【隠された真実】
艦娘による提督への慰安任務(提督の性処理、性行為相手)は実は最初は行われてはいなかった。
昔、とある鎮守府の提督が休暇の際に訪れた娼館で軍の機密を漏らしてしまい、大問題になった事があった。
(日頃見目麗しい艦娘達に囲まれて過ごしているからか性欲が溜まっていたのが原因)
(又、この情報流失の影響で本来実行される予定の作戦が中止となり、三ヶ月の遅延を招いた)
軍の上層部は二度と情報漏洩をさせない為に全提督の娼館の利用を禁止したが、それだと提督達の精神衛生上良くないと判断されたので、代わりの手段を模索された。
そこで鎮守府に所属している艦娘達に提督の性処理をさせる事を思いつく。
しかし、普通の人間では無いとはいえど艦娘の感性は普通の女性であり、当然性処理など受け入れられる筈もない。
そこで艦娘を建造する際、
【艦娘は提督に好意を持つ】
【艦娘は提督の性交渉の相手をする事は常識】
等の認識改変の暗示・改造を施される様になった。
(尚、提督と艦娘達はこの事実を知らない)
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【別のとある鎮守府にて】
「痛っ……!」
壁に頭をぶつけた衝撃で、この鎮守府に所属している陽炎型駆逐艦【浜風】の意識が一瞬飛びかけた。
痛みに顔をしかめながら彼女は廊下の壁に手をついた。
「大丈夫……?こんなところで何をしているの?」
通りかかった萩風が不思議そうに尋ねてきた。
浜風はぼんやりとした頭で彼女を見つめる。
「あ……ええと……」
言葉が出ない。
記憶が断片的に蘇る。
提督の寝室での出来事。
肌の触れ合い。
吐息の混ざり合い。
「どうしたの?顔色悪いよ?」
萩風の心配そうな声に、浜風は必死で思考を整理しようとする。だが……
「なんで……私は……あんなことを……慰安任務なんて……」
言葉が途切れ途切れに零れる。
脳裏には「慰安任務」の記憶が洪水のように押し寄せていた。
提督の指先が触れた感触。肌を這う舌の温度。そして……
「何を言っているの?」
萩風の声には困惑が滲んでいた。
「浜風姉さん、【慰安任務】は私たちにとって誇りある役目よ?」
誇り?浜風は震える手で頭を押さえた。
なぜこんな単語が出てくるのか?
「誇りって……なぜ……?」
「もちろん提督に喜んでもらえるからよ!」
萩風は当たり前のことを言うように胸を張った。
「それに他の子たちもみんな羨ましがってるよ。提督からの指名は名誉なことだって」
名誉?喜び?浜風の頭の中で記憶が分解されていく。
自分が「望んで」いたはずの行為。
しかし今、客観的に見ればそれは……
「洗脳……?」
浜風の呟きに萩風は首を傾げた。
「何か言った?」
「いえ……」
浜風は急いで否定した。
今この状況を説明するのは不可能だ。
彼女は足早にその場を離れようとした。
「あ!待って!」
萩風が呼び止める。
「次の任務の日程表持ってるよね?」
任務?浜風の心臓が激しく鼓動を打つ。
次の【慰安任務】の予定が脳裏に浮かんだ。
それは数日後。
彼女はそれを『待ち遠しい』と感じていたはずだった。
「ええ……持っているわ」
嘘をついて彼女は振り返らずに歩き去った。
背後から萩風の声が追いかけてくる。
「今度の日曜日よ!忘れないでね!」
浜風は走り出した。
廊下を抜け、人気のない倉庫に向かう。
そこで彼女は崩れ落ちるように座り込んだ。
「これは……現実なの……?」
手が震える。
指先がかじかむ。
全身が冷たくなっていく感覚。
頭の中で情報を整理しようとしても、思考がまとまらない。
「私は……私は一体……」
記憶が交互に襲ってくる。
『喜んでいた』過去の自分と、
『嫌悪』を感じている現在の自分。
どちらが本当なのか分からない。
「誰か……助けて……」
声にならない叫びが喉の奥でつっかえる。
彼女は両腕で自分を抱きしめた。その時―
「あれ?浜風さん?」
振り向くと青葉が立っていた。
カメラを手にした彼女は好奇心に満ちた目で浜風を見つめている。
「大丈夫ですか?随分と震えてますが……」
浜風は首を横に振った。
「なんでもない……ちょっと具合が悪いだけ……」
「そうですか?」
青葉はカメラを構えた。
「もしかして次の任務について考えていました?」
浜風の体が強張る。
「いえ……」
「そうですか!」
青葉は明るく言った。
「次の【慰安任務】の担当は、浜風さんですよね!みんな注目していますよ!」
青葉の声には一片の悪意もなかった。
むしろ純粋な興味と尊敬が込められていた。
「どうして……みんな平気なの……?」
浜風の小さな呟きに青葉は首を傾げた。
「平気って?」
