融合症候群(フュージョンシンドローム) 作:レスト / 三端由也
無我夢中で舌を絡め合った二人は、ようやく唇を離すと恍惚と見つめ合っていた。
このままおっ始めてしまうかと思われたが、わずかに理性が勝ったようだ。
「ねえ、おうち来て……。ここじゃさすがにまずいもの」
「そうですね……」
ただ外聞ゆえに止めたのではない。肌と唇を重ねたとき、二人は己の求めていたものを奥底で理解した。
これからもっと素敵なことになるだろうという確信と、成し遂げるには長い共同作業になると二人とも予感していた。
そのためには余計な邪魔が入らない方がいい。一つになりたくてたまらない二つの生命体は、やはり本能に従って共通の判断を下したのだった。
既に恥じらいも罪悪感も取り払われて、年齢差など気にもしない。互いを貪りたいだけの一対のオスとメスになっていたのである。
ゆえにこれから繋がる二人の間に、もうほとんど会話は要らなかった。お互いの名前と年齢、女性が既婚である程度が知れれば十分だった。
自らの家に案内したアケミは、滅多に使われなくなった愛の巣へ彼を情熱的に引き入れた。
「おいで。マナトくん」
「アケミさん……!」
懸命に堪えていた糸がぶちりと切れたように、二人はのめり込むように再び濃厚な口付けを交わした。
若く精力的な男と熟れて盛りの付いた女。一度くっつけば磁石のように離れがたく、むせ上がるフェロモンと抗いがたい魅力に脳がくらくらしていた。
彼はタンクトップの下から顔を突っ込み、ブラを外して柔らかな谷間に思い切り埋めた。
シャワーなど浴びるのがもったいなく、むわりと汗ばんだ肢体をとにかく五感で味わった。
いつもは自分のカラダに自信のない彼女も、彼に対しては誇らしげだった。
「おばさんの汗臭い匂い、好きでしょう?」
「はい。むらむらします。ちんこに来てたまらないです」
「うふふ。いっぱい味わってね」
アケミはもぞもぞと蠢く白地の上からマナトの頭を愛おしく抱え、よしよしとあやした。
またしきりに自分の素足へ小鹿のように擦り付けるモノに気付いており、舌なめずりをする。
彼女は彼のズボンの上からさわさわと膨らみをなぞり、玉袋を優しく撫でてから、いたずらっぽく笑って中へ手を突っ込んだ。
包み込むような指の形が、彼のおちんちんにぴとりと触れる。
「ああ……!」
マナトがたまらず吐息を漏らすと、アケミは嬉しそうに微笑む。
リング状にした指先でそれの形を念入りに確かめて、うっとりと感じ入っていった。
これが欲しい。ずっと欲しかったの。今目の前にあるだなんて、本当に夢みたい。
「やぁん♡」
お返しにと、マナトはびんびんに勃った彼女の乳首へとかぶりついた。
彼もまた女体の神秘に夢中でむしゃぶりつきながら、これを自分のものにしたいと強く願っていた。
叶うなら、僕もこの人のように女らしく感じてみたい……。
「もっと。もっと強く吸って……!」
請われるまま彼は左右の先端を丹念に吸い上げて、舌で転がす。
男の自分には到底至れないほど甘く、粒立った乳首の感触をたっぷり味わう。
「あぁん……いぃ、いい……♡」
アケミは甘ったるいよがり声を上げて、悩ましげに身体をくねらせている。
いつも彼が一人空しく演じていたそっくりの台詞が耳に溶け込んで、ますます股間を熱くした。
そこまで感じ入れるカラダを心底羨ましいと思いながら、マナトはせめてもと改めて頬を胸に擦り付け、鼻いっぱいに彼女の香りを取り込む。
「もっと顔が見たいです」
「いいわ……。おいで」
今度は向かい合って寝転がり、一思いにお互いのハーフパンツを引き下ろす。シャツとタンクトップももどかしくて脱ぎ捨てる。
彼のモノはパンツから先っぽがはみ出すほど反りかえっており、彼女の目は何かを期待するようにとろんとして、薄紺の下着は上からでもわかるほどじっとりと濡れていた。
期待に満ち溢れ、べっとべとになったおまんこを指でほじくりながら、喘ぐ彼女の口を絡み付く舌で塞ぐ。
