融合症候群(フュージョンシンドローム) 作:レスト / 三端由也
彼女の心が欲しい。彼女のカラダが欲しい。
君は野暮ったいと自嘲するけれど。目元が優しくて、鼻や唇が程よくぷっくりしていて。親しみと愛嬌のある素敵な顔が欲しい。
あの透明感のある、どこか甘えた声が欲しい。
男ならまず目を見張るような、ふくよかで形の整った胸が欲しい。
その豊かな胸をさりげなく際立たせてくれる、くびれた腰が欲しい。
彼女は二の腕がつまめると嘆いていたけれど、お尻も大きくて、まだ若いのに少したるんでいるのだと苦笑いしていたけれど。
それがいい。欲しい。
ちょっとむちっとしていて、ほんのり健康的に日焼けした手足が欲しい。
それから、ああ。股。股だ。
まんこが欲しい。おまんこが欲しい。
毛深いと恥ずかしがっていた。構わない。素敵だ。すべてが最高に素敵だ。
僕にはないもの、女体の神秘が欲しい。君にも僕のすべてを捧げたい。味わって欲しい。
彼女を想う僕と、僕を想う彼女の心とが渾然一体になって。
僕自身もあの乳首をビンビンに勃てて、彼女と僕をともに想って、股をとろとろに濡らしたい。
おお、ああ。彼女と一つになりたい。
キスよりも甘美で。セックスよりも深く。文字通りの意味で。
一個の人間に、一つの心とカラダになってしまいたい。
極めて歪んだ愛情であるとは自覚していた。変態的な欲望であることも間違いなかった。
だが募る想いと果てない妄想は時を経るごとに昂ぶり、止めることができなかった。
彼女と愛し合って一つになりたい。彼女の心もカラダも、僕と混ぜ混ぜにして、溶け合わせてしまいたい。
彼女と融合したい。僕はいつしかそう強く願うようになっていた。
たとえそれが、現実には当然叶わない願いだとしても。
***
彼女との出会い。きっかけは些細なことだったと思う。
大学デビューにやや失敗した自覚のあった僕は、インターネットのチャット掲示板に居場所を求めた。
「からもー」とか「おはなししよー」みたいな、緩めのタイトルがずらりと並ぶ。
中には固めのタイトルもある。一応、趣味の話だとか、真面目な悩み相談にも使われているようだ。
今にして思うと、実態は出会い系に近いものだったのかもしれないが。
運命は、本当に偶然のこと。
『進路相談したいです』
みかんという当たり障りのないHNが、たまたま目に留まった。
彼女は当時、高校三年生だった。つまりは一つ年下だ。
一年先輩の僕であれば、経験も近い。色々と相談に乗ってあげられるかもしれない。
邪な気持ちはなかったと言えば、いくらか嘘になるかもしれないが。人恋しさもあったから。
ただとにかく、話をしてみたい。親身になって聞いてあげたいという気持ちの方が強かった。
おそらく、その純粋な心持ちがよかったのだろう。
身の上を軽く紹介した上で、誠意を込めてメッセージを送った。
返事が来るかドキドキした。
『はじめまして。メッセージありがとうございます。よろしくお願いしますね^^』
僕は舞い上がり、一人部屋で小躍りした。
逸る指でスマホを猛烈にタップし、次のメッセージを送る。童貞丸出しである。
そうしてひとまずは、文字だけのお付き合いが始まった。
その時期にありがちなことではあるが、受験のこととか勉強の仕方だとかで、彼女は悩んでいたようだった。
だが深刻な悩みというほどではない。ただ話を聞いて欲しかっただけのようだ。
だから最初は、他愛もない話ばかりしていたと思う。
僕は甘いりんごが好きで、彼女はすっぱいみかんが好きであるとか(何の捻りもないHNの由来だった)。
僕は理系で理科が得意で、彼女は文系で国語がほどほどにはできるとか。
僕は男子の平均よりは背が高く、彼女は女子の平均より低いので苦労が多いとか(吊革に手が届かないとか、高いところのものが取れないとか)。
他人であることの常だが、同じところは少なく、むしろ正反対なところ、対照的な部分が多かった。
お互いにないものをたくさん持っているから。だからこそ惹かれ合ったのかもしれない。
やがて、文字だけのやり取りがもどかしくなった僕たちは、互いの連絡先を交換した。
チャット掲示板から、クローズドSNSに舞台を移行して。
声と声で、顔と顔を突き合わせてよく喋るようになった。
彼女がイメージ通りの優しい顔をしていることも、胸が大きいことも。
HNみかんの本名が×××であることも。その時初めて知った。
情報密度が上がったことで、距離感が近づいたことで、話すことの内容は飛躍的に増えた。
互いの価値観、家族構成、夢。
