融合症候群(フュージョンシンドローム) 作:レスト / 三端由也
果てなく続くかと思われたオーガズムも、ようやく終息の兆しを見せつつあった。
そのことに一抹の寂しさを覚えつつも。
「ああ……」
すごい、気持ちよかった……。めちゃくちゃ気持ちよかったぁ……。
まさに生まれ変わった気分で、わたしは余韻に浸りながら、この身となった充実と幸せを感じ入る。
目を瞑り、一つになった胸の鼓動と、全身に残った熱を愉しんだ。
僕も私も等しく感じ入って、なお愛情はわたしの恥部から垂れ流しになっている。
僕の前立腺は変質してスキーン腺となり、私のバルトリン腺はそのままで、二つが混ぜ合わさってわたしの愛液を構成していた。
りんごとみかんは、今も夢見心地で、愛のミックスジュースを絞り続けている。
徐々に理性の光が戻ってくると、わたしはようやく周囲を気にする余裕が生まれた。
シーツにはもはや体液の海と呼べるものが出来上がっている。その下の敷布団本体すらまったく液浸しになって、周りの床にまで染み出していた。
僕たちの変化のため、二人分の質量がわたし一人分になるほど激しく愛し合い、溶けて混ざった証である。
そのことになお愛おしさは覚えるけれど、現実問題、洗濯しても使い物になるかどうか。買い替えた方が早いかもしれない。
何となく身をよじってみると、くっついた血肉の柔らかさ、尊さを感じることができて、とにかく心地良い。
「〇〇〇くん。×××さん」
私をベースとし、僕の凛々しさをほんのり混ぜた声で、それぞれの名前を呼ぶ。
それだけでもう、愛しい人を想う気持ちが溢れて、幸せな気持ちでいっぱいになる。
「※※※」
それから、新たに得たわたしの名前――僕と私の名残を留めるそれを、ぽつりと呟いて。
「やっと。やっと、いっこになれた」
じーんと、改めて一つになったことへの感動を噛み締める。
鏡はまだ見ていないけれど。
わたしがどのようにして形作られたのか、わたしは知っている。
今のわたしは、僕と私の両方の面影を残していた。
艶やかさを増した黒髪は、癖のなく、柔らかくさらさらとしていて、肩にかかるところまで伸びている。私の髪をベースに、僕の髪質を掛け合わせたものとなっている。
瞳の奥に力強さを宿しながらも、穏やかな印象と優しさはそのままに残した垂れ目。
すっとした綺麗な鼻と、キスしたら纏わりつきそうな柔らかい唇。
私の誇っていた愛嬌をたっぷり含みつつも、わずかに男性的凛々しさをも感じさせる小顔。
一般に可愛いとか美人とか言われるような顔つきに、わたしはなっていた。
もう自信のなかった、以前の私たちではない。
欠けたもの同士を埋め合わせたことで、わたしはより魅力溢れる姿となったのだ。
「ずっとこうなりたかったんだー……」
大の字に手足を投げ出して。
いま少しクリアになった頭で、新しい五体をいっぱいに感じてみる。
呼吸するたび、上下する胸の重みが嬉しい。
私はよく知っていて、僕も一緒になって感じてみたかったものだ。
その膨らみの先端は、かつてのように凹んではいない。ちょうど欠けた部分に僕が嵌り込んで、繋がって。
勃起していないときでも、綺麗なぽっちがぴんと突き出している。乳輪の中に浮かび上がっている。
少し黒ずんだ色合いも、弄りまくった僕と経験豊富な私では、完全に調和が取れていた。
このために僕は、私になることを想ってチクニーで乳首を育てて上げていたのか、とすら思える。
まさに私のための、そしていっこになったわたしのための理想的なパーツになってくれた。見事な嵌り具合である。
全体の形も、私のボリューム感はそのままに、僕の胸筋によるサポートを受けてさらに整った。外に流れ過ぎることなく、ブラなしでもうっすらと谷間ができるほど、内側に寄せてまとまっている。
