途中から 氷見室トマリ(魔法少女)の一人称
「トマリはかわいそうな子なんだよ……」
「いやそれ、先輩が言っていいんスか……?」
「誰が仕組んだにせよ、かわいそうなことに違いはねえだろうが」
じゃ、魔法少女のコンビネーションをずたずたにしていくぞー。
どうにも魔法少女には主人公補正みたいなものがある。
こっちが幹部二人と戦闘員いっぱいがかりで追い詰めたっていうのに覚醒するんだもんな。
ではその補正をどうにかする手段はないのか? 考えました。
その結果、思いつきましたよね。
『そうだ──
──魔法少女が魔法少女である限り、主人公補正を得るなら──
──魔法少女を悪墜ちさせて、主人公じゃなくすればいいんじゃね?』
というわけでまずは偶然発信機をつけることに成功したトマリちゃんの家庭をズタズタにして、こっちに引き込む準備を整えたってわけ。
お友達の前で隷属させて完全に堕としていきます。
この作戦には俺がトマリちゃんにバトルファックしてる間、他の二人の魔法少女を押さえる必要があります。
この時に倒してしまうと覚醒が始まりそうなので、だらだら互角の戦いをしてくれるのが、ハハキ先輩です。
「……いや、いいのだが……セント。私は、魔法少女を我が教団の不倶戴天の敵だと思っている。総大主教様のために殺すべき存在だとも思っているし、そのつもりで剣を振っている。……だが、お前のやりかたは……えげつないと感じる……」
「なんでお前が引いてんだよ。いいよ俺のやったことへの感想は。俺が言いたいのはですね、かわいそうなトマリを俺は奴隷にしたいから、かわいそうなあの子の住む場所を奪わないでやってくれっていうね、そういうことなんですよ。わかりますかハハキ先輩」
「……わかった……そうだな、確かに哀れだ……私がまさか、魔法少女を哀れむ日が来るとは思いもしなかった。組織の一員になったら、優しくしてやろう」
「さすがハハキ先輩だ。じゃあ……」
採石場跡の龍脈溜まりに、働きかける。
「……始めようか、凌辱を」
◆氷見室トマリ(魔法少女)一人称◆
「トマリちゃん、大丈夫?」
「うん……」
家庭がどんなことになっても、魔法少女の活動は続く。
私は……セントさんの家に居候を続けていた。
幸せか、幸せじゃないか、大丈夫か、大丈夫じゃないか……そう言われると、幸せだし、大丈夫でも、あると思う。
でもふと、将来のことを考えると、不安になる。
私はこのまま、セントさんの優しさに甘えてていいのだろうかって……私自身も、何かできることを探して……独り立ちとか、しなきゃいけないって……
でも、私はそういう勇気もなくて……
……家でいろいろあったことは、ヒナタちゃんにも、ホノカちゃんにも、言ってない。
こんなこと言われても困ると思うから。……私は、誰かに寄り掛かって、誰かに迷惑をかけたくない。ただでさえ今、セントさんに寄り掛かって、迷惑をかけている最中なのに。
「見えてきたぞ!」
ホノカちゃんの声がして、意識を切り替える。
……そうだ。魔法少女になるのは、自分で選んだことだ。
クラスメイトたちは──本当に守りたい友達だったのか、わからなくなってしまったけど。
家族は──もう、家族って、なんなのか、わからなくなっちゃったけど。
セントさんのいるこの街を、守りたい。
……セントさんも、私のために、就職活動をがんばってくれてる。だから……私はまず、今、目の前で、できることを、頑張らないと。
「またあいつらだ! あのおっぱい侍と、怪人赤コート!」
「その呼び方、なんか力が抜けるからやめてよ!」
「だって名前知らないもん!」
ホノカちゃんとヒナタちゃんの会話に、くすりと笑ってしまう。
……笑える。笑えるから、私はたぶん、まだ大丈夫なんだと思う。
「んんんん!? あの怪人赤コート、あんな顔だったか!?」
「そう言われると前回と違うような……っていうか、前回、どんな顔だったっけ?」
顔が、違う?
先行する二人の横から顔を出して、話題の『顔』を見る。
……え。
その、顔は。
その顔は。
敵の幹部の、赤いコートの男の、顔は……
「……セントさん……?」
見間違いだと思いたかった。
でも、見間違えるわけがなかった。
あの人は……
今、家を出ているはずの、セントさんだった。