※この作品はR-18です。

悪の組織の戦闘員、スキルに目覚めて成り上がる   作:稲荷竜

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あけおめことよろ
本日から連載再開
よろしくお願いします


煌々原ヒナタ(覚醒した黄色い魔法少女)一人称


第二部 魔法少女の裏事情
第24話 魔法少女の事情


「トマリちゃん……」

 

 ……最近、うまく眠れていない。

 

 もうすぐ今年が終わる。

 大晦日。初詣。……行こうと約束していた。

 ううん、『約束』なんて、しっかりしたものじゃなかったと思う。

 

 だって私たちは、明日も明後日も、もっとずっと未来も、一緒にいるのが当たり前だと思ってた。

 だから私たちに『約束』なんか必要じゃなかった。……『そういえば、もうすぐだね。どうしようか』って聞いて、なんとなく時間とか決めて、行く。どんなイベントだって、そうやって……『約束』とまでは言えないような、軽い約束をして、一緒に遊んできた。

 

 でも、トマリちゃんは、もういない。

 

 ……トマリちゃんのおうちにも、行った。

 年の瀬で忙しいかなとは、思った。でも、どうしてもトマリちゃんと話をしたくて、行った。

 

 いなかった。

 

 トマリちゃんの御家族は……おじさんも、おばさんも、妹ちゃんも、いた。

 でも、トマリちゃんだけがいなかったし……

 

 トマリちゃんなんか最初からいなかったみたいに、『家族』として、過ごしていた。

 ……トマリちゃんのことを口に出したら、ものすごく不機嫌な顔をされて……乱暴なことはされなかったけど、『その話題は出すな』っていう、無言の空気が、ものすごかった。

 

 ……私たちは、きっと、甘かったんだと思う。

 

 あんなお別れをしても、きっと、家には帰ってるだろうなんて、そんなふうに思ってた。

 

 だって私たちはまだまだ学生で、魔法少女の活動だって……真剣ではあったけど、部活動みたいな……『学校とか生活とかがあって、その上でやるもの』だと、思ってた。

 

 私は、たぶん、負けることを想像していなかった。

 負けて、人生そのものが変わってしまうようなことを──まったく、思い描くことも、できていなかった。

 

 隣にいる友達が、急にいなくなるかもしれないなんて、思ってもみなかった。

 

「ヒナター……元気出せよ」

 

 ……私たちは冬休みで、宿題が出ている。

 

 宿題を、一緒にやろう。……そういう理由で、私の家に集まって……

 宿題ももちろんするけど、おしゃべりしたいっていうのが、本当のところで。

 

 三人で約束してた。

 ……トマリちゃんは勉強ができるから、教えてもらおうなんて、そう思ってた。

 

 いない。

 

 いつも三人で囲んでたガラスのテーブル。

 その一辺が、空いている。……お母さんからも、『あら、今日はトマリちゃんは?』って聞かれて……私は、なんて答えていいか、わからなかった。

 

 ……でも。

 

「ごめんねホノカちゃん。……わかってる。わかってるんだ」

 

 何を、だろう。

 私は自分で『わかってる』と言いながら、何をわかってるのか、自分でもわかってなかった。

 

 ……たぶん、何もわかっていない。

 

 私は……昔から、『答え』を閃く方だった。

 何か問題が起こると、その解決法が直感的にわかる、っていうか……

 正しい道が、頭にパッと浮かぶ。

 ……そうだと思ってたんだけど……

 

「ヒナタ、うじうじしてても、トマリは帰ってこないぞ」

「……うん。それも、わかってる」

「取り戻そう」

「…………」

「取り戻すんだ、あたしたちで! ……なんか……ほら、えっと……た、大変なこと、あったじゃん」

「う、うん……」

 

 みんなの前でいきなり裸になって……

 男の人に……

 

 ……思い出すだけで、顔が赤くなる。

 そんなふうに思ってる場合じゃないのはわかってるのに、あの時のことは、思い出すだけで恥ずかしくて、私もホノカちゃんも、具体的に何が起こったかを、言葉にできないままでいた。

 

「絶対に、おかしかったよ。トマリは、なんかたぶん……洗脳とか受けてるんだ! そうに決まってる!」

「そうだね……そう、だよね」

 

 明らかにおかしかったのは、私もそう思う。

 ……でも、その後。

 

 覚醒変身をして、私と戦った時のトマリちゃんは……

 洗脳されてる、みたいな様子じゃなかった気がする。

 

 しっかりと自分の考えがあって、願いがあって、それで、魔法少女をやめた。……そういう、気がして仕方ない。

 でも……

 

「洗脳、されてるんだ」

 

 ……ああ、正しくないことを、言ってしまってる。

 そういうふうにした方が楽だから、楽な方に逃げてしまってる。

 

 自分でもわかる。私は、昔から『正解』がわかった。正しいことが、閃いた。

 だから、同じように、『これは正解じゃないな』っていうのも、わかる。

 

 トマリちゃんは、洗脳、されていた。

 ……それは全部が間違いじゃない。でも……

 

 私と戦った時のトマリちゃんは、洗脳されてるから戦ったわけじゃなかった。

 

 そういう、気がする。

 

「……ねえ、ホノカちゃん」

「なんだ?」

「ホノカちゃんは、なんで、魔法少女やってるの?」

「面白そうだったから」

 

 魔法少女は、いろんな場所にいて、私たちはその中の一つのグループだ。

 他の魔法少女の中には教団との戦いを配信してる人もいる。私たちは、してないけど……

 

 そういう人たちには、いわゆる『実収入』みたいなものがあって、そのためにやってる──なんて、ドライに割り切ることもできるんだろうけど……

 

 私たちは、なんで、魔法少女なんてしてるんだろう?

 

 ……『私である理由がない』。

 

 少し前まで、魔法少女をやってる理由を聞かれたら、『困ってる人を助けたい』『教団のしているのが悪いことだから、それを止めたい』っていう答えを、迷いもなく言えたと思う。

 でも、確かに、『私である理由がない』。トマリちゃんである理由がないのと同じで……私には資格があるけど、資格があるからやらなきゃいけないわけじゃ、ない。持ってる力を使うかどうか、どう使うかなんて、力を持ってる人の意思だ。

 

 私は……

 

 私の、意思は……

 

「とにかく! ヒナタ! トマリを取り戻すために、怪人赤コートを倒すぞ!」

「えっ!? あ、うん、そ、そうだね。そうだ……そうだよ! 怪人を、倒して……トマリちゃんを、取り戻すんだ」

 

 ……とりあえず今は、そういう理由で、戦おう。

 

 魔法少女を始めて、九か月ぐらいが経つ。

 私は、私が魔法少女をやる理由を見失いかけていた。

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