※この作品はR-18です。

カルデアサーヴァントの秘密の異種姦   作:神魂

5 / 7
第5話

【満月と桜と獣の主催 平安貴族の装いへ】

 

その晩、源頼光と紫式部は不思議な緊張感を抱きながら待機していた。

バイコーンからの「夕食を控えてほしい」という奇妙な要請。

通常ならあり得ない指示だが、最近の彼との絆から不審に思うこともなく従っていた。

 

「どうやら……始まるようですね」

紫式部がそっと呟く。

 

突如として世界が歪み、二人は眩い光に包まれた。

目を開けたとき、眼前に広がっていたのは圧巻の光景だった。

 

荘厳な門構えを持つ豪邸。

瓦葺きの屋根には精緻な彫刻が施され、曲線を描く回廊が優雅に延びている。

庭園には築山と池があり、水は月光を反射して銀色に輝いていた。

 

「これは……平安京の邸宅?」

頼光が呆然と呟く。

 

「ええ、まるで昔に戻ったようですね」

紫式部は懐かしさに目を細める。

「あの頃は毎日、このような場所で……」

 

「オマエ達ヲ待ッテイタ」

バイコーンが影から現れる。

彼の蹄が石畳を踏む音さえ優雅に響く。

 

「これから何をするつもりですか?」

頼光が警戒半分好奇心半分で問う。

 

「まずコレ」

バイコーンが前脚を振ると、二人の衣服が光に包まれる。

 

次の瞬間——

頼光は煌びやかな緋色と紫色の組み合わせの十二単を纏い、紫式部は青磁色と白の清楚な衣装に変わっていた。

 

「これ……!」

頼光が声を震わせる。

「私が生涯着ることのなかった……」

 

「キレイ……」

紫式部が自分の姿を見て感激する。

「かつて公家令嬢として過ごした日々が蘇ります」

 

頼光は複雑な表情を浮かべた。

武士として育ちながらも内心憧れていた装い。

かつて夢見たものが現実となったのに、何故か胸が締め付けられる。

 

「オマエ達ニ似合ウ」

バイコーンは満足げに言う。

「次ハコチラヘ」

 

---

 

**【月下の桜宴】**

 

中庭へ続く回廊を進む。

磨き上げられた板張りの床が二人の高下駄の音を吸収する。

月明かりが徐々に強くなり、やがて壮麗な庭園が姿を現した。

 

満月が水面に映り込み、波紋に揺れる。

池の周りには鮮やかな牡丹や菊が咲き乱れ、中央には一本の大桜がそびえ立っていた。

風が吹くたびに桜の花弁が舞い散り、まるで雪のように降り注ぐ。

 

「美しい……」

紫式部の詩人が魂が震える。

「この光景を『源氏物語』にも書きたいほどです」

 

「これは……夢か?」

頼光が目を擦る。

「私の人生で見るはずのなかった景色……」

 

中庭の一角には桜の木の下に設えられた敷物と円座。

行灯の柔らかな光が空間を彩り、上品な屏風が置かれている。

そこには漆塗りの膳に並ぶ料理たち——

 

三段重ねの重箱には鯛の焼き物、伊勢海老の酢の物、筍の煮物などが美しく盛り付けられている。

そして大振りの杯とドレイクの用意した高級純米大吟醸が酒器に入れられていた。

 

「エミヤ殿ガ作リ、ドレイクが持参シタモノダ」

バイコーンが誇らしげに紹介する。

 

「なんと贅沢な……」

紫式部が杯を手に取る。

「これは神仏への供物以上の接待です」

 

「バイコーンさん……一体これは?」

頼光が困惑しながら尋ねる。

 

【桜の宴の真相】

 

「実ハ……以前、頼光ノ愛馬デアル【京極】殿ト話をスル機会がアッタノダ」

 

バイコーンが静かに話し始める。

 

頼光の目が大きく見開かれた。

京極とは彼女が生涯を共にした最愛の馬。生前、どれほど苦労を共有してきたか……今でも時折思い出される存在だった。

 

「京極が……?」

バイコーンが頷く。

「最初ニ会ッタ時は『貴様、よくもご主人を手籠めにしてくれたな!』と怒り心頭ダッタガナ……」

「シカシ京極殿ハ『悔しいが、お前と関係を持って以来ご主人の笑顔が増えた。ご主人は生前、あんなにも幸せそうな笑みを浮かべるお方では無かった……』」

「『女として生まれたのにも関わらず、父親の意向で武士として男として生きる事を強要されていた……』」

「『鎧姿のご主人が哀しい目で屋敷の幼い姫君たちが遊ぶ姿を見ていた……』」

「『だから、自分は貴様の事が嫌いだが、ご主人に女としての幸せを教えた貴様に感謝している。……ご主人を頼む』と言ッテイタ。」

「後『紫式部殿、これからもご主人の良き友人であってくれ』トモ言ッテイタ」

 

頼光はバイコーンの話を聞きながら涙を流していた。

幼少期から男として生きることを強要され、恋愛する機会も無く武将としての生き方を貫いた。

京極はそれを知っていたからこそ、バイコーンとの関係に反対しながらも内心では認めざる負えなかった。

「京極……」

頼光は涙で濡れた頬を拭いながら微笑んだ。

死してなお彼女を想う旧友の気持ちが胸に沁みる。

 

