているから、いったん彼女のアーマーに乗せてもらって屋敷に戻って──」

 

 と、その時、砂浜にズシーンっと砂ぼこりを豪快に上げつつ、巨大人型メカが降り立った。

「カミッサ登場っとぉ!!! マスター! こんなところで油売ってぇ、またスケベなことばっかりしてたんじゃないのぉ?」

 

 その豪快な登場通り、元気っ娘のカミッサが現れた。巨大ヘビーアーマーを纏って。アーマーに乗っている彼女はチョー強気&元気っ娘なのだ。つまりアーマーの脱ぐと──、以下略。

 

「なっ! そんなことないっちゅーねん! おれはなぁ──」

 と俺が反論しようとしたその時、

「マスタァァァーっ!!!! はぅぅぅーっ!!!!」

 と叫び声を上げながら「べちゃっ!!」と俺の顔面に何かが飛んできてへばり付いた。それこそエイリアンのフェイスハガーのように。

 

「なぬぅっ!?」

 

 顔からソレをつまみ上げると、それは激しく泣きじゃくり叫んだのだった。

「マスタァーっ!!! 寂しかったよぉぉぉぉっ!! マスタァ―、ケガしてない? 無人島で大丈夫だったぁ? ねぇねぇマスタァ―、ねぇねぇ──」 

「てか、ティルちゃんっ!!」

「ちょっとカミッサ、どうしてティルがここにいるのよ、超魔との戦闘なのにっ!」

 とアステア。

「いやぁー、ティルにどうしてもって頼まれてぇ、どうしてもマスターの無事をこの目で確かめたいっていうからさぁー。あはは──」

「もう、超魔討伐は遊びじゃないのよ」

「わかってるよ。でもさぁ、アステア、一時的にでもあたしが戦列から離脱して大丈夫なのかよ? 今回の超魔はスゲー手強いぜ。今だって、ソルモンテとヘルマ、ケノンに、あんたの師匠のキャロルレンでギリギリってとこだぜ? 早く援軍が来てくれないと──」

「わ、私も戦いますですぅっ!」

 その時、ロボ子が叫んだ。

「おっ! そりゃ助かるぜ! 万能精霊のキレスが戦列に加われば、かなり心強い。あたしのアーマーとの連携攻撃の相性もバッチシだしな!」

「だめよ!」

 ぴしゃりと即答のアステア。これが戦闘リーダーの風格か。

「なんでだよ? いいじゃんか、万能精霊がそういってるんだぜ」

 アステアをキッと見つめるロボ子ちゃん、これまた「チッ」っと聞こえてきそうだわぁぁぁ、

「キレス、あなたは今回は後方支援で、マスターの警護が主な任務。それに無人島で一日過ごして消耗してるはずよ」

「私も戦いたいんですぅっ!!」

 あれま、ロボ子ちゃん、さっきアステアに助けられたのがちーとばかし、その鬱々の美少女ならではの変な負けず嫌いのプライドに火をつけちゃったかなぁーって。やれやれ、メンヘラちゃんはむずかしい。

「だめよキレス、本部で決めた作戦は勝手に変えられないわ」

「でも──」

「マスターを誰が守るの? あなたさっき、どんなことがあってもマスターを守り抜くと言ってみせたじゃない? あの言葉は偽りなの? 警護に徹して」

「うぅぅ──」

 言葉に詰まって、またまた”鬱々の美少女オーラ”がさらに濃くなっちまった。あぁ、ロボ子ちゃん、こんな時どう声掛けたらええもんか──、この女子達独特の雰囲気の中──女のプライドというか、スクールカーストというか──、そんなののぶつかり合いの中では、案外不器用な俺っち。面目ないっす。

 

 と、その刹那──、

「アステアの言う通りじゃ。万能の精霊は万能故、マスターの警護に徹してほしい」

 といかにもご意見番のようなババア喋りで登場する、アステアの剣の師匠たる天位の剣士キャロルレン。

 見た目はどちらかというとロリキャラっぽい超美少女なのだが、中身は誰よりも年長者らしい、このババ喋り。まったくもって典型的なロリババアキャラである。

 

「キャロルレンさん、うぅぅ──」

 

 キャロルレンに言われれば流石のロボ子も何も言えないだろう。

「しかし、そうじゃな、カミッサの言う通り、此度の超魔は少々手強い、いまカミッサが戦列を離れるのは得策とは言えんな」

「だろ? 早く前線にもどってソルモンテとヘルマを助けなきゃっ!」

「師匠っ! じゃぁどうやってマスターを?」

「ふむ、キレス、おぬしアレを使ってはどうかな? 前世紀の精霊テクノロジーの結晶たるおぬしならできるじゃろて?」

 えっ、アレって、キャロルレンってまさかっ、あのロボ子ちゃんの変態機能をしっとるのかぁーっ??