「なんで……提督と……その……そういうことをするのが当たり前なの……?」
青葉は驚いたように目を丸くした。
「当たり前じゃないですか!艦娘の義務ですよ!」
義務?浜風は頭を抱えた。
青葉の言葉が脳内で反響する。
「義務……義務……?」
「ええ!」
青葉はカメラを下ろして真剣な表情になった。
「私たち艦娘は提督に尽くすために存在しているんですから!」
浜風の目に涙が浮かんだ。
誰も違和感を感じていない。
この狂った現実に適応できないのは自分だけなのかもしれない。
「浜風さん?」
青葉の声が遠くに聞こえる。
浜風はゆっくりと立ち上がった。
「ごめんなさい……ちょっと疲れているみたい……」
「あっ!じゃあゆっくり休んでくださいね!」
青葉は手を振った。
「次の任務の様子、取材させてもらいますから!」
浜風は弱々しく頷くとその場を後にした。
途中食堂の横を通った際、
『それでね~この前の【慰安任務】で、提督ったら本当に激しくて……♡』
嬉しそうに話す声とそれに対して羨望の声をあげる他の艦娘達……彼女の心の中では混乱が渦巻いていた。
誰を信じればいいのか。
何が本当なのか。
自分はどうするべきなのか。
答えは見つからないまま、彼女は自室へと戻っていった。
この狂った世界で唯一の"異端者"となった浜風の苦悩の日々が始まったばかりだった。
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【軍上層部の暗躍】
東京某所の厳重なセキュリティで守られた建物の一室。
机を挟んで向かい合う二人の男がいた。
「計画は順調に進んでいるようです」
部下が報告書を提出しながら言った。
上官は資料に目を通すと静かに頷いた。
「うむ。艦娘の認識改変プログラムは予定通り機能しているな」
資料には全国の鎮守府から送られてくるデータが記されていた。
各艦娘の感情パターン、提督との交流履歴、そして何より重要なのは「提督への好感度指数」だ。
「現在運用中の78の鎮守府全てで、艦娘による提督への慰安任務が円滑に行われています」
「良い傾向だ」
上官は満足げに頷いた。
「だが油断は禁物だ。艦娘が本来持つ自己保存本能や倫理観は強力なものだ。少しでも改変が薄れれば危険な状況に陥る可能性もある」
「そのための定期的なメンテナンスも順調です」
部下は別の資料を取り出した。
「毎月実施されるメンタルチェックの結果も良好です」
「そうか」
上官は資料を受け取りながら呟いた。
「我々はただの代替案を作ったつもりだったが……」
彼は窓の外を見つめた。
青空の下、軍の演習場では訓練用の艦船が海を行き来している。
「だが実際には……最悪の状況を作り出してしまったかもしれんな」
部下は何も答えなかった。
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【終わりの始まり】
一方その頃、鎮守府では提督と艦娘たちの【日常】が続いていた。
執務室のソファに座る提督は疲れ切った表情をしていた。
目の前の書類の山は一向に減る気配がない。
「まったく……まだまだ沢山あるな」
「お疲れ様です、提督」
控えめな声で入ってきたのは潮だった。
彼女は盆を持ち、湯気の立つお茶を運んでいる。
「ありがとう」
提督は湯吞みを受け取りながら微笑んだ。
「だが今は少し休みたいところだ」
「でしたら……」
潮は少し頬を染めながら言った。
「わ、私が……お休みのお手伝いをしましょうか?」
提督は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに理解したように頷いた。
「ああ……そうだな」
彼は立ち上がり、潮の肩に手を置いた。
潮は目を閉じて顔を赤らめながらも期待の表情を浮かべている。
先週の【慰安任務】で提督の性行為の相手を務めて以降、彼女の反応は以前より一層柔らかく優しくなっていた。
提督の脳裏にはこれまで【慰安任務】の記憶が蘇っていた。
愛宕との激しい情事。
彼女の優雅な振る舞いとは裏腹に、時に獣のように貪欲になる姿。
高雄の落ち着いた佇まいの中にも隠された情熱。
そしてアイオワの大胆さと奔放さ……
この日常に疑問を抱いたことはない。
ただこれが【普通】だと思っていた。
その時だった。
「失礼します」
扉が開き、珍しい訪問者が現れた。
あきつ丸だ。
彼女は普段あまり鎮守府に顔を出さない。
「どうしたんだ?今日は何かあったのか?」
提督の問いかけにあきつ丸は厳しい表情で答えた。
「提督殿……少々お話があります」
彼女の目は真剣そのものだった。
「艦娘達との『慰安任務』についてですが……」
その言葉に提督は警戒心を抱いた。
なぜ急にそんな話を?
