※この作品はR-18です。

「エロ怖」日本の怪異を訪ねて 怖くてドエロい短篇集⭐️イラスト付き   作:みなぽん

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日本の怪異を訪ねて 飛騨地方 一本タダラ VS 座敷童子 ミコ

登場人物

 

柳沢 昂(やなぎさわ のぼる)

大東亜文化大学 民俗学教授。

日本各地に残る因習・怪異・禁忌を研究する民俗学者であり、**「超常民俗学」**の第一人者と呼ばれる人物。

穏やかな物腰と知的な雰囲気を持つイケオジ教授で、学生からの信頼も厚い。

その一方で、警察や行政が扱えない怪異絡みの事件の調査・解決にも密かに関わっている

研究分野は 土着信仰 呪術民俗 怪異伝承 日本全国を巡り、禁忌の儀式や失われた呪術の記録を収集している。

口癖は――

「私は日本の民俗学を研究する傍ら、怪異のもたらす事件の解決にも関わっています。

怪異は我らの傍に常にあり、じっとこちらを見つめているのです。」

 

姉川 美奈子(あねがわ みなこ)

柳沢ゼミ ゼミ長。

寺の娘であり、幼い頃から密教の作法や呪符を学んできた。真面目で責任感が強く、ゼミをまとめる柳沢教授の右腕。

柳沢への尊敬は人一倍強く、研究でも怪異調査でも常に全力。清楚で落ち着いた雰囲気の優等生タイプだが、実はかなり大胆な一面も持つ。

主な能力 密教呪符 護符結界 退魔真言

怪異との戦いでは、呪符を空中に展開して結界や封印を行う。

 

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南條 美和(なんじょう みわ)

美奈子の同期。

元陸上部エースで、現在も抜群の運動能力を持つ。長身スレンダーな美人で、ファッション誌の読者モデルも務める人気者。

明るく社交的で、ゼミのムードメーカー。

しかし彼女にはある秘密がある。

彼女の体には、日本の妖怪姦姦蛇螺(かんかんだら)の巫女の力が宿っている。

その能力は――六本の不可視の腕

普段は見えないが、戦闘時には空間に六本の腕を展開し

・怪異の拘束 同時攻撃 霊的防御 などを行うことができる。

 

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八氏役 紗奈(はちしやく さな)

ある日突然、柳沢ゼミに転入してきた謎の美少女。

黒髪ロングの長身で、どこか古風なお嬢様のような品のある話し方をする。

しかし 異常なほどの大食い 可愛い少年を見ると目を輝かせる という不思議な癖を持つ。

その正体は――

都市伝説の怪異 八尺様 人間の姿に化けて大学生活を送っている。

戦闘時には本来の姿へと変貌する。

身長 約240cm

能力 怪力 霊圧 空間移動

柳沢ゼミにいる理由は、本人いわく

「人間の文化に興味があるからですわ」だが、本当の目的は不明。

 

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不破 スクナ(ふわ すくな)

飛騨地方に伝わる呪術名家不破家の娘。

不破家は古くから両面宿儺の信仰と呪術を受け継ぐ一族。

スクナは母の後を継ぎ、宿儺と契約を交わし第三十三代・宿儺の憑代となった。

ツインテールの野性味あふれる少女で、細かい呪術よりも

身体強化特化型呪術を使う。

戦闘スタイル 超人的身体能力 怪力 高速格闘 とにかく殴る、蹴る、投げる。

怪異退治の方法はシンプル。

「祓えないなら殴って祓う」

柳沢ゼミでは最も危険な戦闘要員。

 

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山深い山々が幾重にも連なるその土地は、地図の上ではまだ確かに日本の村として記されているのに、実際に訪れてみると、まるで時代からこぼれ落ちてしまったかのような静けさに包まれていた。

 春の終わり、山の空気は澄み切っており、遠くの杉林の向こうからは、雪解け水が流れる沢の音がかすかに聞こえてくる。小さな棚田には水が張られ、夕暮れの空を鏡のように映していた。

