病んでしまったエアリスは星を救う使命を放棄しクラウドと二人で生きる道を選ぶ 作:ゴロスケ
「もしも〜し?」
声が聞こえる。遠くから響いているような、それでいてすぐ耳元で囁かれているような奇妙な感覚。
「クラウドさ〜ん?起きてくださ〜い?」
誰かが呼びかけている。聞き覚えのある声。柔らかく優しい口調。
ぼんやりと意識が戻ってくる。そのまま重い瞼をゆっくり開くと、目の前には見知った顔の女性の姿があった。
「……エア、リス?」
「良かったぁ。クラウド、目が覚めた?」
目の前にいるのは紛れもないエアリスだった。屈託のない笑顔を浮かべながらこちらを覗き込んでいる。
その顔を見た瞬間、胸の中に温かいものが広がるのを感じた。エアリスが笑っている。それだけで心が落ち着くような安心感。
「エアリス……ここは?」
「覚えてない?わたし達の思い出の場所」
言われて見回すと、そこはスラムの教会だった。
崩れかけた天井からは太陽の光が差し込んでいて、周囲の光景が懐かしく思い出される。
「……?」
ふと目に止まったのは花壇。かつてエアリスが丹精込めて世話をしていた花々が咲き誇っている。
しかし、どこか違和感を感じる。以前は様々な色の花が混在していたのに、今は一面が赤い花で埋め尽くされている。
勿論、手入れされた美しい花畑ではあるが……この妙な均一感がどうも落ち着かない。
「クラウド?大丈夫?」
心配そうな顔でエアリスが問いかけてくる。
いつものエアリス……のはずだ。だが、何かが引っかかる。頭の中の靄が晴れない
「エアリス、俺達は一体……」
「うーん。夢?わたしの、夢ってことにしとく?」
「夢って……」
エアリスの言葉に戸惑う。状況が飲み込めない。
ここはスラムの教会。でも明らかに何かが違う。エアリスの様子も不自然だ。
何故、彼女はこんなにも無邪気に振る舞っているのか?
「これは、夢……なのか?」
「うんうん。だから、細かいことは気にしない。ね?」
そう言いながらエアリスは柔らかく微笑む。その笑顔はいつも通りだった。だが、やはり直感的に感じる違和感。
ここは現実とは違う。エアリスの言うように夢?いや、もっと別の……。
「──!」
とっさに立ち上がろうとするが、体が重い。
意識ははっきりしているのに、感覚が掴めない。
まるで、何かの薬でも打たれたかのように全身が痺れている。
「駄目だよ、クラウド。無理しないで」
エアリスが優しく手を握ってくる。
彼女の手は暖かく柔らかい。普段なら安心するはずの感触なのに、今は違和感の方が大きい。
「何が……起こってる?エアリス、本当のことを教えてくれ」
「んー?」
エアリスは小首を傾げて不思議そうな表情を浮かべる。だが、その目が一瞬細くなったのを見逃さなかった。
彼女は何か隠している。そしてその何かが、この異常な状況と関係しているはずだ。
「エアリス、ここは──!」
そこまで言って、俺はようやく思い出した。
古代種の神殿で、ティファとユフィ、ナナキ、バレットと共に調査していて、そこで黒マテリアに関する手がかりを見つけた。
だが、突然の落盤。何故かエアリスと一緒に崩れ落ちた通路の先へ飲み込まれた。古代種の神殿で起きた異変。ティファに支えられ、ユフィやナナキが叫ぶ中で突如起こった大地震。
そして──。
「みんなは!ティファは無事なのか!?」
あの時、掴み損ねた彼女の手。最後に見えたのは彼女の恐怖に満ちた表情だった。助けを求めるように差し伸べられた手。それを俺は掴めなかった。
立ち上がろうとしたが、やはり体が言うことを聞かない。まるで重力が数倍になったかのように、動くたびに骨が軋み筋肉が悲鳴を上げる。
「エアリス……何が起こっている!?説明してくれ!」
「も〜、さっき言ったでしょ?夢。これは夢なの」
「信じられるか!」
俺は必死に抵抗しようとする。だが、体は全く言うことを聞いてくれない。