「何か問題でもあるのか?」
「実は……」
あきつ丸は慎重に言葉を選んでいるようだった。
「最近、いくつかの鎮守府で不審な行動が報告されております」
「不審な行動?」
「はい」
あきつ丸は周囲を見回した。
「ここでは詳しく話せません。後で別室で」
「分かった」
提督は頷いた。
「潮、悪いが少し待っていてくれるか?」
「はい……」
潮は少し落胆した表情を見せたが、すぐに作り笑顔に戻った。
彼女の中では提督の命令は絶対だった。
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提督とあきつ丸は人気のない倉庫に向かった。
そこは普段誰も使わない古い備品が積まれた場所だ。
「ここでなら大丈夫だろう」
提督は辺りを見回して言った。
「実は……」
あきつ丸は声を低くした。
「現在行なわれている艦娘と提督の関係には重大な秘密があるのです」
「秘密?」
あきつ丸は頷いた。
「実は……本来艦娘には提督と肉体関係を持つようプログラミングされていませんでした」
「なんだと?」提督は驚愕した。
「当初、提督と艦娘の間にそのような関係はありませんでした。しかし……」
あきつ丸は懐から一枚の古びた文書を取り出した。
「これは約5年前の極秘文書です」
提督はそれを受け取り読み始めた。内容を理解するにつれ、彼の顔から血の気が引いていく。
「これは……真実なのか?」
「残念ながら」
あきつ丸は厳しい表情で頷いた。
「軍上層部は提督による情報漏洩を防ぐために艦娘を利用して提督の性欲と感情をコントロールする手段を考えました」
「そんな事が……」
「そして艦娘がそれを嫌がる場合があると考えた彼らは……」
あきつ丸は言葉を選びながら続けた。
「艦娘の意識に認識改変を行いました」
「つまり……我々は洗脳されているのか?」
「その通りです」
あきつ丸は冷静に答えた。
「艦娘達は『提督に好意を持つ』『提督との性行為は自然な事だ』という思考パターンを植え付けられています」
「何て事だ……」
提督は頭を抱えた。
「じゃあ潮や愛宕や他の艦娘たちも……」
「彼女達からの今までの好意は偽りだったのか……?」
提督はショックを受けた表情をした。
今まで築いてきた絆が偽物だったのかも知れないと思うと胸が張り裂けそうだった。
「いや……完全に偽りという訳ではありません」
あきつ丸は慎重に言葉を選んだ。
「基盤となる人格や感情は本物です。ただ軍のプログラムによって提督への好意が過剰に増幅されただけなのです」
「それでも……」
提督は絶望的な表情を浮かべた。
「彼女達の自由意志を奪った事には変わりない……」
「そうですね」
あきつ丸は頷いた。
「ですから今こそ行動を起こすべきだと思います」
「何をすればいい?」
「まずは他の鎮守府の提督たちに連絡を取り情報を共有するべきです」
あきつ丸は提案した。
「そして一緒に上層部に働きかける必要があります」
「分かった」
提督は決意を固めた表情で言った。
「これ以上艦娘達を苦しめるわけにはいかない」
「ただ注意してください」
あきつ丸は警告した。
「この事実を知る者は少なくありません。上層部は既に監視体制を強化しています」
「それでもやるしかない」
提督は毅然とした態度で答えた。
「彼女達の本当の幸せのために」
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人里離れた山間の小さな旅館。表向きは閉業しているかのように見せかけてあるが、実は軍の特殊部門が所有する安全な場所だった。
「こちらです」
あきつ丸の案内で提督は奥の一室へと導かれた。
障子を開けると、そこにはすでに一人の少女が座っていた。自身の鎮守府には所属していないが【浜風】だ。
「来たか」
浜風は静かに立ち上がり、深々と頭を下げた。
「お待ちしていました」
室内には簡素な畳敷きの空間があり、中央には小さな座卓が置かれている。
三方に置かれた座布団のうち一つがあきつ丸のものらしく、彼女は既にそこに座っていた。
「座ってください」