どんなことが嫌いで、どんなことが好きか。
どんな人が嫌いで、どんな人が好きか。
僕が彼女の、彼女が僕の人となりを語るとき、互いに好ましいと思っているのはほんのりだけど、明らかに伝わっていた。
ただこのときはまだ、どちらからもはっきりとは言い出せなかった。
ひとまずは当面の目的――彼女の受験への協力に集中した。
彼女は、自分に自信がないのだと言っていた。
運動が得意なわけでも、取り立てて得意な科目があるわけでもない。
人当たりはよいけれど、それだけだと。性格はとても褒められたものではないの、と。
同性の遊び友達はたくさんいるけれど、何でも話せるような子が少ないのだと。
気持ちはわかると。でもそんなことないよと、僕は言った。
彼女がいかに素敵な人物であるかを語り、丁寧に励まし、慰めながら。
本当に自信がなかったのは、僕の方だったのかもしれない。
僕は彼女と正反対だ。人付き合いが苦手で、代わりに得意なことはいくつかあった。
僕は惜しみなく彼女の求めるところを与え、彼女は僕にとっての貴重な話し相手となった。
互いに欠けたものを埋め合わせるように。様々なことを打ち明けて。
お題目は相談に乗りながら、いつも救われていたのは、僕の方だったのかもしれない。
***
やがて彼女は、問題なく第一志望に合格した。
晴れて大学生同士になった僕たちは、大学高校の壁というものもなくなって、もっと緩く近しい先輩と後輩の関係になっていた。
同じ年頃の、人生の同じところを歩む仲間という気持ちが強くなっていた。
受験で張り詰めていたものも取り払われて、彼女は少し積極的になった。僕も彼女に対してだけは、積極的になれていた。
この頃になると、次第に話の内容はディープなものへとエスカレートしていった。
恋愛経験だとか、そこそこえっちな話題でも普通にするようになっていたのだ。
今思えば、そんな話を二人きりですること自体、彼女が僕に気を許していて、気を引いている証拠であったのだが。
経験不足の僕には、彼女の機微を察する余裕もなくて。
ただどんな話題でも楽しくて、飢えたオスのように食らいついて話していた。
彼女は、清廉潔白な処女ではない。
あまり大きな声では言えないが、初体験は中学生のときに済ませている。
当時から既にCカップはあって、男子には魅力に映っていたのかもしれないと。
「〇〇〇くんも、よく私のおっぱい見てるもんね」と、彼女は照れ臭そうにはにかむ。バレていた。
「すみません」
「男の子なら仕方ないよ。ほんとに好きなんだね」
「うん」
「でも私以外にはダメだよ~? 視線とかそういうの、わかるんだから」
彼女は、まんざらでもなさそうだった。
恋愛歴の話に戻る。
最初は、2歳上の先輩に求められるがまま付き合って、飽きたら浮気されて、1年足らずで破局した。
その後も、似たような恋愛をいくつか重ねていたという。長続きはせず、1年か2年しないうちに終わる。
彼女はやはり自分に自信がないのか、他人の好意というものを中々断れない性格のようだ。
男なら目を見張る立派な胸と、どこか緩く人懐こい雰囲気は、誰もが振り返るような高嶺の花よりか、男性側には与しやすいと思われる。
誰かと別れても、すぐに次の誰かが寄ってくる。そんな星の下に生まれついている。
かく言う僕だって、そんな親しみやすいところから好きになったのだから、まったく人のことは言えないのだが。
今までの経験は四人。
正式にお付き合いしたレベルでなければ、言い寄られたことはその数倍はあるらしい。
これも自信のなさの裏返しだが、男を切らすということに対して、何となくの不安みたいなものを覚えていたという。
男友達もしくは彼氏がいない期間は、長くても数か月程度だと語っていた。
ビッチというつもりはないけれど、性というものにいくらか開放的である自覚もあると。
「そういうことに、人並みには抵抗ないよ」と。僕をからかうように、目を瞬かせる。
対する僕はガチガチの童貞だ。正直に白状したけれど、彼女は一切笑わなかった。
「むしろ一途でいいことじゃない」と。どこか熱っぽく、何かに期待するように。
彼女は傾向として、はっきり年上好きだった。直近、僕と知り合うまでは、30代男性と付き合っていたそうだ。
彼は出会いの当初こそは紳士的だったのだが、付き合ってからはとにかく高圧的だった。
人に言えないような様々な特殊プレイを強要され、嫌気が差していたところだったらしい。
ついに堪え切れなくなって別れを切り出し、人寂しさを抱えて彷徨っていたところに、ちょうど僕が現れたのだ。