そんな俺を見て、エアリスは困ったように微笑む。表情だけならいつも通りのエアリスなのに、どこか違う。
彼女の笑顔にはいつもの温かさがない。
まるで、何者かが彼女に乗り移って操っているような……。
「落ち着いて、クラウド。ここは安全だから。わたしと二人きりの世界だから」
「何を言ってるんだ、エアリス!何故あんなことをした!?」
脳内に確実な記憶が蘇ってくる。落ちる直前、確かに彼女は自ら俺を引き寄せた。ティファの手を払い除けて。彼女の目にはいつもと違う狂気が宿っていた。そして、その直後に感じた意識を奪われるような感覚。
あれは──。
「ふふっ……」
「っ……」
思わず身を固くする。エアリスの笑い方が今まで聞いたどの笑い方とも違う。楽しげでありながら冷たく、妖艶で残酷な響きを持っている。
「あーあ。思い出しちゃったか。クラウド、こういう時は鋭いんだね」
エアリスが小さく笑う。それはいつもの彼女の無邪気な笑顔ではなく、やはりどこか陰湿で冷たく、そして残酷なものだった。
「エアリス……」
「そんな怖い顔しないで。大丈夫、怖いことなんて何もないよ?ね?」
彼女は一歩一歩近づいてくる。
俺は後退しようとするが、相変わらず体が動かない。恐怖に支配される感覚が、背筋を駆け抜ける。
「クラウド」
「……っ!?」
不意に彼女の声色が変わる。心臓が跳ね上がるのを自覚せざるを得なった。
「わたしね、クラウドのことが好き」
「え……?」
その言葉と共に彼女の顔が近づいてくる。鼻と鼻が触れるくらいの距離。唇と唇が重なりそうなくらいの距離。
「だから、クラウドにはわたしだけを見てて欲しいの。他の人のことなんて忘れて。ね?」
「な、何を言ってるんだ?エアリス……正気か!?」
彼女の目には狂気じみた光が宿っている。俺は本能的に危険を感じた。
明らかに尋常ではない。彼女は本当に何者かに操られているのか?いや、そもそもこの空間自体が異常だ。
何が起きている?
何が……彼女を変えてしまった?
「わたし以外を見ないで」
エアリスがそっと手を伸ばしてくる。白く細い指先が俺の頬に触れる。その感触に体が震える。全身に鳥肌が立つ。
何がなんだか分からないまま、ただ恐怖だけが募っていく。
「え、エアリスは……」
「ん?」
「エアリスは、ザックスのことが好きだったんじゃないのか?」
苦し紛れに発した言葉。だが、確かな事実なはずだ。
現に、旅の中でまだ好きなのかと思わず聞いてしまったことがある。その時の俺の問いに対し、彼女はどこか複雑な表情で肯定していた。
……俺自身、あまり思い出したくない記憶。
「──ふふっ」
「っ!?」
再びエアリスが笑う。先程と同じように冷たく、それでいて妖艶な笑み。
「やっぱりそう思ってたんだ。クラウド、本当に単純」
エアリスは心底おかしそうに笑う。その言動に恐怖すら覚える。
一体彼女に何があったのか?何故こんなことを?頭の中で疑問符が飛び交う。
「そうだね。確かに好きだった。でも今は違う。今のわたしはクラウドが好き」
「そ、そんなこと……」
「嘘じゃないよ?わたし、クラウドにいっぱい救われたもん」
エアリスはようやく顔を離す。代わりに腰を下ろして俺の隣に座った。肩が触れるほどの距離。彼女の香りが鼻腔を刺激する。
甘い、甘い……甘い、花の香り。頭がクラクラする。
「クラウド、わたしが神羅に捕まった時は真っ先に助けに来てくれた」
「え?」
「もし、わたしが復讐の道に進んでも、最後まで手伝ってくれるって言ってくれた。コスモキャニオンで星送りの義をした時、不安なわたしを遠くから励ましてくれた」
エアリスは一つずつ思い出を数え上げながら俺を見つめてくる。
微かながら、いつものエアリスの面影が垣間見える気がする。
「初めはね、そっくりだったから気になった。全然別人なんだけど、そっくり。歩きかた、手の動かし方……あなたの中に彼を見ていた……」
それは、あの時と全く同じだった。
