暴虐の魔法少女~倒すべき敵がいないのなら魔法少女襲います~ 作:ハヤ0313
抱く想い
ヒスイちゃん……舞ちゃんとの死闘から数日。
『ねーネロ月さーん、次いつ殺り合うのー?』
連日のようにスパムメールが届いていた。
いやあの、こちとら社会人なんですよ。あの時の疲れがまだ残ってるんですよ。というかあんだけ斬り刻んでおいてまだ足りないのか。……いや、人を斬る悦びに取り憑かれたのか。なんて怖い子なのヒスイちゃん。
「では行きましょう、お姉様」
今日は晶ちゃんが一限目から講義って事で途中まで一緒。
……今更だけどホント晶ちゃん美人だな。横顔とかすげぇ綺麗だもん。
「……? どうしました?」
横顔に見惚れていたなんて言えない。
「いや、その、良い天気だなーって」
「ふふ。そういう事にしておきましょう」
あー! なんか、なんかもー!
最近、晶ちゃんに手玉に取られてる感が凄い。いやまぁ、嫌じゃないんだけど。なんだけど、こう、なんか、こそばゆいというかなんというか。
「そ、そういえばこないだのヒスイちゃんなんだけどさー!」
だからなんかこう、話題を逸らしてしまう。
いやまぁ、実際相談したい事でもあったんだけども。
「辻斬り大好きっ子の事ですか?」
「辻斬りはしてない」
……してないよな?
最近の晶ちゃんは他の子の話をしても不機嫌になったりしない。おかげで話がしやすくて助かる。
でもどうしたんだろう、とは言わない。だって、まぁ、その、思い当たる事は、あるし。
「連絡先交換したって言ったじゃん?」
「言ってましたね」
「毎日のようにほら……こんな連絡がですね」
「……うわぁ」
おぉ、晶ちゃんのドン引き顔とか超レア。あれ? でもなんか最近見たような気もするな。
というか晶ちゃんですら引くレベルなんだぞ舞ちゃん。
「そ、それでお姉様は何と?」
「既読スルー」
「ですよね」
だって変にまだ本調子じゃないーとかその日は都合がーとか言った日には、いつなら?いつなら良い?とか聞いてくる。絶対聞いてくる。絶対面倒くさい事になる。
「ですが、お姉様的には欲求を満たせる相手なのでは?」
「いやま、そうなんだけどね……」
これ以上ないくらいの好敵手。遥か格上の実力者であるから戦闘欲求をこの上なく満たせる相手。
なんだけど、この間ので満たされまくっちゃったから今はいいかな、ってなっちゃったんだよね。あれから夜遊びもしてないし。ジルコンちゃんとも遊んでないし。晶ちゃんとは、まぁ、その、遊んでる、けども。いや遊び? 遊びじゃないな。じゃあ本気? う、ぐ、ほん、き、なの、かな? うぅ。
「……でしたら、私が代わりに行ってきましょうか?」
「え」
なんてちょっと思考が混線していると、晶ちゃんから思いもよらない提案がなされた。
「実はお姉様と出会ってから他の子とあまり会えてないんです」
「あ、そうなの?」
意外。私よりも夜遊びいっぱいしてると思ったんだけども。
やっぱり魔法少女を見つける事自体が難しいんだよねーどうにかなんないかなー。
「ルビーとはよく会うんですけどね」
「おぉ」
という事は倒しちゃったりアレコレしてたりするんだろうか。
ジルコン攻めルビー受け。うむ、ちょっと気になる。
「それでそれで? 戦績はどうなの晶ちゃん?」
「引き分け……というか私の勝ち逃げパターンが多いですね」
なんじゃそら。
「互いに遠距離を得意としますから決め手に欠けるというのもあるんですけど、それで実質引き分けになる事が多いんですよね」
「実質?」
「はい。どちらかが息切れしてきたと思ったらそのまま煙に巻く感じで逃げてます」
あら意外。最後までやりあったりしないんだ。
……いや、最後の最後までやり合う私がおかしいのか?
