暴虐の魔法少女~倒すべき敵がいないのなら魔法少女襲います~ 作:ハヤ0313
再会
魔法少女になって、カオティック・ジルコン
なんか色々詰め込み過ぎじゃなかろうか。アニメの第一話じゃないんだぞ。
まぁイベントが盛り沢山だったのは、まだいい。
問題は……。
「死ぃぃぃいねぇぇぇええええ!!」
「ぐっっぁあああああ!」
とか。
「ほら、ここがいいの?」
「ぁああっ! お姉様! お姉様ぁ!」
とか。
何と言いますか、普通に生きているだけだったら絶対に気付かないような事に気付いちゃったといいますか。
いやだって、まさか自分がバトルジャンキーで、百合セックスで相手をとろとろにイかせるのが好きだなんて、気付く訳ないじゃん……。
そんな異常な自分に気付いたところで世界は回ってるわけで、今日も今日とて普通に出勤です。流石に朝からぴょんぴょんビルを跳び越えるなんて事はしません、普通に電車通勤です。
あーでも電車通勤は辛い、だるい、しんどい、辞めたい、晶ちゃんと
そんな事を車内で考えていると、
「お姉、さん……?」
目の前から声がした。
現実逃避で虚ろだった目をちゃんと開き、目の前に焦点を当てるとあらやだ可愛い女子高生。
「あの、私です」
……誰だ?
「この間助けてもらった……」
この間? ……あぁ! 子供を助けようとして自分諸共轢かれそうになってた子!
「おー久しぶりだね、元気だった?」
「はい! おかげさまで!」
うん、元気いっぱいだ。はーなんかこう、小動物的な感じで癒されるなー。
「一緒の電車だったんですね」
「ねー。偶然って凄いね」
「ホントです」
そう言ってクスクス笑う女子高生ちゃん。表情がコロコロ変わってホント可愛いな。
女としては少し長身な私と違って、平均より少し低めな女の子。肩口までかかるボブカットのその髪はサラサラとしていて、笑顔の可愛い、そう、花のような女の子。
……この子が善がったら、どんな顔を、ってやめーい! 最近晶ちゃんのせいですーぐ思考がバトル方面かエロ方面に飛ぶんだからーもうー! い、いや自分の性癖のせいなんですけどね、はい。
「貴女はこれから学校……って当たり前か、平日だし」
「はいっ! そういうお姉さんはお仕事ですね」
あー、なんか癒されるー。普通の子と普通の会話してるだけなのにー。
「あ、そうだ。私、
白ちゃん。名は体をあらわすと言うけれど、白ちゃんは本当に何にも染まっていない無垢な感じ。こんな子が快楽に狂ったらってだからやめーい! エロ方面やめーい!
「私は
「っ! はいっ!」
何が嬉しいのか、満面の笑みを浮かべる白ちゃん。うぅ、ごめんよこんな汚れきったお姉さんで。ホントごめんよ。
「……この間は、本当にありがとうございました」
己の黒い欲求と戦っていると、ぽそりと白ちゃんから感謝された。
「あー……別にいいって、白ちゃんも、皆無事だったんだしさ」
「私、あれから色々考えたんです」
「うん?」
一瞬の出来事ではあったけれど、この子の正義感の強さと、それを実行する決断力の強さは人並みじゃない。だからこそ、色々考えちゃったんだろう。
「何をするにもとりあえず筋肉かなって」
「どうしてそうなった」
そうはならんやろ。確かに筋肉は裏切らないとかいう広告見た事あるけども。
「あはは、冗談です」
「こんな可愛い白ちゃんのムキムキ姿見たくない……」
「かわっ⁉」
あ、心の声が漏れてしまった、あかんドン引かれる。
……と思ったけど、白ちゃんは顔を真っ赤に染めてあわあわしてた。なんじゃこの可愛い生物は。
「うん、可愛い」
「あわわわわ、も、もう!やめてください!」
ダメだ。この遊び無限に続けられる。
けど胸元をポカポカ叩いて抗議してくる白ちゃんに止め……止めらんねぇ、なんだこの、どこまで可愛いんだこの子。ヤバない?