ゴールドソーサーの夜、二人だけのゴンドラで、エアリスが語って聞かせてくれた言葉……。
「何度でも言うよ?確かに最初は、あなたの中に彼を見ていた。でも今は違う。今は……今のわたしは、クラウドが好き」
エアリスの言葉は一言一句が俺の心に刺さる。
俺自身、エアリスの優しさと明るさに惹かれていた。俺のようなぶっきらぼうな男にも分け隔てなく接してくれる彼女は眩しかった。
だからこそ、彼女にずっと忘れられない大切な人が居ると知った時は胸の奥に小さな痛みを自覚せざるを得なかった。
彼女は心の奥底では、未だザックスという男の影を追い求めているのだと。
「……エアリス、本気なのか?」
「うん。本気だよ。わたし、クラウドのことが好き」
エアリスははっきりと言い切った。その目には曇りがない。純粋な好意と情熱だけが宿っている。
彼女の瞳を見つめ返す。その澄んだ瞳の奥に、エアリスの嘘偽りない気持ちが映っているのを感じた。
「……エアリス、聞いてくれ。エアリスの気持ちは、嬉しい」
俺は言葉を選びながら慎重に答える。
エアリスを傷つけたくないという思いと、このまま流されてはいけないという警戒心が交錯する。
「でも……今はそれどころじゃない。セフィロスを止めなければいけない。俺達がやらなきゃ、星の未来がないんだ」
エアリスは何も言わずに黙っている。ただじっと俺を見つめている。その表情からは何も読み取れないが、俺は話を続けるしかないと思った。
「お願いだ、エアリス。答えは必ず出す。だから今は仲間達と協力して……セフィロスを止めよう」
俺なりの精一杯の言葉を尽くす。エアリスにわかってもらいたい一心で。
「……やっぱり、そうだよね。クラウドならそう言うと思った」
その声音に込められた感情が分からず身構える。
彼女は唐突に立ち上がり、俺を見下ろした。その顔は影になり表情を窺い知ることはできない。
ただ、彼女から発せられる威圧感に圧倒される。何か得体の知れない恐怖を感じる。
「ねぇ、どうして?どうして……わたしばっかり我慢しなきゃいけないの?」
「エアリス……?」
嗚咽交じりの声。ようやく見えた彼女の目尻に涙が浮かぶのが見えた。それは悲しみの涙なのか怒りの涙なのか。判断がつかない複雑な表情で訴えてくる。
「いつも我慢ばっかり……わたしがセトラだから?星の声を聞けるから?本当のお母さんもザックスもいなくなって、神羅に付き纏われて、でも星を守る運命だから……だから、ずっと我慢しなきゃいけないの?」
それは、これまで聞いたことのない彼女の本音。これまでの旅、そしてコスモキャニオン一件でエアリスの苦悩や悲しみは理解したつもりでいた。
だが彼女は……本当の孤独と悲しみを抱えていたのだ。俺はそれをわかっていなかった。理解したつもりになっていただけだった。
「なんで?クラウド……ねえ、どうしてわたしの大切な人たちはみんな、わたしの前からいなくなっちゃうの……!?」
彼女の手が俺の服を掴む。その手は震え、涙で濡れた頬はひどく痛々しい。
こんな弱々しいエアリスを見るのは初めてだった。
いつも穏やかで、明るくて、どんな時でも気丈に振る舞っていた彼女が、まるで子供のように泣き崩れている。
胸が締め付けられる。辛い。あまりにも辛すぎる光景だった。
「エアリス、俺は……」
必死に言葉を探す。しかしら何も出てこない。
エアリスの涙に言葉が詰まる。彼女の悲しみを理解することは出来ないかもしれない。俺には彼女を救う術など持っていない。
「クラウドが好き……大好きなの。クラウドだけは、いなくならないで……!」
エアリスは俺の背に手を回し、強く抱き締めてくる。彼女の温もりと震えが伝わってくる。
……慰めの言葉一つ思い付かない自分に腹が立つ。
結局、俺は何もできない。セフィロスを止めることも、エアリスを助けることも……。
「エアリス……」