紫式部も目頭を押さえた。

「そのような背景があったのですね……」

 

「ソシテ彼ハ言ったンダ」

バイコーンは桜を見上げる。

「『もし可能ならばご主人に女として生きていた頃の幸せな日々を思い出して欲しい……』トナ」

 

頼光は言葉を失った。

ずっと忘れようとしていた記憶。

母と共に過ごした柔らかな午後、刺繍に夢中になった少女時代……武士として生きる中で封印してきた過去が甦る。

 

「だからあなたは私にこんな素敵な場所を……」

「『女として生きていた幸せ』を感じてもらいたくて……」

「コノ宴を用意シタノダ」

バイコーンの眼差しは真剣そのものだった。

 

「頼光さん」

「これからも貴方の良き友人でいさせてくださいね」

紫式部は頼光と向き合いながら、薄っすらと涙を流しながら言った。

 

「……っはい」

 

【桜の下の誓い】

 

乾杯の音頭はバイコーンが取った。

「乾杯!頼光ト紫式部ノ未来ニ幸アレ!」

 

盃を掲げる2人。

月光が酒の表面に輝きを添える。

 

「ありがとうございます……」

頼光の声は震えていた。

「こんな形で女性らしい時間を過ごせるなんて……」

 

「これもバイコーン殿の粋な計らいです」

紫式部が微笑む。

「まるで物語の一場面のよう」

 

頼光は初めて料理に箸をつけた。

鯛の柔らかさと上品な味付けが舌に広がる。

かつて夫婦の膳でしか味わえなかった贅沢さ。

 

「美味しい……」

頼光の目に新たな涙が滲む。

「生前、こんなふうに食事を楽しめたことはなかった」

 

「コノ宴ハ永続的ダ」

バイコーンが言う。

「オマエ達ガ望ム限り何度デモ開クゾ」

 

紫式部が筆を取り出した。

「今宵の出来事を記録しなければ。新たな『源氏物語』の一節に相応しい」

 

頼光はようやく自然な笑みを浮かべた。

「本当に……ありがとう……ございます」

 

後日談:仲間たちとの共有

 

宴の翌日、カルデアの小さな休憩室でいつものメンバーが集まっていた。

テーブルにはナイチンゲールが用意したハーブティーが置かれ、穏やかな香りが漂っている。

源頼光と紫式部は少し照れくさそうに顔を見合わせた。

 

「昨日の件ですが……」

頼光が静かに切り出す。

「バイコーンさんが素敵な宴を開いてくれました」

 

紫式部が補足する。

「まさに平安時代の絵巻物のような空間でした。頼光さまの十二単姿はまるで絵画のようで……」

 

「ほう?」

ドレイクが興味津々で身を乗り出す。

「どんな料理が出たんだ?」

 

頼光は少し頬を染めながら説明を始めた。

平安京の邸宅、舞い散る桜の花弁、エミヤ特製の料理とドレイク提供の高級純米大吟醸……。

特にバイコーンが頼光の愛馬・京極との会話を語ったくだりでは、紫式部が涙ぐみながら補足した。

 

ナイチンゲールはハーブティーを淹れながら静かに聞いていた。

いつもなら簡潔な報告を求める彼女が何も言わず耳を傾けている様子に、他の4人は少し驚いた。

 

マタ・ハリが目を潤ませながら言う。

「頼光……本当に良かったわね……」

 

頼光は言葉に詰まった。

「はい……一生分の幸せを味わった気がします」

彼女の瞳から一筋の涙がこぼれる。

 

「あの酒ね」

ドレイクが照れくさそうに帽子を弄りながら言った。

「実はバイコーンに頼まれて特別に調達したんだ。『頼光と紫式部のために最上のものを』って」

 

「やはりそうでしたか」

紫式部が微笑む。

「風味といい色合いといい、まさに貴人のための逸品でした」

 

「アイツもなかなか粋なことするじゃないか」

ドレイクは酒代を思い出し苦笑したが、すぐに満足げな表情になった。

「頼光があんなに幸せそうなら安い出費だよ」

 

ナイチンゲールがハーブティーを配りながら静かに言った。

「彼は本当に深い優しさを持っている」

普段より温かみのある声だった。

 

「私たちの気持ちを察してくれてる」

マタ・ハリが付け加える。

「時に言葉より雄弁な優しさを……」

 

紫式部が筆をとりながら記録を始めた。

「この記憶は絶対に忘れたくない。新たな『源氏物語』の一章に相応しい」

 

頼光は湯呑みを両手で包みながら言った。

「京極に伝えておきますね。『新しい友人たちに囲まれて幸せに暮らしている』と」

 

「そうですね」

紫式部が頷く。

「バイコーンさんのおかげで私も過去の自分を大切にできます」

 

ドレイクが笑いながらグラスを掲げた。

「それじゃあ……京極と頼光と、そしてこの友情に乾杯だ!」

 

「カンパイ」

全員がそれぞれの飲み物で乾杯する。

 

ナイチンゲールが立ち上がりながら言った。

「バイコーンさんが作ってくれたこの絆はかけがえのないものですね」

 

その言葉に全員が深く頷いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。