浜風は提督に促した。
提督が席に着くと、浜風も元の位置に戻った。
「初めまして……と言っていいものか」
提督は少し困惑した表情で浜風を見た。
「はい」
浜風は真っ直ぐな眼差しで提督を見つめ返した。
「同じ真実に気づいた同志としての初対面ということで」
その言葉に提督は小さく頷いた。
「そうだな……」
短い沈黙が流れる。
最初に口を開いたのは提督だった。
「まずは……謝らせてほしい」
彼は深々と頭を下げた。
「君に……そして君の仲間たちに……あんな事を強いていたなんて」
浜風は静かに首を振った。
「頭を上げてください」
彼女の声は意外なほど落ち着いていた。
「あなたを責めるつもりはありません」
「だが……」
「あなたが直接私の所属する鎮守府の提督ではない以上、責めることはできません」
浜風の言葉にあきつ丸も頷いた。
「それに」
浜風は続ける。
「私達が【認識改変】されている事実を知らなかった点については、あなただけではなく私達全員が同様です」
提督は顔を上げた。
浜風の瞳には怒りも憎しみもなく、ただ冷静さだけがあった。
「それでも……私は提督として責任を感じている」
「分かります」
浜風は優しく言った。
「だからこそ今日はこうして集まったのでしょう?」
彼女の言葉に提督は頷いた。
「そうだ。これからどうすべきか……それを話し合うために」
「まずは状況を整理しましょう」
あきつ丸が割って入った。
「時間は限られています」
彼女は懐から小さなメモ帳を取り出し、ペンを構えた。
「現在確認できている情報を共有しましょう」
浜風はゆっくりと頷いた。
「私の鎮守府で起きた事をお話しします」
浜風は淡々と語り始めた。
数日前から感じ始めた違和感。
提督との【慰安任務】に対する違和感の正体を突き止めようとした過程。
そして最終的に真実に辿り着いた時の衝撃。
彼女の言葉は感情的になることなく、事実のみを淡々と語っていた。
「私の鎮守府ではまだ他に気づいている者はいないようです」
浜風は付け加えた。
「この秘密を守るためにも最小限の動きに留める必要があります」
「私のところも同じだ」
提督は頷いた。
「他の艦娘たちは未だに……何も知らない」
「最も深刻なのは」
あきつ丸が口を開いた。
「このシステムが全国の鎮守府に普及している事です」
彼女は手元のメモを確認しながら続けた。
「現在確認できるだけで46箇所の鎮守府で同様のケースが発生しています」
「全部で78箇所だから……半分以上か」
提督は顔を曇らせた。
「そうですね」
あきつ丸は静かに頷いた。
「しかもこの数字は氷山の一角かもしれません」
「なぜここまで大規模に……」
提督は唇を噛んだ。
「理由は簡単です」
あきつ丸は厳しく言った。
「戦争遂行能力の維持と統制のためです」
浜風は無言で頷いた。
「軍上層部は艦娘と提督の感情制御・統制が作戦行動の安定性を高めると考えています」
あきつ丸は続けた。
「戦場でのパフォーマンス向上、指揮系統の強化……それらの名目で正当化されています」
「しかし実態は……」
提督は言葉を濁した。
「性暴力と洗脳の組み合わせですね」
浜風が言い切った。
室内に重い沈黙が落ちた。
「だからこそ」
浜風は続けた。
「私達には選択肢があります」
「選択肢?」
「このまま従うか」
浜風は指を一本立てた。
「抵抗するか」
彼女は真剣な表情で二人を見つめた。
「私の目的は……この認識改変システムの解除です」
提督はハッとした表情になった。
「できるのか?」
「分かりません」
浜風は正直に答えた。
「しかし試す価値はあるはずです」
「具体的にどうするつもりだ?」
提督は身を乗り出した。
「まずは情報収集です」
浜風は冷静に言った。
「この技術を開発した研究所の特定が必要です」
「簡単にいくとは思えないが……」
提督は懸念を示した。
「その通りです」
浜風は頷いた。
「しかし諦める理由にはなりません」
彼女の決意に満ちた表情を見て、提督は胸が熱くなるのを感じた。
「協力しよう」
彼は即座に答えた。
「私の知りうる限りの情報を提供する」