俺は自然とエアリスの背に手を回していた。そうするしかなかった。
彼女の痛み、悲しみ、絶望……全部を受け止めること。
俺にできることがあるとすれば、それはきっとこれだけだ。
(それで、エアリスが救えるなら……俺は)
しばらくの間、そうやって互いの体温を確かめ合っていた。
彼女の鼓動が聞こえる。俺の心臓の音も聞こえているはずだ。俺の体温を分かち合うことで少しでも彼女の痛みを癒やせればいいと思った。だが──
「──ふふっ」
「!?」
次の瞬間、エアリスが笑った。先程までの泣き顔とは一変した表情。その瞳に映るのは、どこまでも歪んだ狂気と執念。
「だから、クラウドをここに閉じ込めるね?ずっと、ず〜〜っとわたしの隣で、わたしだけを見てもらうね?」
耳を疑った。エアリスの言葉の意味が理解できない。いや、したくなかった。
俺は咄嗟に彼女から腕を解き距離を取ろうとするが、体が言うことを聞かない。
彼女を抱きしめることは出来たのに、離れることは許されない。
「クラウドさ〜ん?ダメですよー?女の子の告白をこんな中途半端な状態で投げ出すなんて」
エアリスらしい冗談めいた口調。
しかし、それとは裏腹に、彼女は自らの手を俺の首筋に這わせる。
逃げなくては、今すぐに──しかし体が動かない。それでも何度も何度も同じ動作を繰り返す。無駄だと分かっていても、本能が絶対に逃げろと警告している。
「逃げられないよ?」
「っ!?」
エアリスは俺の耳元で囁く。甘く蕩けるような声音で、しかし氷のような冷たさを孕んだ声色で。
彼女の指先が俺の喉をなぞる感覚。全身に悪寒が走る。
「ここ、セトラの神殿だもん。わたしの祈りは彼らには絶対なんだから」
エアリスの声が甘く囁く。その言葉には凄まじい説得力と威厳があった。
エアリスはセトラの末裔にして最後の生き残り。ここまでに起きた異変は……と考えた瞬間に思い当たる。
古代種の神殿での落盤。スラムの教会に酷似したこの場所。何故体が全く動かないのか。
全てが一つの答えに繋がる。繋がってしまう……。
「や、やめてくれ!エアリス、正気に戻ってくれ!俺達は一緒に──!」
「星を救う為に戦って来た……うん、そうだね。でも、もういいの。星の悲鳴も、仲間のことも、全部どうでもいい」
耳を疑った。俺の知るエアリスからは到底想像できない言葉だった。
彼女はいつだって誰かのために尽くしてきた。自分の犠牲も顧みず、どんな困難にも立ち向かって来た。俺達と共に戦い、花を愛し、常に前を向いていた彼女。
しかし今、まるで別人のように冷たく、無慈悲に歪んでしまっている。
「もうクラウドの気持ちなんて関係ない。わたしがクラウドを守る。ずっと一緒にいる」
「何を言って……!」
彼女の手が俺の両肩を掴み強く押し倒す。ベッドの上に組み伏せられる形となった。
「大丈夫、痛くないから。一緒に気持ちよくなろ?」
「っ!?」
エアリスの顔が近づいてくる。吐息がかかるほどの距離。彼女の瞳には狂気にも似た熱が宿っている。
逃げなければ。体が動かない以上、精神的にも抵抗しなければ。
でも、彼女の言う"気持ち良くなる"とは──?
そんな思考が巡る中、エアリスの唇がゆっくりと俺の首筋へ降りてきた。
「や、やめてくれ!エアリス!」
「言ったでしょ?わたし、もう我慢しないって決めたんだ」
懇願するも、彼女の手は止まらない。首筋から鎖骨へと移動していく彼女の唇。その感触に全身がゾワリとした感覚に襲われる。
彼女は何をするつもりなのか。いや、明らかだ。理解した瞬間、恐怖が全身を駆け巡った。
「クラウドはわたしのもの。わたしのクラウドだから」
その言葉を最後に、彼女は再び俺の体に覆い被さってきた。衣服の隙間から滑り込んできた彼女の細い指先が肌を直接撫でる。冷たい感触に思わず身を捩ろうとするが、やはり体は全く動かない。
思考が追い付かない。どうしてこんなことに?こんなことをして彼女は何を得ようとしている?