「最初は興味本位だったの」と、彼女も白状した。今までの人と違って、誠実そうだったから、と。
以上、諸々の事情を踏まえた上でも、僕は一切幻滅とかはしなかった。
誰とどう付き合っていたとか。処女だとかそうじゃないとか。そんなことはどうでもよくて。
もしかしたら僕は、都合の良い時に現れて――彼女にとっては、上手いタイミングで天より宛がわれた男だったのかもしれない。
運命はどこまでも偶然で。僕である必然はなかったのかもしれない。
それでも、わざわざ僕を選んでくれたことが嬉しかったのだ。歳の近い僕を、対象の男として見てくれたことが嬉しかったのだ。
僕はもう、どうしようもなく彼女に惹かれていた。
そして彼女もまた、同じ気持ちに違いなかった。
「僕たち、付き合ってみる?」
「うん、いいよ。私もあなたのこと、好きになっちゃったし」
前々からなんとなく気持ちには気付いていて、いつ言い出してくれるのか待っていたと。顔を赤らめながら言われてしまった。
どこまでも一枚上手の彼女だった。大切にするよと、せめて真摯な気持ちを伝える。
僕は彼女の五人目の彼氏になった。その日はすっかり興奮して、寝付けなかった。
***
輝かしく、甘ったるい日々が始まった。
ネット恋愛の常として、僕たちは典型的な遠距離恋愛だった。
お互いに学生だし、金がない。気軽に会うわけにもいかない。
彼女の夏休みに合わせて、二週間ほど遠征する計画を立てた。
会った後何をどうするかは、お互い言うまでもなく承知している。
それまでは、肉体の繋がれないことを埋め合わせるように、オーラルコミュニケーションはより密になった。
通話の時間は、どんどん伸びていった。時にはほとんど徹夜することもあった。
晴れて恋人同士になったことで、一緒にしたいこと、将来の予定なども話題に加わった。
どんな付き合いをしたいか。どんなプレイをしたいか。
具体的な願望と欲望が、どんどん膨れ上がっていった。
おっぱいを吸ってみたいと言った。クンニもしてみたいと言った。
精液を飲んでみたいと言われた。乳首を舐めるのが好きだと言われた。
フェラをしてほしいと頼んだ。全身をくまなく愛撫して欲しいと頼まれた。
たくさんキスをして。一日中セックスしてみたいねと、言い合った。
画面越しにキスの真似事をしてみたり、愛を囁くことはしょっちゅうだった。
***
そして――。
そして僕は、冒頭の劣情に際限なく悩まされることになるのだ。
彼女は人として、性の対象として、あまりに魅力的過ぎた。
季節は初夏となり、彼女はよく薄着をするようになった。
例えば彼女がよく好んで着る濃緑色のノースリーブなどが、彼女が誇る性のアイコンを強調させるのだ。
それだけではない。えっちな話が盛り上がってくると、乳首が励起しているのがほんのりわかってしまう。
声が甘えたようになり、全身からももじもじと色気が漂って。彼女もまた発情していることが伝わってきてしまうのだ。
ああ。好きだ。
君と一つになりたい、君そのものになりたい。この願望は、とめどなく尽きることを知らない。
誰よりも大切にしたいと願っているのに、その想いも確かに真実であるのに。
君を僕と重ね合わせて、とろとろに溶けてしまいたいという、歴代彼氏よりも遥かにぶっ飛んだプレイを心から望んでしまう。
なんて冒涜的で、変態的で、倒錯的だろう。
むくむくと湧き上がる痴情と好奇心を、いけないと思うのに、僕は抑え留めることができない。
彼女のおっぱいを付けたいとか、彼女と一緒に股を濡らしたいとか。
痴態の核心的なことだけはどうにかオブラートに包みながら、僕はつい尋ねてしまう。
「一つになりたいって、思ったことはない?」
「えっちのこと? それだったら今度――」
「ううん。もっと。何もかも一つになる、みたいな」
「どんな感じ?」
「×××さんと僕が、顔とか手足とか、全部溶けて混ざってくっついて。好きなこととか、考えてることとか、全部わかっちゃうの」
「あー。そういう」
「まあ実際、ならないんだけどさ。もしできるならそうなってみたいって、思ってしまうことがあって。気持ち悪いよね」
引かれるかもと思いつつ吐いた懺悔に対して、彼女は同意してくれた。
「別にそんな、変なことじゃないと思うけどな。近いことだったら、私も考えたことくらい、あるし」
「そうなの?」
「好きな人の何でも知りたい、一つに溶けちゃいたいって、普通のことだよ」
「よかった。僕がおかしいのかもって思ってた」
「それだけ深く愛してるってことだもん。私は、嬉しいよ」
なんという女神か! 僕は全肯定された!