「うぅぅ、えっとその、次元転送ですか。その──」

「そうじゃ」

「なぬ? じ、次元転送っ??? なんじゃいそれ? オイ、ロボ子ちゃんってば? なんやそれ?」

「次元転送はその名の通り、時空間を移動する能力のことじゃ。つまり、瞬間移動。マスター、おぬしらの世界でいうテレポーテーションというやつかな。異世界や平行世界に行くことも可能かもしれんが、詳しくはキレス本人に聞くのがよかろう」

 なっ? テレポーテーションって今日日言わんやろ。てか、ツッコムところはそこじゃない。

「そんなことできるんかぁっ?! ロボ子、そんな”どこでもドア”的なこともできんのかよっ?!」

「うぅ、その、つまりは、はいぃ、出来ますぅ。別に隠してたわけではないんですぅ。うぅぅ──」

「なんやねんそれ! それやったら別に半日無人島おらんでもすぐ帰れたってことか?」

「うぅぅ、その、原理的、本質的にはそうなのですけど、その、次元転送は傀儡の精霊の持つ特殊能力の中でも最上位の特殊機能で、その、マスタぁーの世界でいう、”どこでもドア”のように気軽に使えるものではないんですぅ。その、多少危険も伴いますし──、うぅぅ」

「危険? どういうことやねん。つまり誤ってうっかりしずかちゃんの入浴中の風呂場に出てまう的なあれか?」

「うぅぅ、その、危険の度合が違いますが、似たようなものといいますか──、例えるならば、ここからお屋敷に帰るのに次元転送を使うというのは、東京から千葉に行くのに、わざわざ飛行機をチャーターして羽田から成田にフライトで行くようなもので、逆に面倒な面やリスクがあるのですぅ。うぅぅ」

「いや、その例え、わかりづらいわ。(てか、羽田とか成田とかよう知ってんなお前)」

 

 ここでご意見番が口を開いた。

 

「要するにじゃ、マスター、屋敷に帰るにしても多少大袈裟な機能を使うということじゃ。じゃが、次元転送は確実に避難出来る。そうじゃろ、キレス。今ここには超魔が2体同時に出現しておる。そして、超魔出現はここだけではない。北の地方にも出現した報告が先ほどあった。こうなればマスターの屋敷近くにも出現する可能性も、無くはないのじゃ」

「師匠っ! それって、一体なにがおこって?」

「アステア、それにカミッサ、此度の戦いはちと気張らんといかんぞ。これほどまでに同時多発的に超魔が出現したのは初めてじゃ。それに、彼奴等め、明らかにマスターを狙っておる。ここはまず精霊達を全員出動させてでも超魔を討伐するのが先決じゃが、同時にマスターを守らなければならん。マスターの守護こそこの世界を救う大儀じゃ。魔獣どもも、我らの力の源がマスターのマナであると気づき始めたかもしれんのう」

「でもよ、超魔が何体いようが、マスターのマナとあたしのこのアーマーがあればちょちょいのちょいさっ!」

「ふむ、その意気じゃ、カミッサ。だが油断は禁物じゃ」

「キレス、よいか、マスターを確実に避難させ、そして魔獣どもの執拗な追跡からも確実に逃れるためには、おぬしの次元転送が必要なんじゃ。やってくれるか」

「は、はいっ! キャロルレンさん」

「確実にマスターを”安全な場所”に避難させるんじゃ。利口なおぬしならわかるじゃろ?」

「フフフ、それに、マスタぁーが”どんなに遠くに”行っても、マナはこのヌシ様人形から受けとれるから、安心してねマスタぁー、フフフ」

 うーむ、なんかそれって、微妙に”亭主元気で留守がいい”みたいなマナさえあればええでぇーみたいな感じするなぁ。俺のチョメチョメも大事やろうてぇっ! てか、そうゆーてな。お願いやぁーっ!