それより、仲間たちは無事なのか?どうすれば現状を打開できるのか?様々な考えが頭の中を駆け巡る中、エアリスの手は容赦なく俺の身体を探っていく。
「クラウド、わたしのことだけ見て。ティファなんて忘れさせてあげる」
エアリスの囁きが耳元に届く。その声はどこか遠く、まるで別世界から聞こえてくるようだった。
彼女のこんな姿を知らなかった。いつも明るく前向きで、誰にでも優しい彼女。そんなエアリスが、今俺を拘束し、無理矢理体を求めているという現実に頭がついていかない。
これは夢なのだろうか?だが、肌を這う彼女の指先はあまりにもリアルで、冷たい感触が現実だと訴えかけてくる。
「やめてくれ……こんなのは……!」
「嫌だなぁ……どうして抵抗するの?」
エアリスの目が細められる。その奥にある狂気が更に強まったように見えた。
彼女の手が俺のシャツを脱がせていく。
一枚一枚剥ぎ取られる衣類と共に、何か大切なものが失われていく感覚。
「クラウドはわたしのこと好きになってくれないの?」
「それは……!」
「うんうん。なら、無理やりでも好きになってもらわないと」
エアリスが笑う。しかし、その笑顔には歪みがあり不気味だった。
彼女は自分の服に手をかけ始めた。一枚ずつ脱ぎ捨てる仕草に俺は言葉を失うしかない。
「クラウド……わたしを見て?」
エアリスは完全に裸になった姿で俺に跨る。彼女の裸体は美しく儚げなのに……その瞳に宿る光だけが異質だった。
エアリスの手が俺のベルトにかかり解いていく。金属が擦れる音が妙に鮮明に聞こえる。
俺は抵抗しようと力を込めるが、やはり体は全く動かない。結果、互いに裸体を晒し合う状態となった。
「っ……!」
「ふふっ……顔、見れないほど恥ずかしいんだ?可愛い……」
羞恥心で顔を逸らす俺に、彼女は嬉しそうに微笑む。
その笑顔はいつものエアリスだが、今の状況下では不気味なほどだった。
もう、逃げ場はない。
「恥ずかしがらなくていいんだよ?全部わたしに任せてくれればいいから」
「や、やめ──!」
エアリスの手が下腹部へと伸びていく。彼女の指先が触れた瞬間、全身に電流が走った。
「あっ……!」
思わず声が漏れる。それを聞いた彼女の瞳が妖しく輝いた。
「ふふ……やっぱりクラウド、こういうの経験ないんだね。わたしとデートする時もドキドキしてたもんねー」
「や、やめろっ……エアリス!」
「嫌ですー。こんな中途半端な状態でお預けなんてしたら、クラウドも辛いでしょ?」
エアリスは容赦なく俺を責め立てる。優しくも的確に性感帯を刺激され、意思とは裏腹に身体が反応していく。その度に彼女の表情は満足げに歪んでいった。
「ほら、もうこんなに硬くなってる」
「やめろ……やめてくれ……!」
「……これはね、罰なんだよ?ずっとわたしを見てなかった罰」
エアリスはそう言うと、再び顔を近づけてきた。その瞳には哀しみはなかった。代わりに彼女に浮かんだのは、狂気と欲望に彩られた笑み。
「愛してる。クラウド」
彼女の囁きと共に、俺の唇は奪われた。最初は触れるだけのキスだったが、すぐに舌が侵入してくる。
逃げられない。彼女の唾液が流れ込み、口腔内を犯していく感覚。
その間も彼女の手は止まらない。俺の反応を見て楽しんでいるように、執拗に身体のあちこちを刺激し続ける。その度に理性が砕け散っていくようだった。
「ぷはっ……クラウドも気持ち良くなってきた?」
唇が離れると銀色の糸が繋がり、すぐに切れる。エアリスの目元には生理的な涙が浮かんでいた。しかし、表情は恍惚としている。
「そんな顔しても、やめないよ?ずっと、この日を待ってたんだから」
その言葉と共に、彼女は動き出す。俺の上で肉棒を握り、肌と肌が打ち付け合う音。湿った音が響き渡る。
抵抗しようとしても体は動かず、意識は朦朧としてきた。快楽と罪悪感が混ざり合い、思考回路が麻痺していく。
「エアリス……本当にやめてくれ……!」
「どうして?好きな人を独り占めするのってそんなにいけないこと?」
エアリスの言葉に俺は答えられない。彼女の言うことは一つの真理かもしれないが、今の彼女は明らかに行きすぎている。こんな暴力的な方法で相手の愛情を得ようとするなんて間違っている。
しかし、今の俺には彼女を止める手段はない。その無力感が悔しくて堪らない。
「クラウド、わたしを見て?わたしのことだけ考えて?」
エアリスの要求に応えることしかできない自分が情けない。目の前の彼女は、もう俺が知っているエアリスではなくなってしまったのか?
