精液を提供してから三日が経過した。
現在、十二月三十日。もうじきみんなが狂ったように盛り上がる新年が迫っている。
「きみ、子供はできなさそうだね!」
錬金術師オリガ、あるいは『知悉のオリガ』とか、あと『白衣袖余らせチビ』とか『白衣チビ』とか『水鉄砲』とか、そういう名前で俺に認識されているヤツが、俺の精子について調べた結果を上げてきた。
ちなみに俺はエリザの区画を根城にしているわけで、エリザの区画にいる間はだいたいエリザをオナホにしてる。
最近は悪堕ち魔法少女こと『深海のトマリ』もエリザの区画におり、あとはこないだ隷属させた狼少女もいる。名前はウルフガール。もちろん怪人名だ。もっと捻らなくてよかったんでしょうか。
まあ基本的にはトマリは『何か』あるらしく、ウルフは元魔法少女という理由で行動範囲の制限を受けているので、今はエリザと二人きりなんだが……
そこに唐突に『君の精子についてだけどねえ!』と表れる白衣チビ。
ノックとかしろよ。っていうかなんで許可なく他者の区画に来れてんだよ。
基本的に区画移動は区画代表者がロックを解除しないとできない。移動手段はテレポーターを用いたテレポートで、『アジト』とひとまとめに呼んでるが、区画それぞれがまったく別の地域にある可能性もある。
そしてエリザ区画のテレポート承諾権限はエリザと俺にある。
しかしこの白衣チビ、なんの前触れもなくエリザの執務室に来やがった。ちなみに執務室に鍵はかけていない。見られて困るもんないし。
エリザをオナホにしてるのはいつものことだし、このまま廊下とか移動してるから周知の事実だ。
今もずっぷりハメてる。
エリザもいい加減慣れてるはずなんだが、どうにも他の区画のヤツに見られるのは恥ずかしいようで、急に締まったから中出ししちゃったよ。
「お、新しい精液だ! あとで掻きだしていい?」
「全部こいつの子宮で飲ませるからダメ。そんで? 俺の精液が子供できない?」
「うん。一般的な検査から見ると、きみの精液では子供ができない」
「ラッキー。中出しし放題じゃん」
「で、きみの精液を男女それぞれ五名ずつに投与してみたんだけど」
「男に投与された話、なんかやだな……」
「誰も『樹』を認識できなかった。いやまあねえ、サンプル数が少なすぎるんだけど、研究者のカンっていうのか、たぶん、単に『きみの精液を投与する』っていうだけじゃあ、樹の認識も、反転もないんだろうなとは思う。たぶんだけど君の固有魔法に魔法少女の樹を反転させるなんらかの要素があるんじゃないかな」
「固有魔法?」
「『影の』だよ」
「ああ、固有……魔法、ねえ」
まあうちの総大主教様はそもそも異世界出身で、なんか空気的に剣と魔法のファンタジーからいらしたのかなあとは思うんだけども。
固有魔法か。影が薄いのが固有魔法。
「……ざっと自分のスキルツリー確認した感じだと、魔法少女反転のスキルはねぇな」
「とりあえず『中出しをすること』を一つのトリガーとして、そこまでの積み上げが大事なんだろうね。君からの聞き取り調査の結果を踏まえると、魔法少女に信頼させることが大事なのかな」
「信頼ねえ……」
信頼とか絆とか、そういうものが力になると言われると、どうにもうさんくさい感じがしてしまう。
しかしまあ『魔法少女を信頼させると、魔法少女が悪堕ちします』っていうのは、なんかなあ。『信頼の魔法』という響きで語るにしては、あまりにも汚い感じだ。
「そういえばウルフガールの調子はどうだい? 総大主教様の目をかいくぐって脱出させる計画で動いているのかな?」
「ああ、それなあ。なんか、脱出させようと思って、トマリちゃんにも一芝居打ってもらってるんだけど、あんま乗り気じゃないっつーか……魔法少女に戻りたがってないっつーか、魔法少女なんかなんでやってたんだろ、みたいな……だからこっちも『脱出を目論んでる悪の組織の裏切り者で、魔法少女にこっそり手を貸すお兄さん』から路線変更しなきゃならない感じだ。面倒くせえ」
「ふゥム。ともすると、きみの『淫行』か『存在希薄化』にまつわる何かが魔法少女の洗脳を解いたのかもしれないね」