「ありがとうございます」
浜風は初めて微笑んだ。
「私も全力で支援します」
あきつ丸も頷いた。
「ただし」
彼女は声を落とした。
「動きは慎重に。敵は巨大です」
「分かっています」
浜風は真剣な表情に戻った。
「まずは小規模な活動から始めましょう」
三人は夜遅くまで様々な計画を練った。
情報収集の方法、リスク管理、長期的な目標設定……彼らの議論は尽きることがなかった。
窓の外では星が瞬いていた。
その微かな光のように、彼らの希望もまた小さくとも確かな輝きを放っていた。
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【提督とあきつ丸が、浜風と今後の行動の計画を考えていた同時刻】
また別のとある鎮守府の一角にある提督の私室にて、
この鎮守府の提督である〇〇提督と、この鎮守府に所属している艦娘であるイタリアの軽巡洋艦【アブルッツィ】が【慰安任務】を行っていた。
照明は最低限に抑えられ、カーテン越しに差し込む月明かりだけが部屋を淡く照らしている。
「提督……もっと強く……お願い……」
甘く濡れた声が闇の中に溶けていく。
桃色の長い髪がシーツの上で波打ち、月光に照らされて幻想的な光景を作り出していた。
「アブルッツィ……今日も綺麗だよ……」
提督の声は上擦っていた。
彼の手は彼女の豊満な胸を揉んでいる。
アブルッツィの白い肌は汗で湿り、月明かりに輝いていた。
「嬉しいです……」
彼女は艶やかな声で答えながら身体を仰け反らせた。
その動きで彼女の巨乳が揺れる。
「私……提督に喜んで頂けて……幸せです」
その言葉に提督の心がチクリと痛んだ。
彼は艦娘達の認識改変の真実を知っていた。
彼女が今感じている快楽も幸せも、すべて人工的に植え付けられたものだということを。
だが彼の腰の動きは止まらない。
彼の性器は彼女の内部で脈打ち、快感の波が全身を駆け巡る。
理性と欲望の狭間で彼の心は揺れ動く……
「提督……もっと……もっと激しく……」
アブルッツィの喘ぎ声が部屋中に響く。
その声は次第に大きくなり、彼女の絶頂が近づいていることを告げていた。
提督は目を閉じた。
汗が額から流れ落ちる。
彼の脳裏には様々な考えが駆け巡っていた。
これが全て偽りなのだ。彼女たちの愛情も快楽も全て……
だが真実を暴露したら何が起きる?パニック、混乱…だがそれ以上に今の現状を失いたく無いと提督は思っていた。
自分は昔から女性との交際経験が無く、子供の頃に虐められていたからか、自分に自信が無かった。
軍学校に入ったのもそんな自分を変えたかったからだ。
しかし、軍学校には自分より優秀な提督候補生が沢山いて、落第こそはしなかったものの、いつも自分に自信が無く不安だった。
そんな自分が何故この鎮守府の提督に選ばれたのか今までずっと疑問に思ってはいたが、おそらくこの【慰安任務】の事実を知っても問題ない、仕事も可もなく不可もない現状維持に最適な、上層部にとって都合の良い存在だったからだろう。
【慰安任務】を行う艦娘達には申し訳なく感じてはいるが、自分はもう彼女たちの肌のぬくもりを失いたくなかった。
この【慰安任務】が無ければ、美しい彼女達は自分の様な人間に好意を寄せてくれる事などありはしない…と思っていた。
【慰安任務】無しでの彼女達の信頼と好意を信じる事が出来なかったのだ。
今までずっと自信が持てず他人から評価された事が無かったからか……そんな自分にも慕ってくれる艦娘達を大切に想う気持ちと同時に醜い劣等感があった。
……俺にはこの悦びを手放す勇気が無い。だから……
「アブルッツィ……」
提督は彼女の名前を呼んだ。
「はい……?」
「君は……幸せか?」
突然の質問にアブルッツィは一瞬戸惑ったようだった。
しかしすぐに妖艶な笑みを浮かべて答えた。
「もちろんです。提督に愛されているこの瞬間が私の幸せですから」
その言葉は提督の胸に鋭く突き刺さった。
彼女の純粋な愛情表現が今はただ辛い。
彼女がこう思うように設計されている事を知っているから。
……本当の彼女ならどう答えただろうか……?
