性ホルモンを弄ってヒロアカ無双 作:おろしポン酢
ーー私と
その理由は
どう考えても、
「
それは明確な裏切りだった。
ヒーロー志望の私が取り決めやルールを守るのは当たり前のこと。
彼は私からの信頼と愛情を裏切ったのだから、私達が離別するのは当然の流れだった。
パンッ!!
私は
「…………最低」
それが私が彼に言った最後のセリフ。
私達の恋人関係が解消した瞬間だった。
最後まで後ろを振り返らず、私はそれを離縁状にして彼の下から去った。
これは私の譲れない女としてのプライド。
譲歩するつもりなんて一切ない。
「ーーさて、準備は整ったな」
……だから、そんな楽しげな彼の言葉を聞き逃してしまうのは、仕方のないことだったのだと思う。
【❤︎】
中学に入学して2週間が経つ頃には、私にも友達ができた。
「
「ん、行く」
小学校の時からの友達は誰も居ない。
中学受験をしたのだから、当たり前と言えば当たり前だけど。
「(このセーラー服にも慣れてきた)」
ベーシックな紺色のスカートとセーラーカラーに、赤いスカーフ、そして白いブラウス。
学校独自の色を出すことよりも、伝統を重んじる私立中学がこの学校だった。
「(お洒落でルーズソックスとかニーハイとかは自由だし、裾を折るのも自由。変に縛り付けると非行に走りやすいからっていう教育方針らしい……まあ、本当に非行に走って成績を落としたら退学させられるから、それで学校とは無関係ってだけなんだろうけど)」
実は生徒が誘惑に耐えられるかどうかを見極めているという噂。
学校から命じられた訳でもなく、自分で決めてレールから外れた以上は言い訳もできないのだから、文句の付けようもない。
言ってしまえば、自由への誘惑とそれにちゃんとした距離感で付き合えるかのテスト。
「(『ヴィランになったのは学生時代に過剰なまでに縛り付け過ぎたからだ』なんて、醜聞が広まれば学校のこれからに関わる。それこそ、『ヒーロー社会』である現代では『ヴィランを生み出す温床になる』という醜聞は、社会全体からバッシングされかねないほどの苛烈な事態になりやすい……だからこそ、
リスクマネジメントというやつなのだろう。
そんなことを思いながら、教科書を持ってこの中学で友達になった女の子達と教室を移動する。
「
「……『
美髪シャンプー、『La Hormona』。
「あっ、それ知ってる!確か、最近話題になってるやつだよね!芸能人も愛用してるってCMでやってるの見たよ!」
「ん」
そんな女の子同士の会話。
少し前まで
周りに牽制を露骨にしていたのだからそうなるのも当然だし、私もそれでいいと思っていた。
彼との時間の方が何百倍も価値があるのだと、確信をしていたから。
別クラスの前を横切ると、そこには
「ショウさ……君っ!お弁当を作ってきました。一緒に食べましょう!」
あの人は笑顔で
セーラー服に明るい茶色のカーディガンを羽織り、黒のニーハイを履いた服装。
おしゃべりで可愛くて……胸も多分私よりも大きい人。
……そして、私から
「えっと、
「もしかして、何かあったとか?」
「!……ううん」
どうやら無意識に立ち止まって睨み付けてしまっていたらしい。
この子達には私と
まだ友人関係を初めて1月も経っていないことを考えると、その様なプライベートな事を話すのは気か引けた。
それこそ、『男に捨てられて別の女に奪われた』なんて話が広まれば、私のクラスでの立ち位置が決まってしまう。
そんな煩わしいのは嫌だ。
「てか、
杏子色の髪をウェーブさせたセンター分けのミディアムヘア。
胸当てを付けず谷間を見せ付けるように露出させ、ルーズソックスを履いた服装の女子。
タメ口であることからあの先輩の友達か何かだと思う。
「ケミィちゃんも一緒に食べましょう!」