「あの子の悔しそうな顔見るとゾクゾクするんですよね」
超アレな理由だった。
「待てとか言って追いかけてくるんですけど、その表情を見ながら逃げるの凄く楽しいんですよ」
晶ちゃんに変な性癖が生えてきてる件。
「あれ、負かした後のお楽しみは?」
晶ちゃんならそれを重視してると思ったんだけど、そうでもなかったのかな。
「……実際問題、あの子と実力は拮抗してるんですよ」
苦虫を噛み潰したような表情で吐き捨てる晶ちゃん。こらこら、美人さんがそんな顔するんじゃありません。
「ですので圧勝、というのが難しくて、なかなかお楽しみに辿り着けない、というのはあります」
「……あーなるほど」
なるほどなるほど。
戦闘後に高笑い出来る程に圧勝して、その後に超余裕のまま敗北えっちがしたい、と。うんうん、分かる。悪役ってそうあるべきだよね、分かる。
……私の場合、死闘が多過ぎない? 超へろへろで敗北えっちしてるんだけど。
「……ルビーに対しては勝ちたいんですよね、何故か」
勝ちたいって思う事自体は別に良いんじゃなかろうか。あーそうか。忘れかけていたけど敗北えっちされたい側の子だったっけこの子。
敗北えっちされたいとか今でも正直どうなんだと思うけども……まぁ、その、ジルコンちゃん相手に敗北えっちしまくってる私が言える事じゃないけども。
「話が逸れましたね。それで、他の子にも会ってみたいな、と」
「……でも辻斬りっ子だよ?」
ちょっと会ってやり合ってみたいとか、そういう軽いノリで会わせて良い子じゃない気がする。
「近接主体なんですよね? ですから飛べるこちらが有利かな、と」
「なるほど」
そうするとアウトレンジから魔法の連射で完封出来そうだな。確かにそれなら軽いノリで会っても支障ない、か。
「……じゃあ、その、会ってみる? 辻斬りっ子」
「はい是非。……あ、お姉様が自分の獲物だ、というのなら別ですが」
いや別にそこまで執着心無いかな……。
だってなんか、色んな意味で疲れるんだよね。テンションがあっちこっち行く子だからついてくの大変だし、戦闘中はズンバラリと斬られまくるし、敗北えっちなんか……そう、なんかえっちぃ事に貪欲なんだよねあの子。だから攻めてる筈のこっちが大変というかなんというか。まぁ、良い声で喘いでくれるから超楽しいっちゃ楽しいんだけど。
「そんな事ないから大丈夫。じゃあ、聞いてみるね」
「はい。お願いします」
……何て送ろうかな。まぁテキトーで良いか。本人そんなテンションの子だし。
『私は最近忙しいから、ジルコンちゃんが代わりに会ってくれるって』
嘘は言ってない。ちょっとした繁忙期が来てるのは事実だし。はー仕事行きたくねー。
ってうぉ、すぐ返信来たし。
『マージでー? じゃあじゃあ今夜どうー? 景色の良いとこ取ってあるんだけどー』
なんか返信がおっさん臭い。どうしてだ花のJK。
「……今夜どうよって言ってる」
「は、早いですね色々。では時間は……」
そんな感じで、ヒスイとジルコンの対戦が決まった。
――――――
という訳でそこそこ忙しかった仕事が終わり、帰路についてる私なのです。
今日は外食の日。晶ちゃんのご飯も美味しいんだけど、外食は外食の楽しみがあるよねー。
うーむ。今までそんな事感じなかったんだけど、晶ちゃんと一緒に過ごすようになってからホント色々変わったと思う。
……晶ちゃん、かぁ。
良い子。密かに抱いてる思想はあれだけど、間違いなく良い子。美人だし、頭も良いし、料理の腕だって抜群。良いお嫁さんになれると思う。
そう、良い、お嫁さん。
