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健太が光の中へと消えた次の瞬間、彼は再び、あの巨大な楠(くすのき)の根元に立っていた。世界は相変わらず穏やかで、濃い緑の香りが満ちているが、季節は前回よりも少し進み、風は涼しさを増していた。
(また、ここに戻ったのか……)
脳裏に、新たな記憶が流れ込む。
さつきは遠方の大学へ進学し、古い家には現在、妹のメイが一人で住んでいる。
健太は、昔さつきと共に遊んだ「幼馴染の兄のような存在」として、夏休みを利用して家に戻ってきた。
メイは18歳。幼い頃の魔法の記憶を「ただの子供の夢だった」と疑い始めている。
古い家の縁側に、一人の少女が座っていた。Tシャツにジーンズというラフな服装。幼い頃の面影を残しつつも、身長が伸び、複雑な寂しさを瞳に宿している。
「メイ」健太はそっと声をかけた。
メイは顔を上げ、一瞬驚きに目を見開いたが、すぐに表情を曇らせた。
「……ケンタ兄。おかえり」メイの声は、どこか冷めていた。「さつき姉ちゃんに会いに来たんでしょう? 姉ちゃんなら、大学よ」
「違うよ。君に会いに来たんだ」健太はメイの隣に腰掛けた。「どうしたんだ? 随分と、大人びた顔をするようになったな」
「大人になったのよ。あの夏みたいに、『信じれば魔法が起こる』なんて、馬鹿なこと、もう考えなくなったから」メイはそう言って、隣に生えている草を苛立たしげに引きちぎった。「さつき姉ちゃんは、今でもトトロを信じてる。でも私は……全部夢だったんだって、わかっちゃったの」
メイは、幼い頃の純粋な信仰を失ったことによる、深い喪失感を抱えていた。その寂しさが、彼女を大人びさせ、孤独にさせている。
その夜、古い家の縁側で、健太はメイと並んで座っていた。空は満月。巨大な楠の影が、闇の中にぼんやりと浮かび上がっている。
「メイ。君が信じられなくても、俺は信じているよ」
「何が?」
「あの夏、君たちが会った魔法を。そして、君がどれだけ純粋な心の持ち主だったかを」健太はメイの手を取り、優しく撫でた。「君の心の『信じる気持ち』が、トトロを呼んだんだ。その気持ちは、まだ君の中に残っている」
メイの瞳が、僅かに潤んだ。彼女は、現実主義の鎧を脱ぎ捨て、誰かに全てを肯定してほしいという、少女の願いを健太に投げかけた。
「……ケンタ兄は、今でも、私の大切な存在なの?」
「もちろん、そうだ。ずっと、君のことが大切だった」
健太はメイをそっと抱き寄せ、唇を重ねた。さつきとのキスが約束だったとすれば、メイとのキスは、失われた純粋さへの回帰を求める、切実なものだった。
メイは、幼い頃の兄への憧れと、18歳の女性としての情愛が混ざり合い、健太の愛に身を委ねた。彼女の心に巣食っていた「魔法の不在」という寂しさは、健太の温もりと愛によって、急速に満たされていく。
縁側は、あの夏の雨の日、トトロと出会ったバス停の静寂のように、二人だけの世界になった。健太は、メイの心の中に再び「信じる力」を植え付けるかのように、全身全霊で彼女の全てを受け入れた。
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メイは健太の熱い抱擁の中で、自らTシャツを脱ぎ捨て、彼に自分の全てをさらけ出した。健太は、彼女の「大人になりたくない」という無意識の拒絶と、「愛によって満たされたい」という女性としての本能がせめぎ合っているのを感じ取った。
「ケンタ兄……私を、あの夏に連れて行って……」
彼女の囁きは、現実への失望からの一時的な逃避を求めていた。健太は、彼女の瞳に映る幼い日の面影と現在の女性としての輝きを同時に愛した。彼はメイを横抱きにし、そのまま畳の上に優しく横たえた。
夜の帳が降りた古い家の中で、二人は互いの服を脱ぎ捨て、肌を重ねた。メイの肌は、さつきとは違う、まだ熟していない、清らかな夏の果実のような匂いがした。
健太は、メイが抱える「魔法の不在」という心の呪縛を、現実の愛の情熱で上書きすることを決意した。彼は、ゆっくりと、しかし確実に、メイの体と一つになった。
「んんっ……あぁ……」
メイは、初めての衝動と兄のような存在への愛が混ざり合い、戸惑いの声を上げた。健太の浄化の精気が彼女の奥深くに注がれるたび、メイは、幼い頃の純粋な歓びと、女性としての悦びが、同じ熱を帯びていることを知った。
「ケンタ兄!……私……もう、怖くない……」
彼女の叫びは、魔法を失うことへの恐れから、真の愛を見つけたことへの歓喜へと変わった。メイは、健太の愛こそが、永遠に続く、最も確かな魔法であると理解した。彼女の絶頂の瞬間、巨大な楠から吹く夜風が、二人の体を優しく撫でた。
メイは、愛に満たされた瞳で健太を見つめ、安堵の微笑みを浮かべた。彼女は、大人になっても、愛の純粋さは失われないという真実を、健太との連帯によって学んだのだった。
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満月の光が、優しく二人を包み込んでいた。メイは、健太の胸にそっと顔を埋め、まるで時が戻ったかのように、幼い頃と同じ絶対的な安堵の中で眠っている。
やがて、メイが目を覚まし、健太の胸元に頬を擦り寄せた。
「……ねぇ、ケンタ兄」メイは、掠れた声で囁いた。「今なら、またトトロに会える気がするわ。だって、こんなに優しい魔法があるんだもの」
その言葉に、健太は深い満足感を覚えた。彼女の信仰は回復したのだ。
健太の体から、再び黄金の光が溢れ出した。メイは目を開け、その光を見て、驚く代わりに静かな微笑みを浮かべた。
「行くのね……。今度は、誰かの魔法を、守りに行くんでしょう?」
「ああ。きっとそうだ」健太はメイの額にキスをした。「さようなら、メイ。君の魔法は永遠だ」
メイは力強く頷き、光の中へと消えていく健太を見送った。
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次の瞬間、健太は、古い洋館の屋根裏部屋のような、薄暗い空間に立っていた。周囲には、アンティークの家具や、様々な古い道具が置かれている。風が吹き込み、埃の匂いと、微かな潮の香りが混ざり合っていた。
そして、その部屋の隅に、大きな黒い猫が座り込んでいるのが見えた。その隣で、一人の少女が、古びたラジオの修理道具を広げている。彼女の髪は短く、シンプルなワンピースを着ているが、その瞳には自立心と、世界への強い好奇心が宿っている。
「誰? ここは私の部屋よ」少女は警戒心を露わにした。
「キキ・・・」
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