あらかじめ作戦は聞いてたわけなんだけど、いきなり上空にテレポートするのはマジで心臓に悪いな……
連れて来てよかったよ、魔法少女信号機。
女の子にすがりついて空を飛ぶの、スリルありすぎて癖になりそうだわ。
「いよいよ、龍を倒すのね」
快楽失神している龍化魔法少女たちを丁寧にその場に寝かせ終えて、ヒナタがシリアスにつぶやく。
こっち陣営じゃ一番『龍』に気に入られてた魔法少女だ。『洗脳されてた』っていう自認らしいし、俺がその洗脳を解いてやったことに恩も感じてるようだが、それでもまあ、思うところはあるんだろう。
「手が鈍りそうなら帰ってもいいぞ。……っていうか、もう、ここから先はなるようにしかならん。普通に危険だからおうちに帰りな」
「おうち、壊されちゃってるんですけど……」
「……そういえばそうだな。いやでもほら、親戚のところとか」
「なら、私はいつまでもお傍についていますね」
ヒナタと俺との間にわざわざ歩み出て、トマリがにっこり、俺だけに笑顔を向けた。
……最近は圧の何か重苦しい邪悪さみたいなものが加わってるんだが、気のせいじゃねえよなあ、これ。
「私の居場所はもう、セントさんのそばだけですから。……ヒナタちゃんとホノカちゃんは、帰ってもいいんだよ。私が、セントさんのそばで、セントさんを、守るから」
「何言ってんだ! 龍をぶっ飛ばすんだろ! あたしも行く!」
トマリちゃんは最近、言葉の裏にもう一つ暗黒面みたいなメッセージがある口ぶりをするわけだが、よくも悪くもアホなホノカは、そのへんに気付かない。
ぱん! と掌に拳を打ち付けて、ここにはいない龍でもにらみつけるように、視線を遠くへやる。
「これだけの魔法少女を酷い目に遭わせるなんて、許せない! ……もっと早く気付ければよかった。龍は、悪いやつだって……もっと早く気付けてれば、トマリもヒナタも、苦しまずに済んだんだ。……だから、あたしは行く。龍を、ぶん殴りに!」
物事を単純に考える人間は、苛立たせられる場面もあるが、毒気を抜く要素もある。
トマリちゃんに重苦しく凝っていた毒気は、今この瞬間に、晴れたらしい。……まあ、毒気は毒気なんで、また溜まるとは思うけど。今この瞬間に限っては、抜けただろう。
「……そうだね。ごめん。三人で、行こう。ホノカちゃん、それに……ヒナタちゃんも」
かくして魔法少女三人組は仲良さを取り戻した。
エリザとハハキとウルフガールも連れて行けたら肉壁になったんだろうなとは思うんだけど、さっきの戦いでの消耗が激しすぎて置いてきた。
戦闘員? 肉壁にもならん。邪魔。
「三人とも、悪いけど龍をぶん殴る展開にはならねえと思うぞ。ぶん殴らなきゃいけない状況になったら『負け』なんで……」
俺たちは存在希薄化の……『拡大(数)』みたいなもので存在感を消して、龍を抑えつけて、犯すつもりでいる。
淫行スキルは鍛えた。さっきまで、魔法少女を合計二十人ぐらいノーリプライ隷属化をしたのもあって、さらに経験値は溜まっている。
基本的に龍化魔法少女も幹部も、もちろん悪堕ち魔法少女も、俺から見れば『格上』だ。だから経験値はモリモリ溜まって、最終決戦前に存在希薄化も幹部スキルも、それから淫行も、かなりツリーの成長があった。
だがそれでも、マリアンヌや龍に及ぶかと言われると……まあ、龍の方は試算もできなかったんで、あっちは単純に賭けだな。マリアンヌにはある程度通じるレベルには、魔法少女二十人喰う前からまあまあなってはいた。
「俺たちのすべきことは、マリアンヌを止めて、その間に龍を君たちが抑え込んで、俺が犯すという方法だ。殺した方が絶対に早いだろという意見は受け付けません。俺はみんなの幸せを祈ってるんで」
「龍の幸せも、ですか?」
「トマリちゃん、いい質問だけど目が怖い」