そんな子の人生を、こんな私のために消費させるのは、罪悪感がある。どこかで良い人を見つけて、普通の家庭を持ち、普通に子育てとか……私はそういう未来を奪ってしまっている。
晶ちゃんなら、正直、それでも良いって言ってくれると思う。いや思うなんてもんじゃない、確信している。それほどまでに、私は、愛されていると、思う。
……けどその割には他の子と敗北えっちするのに寛容だな。今日も張り切って魔法少女を見つけて倒して敗北えっちしましょう!おー!とか言ってたし。ちょっとテンション高めの晶ちゃん可愛い。
って違う違う。真面目な話。
私にその覚悟が無いって話。
……覚悟。晶ちゃんの全てを受け入れる覚悟。晶ちゃんの全てを壊す覚悟。晶ちゃんの未来に対する覚悟。
まだ、それが、無い。
まだなんて言って、先延ばしにしている。
そんな中途半端な私に対して、晶ちゃんは急かす事なく見守っていてくれる。その代わり毎晩のように求められるけれど。
退廃的な、刹那的な快楽を与える事は出来る。でも裏を返せばそれしか出来ていない。
「卑怯だなぁ……」
現状、年上が年下を弄んでいるだけとも言えなくもない。いや言える。
だいたい……私のもそうだけど、晶ちゃんの親に何て言えばいいのよ。貴方がたの娘さんの将来を奪いますが娘さんをください、とでも? 私なら殴り殺すわ。
……踏み出すのは簡単と言えば簡単。
一緒に住もう、とか、一緒になろう、とか、そういうありきたりな言葉を出してしまえば良い。
けどその一言が、あまりにも重過ぎる。
その重みを背負うのが、背負わせるのが、怖い。
「はぁ……」
あー定食屋のおっちゃん。辛気臭い顔で食べててごめんなさい。悩めるお年頃なので許して。
そんな、モクモクとサバ味噌定食を食べていた時、スマホが震えた。
食事中に行儀が悪いとは思うけれど、確認だけ、と思って画面を見ると。
『助けてくださいお姉様……』
まだ食べ終えてないけどそんなもの知らない。
金額以上の紙幣を会計に叩きつけ店を後にする。
目指す場所はヒスイと出会った場所。
ヒスイと何かあった? 新たな魔法少女と出会った? 危機に陥った? 何かから襲われた? 自分の力ではどうしようもない事に遭遇した?
ジルコンなら大抵の事は出来る、切り抜けられる。
でも助けを求めるほどの事態。
嫌な想像ばかり膨らむ。
夜の街を疾走し、人目につかない場所に出た瞬間、空へ跳んだ。
晶ちゃん。
晶ちゃん晶ちゃん晶ちゃん。
お願いだから無事にいて……!
……で、現場に着いたんだけど。
「ぉっ……ん、あっ……もっとぉ……!」
「……はいはい」
何だこの状況。
「お姉様……?」
「いやうん、はい」
ジルコンちゃんが、ヒスイちゃんを、攻めている。性的に。
「こぉ、らぁっ! こっちに、集中、してぇっ!」
「はい……」
そうしてジルコンちゃんはヒスイちゃんのお尻ズボズボを再開した。
「えー……どういう状況なのコレ……?」
「あの、お姉様、本当にすみません……」
ヒスイちゃんは喘いでるし、ジルコンちゃんは死んだような目で責めてるし。マジで何だコレ。
「連絡した通りなんですけど……その、手に負えなくて……」
「え」
慌ててスマホを確認する。あ、追加で連絡きてたわ。
『ヒスイに負けました』
『勝利えっちさせられてます』
『私が、ヒスイを、攻めているのですが』
『終わりません』
『助けてください……』
…………えぇぇ?
「ごめん、最初のしか見てなくて慌てて駆けつけたんだけど……」
「……? ……っ⁉ お姉様……!」
「ふぁっ、ぁぁあああっ!」
「ええいヒスイちゃんうるさい!」
とりあえずそのズボズボしてる指を止めようね!