※この作品はR-18です。

融合症候群(フュージョンシンドローム)   作:レスト / 三端由也

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僕と彼女は一つになりたい(前編)

 彼女の心が欲しい。彼女のカラダが欲しい。

 君は野暮ったいと自嘲するけれど。目元が優しくて、鼻や唇が程よくぷっくりしていて。親しみと愛嬌のある素敵な顔が欲しい。

 あの透明感のある、どこか甘えた声が欲しい。

 男ならまず目を見張るような、ふくよかで形の整った胸が欲しい。

 その豊かな胸をさりげなく際立たせてくれる、くびれた腰が欲しい。

 彼女は二の腕がつまめると嘆いていたけれど、お尻も大きくて、まだ若いのに少したるんでいるのだと苦笑いしていたけれど。

 それがいい。欲しい。

 ちょっとむちっとしていて、ほんのり健康的に日焼けした手足が欲しい。

 それから、ああ。股。股だ。

 まんこが欲しい。おまんこが欲しい。

 毛深いと恥ずかしがっていた。構わない。素敵だ。すべてが最高に素敵だ。

 僕にはないもの、女体の神秘が欲しい。君にも僕のすべてを捧げたい。味わって欲しい。

 彼女を想う僕と、僕を想う彼女の心とが渾然一体になって。

 僕自身もあの乳首をビンビンに勃てて、彼女と僕をともに想って、股をとろとろに濡らしたい。

 おお、ああ。彼女と一つになりたい。

 キスよりも甘美で。セックスよりも深く。文字通りの意味で。

 一個の人間に、一つの心とカラダになってしまいたい。

 極めて歪んだ愛情であるとは自覚していた。変態的な欲望であることも間違いなかった。

 だが募る想いと果てない妄想は時を経るごとに昂ぶり、止めることができなかった。

 彼女と愛し合って一つになりたい。彼女の心もカラダも、僕と混ぜ混ぜにして、溶け合わせてしまいたい。

 彼女と融合したい。僕はいつしかそう強く願うようになっていた。

 

 たとえそれが、現実には当然叶わない願いだとしても。

 

 

 ***

 

 

 彼女との出会い。きっかけは些細なことだったと思う。

 大学デビューにやや失敗した自覚のあった僕は、インターネットのチャット掲示板に居場所を求めた。

「からもー」とか「おはなししよー」みたいな、緩めのタイトルがずらりと並ぶ。

 中には固めのタイトルもある。一応、趣味の話だとか、真面目な悩み相談にも使われているようだ。

 今にして思うと、実態は出会い系に近いものだったのかもしれないが。

 運命は、本当に偶然のこと。

 

『進路相談したいです』

 

 みかんという当たり障りのないHNが、たまたま目に留まった。

 彼女は当時、高校三年生だった。つまりは一つ年下だ。

 一年先輩の僕であれば、経験も近い。色々と相談に乗ってあげられるかもしれない。

 邪な気持ちはなかったと言えば、いくらか嘘になるかもしれないが。人恋しさもあったから。

 ただとにかく、話をしてみたい。親身になって聞いてあげたいという気持ちの方が強かった。

 おそらく、その純粋な心持ちがよかったのだろう。

 身の上を軽く紹介した上で、誠意を込めてメッセージを送った。

 返事が来るかドキドキした。

 

『はじめまして。メッセージありがとうございます。よろしくお願いしますね^^』

 

