※この作品はR-18です。

俺は悪いゾンビである。   作:金欠綱渡り

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吾輩は竜であるで出来ないようなちょっと残酷な描写をやりたくなったので。飽きるまで書いてみようと思います。


ゾンビとしての目覚め

意識が浮かんできた。気がつけば、俺はラバータイルの床に倒れていたらしい。

視界の半分が暗く欠けているのは、おそらく頭か目か、その辺のどこかがひどくいかれたせいだろう。

 

見えているほうには、何人かの人影があった。

バットや木刀を握った連中で、俺を一度だけ振り返りながら、廊下に作ったバリケードの向こうへ下がっていく途中だった。

妙なもので、その顔には恐怖だけじゃなく、「仕事は終わった」とでも言いたげな、変な達成感みたいなものが浮かんでいた。

 

……つまり、俺はさっきまで彼らに殴られていたわけだ。

そして今のこの意識のはっきり具合は、殴られたあとにスイッチが入り直したような、そんな感覚に近い。

 

頭が戻るにつれて、どうしてこんな状況になっているのかも思い出してきた。

 

ニュースで見たあの騒ぎ。

どこかの港から流れ出たウイルスが世界中に広がり、感染に気づかないまま運ばれた連中が大量のゾンビ騒動を起こした──そんな話だった。

 

行政はすぐにパンクして、生き残った人間はスーパーやマンションを巡って食料を探すしかなくなった。

俺も仲間たちと一緒に行動して、この病院に立てこもっていたが……ある時、油断した拍子に噛まれてしまい、そこで意識を手放した。

 

そのあと俺は、きっとゾンビとして仲間に襲いかかったんだろう。

結果、こうして叩き伏せられている。まぁ筋は通る。

 

ただ、妙な点がある。

 

まず、人間の意識を取り戻したゾンビなんて話、ニュース時代に一度も聞いたことがない。

つまり今の俺は、さしあたり“前例のない何か”だ。

 

それともうひとつ。

俺は頭をめちゃくちゃに殴られたはずだが、痛みがまったくない。内部がどうなっていようと、感覚はゼロだ。

ここまでくると、生き物というより別の仕組みに切り替わったと考えるほうが自然だ。

 

とりあえず立ち上がってみた。

驚いたことに、体は普通に動く。歩くくらいなら問題なさそうだ。生きてたころと同じとは言わないが、不自由を感じるほどでもない。

 

そして気づいた。

どうやら俺は、性格というか……ああいう“人らしさ”を丸ごと失ってしまったらしい。

 

生きてたころ、俺はもっと明るくて、仲間の面倒を見る立場だった。

怪我しても「大丈夫だ」と強がって周りを安心させようとした、そんな記憶もある。

 

だが今、仲間のことを思い返しても、何の感情も湧いてこない。

むしろ「同じ状態にしてやろう」という衝動がある。

道連れにしたいとか、恨んでるとか、そういうんじゃない。

どちらかといえば、ゾンビとしての本能みたいなものに近い。

 

倫理じゃなくて、機能としての欲求。

今の俺はそっちで動いている。

 

もちろん、彼らには悪いと思う部分はある。

だが、人間じゃなくなった以上、人間のルールで考える必要もない。

 

だったら、ゾンビらしくやるしかないだろう。

俺にできることは、生存者を追い、必要なら噛んで増やすことだ。

 

決め、俺は廊下を歩き出した。

 

 




読破ありがとうございます。
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