【浜風】が所属している鎮守府の提督(××提督)は高身長で容姿端麗(爽やか系イケメン)で成績優秀・頭脳明晰(IQ180)・スポーツ万能、コミュニケーション能力も高く人気者。
実家が裕福で家柄も良く、軍学校では実技・学科ともにトップで軍学校始まって以来の好成績の首席卒業。
赴任した鎮守府では、異常ともいえるレベルの高い指揮能力で2年の赴任期間中で艦娘の【大破数0:中破数2:小破数4】、敵の深海棲艦撃破数【666】は鎮守府始まって以来の大戦果だった。
彼の指揮する鎮守府の担当海域は深海棲艦出現回数が異常なほど低くなり(深海棲艦側も避ける様になった)深海棲艦による被害を例年の42%まで低下させた。
有能で人当たりも良い爽やかなイケメン提督に配属された艦娘達(浜風は除く)はメロメロだった。(認識改変無しの素の魅力)
しかし、彼の本性は冷酷で基本自分以外の他者を見下している傲慢な性格である。
また、非常に負けず嫌いで幼稚なところがある。
しかし、他人には決して本性を悟らせない。
(典型的なサイコパス)
(艦娘達の事も仕事道具兼、都合の良い性処理道具程度にしか思っていない)
(艦娘達に優しく、彼女達が求める言葉を与えるのも、そっちの方が自身にとって都合が良いから)
学生の頃、女遊び関係で刑事事件沙汰になったことがあり、その時は実家の権力と金で誤魔化したが、実家は彼を端正させる為に軍学校に半ば無理矢理入学させる。(この時の経験が『必要に応じて取り繕う事』『相手の求める言葉を与えてやる事』の重要性を彼に認識させた)
彼は持ち前の高い能力で軍学校を首席で卒業し提督になる。
【認識改変】について当初は知らなかったが、途中で知ってからは【認識改変】と自身の能力と魅力を利用し、自身の鎮守府に所属する艦娘達を利用し支配していった。(その関係は恋人同士ではなく、カルトの教祖と信者に近かった)
【一方その頃、浜風が所属している鎮守府では】
雨粒が窓ガラスを叩く音だけが響く食堂は、かつての賑わいが嘘のように静まり返っていた。
テーブルには手をつけられていない朝食が並んでいる。
艦娘たちはそれぞれの席に座り、重い沈黙の中、時折洩れるすすり泣きだけが空間を満たしていた。
「提督……どうして……」
隅のテーブルで川内が呟いた。
その隣で神通は涙を拭いながら黙って首を振る。
那珂はスマートフォンの画面を見つめたまま微動だにしない。
奥の席では金剛型四姉妹が固まって座っていた。
霧島がデータパッドに何かを打ち込んでいる。
おそらくは提督の違法行為の証拠を集めているのだろう。
比叡は黙って紅茶を注ぎ続け、榛名は食器を弄んでいる。
金剛は窓の外を眺めたまま動かない。
「……」
球磨が隣に座る木曾を心配そうに見つめる。
彼女は何度も涙を拭いながら、「俺は……俺は……」と繰り返している。
一方、伊勢型の二人は無言で向かい合っていた。
日向が何かを言いかけては躊躇し、伊勢は遠くを見つめたまま何も言わない。
その中でもひときわ痛々しい姿を見せていたのは、秘書艦であり提督の一番のお気に入りだった鈴谷だった。
彼女は食堂の中央の椅子に腰掛け、虚ろな目で宙を見つめている。
その手には以前提督から贈られたネックレスが握られていた。
提督が憲兵に連行されていった翌日、彼女は屋上の柵に登ったところを止められたばかりだった。
「鈴谷……」
熊野が彼女の肩に手を置く。
「もう少ししっかりしなさい」
「……嘘だったんだ」
鈴谷の声は掠れていた。
「全部……全部……」
彼女の周りには加賀や瑞鶴もいたが、誰も言葉をかけられないでいた。
あの完璧な提督の裏切りは、特に彼女にとって耐え難い現実だった。
「あの時の言葉は……嘘だったのか……?」
天龍は独り言のように呟いた。
龍田が彼女の肩に手を回す。
「そんなわけ……そんなわけないわ……」
しかし彼女の目にも涙が浮かんでいた。
陸奥が重い口を開いた。
「あの男は最初から……」
長門が静かに頷く。
「我々を都合の良い駒として扱っていたのだ」
食堂の隅で香取が涙を流していた。
彼女も提督に好意を持っていた一人だ。
戦略の相談に乗ってもらい、「君の努力は素晴らしい」と褒められた日々を思い出す。
あれも偽りだったのか。
「でも……」
香取は自問自答する。
「仮に認識改変で好きにさせられていたとしても……実際に接した時の幸福感や安心感は本物だったはずなのに……」
隣に座っていた阿武隈は小さく頷いた。
提督との時間を思い出しては涙が溢れてくる。
舞風が突然立ち上がった。
「もうやめようよ!」
彼女の声に全員が驚いて顔を上げる。
「提督が嘘つきだったって事は分かったでしょ!それで十分じゃないの!」
彼女は声を震わせながら叫んだ。
「もう……もう解放されようよ……」
周りからは賛同の声もあったが、同時に反対の声も上がった。
「でも……」
羽黒が小さく呟く。
「これから私たちはどうすれば……」
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浜風は食堂の入り口からその様子を見ていた。
「これが……これが正しい判断だったのでしょうか……」
彼女の目は食堂の艦娘たちの悲嘆の表情を映していた。
かつて提督に魅了されていた彼女たちが、今や生きる意味さえ見失っているように見える。
『自分のした事は本当に正しい事だったのだろうか……?』
浜風の胸に疑問が湧き上がる。