そんな思いを抱く間にも、彼女の動きは激しさを増していく。
(ティファ……)
思わず頭に浮かんだのはティファの顔だった。あの時手を伸ばしてくれた彼女の姿。仲間として、戦友として、そして……特別な存在として心のどこかで大切に想っていた。胸が締め付けられるような痛みを感じた。それは罪悪感か喪失感か……あるいは両方かもしれない。
「……今、ティファのこと考えた」
エアリスの声が低くなる。その声には怒りと嫉妬が滲んでいた。
彼女の手が一層強く締め付ける。激痛にも似た快感に襲われて喘ぎ声が漏れる。
それすら彼女にとっては燃料になっているようで、益々興奮を露わにしていく。
「あーあー、わたしがこんなに頑張ってるのに……クラウドはまだティファのこと考えてるんだ」
「ち、ちがう……!」
「──そっか、まだ足りないんだね。なら、もっと強くしてあげる」
エアリスの目が暗く濁る。その奥に潜む狂気を感じて背筋が凍りつく思いだった。彼女の手がさらに激しく動き始める。まるで暴力的なまでの刺激に意識が飛びそうになるほどの快感に襲われた。
「エア……リス……!やめ──」
「あはははは!クラウドったら必死になっちゃって。でももう遅いよ?」
エアリスの笑い声が部屋中に響き渡る。その声は異常なまでに甲高く耳障りだった。彼女の手が俺のものから離れる。しかし解放されるわけではなく……むしろ更なる地獄が始まる予感しかしなかった。
「次は、わたしが気持ち良くさせてもらう番……だね?」
「あ……あ……」
俺は情けない声を上げることしかできなかった。エアリスは自身の秘部へと俺のものをあてがう。
ぬかるんだその入り口に当てがわれた瞬間、期待とも恐怖とも取れる感情が胸に込み上げてきた。
「ずっと欲しかった。クラウドが欲しかった」
エアリスは小さく呟きながらゆっくりと腰を落としていく。亀頭が肉襞を押し広げながら侵入していく感覚に思わず腰が浮いた。
熱い。狭い。そして柔らかい。全ての感覚が研ぎ澄まされていくようだった。
「ああ……!」
「すごいっ……入ってくる……!」
彼女の体内が絡みつくように締め付けてくる。その圧迫感は想像以上のもので、一瞬で射精感が込み上げてきた。慌てて歯を食いしばるも、それは逆効果にしかならなかった。
エアリスは満足そうに微笑むと、ゆっくりと上下運動を始めた。肉襞が擦れる音と共に彼女の嬌声が漏れる。
「ほら、気持ち良いよ?」
「あ……あ……!」
「アハッ♡クラウドの顔、可愛い♡」
エアリスの動きが早まっていくにつれ、理性が削り取られていくような錯覚に陥る。抗おうとしても、体は正直に反応してしまう。
彼女の膣内は灼けるように熱く、絡みつくように締め付けてくる。俺の敏感な部分を的確に刺激してくる彼女の動きに、次第に意識が霞んでいく。
「エアリス……っ…!だめ……だ…!」
「イくの?いいよ♡わたしの中でたくさん出して♡わたしを妊娠させちゃえ♡」
「っ……!?」
エアリスの言葉に衝撃を受ける。妊娠させる?そんなことになったらどうなるのか想像しただけで背筋が凍りつく。
しかし今の俺には何の抵抗もできない。彼女は容赦なく俺を追い詰めていく。まるで獣のような貪欲さで快楽を求める姿は、俺の知る穏やかなエアリスからは程遠いものだった。
「あ゛あ゛あ゛っ♡」
「エアリス!やめろ……!抜いてくれ……!」
「抜かない♡」
エアリスの嬌声が大きくなるにつれ、俺の限界も近づいていた。意識が遠のきそうなほどの快感に飲み込まれそうになる。
ダメだ、本当にこれ以上は……!最後の力を振り絞って抵抗しようとするも、体は言うことを聞いてくれない。
「クラウドっ……!クラウドぉっ……!」
エアリスの腰使いが加速する。彼女の中の熱が最高潮を迎えようとしているのがわかる。
その動きに合わせて俺も限界を迎える寸前だった。
もう、どうにもならない。ティファへの想いと罪悪感が押し寄せる中で……。