男なら誰でも釘付けになる巨乳だったところに、一目の美しさまで加わった。
もううじうじとコンプレックスに悩む必要はない。
それどころか。
僕の乳首は、私の乳管に繋がれているのを確かに感じていた。
脂肪の塊の奥底には、乳を作り出すための器官が詰まっている。
いつかこのカラダが妊娠したとき。わたしのここから、僕のコレから母乳が出てくる。
あの白くてほんのり甘い液体が、いっぱいに溢れ出てくる。
私たちの赤ちゃんへ注がれる。吸い付くところがないと悩むことも、困ることもない。
僕のここが、私が蓄えたものの哺乳口となる。
すごい。すごい。
わたしの中の半分は、女体の神秘を宿した我が身にどうしようもなく興奮してしまっている。
またじんわりと股が熱くなり、湿りつくのを感じていた。
興奮すると股が濡れるということ自体が、たまらなく女の子で、嬉しくて。とにかく感じてしまう。
そんなに嬉しいんだ。仕方のない人ね、とわたしのもう半分が嗜めている。
けれども、そうした変態的なところも、わたしの大切な一部分として、わたし自体を胸躍らせるのだった。
僕も私もえっちだったのだから、わたしがえっちでないはずがないもの。
どちらもそれを望んでいるのだから、罪に思うことも、遠慮なんてする必要もない。
「うふふ。これからたくさん、えっちなことしようね」
融合の象徴――一つに溶けて合わさった胸を優しく撫で回しながら、わたしは恍惚として、中の二人に語り掛けるように囁いた。
今わたしを動かしているものは、僕の意志であり、同時に私の意志であり、統合されたわたし自身でもあった。
細胞の一つ一つまで、溶けて混ざり合って。
僕と私は、わたしの中で、いつまでも蕩けて愛し合う幸せな夢を見ている。
そして同時に、現実でわたしになっている夢をも見ている。
だからわたしのしていることは、僕と私のしていることで。わたしの思うことや感じることは、二人も一緒になって感じることができるのだ。
既に肉体も心も固く結び付き、分かちがたく。
僕そのものや私そのものとして、独立した個の人生を生きることはもうできないけれど。
代わりにわたしが新たな人生を生きて、二人にも等しく思い出と幸せを届けよう。
それがいっこのわたしになるということで、僕と私が交わした永遠の誓いだった。
「わたしたちはずっと一つだよ。一緒に楽しいこと、たくさんしようね。いっぱい愛し合おうね」
もう新たな恋愛も、普通のセックスの必要すらない。
わたしは、完全なる愛を手に入れた。
ただ自分を慰めるだけで、本当の意味で愛し合うことができる。
わたしの体内へ引き込まれた僕の陰茎は、外からは見えないけれど。普段は退行させてしまってあるけれど。
その気になれば、わたしの中だけで膨らませることができる。
まるでディルドのように扱うことができて、その感触も、僕の肉棒そのものなのだから本物だ。
僕の意志でピストンができる。私の奥を感じさせることができる。精子だって吐き出せる。
女の子側も自由が効く。膣の内側を私の意志で蠢かせて、僕自身を感じさせることだってできる。
役割さえも逆にできる。私が男役を、僕が女役を引き受けることももちろんできる。むしろそういうこともしてみたい。
さらには、統合されたわたしがすべての世話役になって、受け身の二人ともにしてあげることだってできる。
まさに自由奔放、愛し方も自由自在。
何より、男の子としてイクことと、女の子としてイクこと。
男女一体のオーガズムをともに味わえることが、最高に素敵。
もう今から楽しみで仕方がないの。
さらには。
妊娠するかしないかまで、わたしは自分の意志で選ぶことができる。
今はまだ学生だから、早いかもしれない。いつか就職して、貯えに余裕ができたら。
