自己紹介しよう。私の名前はアンナ、将来誰もが目を奪われるであろう美女に成長する事が確約されていると自負している孤児だ
そんな私が暮らしている国の名は『ルイワ聖王国』。世界に四つしかない聖王国と呼ばれる国の一つで、魔物が湧いて出る『大穴』から世界を護るという重要な役目を持った国でもある
聖王国なんて大層な名前で呼ばれてるが、その実態はバカでかい国全体で詐欺盗み暴力殺人レイプ等々⋯この世の全ての犯罪行為が日常茶飯事になっているという最低な国だ。聖王国ならぬスラム王国である。こんな国を作ったとされる『セラーカ』とかいう女神もクソヤローに違いないだろう
そんな掃き溜めの様な国で盗みやゴミ漁りをしながらその日暮らしをしていた私はある日、ヘマをやらかして餓死しかけていた。ついに命運尽きたか私のような美少女の死は世界にとっての損失だなんて事を考えていたその時────────
「ねぇあなた、大丈夫!?司祭様、こちらに!女の子が倒れています!」
「あらあら⋯意識はあるみたいね。もう大丈夫ですよ。さあ、水と食べ物をどうぞ」
『フリセラ教』とかいう、行き場の無い女の子達が寄り添ってできた宗教団体に助けられた。やはり天は美少女を見捨てないんだそっちにはまだ行かねーぞと心の中でこの国の神に向けて中指を立てつつ、私は目の前の司祭と呼ばれた女性の手から食いもんをかっさらって礼を言い即座にその場を後にした
三日ぶりの食事で腹を満たし、一息ついた私はさっきのフリセラ教と呼ばれる集団について考えた。全員が黒い頭巾に黒いローブの様な質素な服を着て、自分達は神の使いであると信じて優しい顔でこちらに微笑みかける少女達のあの姿⋯⋯崇めている神がこの国を作ったクソヤローであることに目をつぶれば、あれこそ天使に違いないと私は思った
(糞みてぇなこの国で良い人であろうとするとか、なんて素晴らしいんだ。あんな人達がもし汚いおっさんとかに陵辱なんてされたりしたら─────あー⋯結構イけるな?)
賞賛の言葉と同時に、そんな天使のような彼女らが汚されるのを見てみたい⋯と、私は思ってしまった。その時の私は、心の広さと優しさは魔物の湧き出る大穴より広く深いはずの自分に、そのような悪魔的な考えを思い付くとは思っていなかった。自分で自分の発想に驚いたくらいだ。まさしく恩を仇で返す所業⋯⋯許される筈が無い
(あー駄目だ⋯あの神に仕えるシスター達のあられもない姿を想像しただけでムラッとしてきた⋯⋯チンポ突っ込まれながら必死に神に祈り縋る姿が見てぇ⋯!)
それでも一度思い付いてしまったら、頭の中からその考えを消し去る事は出来なかった。どうするべきかと脳内で葛藤すること数分、考えに考え抜いた私の脳内に、ある天才的な閃きが降りてきた
「私がシスターになって汚されれば解決じゃね⋯?」
自身がシスターになればわざわざ他の奴らを犠牲にせずに済むし、シスターが汚されるという私の目的も達成できる。何よりこの国で崇められてる
そうと決まれば善は急げと、私はその日のうちにこの国で一番大きい大聖堂の扉を叩き、晴れてシスターの一員となったのだった
◇◆◇◆◇◆
そして私がシスターになって二週間が経った
「ハァ~めんどくせぇ⋯⋯⋯」
「アンナちゃんどうしたの?早く行こー!」
「へ~い⋯」
私は新人シスターとして、他の新人シスター十数人と一緒に広場で炊き出しの配給を行っていた。他の子に聞こえないよう小さい声で悪態をつきながら座り込む浮浪者の傍に食べ物を置いていく。とりあえずシスターになって一つわかったことがある⋯⋯それは思ったより一人行動する隙がないという事だ
新人は必ず数人~十数人単位で動くよう言われており、食事、水浴びから就寝に至るまで必ず誰かと行動するよう徹底されていた。こんな国だ、何が起きても対処できるように用心するのはいい事だが、少し窮屈過ぎないかと私は思う
「皆様、どうぞこちらにお並びくださいませ!」
「押さないで!大丈夫、ここにいる皆に充分行き渡る分の食べ物がありますから!」
「はい、どうぞ。足りなかったらおかわりしてくださいね」
(張り切ってんなぁ、司祭サマ達⋯)
そして極めつけは、行列を作っている浮浪者達に食べ物を手渡している司祭と呼ばれる、所謂上司で先輩のシスター達の存在だった。新人シスターが十数人で動く時は、必ず司祭が数人監督役として付けられる。司祭は熱心な信者や人々に何かしら大きな貢献をしたシスターがなれる班長的なモノで、基本決まり事に厳しい奴らだ。もし決まり事を破ろうもんなら説教と罰が待っている。つまり私の天敵である(もう既に何度か罰を受けてる)
司祭達は見えるところに必ず徽章を身に付けているから、ひと目でそう分かるのがせめてもの救いだった。なるべく近づかないで済むからな
(自慢げに付けてる徽章が憎たらしいぜ⋯⋯見てろよ、お前らに私の目的の邪魔はさせねぇからな!)