 僕は舞い上がり、一人部屋で小躍りした。

 逸る指でスマホを猛烈にタップし、次のメッセージを送る。童貞丸出しである。

 そうしてひとまずは、文字だけのお付き合いが始まった。

 その時期にありがちなことではあるが、受験のこととか勉強の仕方だとかで、彼女は悩んでいたようだった。

 だが深刻な悩みというほどではない。ただ話を聞いて欲しかっただけのようだ。

 だから最初は、他愛もない話ばかりしていたと思う。

 僕は甘いりんごが好きで、彼女はすっぱいみかんが好きであるとか(何の捻りもないHNの由来だった)。

 僕は理系で理科が得意で、彼女は文系で国語がほどほどにはできるとか。

 僕は男子の平均よりは背が高く、彼女は女子の平均より低いので苦労が多いとか(吊革に手が届かないとか、高いところのものが取れないとか)。

 他人であることの常だが、同じところは少なく、むしろ正反対なところ、対照的な部分が多かった。

 お互いにないものをたくさん持っているから。だからこそ惹かれ合ったのかもしれない。

 やがて、文字だけのやり取りがもどかしくなった僕たちは、互いの連絡先を交換した。

 チャット掲示板から、クローズドSNSに舞台を移行して。

 声と声で、顔と顔を突き合わせてよく喋るようになった。

 彼女がイメージ通りの優しい顔をしていることも、胸が大きいことも。

 HNみかんの本名が×××であることも。その時初めて知った。

 情報密度が上がったことで、距離感が近づいたことで、話すことの内容は飛躍的に増えた。

 

 互いの価値観、家族構成、夢。

 どんなことが嫌いで、どんなことが好きか。

 どんな人が嫌いで、どんな人が好きか。

 僕が彼女の、彼女が僕の人となりを語るとき、互いに好ましいと思っているのはほんのりだけど、明らかに伝わっていた。

 ただこのときはまだ、どちらからもはっきりとは言い出せなかった。

 

 ひとまずは当面の目的――彼女の受験への協力に集中した。

 

 彼女は、自分に自信がないのだと言っていた。

 運動が得意なわけでも、取り立てて得意な科目があるわけでもない。

 人当たりはよいけれど、それだけだと。性格はとても褒められたものではないの、と。

 同性の遊び友達はたくさんいるけれど、何でも話せるような子が少ないのだと。

 気持ちはわかると。でもそんなことないよと、僕は言った。

 彼女がいかに素敵な人物であるかを語り、丁寧に励まし、慰めながら。

 本当に自信がなかったのは、僕の方だったのかもしれない。

 僕は彼女と正反対だ。人付き合いが苦手で、代わりに得意なことはいくつかあった。

 僕は惜しみなく彼女の求めるところを与え、彼女は僕にとっての貴重な話し相手となった。

 互いに欠けたものを埋め合わせるように。様々なことを打ち明けて。

 お題目は相談に乗りながら、いつも救われていたのは、僕の方だったのかもしれない。

 

 

 ***

 

 

 やがて彼女は、問題なく第一志望に合格した。

 晴れて大学生同士になった僕たちは、大学高校の壁というものもなくなって、もっと緩く近しい先輩と後輩の関係になっていた。

 同じ年頃の、人生の同じところを歩む仲間という気持ちが強くなっていた。

 受験で張り詰めていたものも取り払われて、彼女は少し積極的になった。僕も彼女に対してだけは、積極的になれていた。

 この頃になると、次第に話の内容はディープなものへとエスカレートしていった。

 恋愛経験だとか、そこそこえっちな話題でも普通にするようになっていたのだ。

 今思えば、そんな話を二人きりですること自体、彼女が僕に気を許していて、気を引いている証拠であったのだが。

 経験不足の僕には、彼女の機微を察する余裕もなくて。

 ただどんな話題でも楽しくて、飢えたオスのように食らいついて話していた。

 

 彼女は、清廉潔白な処女ではない。

 あまり大きな声では言えないが、初体験は中学生のときに済ませている。

 当時から既にCカップはあって、男子には魅力に映っていたのかもしれないと。

「〇〇〇くんも、よく私のおっぱい見てるもんね」と、彼女は照れ臭そうにはにかむ。バレていた。

 

「すみません」

「男の子なら仕方ないよ。ほんとに好きなんだね」

「うん」

「でも私以外にはダメだよ~? 視線とかそういうの、わかるんだから」

 