「うぅぅ、わたし頑張りますぅ。あの、でも、その、次元転送には触媒というか、転送される私達を乗せる器が必要なんですが、うぅぅ」

「器? お椀か? てか俺らは一寸法師か?」

「ふむ、あの運休した水上列車が良かろう。あれに乗って行くのじゃ。どうじゃ?」

「あっ、あの列車を、多少大きいですが、はい、やってみますぅっ!」

 ロボ子ちゃんってば、キャロルレンの前では鬱々オーラをすっかり隠して、まぁ朗らかに、素直に応じるんやから。人を選びよってからにぃ、メンヘラちゃんめ。でも確かに、キャロルレンも数少ないロボ子の理解者であったなぁ。

 

「よっし、決まりだなっ! そうとなりゃ、あたしは前線にもどるぜ、ヘルマ達を援護しなきゃっ!」

 といってカミッサは、グワァンっと巨大なアーマーを器用に操り、俺のそばまで寄ってきてチュッと軽く口づけをした。てか、豪快系の女子に不意にチュッとされるの、なんだかこっちが乙女気分になっちまうっちゅーねん。キャハっ! って、キモいか。

 

「マスターっ! サクッと超魔片づけるから、帰ったらアーマードコア、一緒にやろうぜ。いいなっ!」

「おっ、おうよっ! ゲームマスターとも呼ばれるこの俺に対戦で挑むとか、笑止。いつものルールで、負けた方が罰ゲーム”どんなゆうことも聞く”でいいな」

「ははっ! マスターはアクションゲーム下手だからなぁ。じゃあなぁっ!」

 と言って、バシューっと飛んで行ってしまった。

 

「もうっ! カミッサったらズルいわよっ!」

 とアステア。

 

 そんな彼女もつかつかと俺の目の前にきて、そしてじっと俺の目を見つめた。あぁ、美少女にこれほどまでに真剣なまなざしで見つめられるとぉーっ! ジョニーの奴がおっきしちまうっちゅーねん。

 

「マスター、私は剣士だから、魔獣との戦いに行かなければならい。いつもそばにいてあげられなくてごめんね。いつかこの世界から魔獣を全て駆逐して、平和な世の中にしたら、そしたら、ずっと一緒だからね」

 といって、ブチュ―っ! と、それこそオッサンが乙女にするような粘着質なねっちっこいディープキッスをしてくるアステア。これでもかこれでもかと、俺自慢の暴れる鰻がやや押され気味で、だじろぐ程の濃厚さと激しさでもって俺の口内を蹂躙する。おぅふっ! たまらんちぃーっ! 

 

 ただ、ちーとばかし、ロボ子ちゃんの視線がきになるっちゅー、うわぁー、なんや妙なプレッシャーを感じるぅーっ! 独特の鬱々なプレッシャーを──。

 

「ふはぁーっ」

「行ってくるわ、マスター、愛してる」

 

 といってアステアは、剣技飛翔術でシュワっと飛んでいった。

 

 あぅぅ、戦に出る美少女剣士を濃厚なディープキッスで見送るってば、またまた俺が乙女のようにキュンっとなっちまうっちゅーねんっ!! てか、キモいか、やっぱ。

 

「マスター、そろそろ潮時じゃ。敵は待ってくれんぞえ。あの2体以外にもこちらに超魔が向かっているようじゃ」

「おうよっ!」

 てか、キャロルレンは熱いキッスはなしかいな?