彼女もまた負けじと、細い指先を駆使して丁寧に彼へ奉仕する。
互いのモノを擦り合い、より深く繋がるための準備を着々と進めていく。
いよいよたまらなくなり、切なさが込み上げてきて。
手を止めた二人は、さらに密着して豊満な胸を胸筋で潰しながら、幾度も熱いキスを交わす。
心ゆくまでそうしてから、彼は彼女をじっと見つめて、泣きそうな顔で言った。
「僕、おかしくなってしまったんです」
あなたに出会ってしまった日から。
この夏胸に秘めていた想いを、彼は赤裸々に語った。
「アケミさん。アケミさんが欲しくてたまらないんです。そのだらしないおっぱいを揺らして、あのタンクトップを着て。一緒に走りたかったんです」
彼の倒錯的かつ衝撃的な告白にも、彼女は歓びとともにまったく同感していた。
「実は私もなの……。ずっとへんで、おかしくなりそうだったの。あなたの汗蒸したおちんちんをぶら下げて、この手でしこしこしたいと思っていたのよ」
解かり合えば、お互いに救われた気分だった。
男は女の、女は男の――互いにないモノを強く求めていた。
生まれ持たなかったモノに一生違和感を覚え、しかし性同一性を疑うほど深刻ではない。
どこか満たされない想いを抱いていた者同士、日頃は頭の片隅に追いやって気にしないようにしていたのに。
出会ってしまったその日から、疼いて仕方がなかった。己の肉体に刻まれた間違いを思い出してしまった。
欠けていたものが、正しくぴったりと収まるものが今目の前にあるのだ。
「ああ、今ならわかるわ……。私たち、いっこになりたいと願っていたのね」
だって。今も胸を焦がして止まない熱が。かちりとハマって頑なに離れようとしないカラダ同士が。
「すごく、しっくり来るのよ」
「わかります……。今もくっつきたくて、しょうがなくって」
「私たち、おかしくなってる」
「熱くて、このまま融けてしまいそうです」
普通ならあり得ないことだけど。
このまま愛し合えば融け合って、固く結び付いて。二度と離れなくなるのではないか。
僕は私の、私は僕のすべてを得て。素晴らしい一つになれるのではないかと。
しかしカラダは切に望んでいても、心はまだわずかに揺れていた。
「ねえ。こんなおばさんでいいのかしら。あなたの未来を奪ってしまうことにはならないかな」
きっと僕は僕のままで、私は私のままではいられない。
すべて混じり合って、そして別の何かに変わってしまう。
おそらくは瑞々しい20歳の女の子ではなく、むちむちと肉感に満ちた大人の女性へと。
それでも彼は構わなかった。絶えず奥底から込み上げて、望んで止まないことだった。
「あなたがいいんです。アケミさんじゃないとダメなんです」
「だって。こんなだらしない身体よ? きっと綺麗にはなれないわ」
「それがいいんです。だらしないありのままのあなたになりたいです」
「それに……すごくえっちなのよ」
「最高じゃないですか」
「うれしい……」
枯れて久しかった愛情が、今はもう乙女のように溢れてときめいている。
なぜもっと早く出会えなかったのか。あんな愛のない旦那などよりも先に巡り遭えていたら。
もっとうら若く、可能性に満ちた存在になれたでしょうに。
いや、よしましょう。これからの私たちが目一杯幸せになればいいのだもの。
「私にも頂戴ね。あなたの若さと逞しいおちんちんを」
「はい……!」
二人とも、最後まで進む覚悟を決めて。あとはたっぷり時間さえあれば。
「心配ないわ。うちの人はしばらく帰って来ないから。このまま一つに……なりましょう」
「アケミさん……!」
「マナトくん……!」
にちゅにちゅと静かな水音を立てて、お預けを食らっていた性器が互いの深いところへ挿入されていく。
アケミがマナトに覆い被さる形だった。
「ん、んぅ……」
「ふぉ……お……」
まさに待ち望んでいたモノが。ぴたりとハマるべきものがハマった感覚に、二人はたまらず感嘆の吐息を漏らした。
動きたい。もっとしたい。したい。したい。したい……!