「イクぅっ……!イックぅっ……!!」
「うあああぁっ!」
エアリスの絶頂と同時に俺も欲望を解き放った。熱い液体が彼女の体内に注ぎ込まれる感覚。一瞬、全てが真っ白になった。
「っ……!」
数秒後、正気に戻った俺は愕然とする。最悪だ。やってしまった。仲間であるエアリスに対して、しかも避妊もせずに中出しをしてしまったという事実。
後悔と自己嫌悪に苛まれる中で、エアリスは荒い息を吐きながらも俺の上に倒れ込んできた。
「はぁ……はぁ……♡わたし……クラウドと一つになっちゃったね♡」
「エアリス……何で、こんなこと……」
「あはっ、もう手遅れだよ。わたしがクラウドを奪った。これで本当にクラウドはわたしのもの。あとは……」
エアリスはゆっくりと上体を起こすと、艶めかしい笑みを浮かべた。その表情に背筋が凍る思いがした。
「まだ、終わりじゃないよ?わたし達、ずっと一緒なんだから」
彼女の言葉は冷たい石のように俺の心に突き刺さった。今後待ち受けているであろう彼女との生活を想像し、絶望的な感情に襲われる。
「ここはね、わたしたちだけの世界」
エアリスはそう言うと、俺の頬に優しくキスを落とした。その柔らかい感触に心地良さを感じてしまう自分を情けなく思う一方で、彼女から逃れられない現実に打ちのめされていた。
「愛してる、クラウド」
彼女は甘い声で囁くと、再び俺の体に覆いかぶさってきた。今度は優しく包み込むように抱きしめられる。その温もりと彼女の香りに包まれながら、俺は静かに目を閉じた。
もう、何も考えたくない。全てを諦めてしまいたい気持ちに支配される中で──脳内に浮かんだ大切な人の名前を思わず口にしまった。
「ティ……ファ……」
その言葉を耳にした瞬間、エアリスの表情が一変した。先程までの穏やかさは消え去り、狂気を孕んだ視線を向けてくる。
「クラウド。今……誰の名前を呼んだの?」
「っ……!」
恐怖に支配されながらも何とか弁解しようとする。しかし、すでに遅い。
エアリスは腰を落とし、再び俺のものを中に挿れる。射精直後の敏感な部分に触れてきて反射的に身を引こうとするが、無駄だった。
彼女は冷たい眼差しのまま強く握りしめる。痛みに顔を歪める俺を見て彼女は歪な笑みを浮かべた。
「もう一度言ってみて?ティファって言ったよね?」
彼女の問い詰めるような口調に身体が竦む。その瞳には怒りと嫉妬が渦巻いていた。
怖い。ただただ怖い。普段の彼女からは想像もできないくらいに圧迫感を感じる。
「そんなにティファが良いの?」
「ち、違──」
言い終わるより前に、エアリスは腰を大きく引いた。
次の瞬間──杭を打ち込むような勢いで再び深く突き刺す。
「っぐああ!!」
突然の衝撃に悲鳴を上げる。先程とは比較にならないほどの激しいピストン運動が始まった。
ゴツゴツとした塊が敏感な粘膜を掻き毟る感覚に思わず涙が滲む。
それでも、彼女の動きは止まらない。
「アハハハハハハハハハ!!クラウド、痛い?苦しいよね?でもやめてあげない♡」
エアリスの笑い声が部屋に木霊する。まるで拷問のような快楽責め。意識が飛びそうになるほどの暴力的な快感と痛みに悶絶するしかない。
「ダメだ……っ!こんな……!」
「許さないよ?クラウドが他の女の子の名前を呼ぶなんて……絶対に許さない」
エアリスの怒りは収まるどころか激しさを増していく。
腰の動きは更に加速し、俺の体を激しく揺さぶる。白濁した液体が泡立ち溢れ出し、卑猥な水音を立てていた。
「やめっ……もう、やめて……くれ……!」
「やめないって言ったよね?」
彼女は再び激しく動き始めた。膣壁が絡みつき、容赦なく搾り取ろうとしてくる。そのあまりの刺激に意識が飛びそうになるも……彼女は俺を逃がすつもりはない。
「気絶なんて、許さないからね?」
エアリスの言葉通り、その後も休みなく快楽地獄が続いた。
何度果てても終わらない性行為に、俺はひたすら脅えるしかなかった……。