 

「ロボ子っ」

「は、はいっ、マスタぁーわたしと一緒に列車の中へ、その、魔力の”気”をためるのに少し時間を下さい」

 といって、この南国リゾートの島々を周回する無人の水上列車に乗り込んだ。水上列車といっても一両だけで、ちょうど渋谷駅前に観光案内所として鎮座する、初代東急5000系電車、通称青ガエルのようなちっこいやつだ。

 

「お、おう。てか、ロボ子、俺はなにもせんでええんか?」

「うぅ、実はわたし、この次元転送を使うのが初めてで、その、手順通りやります。まず気をためて──、マスタぁーはそこで待ってってくださいですぅ、うぅぅ──」

「ほぉ──、」

 とりあえず待つか。

 

 と、そこへふとティルちゃんとフラウがやってきた。

 

「フフフ、そうそう、マスタァ―、いいモノを渡しておくわ。このマリオネットよ。覚えているでしょう? いつぞやか、マスタぁーがあなたの股間のソレでイカ臭くしてくれた、わたしのマリオネット。フフフ」

「あっ! あの時の、ってか、リス公どもとの死闘で助けられた狙撃手のマリオネットっ!!」

「フフフ、そんなこともあったわね。いい、マスタぁー、この子、実はマスタぁーのヌシ様人形と同期できるのよ。フフフ」

「え? なっ、」

「つまりはね、マスタぁーが何処へ行っても、このマリオネットとヌシ様人形を介して通信が可能なのよぉ。この通信はマスターのマナを通して出来るから、次元を超越しても繋がるわ。たとえ異世界に行ったとしても、通信ができるのよぉ。フフフ」

「なっ! つまり、専用回線のスマホ的なやつってことか? てゆーか、なんちゅー便利すぎる設定や」

「フフフ、いいでしょ、これがあれば、実はいつでもマスタぁーと会話もできるわぁ。映像だけど、みんなに会えるってことよぉ。仮に”どんなに遠くへ”行っても、寂しくないでしょ。それに、そもそも──」

 ここで、フラウは少し黙った。

「な、なんだ?」

「フフフ、そう、それにそもそも、ヌシ様人形と同期さえすれば、マスタぁーはこのダンプリ世界に帰ってこれるのだから。フフフ。」

「ん?!」

 

 フラウはどことなく意味深な笑みを浮かべえて、俺にそのマリオネットを渡した。

 そして徐に顔を近づけ、俺の頬に自分の頬をあてるようにして、耳のそばで小さく呟いた。

「キレスちゃんをよろしくね。マスタぁー」

 

 そしてくるっと、それこそ踵を返す如く振り返り、淡々と列車を降りて行った。 

 

 フラウ、お前──。

 

 ふと前を見ると、パタパタとやんわり羽ばたきながら、ティルちゃんが俺の顔の前まできていて。そしてウルウルと泣いていた。

 

「マスタぁー、マスタぁーをこの世界に召喚したのはわたしなんだよぉ。覚えてる?」

「お、おうよ、覚えてるってば、ティルちゃんよ。初めてダンプリ世界に来た時のことも、もうそりゃ昨日のことのようにな」

「もうっ、そんなこと言って、いつもわたしを屋敷において、遠くに行っちゃうんだから」

「てか、そりゃ、魔獣の討伐に出かけなあかんからやろて。ティルちゃんは戦闘タイプの精霊やないから、仕方ないやん」

「ふにゅぅ、マスタぁーはティルなんてどうでもいいんだ」

「いや、そうやないってばよ、俺はいっつもティルちゃんで癒されてるっちゅーねん。いっつも討伐と、ほらアレや、精霊ちゃん達へマナの補充でやな、毎晩チョメチョメしてやなぁ、忙しい毎日おくっとる俺にとって、ティルちゃんは最高の癒しなんやでぇ、ほんまに。ほら、俺の首にかかっとるこのロケットに、ティルちゃんの写真が入っとんねんから」

 てゆーか、もちろんティルちゃんの写真も入ってるが、メインは最愛の正妻、ウェンディの写真であることは絶対に秘密である。

 

「ほ、ほんとにぃ?」

「おうよ、ほんまやてぇ」

「じゃぁ、お屋敷に戻ったら、一番にあたしを待っててね。ティルもすぐ帰るから、絶対にだよ。一番にね、待っててね。どこにも行っちゃやだよ。そもそも、あたしが召喚したマスターなんだから、わたしとずっと一緒にいなくちゃいけないんだからねっ」

「おうっ! これから先もずっと、ティルちゃんと一緒や。それに、このダンプリ世界の精霊のみんなと一緒やからな。俺はこの世界に骨を埋める覚悟を、この前の”俺召喚一年目おめでとうパーティー”でそう決めたんや。腹を括ったんやでぇっ! だから、ティル、ちょっとばかし魔獣どもの追跡から逃れるために、遠くに避難したりするかもやけど、絶対に最後の最後は、俺はここに戻てくる。そして、このダンプリ世界を永遠の平和に導こうな。漢の約束やっ!」