そうしたら、私たちの子供を産もう。僕と私で、このわたしのカラダで産もう。
〇〇〇くんも妊娠してみたかったんだよね。痛いっていうけど、一緒なら頑張れるかな。ふふ。楽しみ。
子供は何人がいいかな。将来は二人欲しいかな。三人かな。どうしようか。お金の問題もあるよね。稼がないとだねー。
わたしは幸福な家族計画を思い描きながら、うっとりとして股をさすった。
色濃く生え揃った陰毛が、期待に塗れている。
***
融合症候群(フュージョンシンドローム)。
ごく稀に、二人の人物が実際に融合してしまうことがある。
男女が互いに想い合う場合が最も起きやすいとされるが、それには限らない。同性同士による例も確認されている。
一対の男女が融合した場合、通常は女性となる。
というのも、生物学的には、人間という生き物は女性がベースであり、したがって優性となるからである。
ただし、その身体的特徴については、単純に足して二で割ったものになることは少ない。
当人たちの要素を併せ持つ範囲で、理想が反映される傾向がある。
今回の場合、女性側をベースとして、男性側要素を足し合わせた理想的存在に、彼女はなっていた。
また、男女融合においては、生物学的には、単性生殖が可能な完全性を持っていることが最大の特徴である。
男性機能は体内に引き込まれる形で、見た目には(内部検査をしても)決してわからない形で残り、彼女はいつでも自分の意志で妊娠することができるのだ。
彼女は融合体であること、およびその生物学的性質を自覚しているが、そのことは秘匿されるべきものとして、彼女の中で認識される。
融合によって、現実的問題はほとんど起こらない。
彼女が最初から一個人として生まれてきたように、現実の認識が書き換えられてしまうからだ。
基本的には身体の性別と同じ、女性側に因果は引っ張られることとなる。
この現象が世間にまったく認知されない、最大の理由である。
***
さてと。いつまでも寝床で余韻に浸っているわけにもいかない。
残念ながらお腹は空くし、学生としての日常生活も果たさなくてはいけない。
今は何時かしら。随分長く愛し合ってしまったけれど。
スマホを付けると、僕と私が愛の巣に辿り着いたあのときから、ちょうど丸三日が過ぎていた。
一度日が沈んで明けるところまでは、辛うじて意識にあった。
あれからどろどろに溶けて、お互いの夢を見合って。わたしを完成させるまで、さらに二日を要したみたい。
そんなに長く激しく愛し合って、わたしになったのかぁ……。
そう考えると、改めて恍惚とした気持ちになる。
「二週間の予定だったのが、一生になっちゃったね」
遠距離から始まったこの恋は、究極のゼロ距離恋愛として永遠に続くことになった。
思わず口元がにやけながら、スマホのロックを解除すると、弟からSNSでメッセージが何着も来ていた。
あの生意気で可愛い弟は、返事がないことを本気で心配してくれたみたいだ。
『大丈夫だよ^^ ちょっと忙しくて確認してなかっただけ』
そう返すと割とすぐに、安心した旨の返事が来る。
この弟というのは、元々私の弟だったものだ。
僕にも、両親の他に弟が二人いた。
そこの間の繋がりが切れてしまったことは、やはり寂しくはあるけれど。
僕は生まれ変わったこのカラダで、私と一緒に新しい人生を生きていきます。幸せになります。
わたしの中の半分はとっくに決意していて、そのことをもう半分は温かく祝福していた。
絶対に幸せにするからと。一緒に幸せになるからと。
融合の誓いは、実質的な結婚契約でもある。しかも死が二人をともに迎えるまで、決して別たれることはない。
一つに結ばれたのだということを、何気ない弟の文面からも再確認して。