「……あ、えっと……」
「まず、龍が今『肉体』にしてるのはカミラだ。俺はカミラも犯して支配下に置くつもりでいたので、とりあえず肉体をわからせる。その結果、龍がカミラから叩きだされるか、それとも龍カミラのままかはやってみるまでわからない。でも『殺す』だけはないんだよ。殺したら、死んでしまうからね。龍は知らんけど、カミラの方が」
そう、人は……殺したら、死んでしまうのだ……
人の命って、一つしかないんだぜ。
「その結果、龍に隷属紋を刻むことに成功したとする。と、もう『俺の物』だ。俺は、俺の物は大事にする。この方針を理解してくれていれば嬉しい」
「……わかっています。セントさんは……優しい人ですから……」
自分で言うのはアレだけど、これを『優しさ』って表現するの、だいぶ間違ってると思うよ。
まあ『しない善よりする偽善』的に、『示さない優しさより示す偽優しさ』みたいな感じでやっていこう。確かに俺のは身勝手から発する所有欲にしかすぎなくても、受け取る側が優しさだと思ってるなら、水を差す必要もないわけで。
「……で、オリガは落ち着いたか? お前待ちなんだけど」
「別にぼくなんか待たなくてもいいのにねえ」
白衣を脱ぎ捨てたオリガは、だるんとしたタンクトップ一枚という姿だった。
装備も白衣もなくなると、小ささと薄さが目立つ。こんなのを犯すのは実年齢がどうあれ犯罪だなって感じだ。
「悪いけど俺は使えるモンは使うぞ。マリアンヌと龍の戦いで、道具がないお前は戦力にはならない。でも、デコイにはなる。命懸けろ」
「わかっているよ。まあ、ぼくの命なんかはどうでもいいんだ。……って言ったら怒られるのかな」
「そうだな」
「でも懸けさせるんだ」
「俺が俺の意思で俺の物を使うのはいいからな」
「外道だねえ」
「それはお前、ちょっと自分の行為を棚に上げすぎでは? 俺たち『大樹教団』も、『龍』も、ぶっちゃければやってることの外道度はおんなじぐらいだぞ。これは正義と正義の戦いじゃねえよ。悪と悪が世間様を巻き込みながらやってる戦いだ。大勢の普通に生きてる善良な皆さまからすればどっちも迷惑な珍走団と変わらないクズだってことを自覚した方がいい」
「きみは自覚してると?」
「もちろんだ。俺はクズで外道だよ。……で、準備は?」
「ああ、できたよ。これで、ここから直接大聖堂に飛べる。きみたちは認証された。ここにいるきみたちも、ここにいない子らもね」
「じゃあついでに通信入れといてくれ」
龍の戦闘能力は想像がつかない。
なので集められる手駒は全部集めて使う。
そのための準備は整った。いよいよ『大聖堂』へ行く──
──まあ、その前にマリアンヌがやられてなきゃ、だが。
こう見えて割と焦ってんだよ。龍とマリアンヌ、どっちも俺からすれば『わけわからん強者』ってカテゴリだが、マリアンヌには負けフラグみたいなもんが見えた。
龍は話から分析するに『良いやつ』だ。でも、マリアンヌは『空っぽ』だ。
二人の実力に開きがないなら、良いやつが勝つ。良いやつってことは、『善意』って名前の欲望があるってことだからな。欲望があるやつとないやつ、実力が伯仲してたら、欲望がある方が強い。
まあ、それも使いようではあるけれど。
「んじゃ、行くぞ」
長いような短いような悪の組織活動の総決算だ。
なんとなく今年度中には終わらせておきたいよな。ほら、悪の組織辞めたあと、他の企業に就職しなきゃいけない可能性もあるわけだし、それに……
魔法少女なんて、番組編成の前に終わっておくのがいいサークル活動だろ。
学校とかレジャーとか来年からすぱっと切り替えて楽しめるように、今年度中には終わらせたいよな。
だから終わらせに行くか、全部。
今の時期なら、謎の食いしばりを発動されてもまあ、ギリギリ間に合う気はするし。