「うんっ!! 分かったマスタぁ―っ! 絶対だよぉっ!!」

「おうよっ!!!」

 

 そして、ティルちゃんは俺の頬にチュッと小さくキスをして、そして愛らしくパタパタと飛んで列車を降りて行った。

 

 なんだか、永遠の別れみたいな雰囲気になってきたな。おい。

 

 が、しかし、この次元転送、それにだ、キャロルレンやフラウの物言い──、

 

 アステアやカミッサ、それにティルちゃんもかな? 彼女等は気がついていないだろうが、この状況、この俺がピンとこない訳はない。

 

 そうなのだ、傀儡の精霊キレスの究極の特殊能力”次元転送”これはただ単にお屋敷に戻るわけではない。

 

 俺の存在に気づき始めた魔獣どもから”確実”に俺を守る方法は──、

 

 そう、この俺が再び異世界に旅立つことが”一番確実”なのだ。

 

 ロボ子ちゃんもそのことを理解して──。

 

 俺は彼女に向き直った。 

 

 彼女はただひたすらに祈るように、魔力をためている。徐々に光を帯び始めるその体。

 

 さて、俺はどこに行くのだろうか。

 

 緊急事態というのは、本当に非情なまでに考える余裕も暇もない。

 

 列車の窓越しに、ウルウルと目に涙をためたティルちゃんとフラウがじっとこちらを見つめている。

 少し離れたところから、さり気なく手をあげてウインクをし、シュワっと飛んで超魔との戦闘に戻ったキャロルレン。クールな彼女らしい。

 

 俺はふと、この列車の窓から見えるダンプリ世界の風景に目をやった。

  

 海も空も森の木々も、すべてが美しい。後は魔獣さえいなければ──。

 

 その刹那──、

 

 ふと、俺の”心の奥底のリビドーの泉”にイメージが飛び込んできた。

「マスター、ほんとうに行ってしまうのね。ズルい人ね。人の心をこれほどまでに奪っておきながら、遠くにいってしまうなんて。許せないわ。だから、絶対に帰ってくるのよ。帰ってこないと、あなたの”心の奥底の泉”に、わたし、引っ越しして居座るんだから。そして泉をかき混ぜて聖人君主のように清らかにしちゃうの。そんなの嫌でしょ? いいこと、約束よ。可愛い子供には旅をさせよね。許してあげる。最愛のひと、マスター。愛してる」

 

 おおおおおっ!! こ、これはっ!! ウェンディちゃんの心のイメージ。

 そうなのだ、彼女は人の心を読むことが出来る、泉の精霊、人の心の泉をも見通す力を持ったウェンディちゃんだからこそ、離れていても心で会話ができるのだ。

 

「ウェンディ、ありがとう」

 

 あぁ、最愛の正妻、俺がこの世界でたった一人、選んだ女性、ウェンディ。彼女のためにも俺はこの世界を平和にして、そして帰ってこなければならない。

 

 

 そう思うと、ふと俺の脳裏にあの”メロディ”が流れてきた。

 

 チャラン♪ ティントン♪ ティントン♪ ティントン♪ チャラン♪ ティントン♪ ティントン♪ ティントン♪ タッタタッタタタンッ♪ チャラン♪ ティントン♪ ティトォティトォティン♪ タッ♪ タッタァーン♪ チャン♪

 

 

 汽車を待つ君の横で僕はぁ♪ 股間ぉ♪ 気にしてるぅ♪

 季節を問わずいつもぉ♪ さかってるぅ♪

「ダンプリでぇこくチョメはこれがぁ最後ねぇ」とぉ♪ さみしそうにぃ♪ 君がぁつぶやくぅ♪

 なごりぃ汁もぉ♪ たれるぅ時をぉ知りぃ♪

 ふざけぇすぎぃたぁ♪ チョメチョメのぉあとでぇ♪

 

 今ぁ♪ アクメ来てぇ♪ 君はぁ♪ きれいにぃ♪ なったぁ♪

 去年よりぃ♪ ずっとぉ♪ きれいにぃ♪ なったァァァ♪

 