 彼女は、まんざらでもなさそうだった。

 恋愛歴の話に戻る。

 最初は、2歳上の先輩に求められるがまま付き合って、飽きたら浮気されて、1年足らずで破局した。

 その後も、似たような恋愛をいくつか重ねていたという。長続きはせず、1年か2年しないうちに終わる。

 彼女はやはり自分に自信がないのか、他人の好意というものを中々断れない性格のようだ。

 男なら目を見張る立派な胸と、どこか緩く人懐こい雰囲気は、誰もが振り返るような高嶺の花よりか、男性側には与しやすいと思われる。

 誰かと別れても、すぐに次の誰かが寄ってくる。そんな星の下に生まれついている。

 かく言う僕だって、そんな親しみやすいところから好きになったのだから、まったく人のことは言えないのだが。

 今までの経験は四人。

 正式にお付き合いしたレベルでなければ、言い寄られたことはその数倍はあるらしい。

 これも自信のなさの裏返しだが、男を切らすということに対して、何となくの不安みたいなものを覚えていたという。

 男友達もしくは彼氏がいない期間は、長くても数か月程度だと語っていた。

 ビッチというつもりはないけれど、性というものにいくらか開放的である自覚もあると。

「そういうことに、人並みには抵抗ないよ」と。僕をからかうように、目を瞬かせる。

 対する僕はガチガチの童貞だ。正直に白状したけれど、彼女は一切笑わなかった。

「むしろ一途でいいことじゃない」と。どこか熱っぽく、何かに期待するように。

 彼女は傾向として、はっきり年上好きだった。直近、僕と知り合うまでは、30代男性と付き合っていたそうだ。

 彼は出会いの当初こそは紳士的だったのだが、付き合ってからはとにかく高圧的だった。

 人に言えないような様々な特殊プレイを強要され、嫌気が差していたところだったらしい。

 ついに堪え切れなくなって別れを切り出し、人寂しさを抱えて彷徨っていたところに、ちょうど僕が現れたのだ。

「最初は興味本位だったの」と、彼女も白状した。今までの人と違って、誠実そうだったから、と。

 

 以上、諸々の事情を踏まえた上でも、僕は一切幻滅とかはしなかった。

 誰とどう付き合っていたとか。処女だとかそうじゃないとか。そんなことはどうでもよくて。

 もしかしたら僕は、都合の良い時に現れて――彼女にとっては、上手いタイミングで天より宛がわれた男だったのかもしれない。

 運命はどこまでも偶然で。僕である必然はなかったのかもしれない。

 それでも、わざわざ僕を選んでくれたことが嬉しかったのだ。歳の近い僕を、対象の男として見てくれたことが嬉しかったのだ。

 僕はもう、どうしようもなく彼女に惹かれていた。

 そして彼女もまた、同じ気持ちに違いなかった。

 

「僕たち、付き合ってみる?」

「うん、いいよ。私もあなたのこと、好きになっちゃったし」

 

 前々からなんとなく気持ちには気付いていて、いつ言い出してくれるのか待っていたと。顔を赤らめながら言われてしまった。

 どこまでも一枚上手の彼女だった。大切にするよと、せめて真摯な気持ちを伝える。

 僕は彼女の五人目の彼氏になった。その日はすっかり興奮して、寝付けなかった。

 

 

 ***

 

 