それからは、情欲と愛欲の、無敵のモンスターになった。
あらゆる妄想は制限解放され、自慰は捗るばかりである。
すべては約束の日に向けて。彼女と初めて繋がるXデーに向けて。
日に日に想いを募らせ、ボルテージを高めていった。
彼女になり切ることで。彼女になった僕が、僕に貫かれることを想像して。
それが特にたまらなかった。いつもいつも、大量の精をいっぺんに吐き出した。
彼女になることを、夢にまでみるようになった。
ほんのりと、少しずつ、その手の話題が混じるようになっていった。
僕が彼女の胸をこの身に宿したいことも、はっきり言わずとももう伝わってしまっていた。
彼女は愛の深さゆえとして、気にもしなかった。
「実際に変なプレイさせられるよりは、全然ね」
むしろ恥ずかしそうに、嬉しそうに笑ってくれた。
男の願望慣れしていて「そういう話に耐性がある」彼女の、面目躍如だった。
そればかりではない。彼女までもが、同様の願望を言い始めた。
僕の心とカラダの、これが欲しい、あれが欲しいと。
同じように妄想はしていたけれど、気持ち悪いからと秘めていたことを、徐々に打ち明けるようになっていった。
僕は心から嬉しかった。
君と色んなところが反対でも、肝心なところでは心が通じ合い、願いは一致していたから。
二人で一つになったら。あんなことしてみたい、こんなことしてみたい。
奇妙な空想上の話に対して、あり得ない仮定に対して、二人とも随分乗り気になっていた。
現実にそうはなれなくとも。語り合うだけで。想い合うだけで、幸せだった。
互いのすべてが欲しい。この身を埋め尽くす愛が欲しい。
欠けた半身が引き寄せ合うように、僕らは禁断の愛を仄めかした。
***
こんな調子だったので、そうなることも時間の問題だったのかもしれない。
ついに気分が高まったある日。
通話は実に五時間に及び、深夜過ぎに達し。理性が蕩けて中身のなくなってきた会話と、好き好きの応酬の果てに。
興が乗っていた。猥談は止まるところ知らず、二人の「したい」気持ちは極限にまで高まっていた。
彼女はもう、だらしなく身を崩し、壁にもたれるままに足を広げ。ピンク色のパンツが見えていることを隠そうともしていない。
そうするだけのまともな理性と羞恥心が働いていない。
無意識か意識的か、僕と交わることを求めているのだ。
その証拠に、溢れる愛液が性器のラインに沿って色濃く染みを作っていた。
ただもどかしいかな。画面という次元の壁が僕らを隔てている。
今すぐ向こう側に行ければいいのに、と思わずにはいられなかった。
「今、その下。どんなになってるの?」
「えー。恥ずかしいよ~」
「見たい」
「〇〇〇くんって、すぐ見たがるよね」
「×××さんが魅力的で、えっちなんだもん」
「私って、えっちかなぁ」
嘯く彼女であるが、下をめいっぱいに濡らして、服の上からでも輪郭がわかるほど胸が張り詰め、その先端をもしっかり勃たせながら言っても説得力がない。
「うん。僕の、こんなになってるし」
カメラを引いて、隠していた部分を晒した。
ズボンの下から張り裂けそうなほど、男根が盛り上がっている。
「うわぁ」
「最近、×××さんと話してるとき、ずっとこうだよ」
「〇〇〇くんのえっち」
「見たいな」
「会ったときの楽しみが減っちゃうかもよ?」
「でも見たい」
「うーん」
ちらちらと僕の股間を見ながら、悩むふりだけをする。彼女もどうやら我慢の限界だった。
「じゃあ、〇〇〇くんも見せてくれるなら」
無言即断で合意は形成された。
僕はズボンを脱ぎ、トランクスを一気に下ろしていく。先走り液でぬるぬるになっていた。
彼女もまた、スカートを下ろし、一思いにパンツをずり下ろす。
そうして僕たちは、互いに恥部を晒し合った。