「アケミさん。アケミさん。アケミさん。アケミさん。アケミさん」
「マナトくん。マナトくん。マナトくん。マナトくん。マナトくん」
込み上げる衝動のまま、しきりに名を呼び合い。
初恋のごとく熱に浮かされて、淫らな男女は叩き付けるように抽挿を繰り返した。
よく見ればマナトは彼女の腰を掴みじっと感じ入っていて、アケミは乱れに乱れ、積極的に腰を振っている。
心の奥底で女であることを望むマナトと、男であることを望むアケミの対照的な顕れだった。
「「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ♡」」
深いところで精神的な感覚が繋がり、喘ぐ声が折り重なる。
どうやらもう後戻りのできないところへ来ていて、それが二人を幸せな予感で満たした。
多幸感に包まれながら、片方は生娘のように身体をくねらせ、片方は年甲斐もなく長髪を振り乱して、雄々しくでか尻を揺らし続ける。
そのたびランニングのときのようにぶるんぶるん揺れるおっぱいが、男にますます視覚的な興奮をもたらした。これがもうすぐ僕の手に入るのだ。
一方で女はカチカチになった肉棒に感じ入り、これが間もなく私のものになるのだという感動に打ち震えていた。
男としての快感と女としての快感を、二人は同時に味わっていた。
互いの愛と肉感を確かめるようにして、ひたすら欲望のまま打ち付ける。
そして。
「「イ、イク、イク~~~~~!」」
繋がりゆえに、果てたのは同時だった。
「「~~~~~~~~っ♡♡♡」」
白濁と愛液の混じり合ったものが、二人の結合部からどろっとこぼれ出した。
熱っぽい吐息を同時に漏らすと、女はくすりと微笑んで。すぐに男へしなだれかかっていく。
んっ、ふちゅ。
余韻冷めやらぬまま濃厚な口付けが襲い、もう二回戦が始まった。
一度の繋がりではとても足りない。もっともっと深く繋がりたい。
互いの汗をすすり、あらゆる体液を舐め取って。
とにかくがむしゃらで無我夢中で、果てしない愛の時間が続いた。
昼夜構わず交わり続けて、いつしか互いの意識も曖昧になってきた頃。
「あんっ ああんっ♡」
気付けば可愛らしく喘いでいたのは、組み敷かれたマナトの方だった。
彼の喉仏はなだらかに消失し、すっかりショートヘアの女の子のようになっていた。
二人の要素は徐々に融け合い混じり合い、硬く跳ね返るようだった胸筋は今や小ぶりながらしっかりと膨らみ、初々しい女らしさを主張している。
黒ずんだぽっちは桜色に浄化されて、もう一人が動くたびぷるぷると揺れていた。
「おう、うおお……!」
一方のアケミは、立派な雄と化していた。
豊満だった胸こそ未だその名残を残しているが、元に似合わぬ逞しいシックスパックが男らしい腰の動きを手助けしている。
「ああ、はああ……♡」
今や完全に男女の立場は逆転し、うっすらと茂るマナトの膣には、彼のものだったおちんちんが出たり入ったりを繰り返している。
僕が僕に犯され、私が私を犯していた。
ともに理性は飛びかけ、ほとんど動物のような喘ぎ声を漏らしながら、なおひたすらに互いへ埋没しようとしている。
「もっと。もっと吸って……!」
それでも切なるマナトの望みに応えて、雄々しい色香を醸したアケミが彼の胸にむしゃぶりつく。
相手の瞳が期待に揺れると、美味しそうに吸い上げた。
「あぁん……いぃ、いい……♡」
かつて無理に演じていた女の声も、今や自然の営みだった。
これなの。これが僕の、私の求めていたものだったの。
一方で一人のオスと化したアケミも満足だった。
これだ。こうやってあなたをいっぱいに愛したかった。
ここに二人の倒錯的な願いが成就し、胸いっぱいに興奮と歓びが満ちたとき。
「うお、おおおおおおおおおおおお~~~~~♡」
「んあ、ああああああああああああ~~~~~♡」