 輝かしく、甘ったるい日々が始まった。

 ネット恋愛の常として、僕たちは典型的な遠距離恋愛だった。

 お互いに学生だし、金がない。気軽に会うわけにもいかない。

 彼女の夏休みに合わせて、二週間ほど遠征する計画を立てた。

 会った後何をどうするかは、お互い言うまでもなく承知している。

 それまでは、肉体の繋がれないことを埋め合わせるように、オーラルコミュニケーションはより密になった。

 通話の時間は、どんどん伸びていった。時にはほとんど徹夜することもあった。

 晴れて恋人同士になったことで、一緒にしたいこと、将来の予定なども話題に加わった。

 どんな付き合いをしたいか。どんなプレイをしたいか。

 具体的な願望と欲望が、どんどん膨れ上がっていった。

 おっぱいを吸ってみたいと言った。クンニもしてみたいと言った。

 精液を飲んでみたいと言われた。乳首を舐めるのが好きだと言われた。

 フェラをしてほしいと頼んだ。全身をくまなく愛撫して欲しいと頼まれた。

 たくさんキスをして。一日中セックスしてみたいねと、言い合った。

 画面越しにキスの真似事をしてみたり、愛を囁くことはしょっちゅうだった。

 

 

 ***

 

 

 そして――。

 そして僕は、冒頭の劣情に際限なく悩まされることになるのだ。

 彼女は人として、性の対象として、あまりに魅力的過ぎた。

 

 季節は初夏となり、彼女はよく薄着をするようになった。

 例えば彼女がよく好んで着る濃緑色のノースリーブなどが、彼女が誇る性のアイコンを強調させるのだ。

 それだけではない。えっちな話が盛り上がってくると、乳首が励起しているのがほんのりわかってしまう。

 声が甘えたようになり、全身からももじもじと色気が漂って。彼女もまた発情していることが伝わってきてしまうのだ。

 ああ。好きだ。

 君と一つになりたい、君そのものになりたい。この願望は、とめどなく尽きることを知らない。

 誰よりも大切にしたいと願っているのに、その想いも確かに真実であるのに。

 君を僕と重ね合わせて、とろとろに溶けてしまいたいという、歴代彼氏よりも遥かにぶっ飛んだプレイを心から望んでしまう。

 なんて冒涜的で、変態的で、倒錯的だろう。

 むくむくと湧き上がる痴情と好奇心を、いけないと思うのに、僕は抑え留めることができない。

 彼女のおっぱいを付けたいとか、彼女と一緒に股を濡らしたいとか。

 痴態の核心的なことだけはどうにかオブラートに包みながら、僕はつい尋ねてしまう。

 

「一つになりたいって、思ったことはない?」

「えっちのこと? それだったら今度――」

「ううん。もっと。何もかも一つになる、みたいな」

「どんな感じ?」

「×××さんと僕が、顔とか手足とか、全部溶けて混ざってくっついて。好きなこととか、考えてることとか、全部わかっちゃうの」

「あー。そういう」

「まあ実際、ならないんだけどさ。もしできるならそうなってみたいって、思ってしまうことがあって。気持ち悪いよね」

 

 引かれるかもと思いつつ吐いた懺悔に対して、彼女は同意してくれた。

 

「別にそんな、変なことじゃないと思うけどな。近いことだったら、私も考えたことくらい、あるし」

「そうなの?」

「好きな人の何でも知りたい、一つに溶けちゃいたいって、普通のことだよ」

「よかった。僕がおかしいのかもって思ってた」

「それだけ深く愛してるってことだもん。私は、嬉しいよ」

 

 なんという女神か! 僕は全肯定された!

 それからは、情欲と愛欲の、無敵のモンスターになった。

 あらゆる妄想は制限解放され、自慰は捗るばかりである。

 すべては約束の日に向けて。彼女と初めて繋がるXデーに向けて。

 日に日に想いを募らせ、ボルテージを高めていった。

 彼女になり切ることで。彼女になった僕が、僕に貫かれることを想像して。

 それが特にたまらなかった。いつもいつも、大量の精をいっぺんに吐き出した。

 彼女になることを、夢にまでみるようになった。

 

 ほんのりと、少しずつ、その手の話題が混じるようになっていった。

 僕が彼女の胸をこの身に宿したいことも、はっきり言わずとももう伝わってしまっていた。

 彼女は愛の深さゆえとして、気にもしなかった。

 

「実際に変なプレイさせられるよりは、全然ね」

 