ビデオカメラ越しに。生まれたままの下半身を。
僕は彼女を貫くことを想い、突き立ち反り返ったモノがてらてらとぬめり。
彼女は僕に貫かれることを想像して、黒々とした陰毛の先端まで、ぐしょぐしょに濡れている。
彼女は、興奮気味に目を丸くしている。
「わ、すごい。大きくなってる。そんなに好きなんだね。私のこと」
「当たり前だよ」
「入れたい?」
誘うように股の真ん中辺りをさすりながら、彼女は微笑む。
「うん」
「もう少し我慢してね」
約束の日までは、あと一か月ほどだった。
「×××さんも、入れたい?」
「それ、私に言わせるのー?」
「正直に言って欲しいな」
「……入れたい」
「可愛いよ」
「もう」
「したい」
「私も……。したい。今度会ったらね」
とろんとした顔で、期待いっぱいの猫撫で声で彼女は言った。
「早く会いたいね」
「うん」
「したい」
「ふふ。ずっと言ってるし」
彼女の細い指先がもどかしそうに、秘部の先端辺りでくるくる迷っている。
僕はそれをぽーっとしながら見つめていた。
ああ。好きだ。
「でも、恥ずかしいな……。毛が濃いって、言った通りでしょ」
確かにアンダーヘアははっきりと存在感があった。日本女性らしく、自然に生えた形をそのままにしている。
毛剃りの頻度も、一般的な女子よりは多めなのだと聞いた。過去の男には、全部剃れときつく言われたこともあるらしい。
なんてもったいないことだ。
ふさふさで、柔らかそうで。陰口まで覆い隠すように、山なりに少し盛り上がっている。
そこへ挿したら、彼女自身と同じで、優しく包み込んでくれそうな。
素敵だ。可愛い。愛しい。もうすべてが愛しい。
「全然問題ないよ。そのままがいい。好きだ。綺麗だ」
「もう。〇〇〇くんはさー、何でも好き好きって言うんだから」
コンプレックスがバカみたいだよ、と頬をふくらませつつ、まんざらでもなさそうな×××さん。
本当のことなんだからしょうがないよ。
「全部好き」
「私もだよー」
足をプラプラさせながら、彼女はにへらと笑っている。幸せな気分を共有していた。
「君になりたい」
「なりたいね。うん。〇〇〇くんさ、かっこいいよ。私なんてさ」
「そんなことない。×××さんは、可愛いよ。ほんとに可愛い」
「ありがと」
お互いの性的魅力を、最大限に認め合って。
「足して。二で割ったらさ」
「もっと魅力的になれる、かな」
「「…………」」
欠けた者同士。互いにあって、互いにないものをコンプレックスとして抱えている。
熱のこもった視線が、相手を強く求めていた。
本当に側にいたなら。ケダモノ同士、すぐにでもむさぼり合っていたことだろう。
だが僕たちは、代わりの妥協案を探さなくてはいけなかった。
彼女の指がまだ欲しそうに彷徨っているのを察して、僕からリードしてやる。
「オナニーって、普段どうしてるの」
「えーっと」
「あそこ、もっとよく見せてよ」
「どうしよっかなあ」
「見たい」
「えー」
「見たいなー」
「うー。わかった。いいよ……。〇〇〇くんなら」
言われるままにしたという免罪符が、彼女はとにかく欲しかった。
だから、僕が与えてやる。
実際彼女は乗り気で、カメラを下に動かしてズームしていく。
僕も追随して、自らの怒張にピントを合わせた。
ひだひだが、露わになった。
それまで四人を咥えこんできたそれは、綺麗なピンク色ではなかった。少しだけ黒ずんでいる。
彼女の経験の証であり、個性だ。素敵だった。
クリトリスは、想像通り、彼女の剛毛によってしっかりと覆い守られている。
そして、底のマットにまで透明な染みを零すほど、愛液がとろとろと滴って。割れ目はひくついていた。
彼女のもどかしい想いの顕れだった。
すごい。ここにあるのは、ネットに落ちているエロ画像ではない。