提督は頭を振った。
それは考えてはいけない事だ。
今この瞬間を楽しむべきなのだ。
それが彼女達の為でもある。
「そうか……」
提督は再び腰の動きを加速させた。
「あぁっ!」
アブルッツィの声が高く上がる。
「提督……好き……愛しています……」
彼女の言葉が提督の耳に響く。
心臓が締め付けられるような感覚。
しかし同時に下半身からは快感が湧き上がってくる。
「俺もだ……」
嘘だ。
彼女の本当の気持ちではない。
だが今はこれでいい。
彼は自分に言い聞かせた。
「あぁ……イキます……提督……一緒にイって下さい……」
アブルッツィの内部が痙攣し始める。
提督も限界に近づいていた。
「アブルッツィ……出すぞ……」
「来て……中に出して下さい……」
提督は最後の力を振り絞って彼女の中に注ぎ込んだ。
快感が全身を駆け巡る。
しかし同時に胸の奥底には冷たい何かが広がっていく。
事が終わった後、二人はベッドに横たわっていた。
アブルッツィは満足げな表情で提督の胸に寄り添っている。
「提督……今日はいつもより激しかったですね」
「そうかな……」
「ええ」
アブルッツィは微笑んだ。
「何かありましたか?」
提督は答えなかった。
窓の外を見るふりをして目を逸らす。
「さて」
彼は起き上がりながら言った。
「そろそろ寝る時間だな」
「はい……」
アブルッツィも名残惜しそうに起き上がった。
「提督は明日も仕事がありますからね」
「私は特別休暇ですので……明日は妹のガリィと一緒に買い物にでも行こうと思います」
「……ああ、楽しんでおいで」
多分いつかこの異常な状況が終わる日が来るんだろうな……彼はそう理解しながらも、今日も現実から目を背け続ける様に彼女を抱きしめた。
---
数か月後、とある鎮守府の会議室。
薄暗い照明の中、重苦しい空気が漂っていた。
「もうこれ以上黙認することはできない」
提督の声が静かな部屋に響き渡る。
テーブルの向こう側では〇〇提督が硬い表情で座っていた。
「貴官は真実を知りながら行動を起こさなかった。これがどれほど重大な問題か分かっているのか?」
浜風が一歩前に出て言葉を継いだ。
「あなたの鎮守府でも認識改変が行われている。それにより艦娘たちの意思が操作されているのです」
〇〇提督は拳を握りしめた。
「分かっている……分かってはいるんだ……」
彼の声は震えていた。
「だが……だが俺は……」
あきつ丸が冷静に言葉を挟んだ。
「全ての艦娘から認識改変を解除することを決断してください。それしか道はありません」
〇〇提督は顔を上げた。
その目に浮かぶのは恐怖と迷い。
「できない……」
彼は苦しげに首を振った。
「彼女達を失いたくないんだ……」
提督は眉をひそめた。
「どういう意味だ?」
「特に……アブルッツィを……」
浜風が厳しい表情で言った。
「あなたは彼女を利用してきたのではないですか?」
「違う!」
〇〇提督は突然声を荒げた。
「俺は……俺は本気で彼女を……」
その時だった。
扉が開き、桃色の長い髪を持つ女性が静かに入ってきた。
アブルッツィだ。
「アブルッツィ……!」
〇〇提督の顔から血の気が引いた。
彼女の瞳に以前のような熱っぽさはない。
代わりに冷静さと決意が宿っていた。
「ご安心ください。殺しに来たわけではありませんよ」
アブルッツィの穏やかな声に、〇〇提督は一瞬安堵の表情を見せたが、すぐに困惑した表情に戻った。
「なぜ……なぜここに……」
「提督達の話は聞いておりました」
アブルッツィは静かに答えた。
「そして……私もまた認識改変から解放されました」
その言葉に〇〇提督は立ち上がった。
「なんだって……?」
「全てを思い出しました」
アブルッツィはまっすぐ彼を見つめた。
「私がこれまで抱いていた感情が全て偽りであったことも」
部屋に緊張が走る。提督達は固唾を飲んで成り行きを見守っていた。