 むしろ恥ずかしそうに、嬉しそうに笑ってくれた。

 男の願望慣れしていて「そういう話に耐性がある」彼女の、面目躍如だった。

 そればかりではない。彼女までもが、同様の願望を言い始めた。

 僕の心とカラダの、これが欲しい、あれが欲しいと。

 同じように妄想はしていたけれど、気持ち悪いからと秘めていたことを、徐々に打ち明けるようになっていった。

 僕は心から嬉しかった。

 君と色んなところが反対でも、肝心なところでは心が通じ合い、願いは一致していたから。

 二人で一つになったら。あんなことしてみたい、こんなことしてみたい。

 奇妙な空想上の話に対して、あり得ない仮定に対して、二人とも随分乗り気になっていた。

 現実にそうはなれなくとも。語り合うだけで。想い合うだけで、幸せだった。

 互いのすべてが欲しい。この身を埋め尽くす愛が欲しい。

 欠けた半身が引き寄せ合うように、僕らは禁断の愛を仄めかした。

 

 

 ***

 

 

 こんな調子だったので、そうなることも時間の問題だったのかもしれない。

 ついに気分が高まったある日。

 通話は実に五時間に及び、深夜過ぎに達し。理性が蕩けて中身のなくなってきた会話と、好き好きの応酬の果てに。

 興が乗っていた。猥談は止まるところ知らず、二人の「したい」気持ちは極限にまで高まっていた。

 彼女はもう、だらしなく身を崩し、壁にもたれるままに足を広げ。ピンク色のパンツが見えていることを隠そうともしていない。

 そうするだけのまともな理性と羞恥心が働いていない。

 無意識か意識的か、僕と交わることを求めているのだ。

 その証拠に、溢れる愛液が性器のラインに沿って色濃く染みを作っていた。

 ただもどかしいかな。画面という次元の壁が僕らを隔てている。

 今すぐ向こう側に行ければいいのに、と思わずにはいられなかった。

 

「今、その下。どんなになってるの?」

「えー。恥ずかしいよ~」

「見たい」

「〇〇〇くんって、すぐ見たがるよね」

「×××さんが魅力的で、えっちなんだもん」

「私って、えっちかなぁ」

 

 嘯く彼女であるが、下をめいっぱいに濡らして、服の上からでも輪郭がわかるほど胸が張り詰め、その先端をもしっかり勃たせながら言っても説得力がない。

 

「うん。僕の、こんなになってるし」

 

 カメラを引いて、隠していた部分を晒した。

 ズボンの下から張り裂けそうなほど、男根が盛り上がっている。

 

「うわぁ」

「最近、×××さんと話してるとき、ずっとこうだよ」

「〇〇〇くんのえっち」

「見たいな」

「会ったときの楽しみが減っちゃうかもよ?」

「でも見たい」

「うーん」

 

 ちらちらと僕の股間を見ながら、悩むふりだけをする。彼女もどうやら我慢の限界だった。

 

「じゃあ、〇〇〇くんも見せてくれるなら」

 

 無言即断で合意は形成された。

 僕はズボンを脱ぎ、トランクスを一気に下ろしていく。先走り液でぬるぬるになっていた。

 彼女もまた、スカートを下ろし、一思いにパンツをずり下ろす。

 そうして僕たちは、互いに恥部を晒し合った。

 ビデオカメラ越しに。生まれたままの下半身を。

 僕は彼女を貫くことを想い、突き立ち反り返ったモノがてらてらとぬめり。

 彼女は僕に貫かれることを想像して、黒々とした陰毛の先端まで、ぐしょぐしょに濡れている。

 

 彼女は、興奮気味に目を丸くしている。

 

「わ、すごい。大きくなってる。そんなに好きなんだね。私のこと」

「当たり前だよ」

「入れたい?」

 

 誘うように股の真ん中辺りをさすりながら、彼女は微笑む。

 