私は食べ物を配る浮浪者を探すふりをしながら少しづつ広場から離れていく。そして細い通路の前に差し掛かった時、一気に走り出してその場を抜け出した
「あら?今の子は⋯⋯⋯⋯⋯」
◇◆◇◆◇◆
「ハッ⋯ハッ⋯!ど、どうだ。抜け出してやったぜ⋯!」
気付けば人気の無い路地裏までやって来た私はそこで一息を着く
「静かだ⋯誰もいねぇ、が⋯⋯どれどれ」
「あん♡あっ♡あっ♡すごっ♡♡もっと♡♡もっとぉ♡♡♡」
「おーヤッてるヤッてる。昼間っからお盛んだねぇ」
耳をすませば女性の嬌声が聴こえてくる。おそらく周りの建物のどこかでハッスルしてるのだろう。それとつい昼間からなんて言ったが、昼夜問わず歩いていればそこかしこからこんな声が聞こえてくるのがこの国だ。聖王国じゃなくて性王国に改名すべきだな
「さてと、この様子なら期待しても良さそーだな♡」
いかにも不審者が出そうな路地裏でうろつくシスター姿の美少女が一人⋯⋯もちろん無事で済むはずがなく、どこからともなく現れたゴロツキ連中にさらわれて⋯⋯そんな展開を想像をしただけで興奮してきた私は、さらに奥に進む為に意気揚々と1歩を踏み出した
「────────何を期待してるって?」
「ん?⋯⋯ゲッ!?ソ、ソフィア⋯!?」
「ソフィア司祭様、でしょう?目上の人にはちゃんと敬語を使いなさいと、何度も言った筈です。それで、教区の外に出て一体何をしようとしているのか答えてくださるかしら、シスターア・ン・ナ・さ・ん?」
しかしそう上手くいかないのが人生である。背後から私に声をかけてきたのはソフィア。容姿端麗、品行方正で自分にも他人にも厳しくそれでいて面倒見の良いというまさしくシスターの鑑と云われている司祭だった。私達幼少組をまとめるリーダー的存在で、年下から同年代、さらには年上のシスター達までもがこんなシスターになりたいと発言するほど絶大な人気を誇っている司祭の一人だ
「まあまあソフィー、そんなに睨んではいけないよ。子猫ちゃんが怖がってるじゃないか」
そしてもう一人、ソフィアとは別の意味でシスター達から大人気の王子様系司祭のユーリが、ゴミを見る様な目で私を見下しているソフィアを宥めていた。美少年と見紛う顔つきで他のシスターの事を子猫ちゃんと呼び、常に女の子達に囲まれ黄色い声援を浴びてるいけ好かない奴だ。そんなユーリがソフィアを愛称で呼んでいることから、二人の普段からの仲の良さが伺える。ユーリを懐柔してソフィアを説得⋯⋯の線は無理そうだった。頭カチカチシスター共め
「道に迷っただけだよ⋯⋯です。そっちこそ他の子たちほっぽってこんなところに来ていいんすか?」
「ルゥに───ルーネに任せてきたから大丈夫ですわ。ちなみに貴女が路地裏に駆け込んで行くのを目撃したのもルーネよ。こそこそと怪しい挙動をしていたって教えてもらいましたの」
(チッ⋯見られてたのか!あのルーネって奴、細目だからどこ見てるのか分かんねーんだよなぁ⋯⋯)
ルーネは触れたらポッキリ折れてしまいそうな、儚い印象を受ける司祭だ。私自身そんなに背が高い方では無いが、そんな私より背の低い小動物みたいな少女だった。それでいて話好きで、色んな人と楽しく話してる姿を聖堂のあちこちでよく見かける事がある。見る人話す人の庇護欲をかき立てる姿と声色に、これまたシスター達からは大人気の司祭の一人だった。そしてこの二人とは特に仲が良い
ソフィアにユーリにルーネ。大聖堂の司祭の中でもトップクラスに優秀で人気を誇る三人が、私が所属している新人シスター軍団のまとめ役だ⋯⋯まあいずれは私も優秀なシスターとして司祭に選ばれる身、それ相応の肩書きを持つ人が見ていてくれないと困るってもんだが
「さて、それじゃ帰ろうか。逃げてもいいけど、ここに来るまでに息を切らしていた子猫ちゃんと息ひとつ切らしてない僕達⋯投降することを勧めるよ。どうする?今なら罰も軽いままで済むけど」
「へぇ?意外とお優しいこって。じゃあ─────」
「いいえユーリ、それは無いわ。アンナは今まで何度も決まり事を破ってる⋯ここは厳しく罰するべきよ」
「そうかい?君が言うならそうするよ。残念だったね子猫ちゃん」
ユーリの奴が出した提案をソフィアが一蹴する。飴と鞭の飴が鞭にバリバリに砕かれたんですが⋯⋯なーんか私ソフィアから目の敵にされてる気がするんだよなぁ。思い当たる節は⋯⋯⋯⋯困ったな、沢山あるぞ。言われた規律何度も破ってるからなぁ
「⋯⋯あークソ、分かったよ帰ればいいんだろ帰れば!」
話は変わるが、司祭に選ばれてる奴らは何故かどいつもこいつもやたらと身体能力が高い。それはもうオーク並のパワーとペガサス並のスピードと言って良いだろう⋯⋯⋯少し、いや大分盛ったかも。でも私の近所のガキ大将すら一発でノックアウトさせた腕力も、盗みで培った足の速さも全く歯が立たなかったからあながち嘘ではない。
結局、私は計画を諦め大人しく自分の所属する教会へと連行されたのであった
(次こそ絶対出し抜いてやる⋯!)
因みに罰はこの国の女神セラーカを讃える聖書の読み上げ三時間コースだった。フ〇ック!
アンナ
髪色:銀
目の色:緑
年齢:11歳
自己肯定感だけは高い主人公。シスターの子たちが食料を配布する姿を見て神に仕えるに相応しい子たちだと思うと同時に、ああいう子が暴漢に襲われてあられもない姿になるのも見てみたいと思っている異常性癖者