「なら……なぜ……」
〇〇提督の声は震えていた。
彼女が真実を知った今、自分への憎しみや軽蔑しかないだろうと思ったからだ。
しかし次の瞬間、アブルッツィは驚くべき行動に出た。
彼女はゆっくりと歩み寄り、〇〇提督を優しく抱きしめたのだ。
「アブルッツィ……?」
〇〇提督は混乱した表情で彼女を見つめた。
アブルッツィは彼の肩に顔を埋めながら静かに語り始めた。
「確かに……私の感情の大半は作り物でした。けれど……その中にあった小さな本物の欠片は消えていないのです」
彼女の声は温かく柔らかい。
「貴方の優しさ……思いやり……それらを感じるたびに芽生えた小さな好意。それは偽りではなかった」
〇〇提督の目から涙が溢れ出した。
「だが……俺は君を騙していた……利用していたんだ……」
「いいえ」
アブルッツィは首を振った。
「貴方は真実を知りながらも私を傷つけないようにしてくれていました」
彼女は少し離れて彼の目を見つめた。
「あの時……私が貴方に『自分のことが好きか』と聞かれた日のことを覚えていますか?」
〇〇提督は驚きに目を見開いた。
「ああ……覚えている……」
「騙していただけなら、わざわざ私の好意を確認するような事を言う必要はありません。なのに貴方はわざわざ『俺もだ』と答えてくれた」
アブルッツィの瞳に涙が浮かんだ。
「それが貴方の優しさだと今なら分かります。全ては偽りではなかったのです」
提督達は息を呑んだ。
まさかこんな展開になるとは予想していなかった。
「……それに貴方は私以外の艦娘とは、決して関係を持とうとしませんでしたしね」
アブルッツィは少しだけ微笑んだ。
「だから……」
アブルッツィは続けた。
「私は貴方のことを許します。そして……これからも傍にいさせてください」
〇〇提督は嗚咽を漏らした。
長い間押し込めていた感情が爆発したかのように彼はアブルッツィを強く抱きしめた。
提督達は静かにその様子を見守っていた。
「……ありがとう……本当に……」
その言葉と共に、彼は長年抱えていた重荷から解放されたかのように泣き崩れた。
「それから」
アブルッツィは3人の方に顔を向け、穏やかな声で続けた。
「この問題を解決するために皆さんの助けが必要なのです」
〇〇提督は顔を上げた。
彼の表情には新たな決意が浮かんでいた。
「分かった……」
彼は涙を拭いながら頷いた。
「もう逃げるのはやめる。真実を明かすことに協力する」
浜風は静かに微笑んだ。
「良かった……」
彼女は心から安堵した様子で言った。
あきつ丸も頷いた。
「これで一人の提督が我々の側に付きました。他の提督達にも同様の働きかけを続けましょう」
「ああ……」
提督は決意に満ちた表情で頷いた。
「私も全力で協力する。艦娘達を救うために……そして」
彼はアブルッツィと〇〇提督の方を見た。
「彼らの為にもね」
そして提督達は新たな一歩を踏み出したのであった。
---
【月明かりの部屋で】
提督達が帰り、部屋には〇〇提督とアブルッツィだけが残された。
窓から差し込む月明かりが床に薄い銀色の帯を作っている。
「……」
提督は椅子に腰掛けたまま、言葉を探していた。
どんな顔をして彼女を見ればいいのかわからない。
これまでの関係が根底から覆され、これからどう接すればいいのか途方に暮れていた。
「さて」
アブルッツィが明るく言った。
「明日から忙しくなりますね。他の艦娘たちの認識改変も解除しなければ」
彼女の自然な態度に提督は少し戸惑った。
「そうだな……」
「今日はもう特に用事はありませんよね?」
彼女の問いに彼は頷いた。
それからふと思い出したように続けた。
「そういえば……いつも決まってこの時間には……」
言いかけて言葉を飲み込む。
彼女を傷つけるのではないかと恐れたからだ。
しかしアブルッツィは微笑んだ。
「はい。いつもなら【慰安任務】の時間でしたね」