「ああ、なるほど。魔法少女、確かになんらかの洗脳を受けてるもんな」
ずっとずっと思ってることだが、魔法少女、やるメリットがなさすぎる。
たぶん『龍』とやらに洗脳されてんじゃねえかな。で、それを俺が犯して中出しで解いていく、と。
確かに俺には精神に作用するスキルがいくつかある。やってることは洗脳ともまあ、言えるだろう。
……洗脳には洗脳をぶつけんだよ! ってこと? だとしたら魔法少女、救いがなさすぎる。なった時点で人生が詰んでるじゃん。
なんてこった、俺の欲望がいたいけな少女の救済手段も兼ねるようになってしまった。
どんどん救済していこう。大義名分とか善方面の理由はあればあっただけいいからな。罪の意識が減る。
「そういうわけで精液はもういらないんだけど、たまにはぼくも抱きに来ておくれよ。ぼくの処女捨てたんだから」
「見ての通り女に困ってねえから、抱かれたいならお前から来い。つーかさ、お前、何者?」
「『知悉のオリガ』だよ」
「いや、総大主教様と結構古い知り合いなのか?」
「どうしてそう思うんだい?」
「雰囲気」
ただただ単純にこいつが無礼なマッドサイエンティストだって理由で、総大主教様にあの態度をとっていた──というのも、まあ、考えられなくはないんだが。
あの気安さは明らかに『親しさ』だった。少なくとも俺はそう確信した。
「まあ、もったいつけてはみたけれど、きみの見立ては正しいよ。ぼくと総大主教様とは古い付き合いさ」
「ああやっぱり?」
「彼女がこっちに来るよりちょっと前からの付き合いだから、五百年は超えてるねえ」
「え、五百年処女?」
「いやいや、そんなことはないよ。もうちょっと長い。六百年ぐらいかな。『向こう』でも生きてたわけだし」
「異世界?」
「そう、異世界。滅びちゃったけどねえ」
「そのへんの話、俺、知らねえんだけど。今あえいでるオナホも知らないと思う」
「我々は世界が滅ぼされたから、世界を滅ぼした者を追ってこの世界に来たんだよ。あと、そいつの故郷の世界を逆に滅ぼして侵略して、生き残りの過ごせる場所にしようっていう目的もある」
「へー。もうちょいもったいつけて話すかと思ってたらすげーあっさり語ったな……」
なんかあるじゃん。いい感じのBGMの中で『あれは、六百年前……(回想シーンに入ります)』みたいな。
その空気で来られると思ってたから意外。
「細かい話をすればもう少し長いけど、別に事実としてはその程度だしなあ。ちなみに、魔法少女が『龍』って呼んでる存在が、ぼくらの世界を滅ぼした元凶だよ。正しくは、あいつの尖兵に滅ぼされたわけだけど」
「なんでそいつは、そっちの世界を滅ぼしたわけ?」
「あれ、星に巣食う寄生生命なんだよ。養分を求めて来たってわけ」
「……」
「魔法少女の樹がぼくらにとっては毒みたいなものなんだけど、ぼくらのいた世界は、あいつのせいで毒まみれになって住めなくなったんだよね。あいつが生えてる場所ってその『毒』まみれになるからさ」
「こっちはその『毒』の本拠地なんだろ?」
「まあ当時は賭けだったけど、結果的に、その賭けは成功したよ。五百年前、この世界で起きてたことわかる?」
「日本だと織田信長の時代だな」
「そう、世界だと大航海時代だ。つまり──『神秘』がどんどん減っていった、その時代なわけさ。そしてあいつは『神秘』が失われると力を失う。だからこそ、ぼくらの世界に来て繁殖を狙ったわけなんだろうけど」
「……ああ、なるほど。この世界の人にとっては別に『毒』じゃないから、龍の毒に耐性があるこの世界の人たちが、科学技術によって『神秘』を減らして、龍に生きにくい世の中を作って……」
「そのせいだろうね。異世界転移までして侵略に来たのは。魔法少女が洗脳されてるんじゃないかって見立ても、その当時の『尖兵』の様子からの推測だよ。実際にはどうか、わからないんだけれど」
「そうなんだ」
「ぼくらの魔法でも、科学技術でもない力で、何かをしている。でも、その何かがわからない。たぶんぼくらはまだその力を発見できてないんだ」
飛行機が開発されてからしばらくは『なんで飛ぶのかわからん……怖……』という時代があったという。