わたしは幸福な気分と、身の火照りを感じていた。
無意識に手が、胸をさすって――。
いけない、いけない。
また始めちゃうところだった。いつまででも続けられそうだもん。
全身が体液でべとべと塗れだったので、とりあえずはシャワーを浴びることにする。
お風呂場の姿身で、初めてわたしは自分自身をはっきりと確認した。
思い描いていた通りの可愛く美しい立ち姿に、我ながら嬉しくなる。にこりと笑ってみたりして、顔の具合を確かめた。
うん。ばっちりね。
カラダの洗い方は、もちろん私が覚えていた。
ただ、泡を立てて胸やお腹、お尻、太ももなどを触っていると、僕の部分が、初めてのすべすべとくすぐったさに悲鳴を上げている。
身体中が熱くなるのを感じながら、どうにか自分自身を嗜める。
「こらこら。慣れないと、だよ。毎回おまんこ濡らしてたら、洗いようがないでしょ」
気持ち良い上に興奮するのもわかってしまうから、もじもじして、色々堪えながらのシャワータイムとなった。
――今度、シャワーオナニーとかしてみようかなあ。してみたいよね。
融合したらやりたいことリストに一行書き加えつつ、わたしはさっぱりカラダを洗い流した。
タオルを首に巻き、裸でリビングをうろつく。
私ってこういう女だったんだよね。僕ももう知ってるけど。
一人暮らしは、生活態度が多少杜撰でも気にならないところが楽だ。
ふと、あるものが目に入った。
濃緑色のノースリーブと、黄色いブラジャーに、白のスカート。
私たちが一つに繋がった最初の日、僕が脱がしたもの。
私がよく着ていたもので、僕もずっと着てみたかったものだった。
むらむらと欲望が、わたしの頭をもたげる。
「どうせなら、これにする?」
ちょっと汗臭いけど、着れないこともないし。
僕へ問いかけてみると、カラダが熱くなった。
ブラを手に取って、くんくんしてみる。
「私の匂いがする……」
元々自分の匂いだというのに、何だか妙に興奮するわたしがいた。好きな人の匂いでもあるから当然か。
でもこれもほとんど最後かもしれない。そのうちわたしの匂いに上書きされて、消えてしまうのだろう。
そのことに少しだけ、もったいなさを覚えるけれど。
その分、わたしが良い匂いさせればいいよね。
「えへへ。なんだか、いけないことしてるみたい」
わたしの中の僕が背徳感を覚えるも、私の部分が手慣れた様子でブラを着けていく。
ブラはちょうどぴったりだった。サイズは私のおっぱいなんだから、まあ普通のことか。
続いて、ノースリーブを着てみる。憧れの服を着られたことに、深い感動を覚えるけれど。
ぴっちりハマったところで、
「ん。ちょっときつい、かな」
意図せずして、へそ出しルックになっていることに気付いたわたしは、顔をしかめた。
僕が融合した影響で、少し背が高くなっていた。
とは言っても、電車の吊革に辛うじて掴まれる程度であり、足して二で割ったほどではない。
僕が私になることを望んでいたため、全体として調整は私寄りにされている。
うち、私がコンプレックスに思うところを、望むところを、僕が埋め合わせてくれた恰好だ。
出会いからいつもそうであったように、私の求めるところを僕が与えて、僕は私の愛とカラダを受け取る。
そんな理想的な補完関係だった。
それはさておき、数少ない弊害だった。せっかくお気に入りだったのに、これではもうまともに着られない。
「後で服、買いに行かなくちゃ。お布団もね」
やること多いなあ。でも――楽しいな。
それからスカートに取り掛かる前に、僕が剥ぎ取って放り出した白いパンツが目に入った。
私が私だけだったときに吐き出した大量の愛液が乾いて、カピカピになっている。
「どうせなら、これも履いちゃう? えー、どうしよっかなぁ」