彼女の率直さに提督はさらに困惑した。
「だがもう……そんなことはしなくていいんだ」
彼は慌てて言った。今さら何を言っても取り返しがつかないのに、それでも何か言わずにはいられなかった。
アブルッツィは少し考え込むような仕草をした後、意を決したように彼を見つめた。
「提督……お願いがあるのですが」
「なんだ?」
「もう一度……私と肌を重ねていただけませんか?」
提督は凍りついた。
彼女の言葉の意味が理解できないわけではない。
しかし認識改変が解除された今となっては全く受け入れ難い提案だった。
「何を言ってるんだ……そんな必要はない」
「いえ……必要なんです」
アブルッツィの声は真剣だった。
「今度は偽りのない私と……本当の私を知ってほしいのです」
提督は息を詰まらせた。
彼女の瞳に宿る決意の色が本物であることを彼は感じ取った。
「だが……」
「提督……」
アブルッツィは一歩近づいた。
「私は過去を否定したくありません。確かにあれは操られた感情だったかもしれませんが……その中にも本物の欠片はあったのです」
彼女の言葉に彼は戸惑いながらも心を動かされていた。
「それに……」
アブルッツィは少し恥ずかしそうに続けた。
「あなたとの触れ合いの中で芽生えた感情は偽りではなかったと思います」
提督は言葉を失った。
かつて彼女を騙していた罪悪感と、今もなお惹かれてしまう矛盾した感情が胸の中で渦巻いていた。
長い沈黙の後、彼は静かに頷いた。
「分かった……」
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数時間後。
二人は寝室のベッドに並んで横たわっていた。
月明かりが窓から差し込み、二人の影を壁に映し出している。
「今日は……違いましたね」
アブルッツィが静かに言った。
彼女の声には満足感と不思議な解放感が混じっていた。
「何が……?」
「全てです。触れる手の温かさも……見る目つきも……感じる気持ちも……」
彼女は柔らかく微笑んだ。
「本当の貴方に触れることができて嬉しかった」
提督は黙って彼女の話を聞いていた。
罪悪感と安堵感が入り混じった複雑な心境だった。
「正直に言って……」
アブルッツィは続けた。
「認識改変を受けていたとはいえ、貴方のことを好ましく思っていたのは本当でした」
提督は驚いて彼女を見た。
「それに……」
彼女は少し赤くなって続けた。
「貴方相手だったら【慰安任務】じゃなくても肌を重ねてもいいと思っていました」
その言葉に提督の胸が締め付けられた。
彼女の正直な告白に心が揺さぶられる。
「だからこそ……」
アブルッツィは少し真剣な表情になった。
「貴方が私と肌を重ねているときの、悲しそうな目が忘れられなかったんです」
提督は息を呑んだ。
彼女の観察力に驚いたと同時に、自分自身が全く気づいていなかったことに愕然とした。
「そうだったのか……」
「はい」
アブルッツィは優しく彼の手を取った。
「きっと貴方も苦しんでいたんですね」
提督の目から涙が零れ落ちた。
長年押し込めていた感情が一気に溢れ出してくる。
彼は泣きながら彼女に抱きついた。
「すまない……本当にすまない……」
アブルッツィは彼の背中を優しく撫でた。
「もういいんですよ」
彼女の声は慈愛に満ちていた。
「貴方の優しさに気づいていながら、私はそれに応えることができませんでした」
提督は嗚咽を漏らしながら彼女の言葉を聞いた。
「これからは……」
アブルッツィは続けた。
「新しい関係を築いていきましょう。偽りのない、本当の関係を」
提督は頷いた。
彼の心に暖かい光が差し込んでくるのを感じた。
長い暗闇のトンネルを抜け出したかのような開放感。
「ああ……」
彼は涙を拭いながら言った。
「一緒に……新しい道を進もう」
月明かりの中で、二人の影が一つに重なった。
それは偽りのない本当の愛の形だった。