「に、にやにやしないでくださいっ!」
いや無理だって。
「もー! 月お姉さんなんて知りませんっ!」
「あはは、ごめん、ごめんて」
むくれてそっぽ向かれちゃった。
謝りながら頭を撫でくり撫でくりしてると、ますます赤くなってく白ちゃん。白なのに赤とはこれいかに。
「もっ、もう……」
はー。今日は仕事頑張れそー。
――――――
それからもちょくちょく電車で白ちゃんと出会って、色んな事を喋りながら短くも楽しい時間を過ごしていた。
「チカラって、なんでしょうね」
そんな中でふと出た話題。今の私にとっては非常にタイムリーな話題。
「あの時、力をつけなさいって月お姉さん言ってたじゃないですか?」
「……あぁ、言ったねぇ」
あの時は私も無我夢中だったけど、今となっては使いこなしているこの力。コレがあったからこそ、白ちゃんを、子供を助ける事が出来た。
「チカラをつける事自体は良いと思うんです」
妖精さんから気怠げに渡されたこの力が良いモノなのかは一旦置いておこう。
「……でも、中にはチカラで悪い事をする人もいます」
なんだろなー。最近いたなーそういう子ー、とそういうアラサー手前のやつー。
「それを正す正義も、またチカラです」
まぁ、警察とかがそれに当たるのかな。
「……チカラでチカラをねじ伏せるのは、どうなんでしょうね」
思春期だなー。まぁでも分かる、平和的じゃないもんね。もにょもにょする気持ちは充分に分かるつもり。
「でも、悪いチカラを止める事が出来るのは、同じチカラじゃないと出来ない事でもある。それは仕方のない事だよ」
「仕方、ない……」
そう、力で力を捻じ伏せなければ、私も、晶ちゃんも、止まらない。
そうしなければならないほどに、私達は飢えている。
「抑止力……とでも言うのかな。チカラで悪い事をしようとする人が出ないよう、チカラをつける事は悪い事じゃないし。いざというときに悪いチカラに負けるような良いチカラなんて話にもならないからね」
「話に、ならない……」
そんな弱い力なんて、潰してもツマラナイだけ。
私と同等の、それ以上の力を持って立ち塞がる事を私達は望んでいる。
「……ま、そんな訳でチカラは有れば有るだけ良いんじゃない? っていう私の考え」
「はい……」
「で? チカラをつけるべく筋トレは進んでいるのかな? そぉれぷにぷにしちゃうぞー?」
「やっ⁉ 月お姉さっ⁉ やめっ、だめですってばぁ!」
はっはっは悩め若人よー。そっか、女子高生を若人呼ばわりするほど、私は、歳を、くっ……。
――――――
「ねー晶ちゃん」
「ジルコンっ! ですっ!」
白ちゃんと電車の中で話した夜。
私達はせっせと能力強化に勤しんでいた。具体的には、私が結界の盾を張ってジルコンちゃんがそこに魔法をぶつけ続けるって脳筋スタイル。これにより結界に負荷がかかって私の魔筋が育って、魔法をぶっ放し続けてるジルコンちゃんのMPも育つって寸法。
……いやそんな毎日殺し合いじみた戦闘なんてしないから、というかこういう地味な鍛錬の方が多いから。誰に言い訳してんだ。
「ねージルコンちゃん」
「なんですっ! かっ! というか硬過ぎませんかその結界⁉」
「私一人でも鍛えてるからねぇ」
四元素魔法というちょっと室内では使い難い能力とは違って、私のコンパクトな結界能力は日常生活でも使いたい放題。ボクササイズとか。なのでこういう屋外とかでしか鍛錬の機会がないジルコンちゃんよりは私の方が強くなっちゃうってのはどうしようも無い事で。
だからまぁ、こうやってどっちかというとジルコンちゃんの為の鍛錬にも付き合ったりしてる。
「それはともかく、チカラって何だと思う?」
「こんっ、のっ! って、はい? チカラ、ですか?」
「そーチカラ」
因みに鍛錬程度では私はバーサーカーモードにはならないみたい。良い事だ。
私の問いに対し、放ち続けていた魔法を止めるジルコンちゃん。
「魔法少女を蹂躙して敗北するためのものです」
「ブレねーなこの子は」
考えもしないで言い切ったぞジルコンちゃん。流石だぞジルコンちゃん。
「因みにお姉様にとってはどうなんですか?」
「強大なチカラを殴り飛ばすためのもの」
「ブレませんねぇ」
人の事を言えなかった。
「いきなりどうしたんです? 魔法少女を辞めたい……というわけではなさそうですが」
構えを解いて、心配そうにこちらを見るジルコンちゃん。
察しの通り、魔法少女を辞めるつもりは毛頭ない。だって辞めちゃったら魔法少女をぶん殴る事も、敗北えっちも出来なくなってしまう。
……あーもう、考え方が末期だな。
「んや、知り合いの子とそういう話になってね」
「どんな知り合いならそんな話になるんですか……」
確かに。普通の知り合いならそんな話になる筈もない。いや映画とか見終わった後の感想会とかなら有り得るのかな。
そんな訳で、魔法少女になりたての頃に遭遇した事故、及びその救出劇について触りだけ説明した。
「人助けする悪役……良いですよね」
ジルコンちゃんの目の付け所はそこしかないのか。でも分かる。
「そんな感じでさ、ならばチカラ的なサムシングをつけるがいいーってアドバイスした子なのよ」
「なるほど……」
あーでも本当に白ちゃんムキムキになったらやだなー。ずっと朗らかな小動物系でいてほしいなー。
「アニメとかだと、その子絶対に魔法少女になりますよね」
「分かるぅー」
そして得た力に対して苦悩するやつ。分かるぅー。