あえて私の口真似をして、わたしの中の僕をからかってみる。
でもこんなことを言うときは、大抵心はもう決まっているのだった。
優しくアンダーヘアをなぞりながら、甘えた声で言う。
「いいよ。〇〇〇くんが言うなら」
幾夜も私自身を覆い隠し、一人僕を想って濡らしてきたものが、こうしていっこになったわたしのもとに帰ってくる。
もう少し。もう少し。ああ。ほんとにくっついちゃう。
ドッキング。カピカピになった布地が、みっちりと局部に当たった。
私のパンツを僕と一緒に履いていることに、それも濡れ濡れだったものを密着させていることに、いけない感動と興奮を覚える。
「やぁん。また濡れてきちゃってる……」
とりわけクリトリス――僕のおちんちんだったところが、過剰に興奮しているのがわかった。
ぜったい、勃っちゃってるよぉ。
でも、我慢しないとダメだよー。わたし。
さすがに外で垂れ流しにしたら、大変だもの。
スカートも履き、ようやく外向けできる姿になったわたしは、気分転換のためにも、朝ごはんを作ることにした。
何しろ、空腹はもうとっくに限界を迎えているので。
料理は、私よりも僕の方が少し得意だった。ただ手を動かしているだけなのに、二人で料理している気分になって楽しいの。
ふんわりオムライスが出来上がる。
「いただきます。あはは。一緒にご飯食べるの、初めてだね」
初めての共同作業が続く。スプーンですくって、口へ運ぶ。
「んー。おいしー」
それに、幸せ。
見た目は一人で食事しているだけなのに、歯を動かすこと、舌で味わうこと、呑み下すこと。
すべてが、愛の共同作業になってしまうのだから。
毎回毎回「あーん」をしているようなもので、わたしは乙女気分に浸りながら、楽しい食事を進めていった。
***
「ただいまー」
新しい生活のため、街で色々と買い出しをしてきた。布団も替えの手配をしたから、数日で届くだろう。
私よりもちょっと背が高く、僕よりもだいぶ背の低いわたしの世界は、どちらにとっても新鮮に映った。
やっぱり、電車で吊革に掴まれるのが嬉しかった。
ただ、街中へ行くに従って、人が満員まで増えてくると。
誰かにお尻を触られた。
悪寒がして振り返ると、常習犯のキモいおっさんだった。
私のときからそうだった。この大きな胸とお尻は、よほど変な男の人にも気に入られるらしくて。
好きな人に触られるならともかく、知らない男の人に欲望のままにされるのは、気持ち悪くて仕方がない。
いつもなら勇気がなくて、ただされるがまま我慢していたのだけど。
わたしはもう、今までの私じゃない。頼もしい僕が付いている。
小指を摘まみ、男性顔負けの力で、腕を捻り上げる。
そして、痴漢男を睨み付け、小声で脅した。
「二度とわたしに触れるな。今度触ったら叫ぶから。あなたの人生、終わらせてあげる」
キモいおっさんは驚きすくみあがって、次の駅で逃げるように降りていってしまった。
あらぁ。そこ、本来降りる駅じゃないの、知ってるんですけどー。
こうして、ずっと悩まされていたことが、あっさり済んでしまって。
「はあ……。よかったぁ。すごいねえ。すごいなぁ」
それからというもの、わたしの中の私がえらく喜んでしまって、股をきゅんきゅんさせてしまっているのが困りものだった。
それを僕も一緒になって感じ入っているのだから、処置のしようもない。
どうにか身の興奮を押さえつけながら、わたしは自分たちへ言い聞かせるように言った。
「用事済ませて、お家帰ってからね。わたしも我慢してるんだから」
どこかで言ったような台詞を取っ付けて、悶々としながら買い物を済ませてきたの。
だから帰宅した後のわたしは、すぐに布団へ直行してしまった。
