本日から連載再開
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煌々原ヒナタ(覚醒した黄色い魔法少女)一人称
第24話 魔法少女の事情
「トマリちゃん……」
……最近、うまく眠れていない。
もうすぐ今年が終わる。
大晦日。初詣。……行こうと約束していた。
ううん、『約束』なんて、しっかりしたものじゃなかったと思う。
だって私たちは、明日も明後日も、もっとずっと未来も、一緒にいるのが当たり前だと思ってた。
だから私たちに『約束』なんか必要じゃなかった。……『そういえば、もうすぐだね。どうしようか』って聞いて、なんとなく時間とか決めて、行く。どんなイベントだって、そうやって……『約束』とまでは言えないような、軽い約束をして、一緒に遊んできた。
でも、トマリちゃんは、もういない。
……トマリちゃんのおうちにも、行った。
年の瀬で忙しいかなとは、思った。でも、どうしてもトマリちゃんと話をしたくて、行った。
いなかった。
トマリちゃんの御家族は……おじさんも、おばさんも、妹ちゃんも、いた。
でも、トマリちゃんだけがいなかったし……
トマリちゃんなんか最初からいなかったみたいに、『家族』として、過ごしていた。
……トマリちゃんのことを口に出したら、ものすごく不機嫌な顔をされて……乱暴なことはされなかったけど、『その話題は出すな』っていう、無言の空気が、ものすごかった。
……私たちは、きっと、甘かったんだと思う。
あんなお別れをしても、きっと、家には帰ってるだろうなんて、そんなふうに思ってた。
だって私たちはまだまだ学生で、魔法少女の活動だって……真剣ではあったけど、部活動みたいな……『学校とか生活とかがあって、その上でやるもの』だと、思ってた。
私は、たぶん、負けることを想像していなかった。
負けて、人生そのものが変わってしまうようなことを──まったく、思い描くことも、できていなかった。
隣にいる友達が、急にいなくなるかもしれないなんて、思ってもみなかった。
「ヒナター……元気出せよ」
……私たちは冬休みで、宿題が出ている。
宿題を、一緒にやろう。……そういう理由で、私の家に集まって……
宿題ももちろんするけど、おしゃべりしたいっていうのが、本当のところで。
三人で約束してた。
……トマリちゃんは勉強ができるから、教えてもらおうなんて、そう思ってた。
いない。
いつも三人で囲んでたガラスのテーブル。
その一辺が、空いている。……お母さんからも、『あら、今日はトマリちゃんは?』って聞かれて……私は、なんて答えていいか、わからなかった。
……でも。
「ごめんねホノカちゃん。……わかってる。わかってるんだ」
何を、だろう。
私は自分で『わかってる』と言いながら、何をわかってるのか、自分でもわかってなかった。
……たぶん、何もわかっていない。
私は……昔から、『答え』を閃く方だった。
何か問題が起こると、その解決法が直感的にわかる、っていうか……
正しい道が、頭にパッと浮かぶ。
……そうだと思ってたんだけど……
「ヒナタ、うじうじしてても、トマリは帰ってこないぞ」
「……うん。それも、わかってる」
「取り戻そう」
「…………」
「取り戻すんだ、あたしたちで! ……なんか……ほら、えっと……た、大変なこと、あったじゃん」
「う、うん……」
みんなの前でいきなり裸になって……
男の人に……
……思い出すだけで、顔が赤くなる。
そんなふうに思ってる場合じゃないのはわかってるのに、あの時のことは、思い出すだけで恥ずかしくて、私もホノカちゃんも、具体的に何が起こったかを、言葉にできないままでいた。
「絶対に、おかしかったよ。トマリは、なんかたぶん……洗脳とか受けてるんだ! そうに決まってる!」
「そうだね……そう、だよね」
明らかにおかしかったのは、私もそう思う。
……でも、その後。
覚醒変身をして、私と戦った時のトマリちゃんは……
洗脳されてる、みたいな様子じゃなかった気がする。
しっかりと自分の考えがあって、願いがあって、それで、魔法少女をやめた。……そういう、気がして仕方ない。
でも……
「洗脳、されてるんだ」
……ああ、正しくないことを、言ってしまってる。
そういうふうにした方が楽だから、楽な方に逃げてしまってる。
自分でもわかる。私は、昔から『正解』がわかった。正しいことが、閃いた。
だから、同じように、『これは正解じゃないな』っていうのも、わかる。
トマリちゃんは、洗脳、されていた。
……それは全部が間違いじゃない。でも……
私と戦った時のトマリちゃんは、洗脳されてるから戦ったわけじゃなかった。
そういう、気がする。
「……ねえ、ホノカちゃん」
「なんだ?」
「ホノカちゃんは、なんで、魔法少女やってるの?」
「面白そうだったから」
魔法少女は、いろんな場所にいて、私たちはその中の一つのグループだ。
他の魔法少女の中には教団との戦いを配信してる人もいる。私たちは、してないけど……
そういう人たちには、いわゆる『実収入』みたいなものがあって、そのためにやってる──なんて、ドライに割り切ることもできるんだろうけど……
私たちは、なんで、魔法少女なんてしてるんだろう?
……『私である理由がない』。
少し前まで、魔法少女をやってる理由を聞かれたら、『困ってる人を助けたい』『教団のしているのが悪いことだから、それを止めたい』っていう答えを、迷いもなく言えたと思う。
でも、確かに、『私である理由がない』。トマリちゃんである理由がないのと同じで……私には資格があるけど、資格があるからやらなきゃいけないわけじゃ、ない。持ってる力を使うかどうか、どう使うかなんて、力を持ってる人の意思だ。
私は……
私の、意思は……
「とにかく! ヒナタ! トマリを取り戻すために、怪人赤コートを倒すぞ!」
「えっ!? あ、うん、そ、そうだね。そうだ……そうだよ! 怪人を、倒して……トマリちゃんを、取り戻すんだ」
……とりあえず今は、そういう理由で、戦おう。
魔法少女を始めて、九か月ぐらいが経つ。
私は、私が魔法少女をやる理由を見失いかけていた。