 チャラチャラチャラチャララン♪ チャラン♪ ティントン♪ ティントン♪ ティントン♪ チャラン♪ ティントン♪ ティントン♪ ティントン♪ タッタタッタタタンッ♪ チャラン♪ ティントン♪ ティトォティトォティン♪

 

 

 動き始めたぁ汽車の窓にぃ♪ 顔をぉつけぇてぇ♪

 ティルが何かぁ言おうとぉしているぅ♪

 ティルの唇が「さようなら」とぉ♪ 動くぅ♪ ことぉがぁ♪

 こわくてぇ♪ 下をぉむいぃてたぁ♪

 時がぁ♪ 行けばぁ♪ 幼いぃ君もぉ♪ アクメぇおぼえるとぉ♪ 気づかないぃままぁ♪

 

 今ぁ♪ アクメ来てぇ♪ 君はぁ♪ きれいにぃ♪ なったぁ♪

 去年よりぃ♪ ずっとぉ♪ きれいにぃ♪ なったァァァ♪

 

 タタトン♪ ティトトン♪ トン♪ ティトトン♪ トン♪ ティトトンティン♪

 

 景色がぁ去ったぁ車窓にぃ残りぃ♪

 落ちては糸引くぅ汁を見ていたぁ♪

 今ぁ♪ アクメ来てぇ♪ 君はぁ♪ きれいにぃ♪ なったぁ♪

 去年よりぃ♪ ずっとぉ♪ きれいにぃ♪ なったァァァ♪

 

 去年よりぃ♪ ずっとぉ♪ きれいにぃ♪ なったァァァ♪

 去年よりぃ♪ ずっとぉ♪ きれいにぃ♪ なったァァァ♪

 

 

 俺は心の奥底のリビドーの泉の、その奥底から、溢れ出る感情のままに、溢れ出る漢汁という汁のそのこぼれ落ちる感情そのままに、熱く熱く歌ったのだった。

 

 

 そう、フォーク界の希代の名曲「なごり雪」、その俺流「なごり汁」バージョンを、それこそ股間の相棒17センチのジョニーもそうだが、俺自身もマジで号泣し、漢汁という汁すべてを垂れ流しながら──。

(なごり雪についての思いは後述しますね 注1)

 

 そして──、 

 

 いつの間にやら、景色は真っ白な乳白色の霧に包まれていた。

 

 もうティルちゃんのお顔も、ダンプリ世界の風景も見えない。

 

 あぁ、俺は、ほんとうに、とうとう、心の準備もないままに、ダンプリ世界から離れてしまったんだ──。

 

 南国リゾートに来た時には、露ほども考えていなかった──、この旅。

 

 遠く遠く、とてつもなく遠いところまで離れてしまうのかもしれない。

 

 或は、ひょっとすると、二度と戻れないのかもしれない──、

 

 そんな途方もない不安が、ここ乳白色の霧を眺める俺を襲った。

 

 召喚されて、そして多くの精霊達と一緒に、必死に戦い、至上の愛を掴んだダンプリ世界を、俺は──、

 

 これから俺はいったい──。

 

 その刹那──、

 

「うぅぅ、ま、ま、マスタぁー、その、あの、マナが、マナが、ちょっと足りないですぅ。その、うぅぅ」

 教会で神に祈りをささげるシスターのごとく、まさに一心不乱に、ひしと手を組んで俯き、直立不動で固まっていたロボ子ちゃんが、こちらに向き直り言った。

 

 そうだっ! 感傷に浸っている場合ではないっ! この旅も、そもそもはダンプリ世界を救うためなんだっ! そして、俺以上に不安を抱えている乙女がここにいるっ! ロボ子っ! ダンプリ世界の精霊である彼女はもちろん異世界に行ったことなどないだろうに。ここは俺がビッシと、異世界召喚経験者としてしっかりせねば、そして、俺の方こそ、彼女を支えなければならんっ!