僕一人のためだけに、彼女は自らの秘奥を惜しげもなく見せつけてくれているのだ。
僕は心から感動していた。
こんな素晴らしいものが、僕のものなんだ。
僕の女で、僕自身がなりたいものだ。どれほど愛してもいいのだと。
「恥ずかしいから。写真とか、残さないでね」
「わかってる」
しかと目の奥に焼き付けながら、僕は右手をそそり立つ肉棒に添えた。
「このまましよう」
「見せあいっこだね」
「好き」「好き」
どちらからともなく言い合って。
僕も彼女も、無我夢中でしごき始めた。
妄想ではない。目の前を見れば、いつでも相手の指が抜き差しされている。
僕のコレに見立てて、執拗に女の子の穴を抉っている。
「お、お、おお……」
「んっ、あ、あっ」
喘ぎ声が出ても構わない。気にする余裕なんてなかった。
口をだらしなく開け、息を荒くしながら、いっぱいの愛を乗せて、願望の限りをぶつける。
「×××さんと、いっこになりたい。溶けちゃいたい」
「うん……! 〇〇〇くんと、いっこになりたい。溶けちゃいたい」
実際なれるはずもないが、そうなりたいという合意がますます没入感と一体感を強める。
とてもじっくりなどしていられない。僕たちはあまりにも精神的前戯を楽しみ過ぎた。
凄まじい勢いで込み上げてくるものがあった。
それは彼女も同じようで。
「あっ、イキそっ。イク、イク」
「僕も、イキそう。一緒に、イこ」
「うんっ、あ、あっ」
「うっ!」
「「っ~~~~~~!」」
無言のオーガズム。時間が止まったような絶頂感と、一息に吐き出される想い。
すごい量が出ていた。ティッシュを被せようなんて気遣いもする暇がなかった。
画面越しに、彼女の恥部へべっとりと降りかかる。
彼女を汚してしまったが、してやったという達成感もあった。
同時に、これが直接中へ注いだものではないということに、一抹の虚しさも覚えるが。
彼女はくたりとして、開きっぱなしの蛇口のように蜜を垂れ流していた。
しばし放心して、カメラが上の方へ戻ってきたのはたっぷり数分経ってからだ。
彼女の服は乱れていた。自ら慰みに、胸を揉みしだいてもいたのだろう。
薄着の肩口がめくれて、ブラジャーが覗いている。その奥には、汗ばんだ谷間がしっかりと見えている。
まだ肩で息をしている彼女に向かって、僕は深い感動とともに告げた。
「……すごいこと、しちゃったね」
「……そうだね。こんなことしたの、私もはじめてだよ」
「すごく気持ちよかった」
「うん。やばい……気持ちよかった」
それから、ピロートーク的に愛を囁き合って。
あまりにも変態的だからと、その場ではこれっきりということにはなったが。
当然、そんな口約束は、すぐに反故にされた。
若いオスとメスが、会うこともできず拗らせているのに、我慢できるはずがない。
それからは毎日、話をするたびに、良い気分になってきたところで、僕たちは疑似セックスをするようになった。
最中、ほとんど言葉は交わさない。ただ互いを想い合って、一心に擦り続ける。
僕は彼女に。彼女は僕に。なりたいと願いながら。
それだけのことが、たまらなく甘美で、最高に気持ちいいのだった。
日によっては時間をおいて、二回戦、三回戦と再びおっ始めてしまうこともあった。
それほどまでに、僕たちはとにかく『相性』がよかった。
決して大っぴらに話せない『秘密の逢瀬』を、僕らは繰り返した。
ただ一つ、会えない以上に、余計に心苦しいことがあったとすれば。
僕がおっぱい魔人であることを彼女は重々承知していて、あえてそこだけは決して見せてはくれなかったことである。
これ見よがしに胸を強調し、肢体を見せつけながら、
「会った時のお楽しみね」
やっぱりこういうところが、彼女は一枚上手だった。