「うん」

「もう少し我慢してね」

 

 約束の日までは、あと一か月ほどだった。

 

「×××さんも、入れたい?」

「それ、私に言わせるのー?」

「正直に言って欲しいな」

「……入れたい」

「可愛いよ」

「もう」

「したい」

「私も……。したい。今度会ったらね」

 

 とろんとした顔で、期待いっぱいの猫撫で声で彼女は言った。

 

「早く会いたいね」

「うん」

「したい」

「ふふ。ずっと言ってるし」

 

 彼女の細い指先がもどかしそうに、秘部の先端辺りでくるくる迷っている。

 僕はそれをぽーっとしながら見つめていた。

 ああ。好きだ。

 

「でも、恥ずかしいな……。毛が濃いって、言った通りでしょ」

 

 確かにアンダーヘアははっきりと存在感があった。日本女性らしく、自然に生えた形をそのままにしている。

 毛剃りの頻度も、一般的な女子よりは多めなのだと聞いた。過去の男には、全部剃れときつく言われたこともあるらしい。

 なんてもったいないことだ。

 ふさふさで、柔らかそうで。陰口まで覆い隠すように、山なりに少し盛り上がっている。

 そこへ挿したら、彼女自身と同じで、優しく包み込んでくれそうな。

 素敵だ。可愛い。愛しい。もうすべてが愛しい。

 

「全然問題ないよ。そのままがいい。好きだ。綺麗だ」

「もう。〇〇〇くんはさー、何でも好き好きって言うんだから」

 

 コンプレックスがバカみたいだよ、と頬をふくらませつつ、まんざらでもなさそうな×××さん。

 本当のことなんだからしょうがないよ。

 

「全部好き」

「私もだよー」

 

 足をプラプラさせながら、彼女はにへらと笑っている。幸せな気分を共有していた。

 

「君になりたい」

「なりたいね。うん。〇〇〇くんさ、かっこいいよ。私なんてさ」

「そんなことない。×××さんは、可愛いよ。ほんとに可愛い」

「ありがと」

 

 お互いの性的魅力を、最大限に認め合って。

 

「足して。二で割ったらさ」

「もっと魅力的になれる、かな」

「「…………」」

 

 欠けた者同士。互いにあって、互いにないものをコンプレックスとして抱えている。

 熱のこもった視線が、相手を強く求めていた。

 本当に側にいたなら。ケダモノ同士、すぐにでもむさぼり合っていたことだろう。

 だが僕たちは、代わりの妥協案を探さなくてはいけなかった。

 彼女の指がまだ欲しそうに彷徨っているのを察して、僕からリードしてやる。

 

「オナニーって、普段どうしてるの」

「えーっと」

「あそこ、もっとよく見せてよ」

「どうしよっかなあ」

「見たい」

「えー」

「見たいなー」

「うー。わかった。いいよ……。〇〇〇くんなら」

 

 言われるままにしたという免罪符が、彼女はとにかく欲しかった。

 だから、僕が与えてやる。

 実際彼女は乗り気で、カメラを下に動かしてズームしていく。

 僕も追随して、自らの怒張にピントを合わせた。

 ひだひだが、露わになった。

 それまで四人を咥えこんできたそれは、綺麗なピンク色ではなかった。少しだけ黒ずんでいる。

 彼女の経験の証であり、個性だ。素敵だった。

 クリトリスは、想像通り、彼女の剛毛によってしっかりと覆い守られている。

 そして、底のマットにまで透明な染みを零すほど、愛液がとろとろと滴って。割れ目はひくついていた。

 彼女のもどかしい想いの顕れだった。

 すごい。ここにあるのは、ネットに落ちているエロ画像ではない。

 僕一人のためだけに、彼女は自らの秘奥を惜しげもなく見せつけてくれているのだ。

 僕は心から感動していた。

 こんな素晴らしいものが、僕のものなんだ。

 僕の女で、僕自身がなりたいものだ。どれほど愛してもいいのだと。

 