「おしどりシェア空間に罪深カットインでドウハン良き?」
「みんなで食べた方が美味しいです!|ショウ君もいいですよね?」
「ああ、全然構わない。ご一緒にいかがですか?」
?……よく分からない言葉を使う人みたい。
ヒーローを目指す人の中にはキャラ付けをする人も居るから、あの人もそうなのかも。
「オケオケとか超懐でマジ足向寝ゲンキン。ハンサム君、相席よろぴー」
「ええ、よろしくお願いします」
下級生の教室にやって来る女子の先輩達も、そんな状況の中心に居る男子も周りから奇異に映っているのに、当人達はまるで気にしていない。
教室から出て3人で食堂の方に歩いていく。
つまり、私が居る方向に。
「っ……!」
私は取り繕う。
何でもないかのように、他人のフリ。
そんな私と
「ーーふふんっ♪」
その顔には申し訳なさなんて欠片もない、幸せそうな顔をした女が居た。
表情に滲み出すのは優越感。
良い男を別の女から奪ってやったのだという、女としての自尊心に溢れた顔。
「ッ……!!」
ギリィッ!と、奥歯を噛み締める。
明らかな挑発。
それでも、今ここで何かを言っても負け犬の遠吠えでしかない。
そんな惨めな女になるのは嫌だ。
「な、なんか、スゴいインパクトのある3人だったね」
「う、うん。大人な雰囲気のある美男美女……芸能人みたいだった」
「スゴいよね!中学生って大人ーって感じ!」
「……ん」
そんな会話をしている友人達に対して、私はいつもの無表情でなんとかやり過ごすと、友達と一緒に購買に向かう。
でも、その胸には拭いきれない重く滲むような敗北感が漂っていた。
「(
【❤︎❤︎】
そして、1ヶ月後。
私に新しい恋人ができた。
「えーと、
「ん」
中肉中背の可もなく不可もない黒髪眼鏡の見た目。
成績は上位らしいけど運動はそこそこ。
〈個性〉もそこまで使えるわけでもない普通のもの。
そんな突出した魅力は無い人だった。
そんな彼を彼氏にした理由は『誠実さ』。
「(彼が告白してきた男子の中で、一番ちゃんと告白をしてきた同じクラスの人)」
自身の顔にはそれなりに整っている自信があったことと、
その中から私はできるだけ誠実そうな彼を彼氏に選んだーーでも、そのことを誰も知らない。
何故なら、それこそが私が提示した彼と付き合うことの条件だから。
「(『小学生のときに彼氏ができてイジメられた』、とか。『将来はヒーローになるつもりだから、スキャンダルになりかねない噂は無くしておきたい』だとか、彼には適当な理由の嘘を付いた……多分だけど、
見下されるのが分かってしまう。
だからこそ、
「(それに、嘘が本当になることもある筈。彼の誠実さと真面目さに惹かれるかもしれない)」
私は弱かった。
振られた心の傷を癒すには誰かに寄り掛からないと駄目だった。
でも、この宿り木がいつか本物になってくれる日もあるかもしれない。
「(……大丈夫。彼と時間が解決してくれる)」
私はそう思っていた。
【❤︎❤︎❤︎】
それはとある日のこと。
彼氏と学校から離れた場所でのデート。
髪型をヘアアレンジで変えた三つ編みにし、伊達眼鏡を掛けた簡単な変装でデートをする。
自分でもどうしてここまで露見しないようにしているのかは、分かっていない。
それでも、こうしないと落ち着かないのだから仕方がなかった。
「(彼は私がデートに気合いを入れて来たみたいに思ってるみたいだけど)」
初心で可愛くて……そして、滑稽に見えてしまった。
こんなことでそんなに動揺するなんて、少しチョロ過ぎる。
「(
ふと、そんなことを思ってしまい頭を振る。
「(今さらそんなことを思うなんて……もう、終わった事なのに。未練がある?浮気をされたのに?)」