 

「なんやてぇっ? どないしたらええや?」

「そ、そのぉ、あのぉ、キ、キ、(蚊の鳴くような声で)キスしてくださいですぅ。うぅぅ──」

「な? なんやてぇ? おまっ、この期に及んで、そんな蚊の鳴くような声でゆうても聴こえへんでぇっ!」

「うぅぅ──」

「アステアに、てか、ダンプリ世界の精霊のみんなに誓ったんやろ、俺を絶対に守りぬくてぇ、ええ?」

「うぅぅ、マスタぁー、キモ豚マスタぁー、キ、キ、キスしてくださいですぅっ!! 今すぐわたしにキスしてくださいですぅっ!!!」

「おぅよっ! マナの補給やな。まかせんしゃいてぇっ!! お前への愛のマナは特別やでぇ、ロボ子ちゃんてぇ、俺の濃厚な”愛”うけとってぇな」

 

 っと、俺は暴れる鰻をベロンベロンと暴れさせ、ロボ子ちゃんの前でド変態デモンストレーションを見せつけてから、

「ほら、ロボ子、舌出して」

 と言って、ブチューッ!!! と、これでもかとディープキッスをした。

「うっふっ、まふたぁー、はげしっ、うっふっ、はぅっ、キモ豚まふたぁー、うっふっ」

 ロボ子ちゃんの訴えを遮るように、俺は激しくディープキッスしまくった。

「おぅふっ! ロボ子ぉっ!! おぅふっ! 俺のロボ子ぉっ! こ、これっ、これからもっ、二人っきりのっ、二人っきりのっ旅がっ、しばらくっ、旅が続くけどっ、よっ、よろしくなぁっ、ロボよぉっ! この旅でっも、俺っ、俺はぁっ、おまっ、お前をっ、愛しっ、愛しヌクでぇっ!! おぅふっ! ロボ子ぉぉっ!!!」

 

 愛しのロボ子とのマナ補充ディープキッスをしながら、俺はロボ子に愛の宣言をしたのだった。

 

「はぅっ、うぅぅっ、ド変態っ、キモっ、ド変態キモっ、ド変態キモ豚まふたぁー、なんだからぁっ、はぅっ、うぅぅっ──」

 

 いやはや、ほんまにほんま、俺はどこに行くんやろうか。

 

 てか、普通にお屋敷に着いたらどうしよう。ロボ子ちゃんのことやから、そんなボケかましてくれるかもしれんなぁ。

 

 でも、ま、どんな世界に辿り着こうが、ロボ子と二人ならマジで心配ない。きっと俺はどこでもやっていけるだろう。これほどまでにお互いに心を通じ合わせたロボ子となら、どこだって──。

 

 銀髪の美少女精霊であり鬱々の美少女、ロボ子こと傀儡の精霊キレスのお口の中を、ヌルンヌルンと俺自慢の暴れる鰻で弄りながら、俺は俺自身を奮い立たせる気概でもって、こう考えたのだった。

 

 もちろん、熟練炭坑夫の強腰も、股間の相棒17センチのジョニーも、てか、ジョニーのやつなんてこれからどんな世界でどんな美少女に会えるんやろうかと、先ほどまでの「なごり汁」とは明らかに違う、欲望ブリブリの期待値Max、まさに漢の我慢汁をドバドバと垂れ流し、ビクンビクンと跳ねるのであった。

 ってか、お前ってやつは、いつでもどこでも、エロいことばっか考えよってからにぃっ! 

 

 ま、だが、そんな俺自身、人生エロいことばかりがモットーではあるんだけれども。

 

 そう、エロが無ければ人生は無い。ノーエロ、ノーライフだっ!!

 

 

 

 あと、あくまで因みにだが、

 

 あくまで因みにだが、この次元転送こそが、ダンプリ世界を飛び越えて展開されるであろう新ストーリーシリーズ! 「日本一うわぁーな男シリーズ」の幕明けであることは、

 

 ま、言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

注1)「なごり雪」は、フォーク界の歴史にその名を刻むグループ「かぐや姫」の名曲であり大ヒット曲であるが、名曲ゆえ多くのミュージシャンによってカバーされてきた。もちろん「かぐや姫」の伊勢正三氏のオリジナルバーションも素晴らしいが、フォーク界の歌姫ことイルカさんのカバーも大ヒットして有名であろう。

 今回はどちらかというと、イルカさんバージョン風に歌った俺であった。

 

 

 

 

 

 

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