そういう現象が起きていると認知されることと、そういう現象の原理が解明されていることとは、まったく違うし、タイムラグがあるものだ。
つまり龍の魔法。魔法少女が使ってるのもたぶん、そっち方面の技術なんやろな。
「……って言うか、聞けば聞くほど、魔法少女って救いがないな……」
「まあ、この星の寄生生物に騙されて、報復に来てるぼくらとの戦いの尖兵にされてるからね。とはいえ……あっちの視点では、そう酷いこともしてないんじゃないかな」
「まあ『酷いことしてやるぜグッヘッヘ』とか思いながら酷いことするやつって稀だしな」
悪人は悪いやつだが、それは客観的判断にすぎない。
大抵の『悪』と称されるようなことをする人間には、悪意もないし悪いことをしているつもりもない。ただ『当然に行っていること』が、客観性にさらされた時に悪だと看破されているだけだ。
そこまでいかなくても本人の中では『悪いのはまあわかるけど、これは仕方ないことなんだ』という想いはあることだろう。
だからこそ殺人も強姦も発生件数は『他人から他人』よりも『家族から家族』が多いんじゃねえかなと思う。
「でも俺らって『悪の組織』なんだよな」
「悪ってさ、『現体制への反逆者』でしょ」
「なるほど。……はー。すごい組織だな。治験バイトに来たやつだまくらかして戦闘員にしたり、さらった魔法少女改造して狼人間にしたり、謎の因子注入して記憶ぶっこ抜いたりしてるけど、俺らがかわいく思え………………いや、まあ、どっこいどっこいかな……」
どうやら俺たち悪の組織と魔法少女との戦いは、悪vs悪らしい。
俺の価値基準だと悪を標榜してるだけこっちのがマシだが、巻き込まれて被害に遭う一般市民のみなさんからすればどっちも迷惑だろう。
とはいえ魔法少女は見た目と年齢と性別で味方が多そうではある。こっちもハハキとか魔法少女にしたら人気出るんじゃねえかな。デカチチ魔法少女。エリザは普通に似合いそうなので却下です。
「なんだろう、お前と付き合いが始まってから有益な情報がガンガン出て来るな。っていうか総大主教様は情報を伏せすぎなんでは」
「別に説明する理由もないからねえ。全部理解しなくても教義で人は動けるし。っていうか、マリアンヌからしたら、ぼくらのこれまでの五百年は、『神の教え』で間違いないんだよ。ぼくがちょっと現実的に分解しすぎてるだけで」
「よく長い付き合いやれてるな……」
「まあ先輩のぼくを立ててくれてるんじゃないかな。マリアンヌが聖女に任命されたころからの付き合いだし」
「うちのボス、聖女様なの?」
「だから聖なるマリアンヌなんだよ。神に選ばれた『しるし』を持つ少女で、きたる『世界の危機』との戦いの時に、人類代表を支える乙女。それがマリアンヌだよ」
「きたる世界の危機っていうのが『龍』の寄生か」
「たぶんね。そのへんはあいまいで。だから予言っていうのは好きじゃないんだけど──まあ、『人類代表』が尖兵にされた時点で終わったよね」
「……あー」
なんだろう、俺の周囲、全方位に救いがねえぞ。
全員かわいそうだしもう快楽以外わかんない状態にして世話してやった方がいいんじゃねえかな。そういうことにしよう。
やっぱり善なる魂を持つ俺の行動は結果的に善なる行いになるんだな。
宗教家っぽい言い回しがうまくできたな。よし。
「で、セント、暇?」
「いや、忙しい。見ろよ」
「エリザがさっきから抱きつぶされてるのなら見てるよ。今も中出ししたでしょ」
「そうだな。いやぬくくて柔らかくていい匂いがするから気持ちよくてさ……ってそうじゃねえよ。机の上の書類を見ろって」
「今度、ぼくもやってもらおうかな」
「このまま外とか歩くんだけど。いやさすがにアジト内の廊下だけどさ。部屋の外って意味で」
「いいよ?」
「いいんだ……じゃなくて書類だよ。次の侵攻計画立ててんだろうが。明日出撃なんだよ」
「ああ、襲撃。そうか、幹部の責務だったね。で、次は誰を連れてくるの?」
「連れて来れるかはまだ未定だけどまあ、切り崩しやすいところから崩す。そのための情報収集もさせてるし。で、連れて来る相手は……」
書類に記されている名前は、
「『