あれほど失望して軽蔑したというのに、まだその相手の事を忘れられないなんてどうかしている。
「(でも、このデートは外れかも)」
彼に誘われてきたこの遊園地のデートもそこまで面白くない。
人が多いし、待ち時間が長いし、絶叫系は髪が乱れやすいし……遊園地がデートスポットの定番みたいなのは止めた方が良いと思う。
複数人でワイワイガヤガヤするための場所だと個人的に思ってる。
遊園地でデートをする感覚って、大人数でやるババ抜きを永遠と2人でやり続けるみたいな歯痒い感じ。
しかも、ずっと陽射しがある中で立ってるから疲れるし……デートスポットとして不適格な気がする。
「えーと、その今日は人が多いね。待ち時間が1時間超えが当たり前ってビックリしちゃったよ」
「遊園地ではよくある」
「そうなんだね。ごめん、知らなかった。次はちゃんと調べるよ」
「ん」
「…………えっと……絶叫系とか大丈夫だった?すごい迫力だったけど」
「ん」
「えーと、その……は、はは……」
「…………」
私は口下手だ。
それでも、告白してきたのはそっちなんだから、その程度は理解しているはず。
だから、私を楽しませるトークデッキを用意するか、そもそもこう言った時間が生まれないデートプランにして欲しかった。
こんなに注文を付ける私は我が
けど、それにもう慣れてしまっている。
「(
彼は私をリードするのが上手かった。
面白い話題にドキドキするような振る舞い。
まるで、誰かから教えられたかのように
「(はぁ……もういい)」
私は彼の袖を掴んだ。
「ん?どうかした?」
「ん」
スマホのメモ帳を見せる。
「『疲れた』……あっ!ご、ごめんっ!どこかのお店で休もうか?」
「ん」
フルフルと頭を振る。
私がしたいのは疲労が溜まったから疲れを取りたいからじゃない。
「『もう帰ろう』……ええっ!?あっ、いやでも…………うん……分かった。帰ろうか……」
何か言おうとした彼だけど、このデートに彼も気まずさを抱いていたみたいで結局は納得していた。
肩を落とす彼を見てこのまま解散するのもどこか後ろめたいし……私としてもこのまま解散したら、どうして彼と付き合いこうしてデートをしたか分からない。
私はまた彼にスマホの画面を見せる。
「え?何々……って、ええっ!?」
目を見開いて驚く彼。
私がスマホに書いたのは今までの清楚としての振る舞いをとっ払うもの。
『今日と明日はご両親が居ないって言っていたよね?泊まっていってもいい?』という文面だった。
驚きながらも期待と興奮で赤面している彼を上目遣いで見ながら、クイクイと再び袖を引いて遊園地の出口に身体を動かす。
「ん」
彼の硬直は私のその声無き声で終わった。
【❤︎❤︎❤︎❤︎】
彼の家は普通の一軒家。
「(……比べる癖をどうにかしないと)」
それこそ、現役のプロヒーローでも見劣りしないのは一体何人居るのかという話だ。
決して、緊張してベッド上で固くなっている彼が特別駄目というわけではない。
「ゆ、
「ん」
彼は恐る恐る私の態度を伺ってくる。
突然の展開にたじろいでいる彼を見ながら、私は考えを巡らす。
「(
だから、彼の家にやって来た。
全てを終わらせて新しく始めるために。
「ん」
「えっ!?いや、それ……」
目を
それが意味することが分からないわけもない。
彼が慌てふためいていることが分かった。
彼も覚悟を決めたのか、私の頬に手で触れる。
「ん……」
キスをされた。
恋人同士がするキス。
新しい恋人と唇を重ねる愛情表現。
私がそれに思ったことは1つだけ。
「(……つまらないお子様のキス。
私は彼にまた1つ勝手に失望した。
身体は完全に堕ちきってるので、言動が屑です。
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