ありありと営みの跡が残るそれに、すべての服を脱ぎ捨ててダイブする。
濃厚な愛の残り香をくんかくんかしてから、仰向けになって自分の手を掲げてみる。
細くて、白くて、美しい手。
これ、ほんとにわたしのものなんだね。素敵……。
「…………」
くたりと身を横たえると、横乳が放り出された。上乳と下乳が挟み込まれ、真ん中で押し潰れて谷間を作り、肌と肌が擦れ合っている。
私が僕にまざまざと見せつけたものを、僕も今こうして胸に抱え、確かな肉感として味わっている。
これも、わたしなんだ。あれもこれもぜんぶ、僕はわたしで。私もわたしなんだ。
一つ一つ確かめていくとまた、妙に愛おしくなって、自らの女体を抱きすくめてみた。
わたしがわたしを抱っこしていて。僕も私も一緒になって抱き締め、抱き締められていて。
心がぽかぽかして、あったかくなった。
「そろそろ、しよっか」
僕も私も、いっこになったわたしも。
この新しいカラダを試して、一緒になって感じてみたいというところでは、意見が一致していた。
何よりもう、すっかり出来上がってしまっていて、我慢ならないの。
再び、仰向けに戻る。
さあ、どこから手を付けようかしら。
やっぱり、近いところにある膨らみは目に付くもので。僕がおっぱい星人であることも、間違いなく関係あるでしょうね。
先端では、僕のものだった乳首が、何かを期待するようにきゅっと震えて縮こまっている。
わたしの中の私が、いたずら心を出す。
「ねえ。〇〇〇くん。女の子のカラダ。教えてあげよっか?」
私のことは、たっぷり夢で見たと思うけど。セックスの気持ちよさだって、ぼんやり味わったとも思うけど。
それでも生の女の子は、一味も二味も違うもの。
指先を唾液で濡らして、乳首の先端に添える。
「こうして、こうするとね」
私の記憶を頼りに、両方の乳首を同時に弄り倒していく。
つまみ、引っ掻き、引っ張り、こねこねして。
「はあ……はあ……。いい……」
徐々に先っぽが熱くなってきて、乳頭の奥からほじくられているような、たまらない感じになる。
何かを、母乳を絞り出したいのに。わたしは妊娠していないから、何も出て来ないの。
もどかしくて、もどかしくて。ああこれが、たまらない……!
さらに刺激を求めて、片方の手は股へと滑った。
中指がクリトリス――かつては僕の竿だったモノに触れる。
とんとん押すと、電気の流れるような快感が走る。
「うぅん……!」
これ。これなの。やみつきになるの。
わかる。わかるよね?
いっぱい感じて。味わって。
お豆を挟み、つまみ、くりくりすると、さらなる快楽が襲う。
「どう。〇〇〇くん。気持ちいい? 気持ちいいよね。これが女の子のカラダだよ?」
直接返事はできない。
代わりに、スキーン腺液を先走り液のように漏らして、わたしの本体に染みかけていく。
その返答に満足したわたしは、ますます責めを強めていく。
時折、指先で陰唇を押し拡げ、くぱぁくぱぁと誘うように動かす。
僕の突き立ったモノが入ってくるのを、ありありと想像しながら。
ちょうど私や、僕の倒錯的妄想がよくそうしていたように。
想像逞しい僕たちが達するには、それでも十分だった。
「イクっ! んああ、あっ……!」
外イキに達したわたしは、潮吹き、愛を垂れ流し。
くたりと、全身が弛緩する。
余韻に浸りながら、僕の大好きな胸を優しくさすりつつ、わたしはとろんとした声で言った。
「ああん……。気持ちよかったね……。これが、女の子がイクってこと、だよ……」
自分のカラダを使った、楽しいレクチャーを終えて。
すっかり興奮冷めやらぬ中、わたしは次のことを考えていた。
期待に胸が膨らむ。
「でも、まだ。終わりじゃないよ。本番は、これから……。今度は×××さんも、〇〇〇くんのを……」