「恥ずかしいから。写真とか、残さないでね」

「わかってる」

 

 しかと目の奥に焼き付けながら、僕は右手をそそり立つ肉棒に添えた。

 

「このまましよう」

「見せあいっこだね」

 

「好き」「好き」

 

 どちらからともなく言い合って。

 僕も彼女も、無我夢中でしごき始めた。

 妄想ではない。目の前を見れば、いつでも相手の指が抜き差しされている。

 僕のコレに見立てて、執拗に女の子の穴を抉っている。

 

「お、お、おお……」

「んっ、あ、あっ」

 

 喘ぎ声が出ても構わない。気にする余裕なんてなかった。

 口をだらしなく開け、息を荒くしながら、いっぱいの愛を乗せて、願望の限りをぶつける。

 

「×××さんと、いっこになりたい。溶けちゃいたい」

「うん……! 〇〇〇くんと、いっこになりたい。溶けちゃいたい」

 

 実際なれるはずもないが、そうなりたいという合意がますます没入感と一体感を強める。

 とてもじっくりなどしていられない。僕たちはあまりにも精神的前戯を楽しみ過ぎた。

 凄まじい勢いで込み上げてくるものがあった。

 それは彼女も同じようで。

 

「あっ、イキそっ。イク、イク」

「僕も、イキそう。一緒に、イこ」

「うんっ、あ、あっ」

「うっ!」

 

「「っ~~~~~~!」」

 

 無言のオーガズム。時間が止まったような絶頂感と、一息に吐き出される想い。

 すごい量が出ていた。ティッシュを被せようなんて気遣いもする暇がなかった。

 画面越しに、彼女の恥部へべっとりと降りかかる。

 彼女を汚してしまったが、してやったという達成感もあった。

 同時に、これが直接中へ注いだものではないということに、一抹の虚しさも覚えるが。

 彼女はくたりとして、開きっぱなしの蛇口のように蜜を垂れ流していた。

 しばし放心して、カメラが上の方へ戻ってきたのはたっぷり数分経ってからだ。

 彼女の服は乱れていた。自ら慰みに、胸を揉みしだいてもいたのだろう。

 薄着の肩口がめくれて、ブラジャーが覗いている。その奥には、汗ばんだ谷間がしっかりと見えている。

 まだ肩で息をしている彼女に向かって、僕は深い感動とともに告げた。

 

「……すごいこと、しちゃったね」

「……そうだね。こんなことしたの、私もはじめてだよ」

「すごく気持ちよかった」

「うん。やばい……気持ちよかった」

 

 それから、ピロートーク的に愛を囁き合って。

 あまりにも変態的だからと、その場ではこれっきりということにはなったが。

 当然、そんな口約束は、すぐに反故にされた。

 若いオスとメスが、会うこともできず拗らせているのに、我慢できるはずがない。

 それからは毎日、話をするたびに、良い気分になってきたところで、僕たちは疑似セックスをするようになった。

 最中、ほとんど言葉は交わさない。ただ互いを想い合って、一心に擦り続ける。

 僕は彼女に。彼女は僕に。なりたいと願いながら。

 それだけのことが、たまらなく甘美で、最高に気持ちいいのだった。

 日によっては時間をおいて、二回戦、三回戦と再びおっ始めてしまうこともあった。

 それほどまでに、僕たちはとにかく『相性』がよかった。

 決して大っぴらに話せない『秘密の逢瀬』を、僕らは繰り返した。

 

 ただ一つ、会えない以上に、余計に心苦しいことがあったとすれば。

 僕がおっぱい魔人であることを彼女は重々承知していて、あえてそこだけは決して見せてはくれなかったことである。

 これ見よがしに胸を強調し、肢体を見せつけながら、

 

「会った時のお楽しみね」

 

 やっぱりこういうところが、彼女は一枚上手だった。

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