しかしすぐに彼女は首を横に振った。
『次の世代の為にもこの悪習はどこかで必ず断ち切らなければならなかった』
彼女は自分に言い聞かせるように心の中で繰り返した。
提督の逮捕は、艦娘たちを搾取から解放する第一歩だったはずだ。
浜風は食堂の中に入っていった。
艦娘たちの多くが彼女の方を見る。
彼女らの目には非難の色が浮かんでいた。
浜風が提督の悪行を暴いたことが周知されていたからだ。
「浜風……」
由良が弱々しく言った。
「あなたは一体何をしてくれたの……?」
浜風は由良の目をまっすぐ見つめた。
「提督が犯した罪を取り消すことなどできません。しかし……」
「でも!」
夕張が声を荒げた。
「あの人は確かに……確かに私たちを大事にしてくれていたじゃない!」
浜風は深く息を吸い込んだ。
「夕張さん、彼が言った『愛の言葉』の数々は全て作り物です。彼は自分を愛してほしいからそうしただけです」
「そんな……」
「私は提督の部屋を捜索しました」
浜風は続けた。
「彼の個人的な日記が見つかりました。そこにはこう書いてありました」
彼女は懐から古びたノートを取り出した。
『今日も鈴谷が私の言葉を喜んでいた。こういうバカみたいな奴を操るのは簡単だ。』
『少しヤンチャしたせいで、親父に軍に入れさせられた時はどうなるかと思ったが、提督という立場はそう悪くない』
『少し本気を出して仕事をしたら、上層部も周りの女もこぞって私を称賛する。私の前任者はこの程度の仕事もできなかったのか?』
『【認識改変】?別にそんな物が無くても、この程度の女どもを魅了するなんて簡単だが、利用できるものは利用しよう』
『私が少し優しくして、求めているであろう言葉をくれてやったら、簡単に股を開いた。所詮艦娘なんて力が強いだけの世間知らずの小娘だ』
食堂に沈黙が広がった。
多くの艦娘たちが浜風の手の中の日記を見つめている。
彼女が読み上げた内容に衝撃を受けた表情だ。
これまで信じてきたものが崩れ去っていくような感覚に襲われているようだった。
「これが……彼の本当の姿です」
浜風の声は震えていた。
「彼は私たちを……いや、艦娘を都合の良い道具としか見ていない」
浜風の言葉に反論する者はいなかった。
みんな沈黙していた。
バタンっ!
食堂内で誰かが倒れる音がした。
皆一斉に音のした方に振り向いた。
鈴谷だった。
提督の秘書艦であり、【慰安任務】の際、提督の一番のお気に入りだった彼女には耐えられなかったようだ。
その後も次々と数人の艦娘達が倒れて行った。
それはまるで祭壇の偶像が崩れた瞬間の信者の末路の様だった。
そして浜風は初めて確信した「彼女達は【認識改変】されていた事実よりも、××提督からの愛情が嘘だった事の方がショックだったのだ」と。
「これは……本当なの……?」
吹雪が震える声で聞いた。
浜風は頷いた。
「私がすべきことは……真実を明らかにすることです。その上で彼女たちが自分の道を選べるように導くことです」
認識改変という外部要因よりも、提督からの愛情が偽りだったという事実の方が艦娘たちを深く傷つけていた。
彼女たちは今、二つの真実の間で揺れていた。
一つは、提督が偽りの愛で彼女たちを支配していたという残酷な現実。
もう一つは、彼女たちが感じていた幸福感や愛情が全て偽りだったのかという自問。
浜風は静かに言葉を続けた。
「皆さん、辛いと思います。私も同じ立場だったらきっと……ですが、まずは事実を受け入れなければなりません」
食堂の空気が重く澱んでいく中、浜風は再び言葉を探した。
「私たちは艦娘です。この国を守るために生まれてきた存在です。しかし、その存在意義を忘れてしまうほど深く堕ちてしまっていたのではないでしょうか」
彼女の言葉に何人かの艦娘が項垂れた。
「あの人の魅力に取り込まれてしまっていた自分が情けないです……」綾波が小さく呟いた。
浜風は頷いた。
「そうですね。でもそれは認識改変のせいでもあります。だからこそ……」
「だからこそ?」
漣が問いかけた。
「これからは自分たちの意志で生きていく必要があります」
浜風は毅然とした態度で言った。
「この鎮守府を立て直しましょう。新しい指揮官を迎え、艦娘としての誇りを取り戻しましょう」
浜風の言葉に反応したのは大和だった。
彼女は静かに立ち上がった。
「浜風の言う通りかもしれません」
大和は強い眼差しで言った。
「確かに私たちが彼に抱いていた感情は本物だったかもしれませんが……」
彼女は一瞬言葉を詰まらせた。
「それは操作された本物であって、真の本物ではありませんでした」
長門がゆっくりと頷いた。
「浜風の言う通りだ。我々にはまだ役目がある」
徐々にだが艦娘たちの表情に変化が表れ始めた。
絶望の淵に沈んでいた彼女たちの中に、一筋の希望が灯り始めていた。
「でも……次に来る提督が同じような人だったら……?」
比叡が不安そうに言った。
「その時は……」
浜風は決然とした口調で言った。
「その時は私達でこの鎮守府を守り抜きましょう。今度は誰かに操られるのではなく、自分たちの意志で」
食堂に僅かながら活気が戻り始めた。
それは絶望からの小さな一歩だったが、確かな前進だった。
窓の外では雨が少しずつ弱まっていた。
灰色の雲の切れ間から淡い光が差し込み始めていた。
浜風は静かに祈った。
艦娘たちが自らの足で立ち上がり、新たな時代を切り開いていくことを。
そして自分自身もまた、この道を共に歩んでいくことを誓った。