わたしは、融合体としての秘奥を解き放った。
「やっぱり、おっきい。素敵……」
うっとりとした声で、わたしは呟く。
外からは決してわからないが、わたしの中では僕のおちんちんが膨らんでいる。
みっちりとナカを埋め尽くすほど、立派なモノがおっきしている。
初めて僕と私が繋がった、あのときと同じ。
違うことと言えば、今僕たちは一つになっていて、主導権はわたしにあるということ。
「いい? 動かすよ」
今回は、わたしがリードしてあげるね。二人はいっぱい気持ちよくなってね。
抽挿が開始される。
既に出来上がっていた男と女の身体は、直ちに快楽を享受した。
「すごい……! ああぁ、すごいぃ……! これが、男の子の、女の子の……!」
わたしも一緒になって味わう。
それぞれはよく知っているのに、合わさると未知の世界だった。
掻き分ける膣肉の温かさと、柔らかさが。カリに引っ掛かるひだひだの心地良さが。
擦られる肉棒の大きさと硬さが。掻き分けられ、突き入れられる快感が。
ああ。気持ちいい。本当に気持ちいい。
すっかり盛りの付いたわたしたちは、止まることを知らない。
静かに愛し合おうなんて、ロマンチックなことを言う余裕もなかった。
欲望のままに、愛のままに、ひたすら行為に没頭する。
どこが弱くて、どこが気持ちいいのか。自分の中だからこそ、最適なスポットを知り尽くしている。
もちろん、容赦はしない。
「あっ あっ あっ あっ あっ♡ あっ あっ♡ あっ あっ♡ あっ♡」
もう、挿さってて、挿してて。わけわかんないぃ。
きもちいい。きもちいいよぉ!
私たちは一つになって、わたしの中で叫んでいた。
「やぁ! いやぁ! こんなの、おかしくなっちゃう~~~~! こわれちゃうよぉ~~~~~~~っ!」
僕も私も、揃って情けない悲鳴を上げているのに。もうダメって言ってるのに。
いけないわたしは、一緒になって絶叫に喘ぎながら、さらに全力でアクセルを踏み固めていた。
いいじゃない。こわれちゃいなよ! もっと、もっと、気持ちよくなっちゃおうよ! 素直になって! 欲望を曝け出して!
そのために、いっこになったんだから。ね!
体内で激しくピストンさせながら、両手で胸を鷲掴みにする。痛いほど強く掴んで、ぐにぐにとこねくり回す。
「ああぁあぁぁあぁ! らめえええぇぇぇぇーーーーー!」
〇〇〇くん。×××さん。
男の子で、女の子って。
いいよね。気持ちいいね。最高に気持ちいいね。
イこ? ね、わたしと一緒に、イこ?
「イク、いくいくイクイクイク、いやぁ、イッちゃうーーーーーーー!」
わたしの口から零れる二人の返事に満足したわたしは、最後にとっておきを繰り出した。
子宮口の先端に亀頭を押し当てて、ぐりぐりぐりと擦り付ける。
それがトドメになった。
「おおお゛おお゛お゛゛お゛お゛ああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーーーーーーーーーーーーーっ!」
オスとメス。男と女。
二つの絶頂が同時に突き抜け、頭がおかしくなるほどの快楽を浴びて、わたしは猛獣のようによがり狂った声を上げた。
ぐるんと白目を剥いて、力なく五体を投げ出す。
だめ。もうトんでしまいそう。
割れ目がひくひくして、精液と愛液の混じった、白濁したものをぶしゅりと吐き出す。
なおもオーガズムは咲き乱れ、互いが互いに満たされて、とろとろに蜜を流しながら。
薄れゆく意識の中で、わたしは思った。
これから毎日、こうやって愛し合えるんだ。夜に寂しく枕を濡らす日なんてもう来なくて、永遠に一緒なんだと。
こんなに楽しくて、こんなにあったかくて。こんなに気持ちいいなんて。
ああ。幸せ。
わたしになって、本当によかったぁ。