幾度目になるかわからない果てがやってくる。そして決定的な瞬間が訪れた。
止め処なく吐き出される白濁とともに、アケミだったものが急速にしぼんでいき、マナトだった彼女のうら若い秘裂へと吸い込まれていく。
ついに最愛の人が完全に萎み切って消失したとき、マナトはわけもわからず淫らな笑みを浮かべていた。
しかし彼女は本当に消えてしまったのではない。いよいよマナトと真の融合を果たそうとしていた。
マナトの目尻から歓びか、一筋の涙がこぼれ落ちる。
「ん、ぅあ、う、あ、あ……!」
そのとき、彼の脳裏には彼女の人生が走馬灯のようにいっぺんに流れ込んできた。
昔から野暮ったい容姿だったため、冴えなかった学生時代。
胸ばかりがすくすく育ち、嫌らしい男どもの視線には慣れなければならなかった。
当時は自己主張が足りず、半ば強引に組まれた見合いからの望まない結婚。
愛のない枯れた人生を送っていたけれど、僕に出会えていかに興奮したのか。いかに淫らに自慰に耽ったことか。
幾度も追想されるひとりえっちの鋭敏な感覚が、ますます彼自身が男であったことを忘れさせていく。
すべては告白の通り、私たちはどこまでも変態的で、そして生々しいほどに素直だった。
思い出は皆自分のことのように感じられて。彼は融け合う彼女の歓びを知り、満ち足りていた。
そして彼女もまた彼の精神に溶け込む過程で、彼の人生を喚び起こしていた。
そうしてお互いのすべてを体験し、受け入れたとき。いよいよ人格の境界線も壊れてゆく。
二人は新たな一つの生になろうとして、自己認識と世界線が再構築される。
「お……お……あ、ああ♡ んはあああああぁ♡」
可愛らしかった彼、いや彼女の喘ぎ声には次第に艶がかかってゆく。
瑞々しい20歳の肉体は、よがり狂いとともに少しずつ時計の針を進めようとしていた。
くびれていた腰の肉付きが良くなり、摘める程度に腹肉が充実していく。
締まりの整った少女は、ふくよかで淫らな大人の女性に変貌しようとしていた。
「も、すこし……! あと、すこし……」
変わりゆく彼女の口からその言葉を漏らしたのは、果たしてどちらの意思だったのか。
収まりがよかった小ぶりな胸も、アケミの色が強く出ると、寄せ合ってはち切れんばかりに膨らみ始めた。
乳輪が一回り大きくなり、加えて先端がつぷっと丸みを帯びて尖り、興奮でびんびんにイキり勃っている。
膨らみの全体は重力に伴って、だらしなく横へと垂れていく。
「ふはぁ……♡」
その過程がよほど気持ちいいのか、彼女はベッドシーツをぎゅっと握って陶酔の吐息を漏らした。
薄かった股の茂みも色濃さを増して、硬く黒いしっかりした毛に覆われていく。
新たに造り変えられた性感帯がかちりとハマったとき、彼女の脳は怒涛の快楽物質に灼かれた。
「あ……あ……だめ。だめ、だめだめだめぇ~~~♡」
股座に熱いモノが込み上げ、胸の奥がきゅんきゅんして止まらない。
彼女はフィナーレに向かって、一心によがり狂っていた。
視界がぐるりと回り、白目を剥きながら啼き叫ぶ。
「ふあぁぁあああああああああああああぁぁぁぁん♡♡♡♡」
艶めかしい絶頂とともに、生まれ変わった彼女は健康的な生足をぴんと伸ばし、全身をびくんびくんと跳ね上げた。
弓なりにしなる肢体と突き上げた胸が、あられもなく色香を放っている。
ぼうぼうに生え揃ったマン毛にとろとろの蜜が滴って、特有の粘り気を纏う。
やや遅れて、ぶびゅっびゅっとどろどろの白濁液が潮のように噴き出してきた。
それはひとつのカラダに混ざり合った一組の男女が、まさに深いところで愛し合った証だった。
「ほへぇ……しゅごいよぉ……♡」
マナトとアケミが融け合って生まれたマナミは、だらしなくおっぴろげた肢体とアヘ顔を晒しながら、新たな生の歓びに浸っていた。