※この作品はR-18です。

悪の組織の戦闘員、スキルに目覚めて成り上がる   作:稲荷竜

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氷見室トマリ(魔法少女)一人称


第19話 氷見室トマリ 5

 私は、セント先生と恋人同士になったことを、家族に打ち明けた。

 ……もちろん、隣にはセントさんを連れて。

 

 だから、妹も、母も、もちろん父も、セントさんとは恋人になれない。

 私が……恋人、だから。

 

 これで納得してくれるはずだった。

 妹の間違いも正されて、私たちは、祝福される……

 

 はず、だったのに。

 

「そんなわけないでしょ!!!」

 

 妹が金切り声で叫ぶ。

 母も、すごい形相で私をにらみつけて、何か、聞き取れないほどの早口で……たぶん、とても酷い言葉を投げつけて来た、気がする。

 

 そんな中で、唯一冷静な父が──

 

「まだ学生の娘に手を出すだなんて、どうかしている。それに、トマリ、お前もだ。どうせ、お前がセントさんを誘って、既成事実を作ったんだろう? 昔からお前には、少し、ずるいところがあるからな」

 

 ──表面上は冷静に見えた父さえ、私を責めた。

 

 ………………どうして?

 

 妹が『両想いだ』って言ったら、みんな、優しく笑ってたでしょ?

 どうして、私はだめなの?

 私だから、だめなの?

 

 いつも、私がもらうものは、妹に譲ってきたでしょ。

 妹は、私だけが何かをもらうのをいつも嫌って、自分も自分もってせがんできたじゃない。

 それで私は、『お姉ちゃんなんだから』って、与えてきたでしょ。

 

 なんで、私だけ認められないの?

 

 ……もしかして、みんな、私のこと、すごく強くて、なんでも分け与えられる人だとか、思ってるの?

 あなたたちも、クラスのみんなも。

 私に頼って、私から奪って……

 

 私の気持ちを考えてくれる人は、いないの?

 

「トマリさん、少し、冷静になってくれるまで、時間をとった方が……」

 

「冷静になる!?」妹が叫んだ。「冷静になるのはお姉ちゃんの方でしょ! あたしが好きって言ったじゃん! なんでそれが、お姉ちゃんのものになってるの!? おかしいでしょ!?」

 

 聞こえない。

 妹の言葉がうまく聞こえない。母の言葉も、もっと、聞こえない。

 何か私を責めてるのはわかる。でも、言語として認識できない。

 

「トマリさん、少し出た方が良さそうだ」

 

 セントさんが手をとって連れ出してくれる。

 

 妹が立ちふさがった。

 セントさんが軽く妹の肩に手を添えて、優しくどかした。

 

 妹は信じられないものを見る目をセントさんに向けて、固まった。

 

 ……家を、出て行く。

 

「きっと、少し経てば、冷静になってくれるよ」

 

 ……そうは思えなかった。

 

 だって、私は……

 

 クリスマスパーティーで、妹と仲直りをする予定だった。

 その機会はもう二度とないことを、私はなんだか、確信してしまっていた。

 

 

「貧乏だから、ささやかでごめんね」

 

 セントさんの家に転がり込んだ私は、身の回りのものを揃えるのと一緒に、ケーキを買ってもらっていた。

 

 制服のまま移動したから、財布もスマホもある。

 でも、他のものは……もう二度と、取りに戻れないような気がする。

 あの家はもう、私を受け入れてくれない。……私を許してくれない。そういう、確信があった。

 

「……」

 

 コンビニのケーキには、かわいいクリスマスの装飾がしてあった。

 

 二つ入りの小さなショートケーキ。

 私は……

 

「……家でね、六号の、大きなホールケーキを、予約していたんです」

「……ごめんね、トマリ」

「いえ。……妹が甘い物が好きで、たくさん食べるから……私はいつも、余った部分を、少し、食べるだけでした。……いいお店のケーキで、美味しい、ケーキで……」

「……」

「……でも、なんだか、このケーキのほうが、ずっと、ずっと、美味しそうに見えるんです」

 

 悲しみはあったし、つらい気持ちもあった。

 でも、この先の人生が、家にいたころよりも、明るくなったような……そういう、気がした。

 

「あの、私、まだ学生で、えっと、学校も……続けられるか、わからないんですけど。そ、それでも、一生懸命に、やります、から、あの、だから……セントさんと、この先もずっと、一緒にいても、いい、ですか?」

 

 セントさんは、笑った。

 ……なんで、だろう。その笑顔は……

 

 少しだけ、悲しそうな、ものに、見えた。

 

「……ああ。一緒にいよう。この先も、ずっと」

 

 でも、抱き寄せてくれた。

 

 ……いろいろあって、日付が変わる時間になったみたい。

 どこかから聞こえてくるテレビの音で、それがわかった。

 

 クリスマスイブの、始まった夜……

 

 私たちは、ちゃぶ台に小さなケーキを乗せて、畳の上でキスをした。

 

 人生で一番幸せなクリスマスイブが、始まった気がした。

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