 そんな山奥の村に、一軒だけ、まだ人の気配が残っている古い家があった。

 軒先には風鈴が吊るされ、縁側には色の抜けた座布団。

 家の中には、薪の匂いと味噌汁の湯気がゆっくりと漂っている。

 そこに住んでいるのは、ただ一人の老人だった。

 名を、フミ。

 この村で生まれ、この村で嫁ぎ、そして家族を見送り、今では一人きりで暮らしている八十を越えた小さな老婆である。

 村の若い者たちはとうに町へ出ていき、家々の多くは空き家となった。だがフミだけは、この山を離れようとはしなかった。

 朝になれば井戸水を汲み、畑の野菜に水をやり、夕方になれば縁側で山の影が伸びていくのを眺める。そんな静かな日々を、ゆっくりと重ねている。

 

 

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 だが、この家にはもう一人、住人がいた。

 フミが夕飯の味噌汁をよそっていると、台所の奥から小さな声が聞こえる。

「おばあちゃん、今日のお味噌汁、いい匂い」

 振り向くと、そこには小さな女の子が立っている。

 十にも満たない年頃、黒髪のおかっぱで、赤い着物を着た子供だった。

村の子供――ではない。

 この村にはもう、子供など一人もいないのだから。

 フミはそれでも、驚いた様子もなく微笑んだ。

「そうかい。今日は山のなめこを入れたんだよ。ほら、あんたも食べな」

 茶碗をもう一つ取り出して味噌汁をよそう。

 女の子は嬉しそうに頷き、ちょこんと座布団の上に座った。

 小さな手で箸を持ち、ふうふうと湯気を吹く。

「おいしい」

「そうかい、そりゃよかった」

 そのやり取りは、まるで本当の祖母と孫のようだった。

 もっとも、フミは知っている。

 この子が、人間ではないことを。

 最初に現れたのは三年前の冬だった。

 吹雪で山道が閉ざされ、村に人の気配がまったくなくなった夜、仏間の奥から、こそこそと小さな足音が聞こえたのだ。

 戸を開けると、そこにこの子がいた。

 着物姿の、小さな女の子。

 普通なら驚くところだろう。だがフミは、ただ静かに言った。

「……ああ、あんたかい。うちに来てくれたのは」

 その瞬間、女の子の目が丸くなった

「……わかるの?」

「そりゃあねぇ」

 フミは縁側に腰を下ろし、湯のみのお茶を一口飲んだ。

「この家は昔から出るって聞いてたからね。座敷わらし」

 女の子は、しばらく黙っていた。

 それから、小さく笑った。

「……怒らないの?」

「なんで怒るんだい」

「だって、あたし、妖怪だよ」

 フミは少しだけ目を細めた。

「妖怪でも、寒い夜に一人でいるのは寂しいだろう」

 そして座布団を一つ叩いた。

「ほら、こっち来な」

 それ以来、女の子はこの家に住み着いた。

 座敷わらし。

 家に住みつけば、その家に幸運をもたらすといわれる古い精霊。

 だがこの家に、特別な富が訪れたわけではない。

 

 

 畑は相変わらず質素だし、年金暮らしの生活も変わらない。

 

 それでも、フミは思っていた。

 幸運というのは、きっとこういうものだろう、と。

 夕暮れ、縁側で二人並んで山を見ていると、遠くの空がゆっくりと茜色に染まっていく。

 山の稜線はやわらかく霞み、杉の森が風に揺れている。

 座敷わらしの少女は、ぽつりと呟いた。

「ねえ、おばあちゃん」

「なんだい」

「村、みんな行っちゃったね」

「ああ」

 フミは静かに頷いた。

「昔は賑やかだったんだけどねぇ。祭りもあったし、子供もたくさんいた」

 少女は少し寂しそうに山を見た。

「……あたしがいると、みんな出ていくんじゃないの?」

 その言葉に、フミは小さく笑った。

「馬鹿言いな」皺だらけの手で、少女の頭をぽんぽんと撫でる。

「人が減ったのは時代ってもんだよ。あんたのせいじゃない」

「……ほんと?」

「ほんとさ」

 少女はしばらく黙っていた。

 それから、ぽつりと呟いた。

「……おばあちゃんがいなくなったら、この家、どうなるのかな」

 フミは空を見上げた。山の夕焼けは、ゆっくりと群青へ変わっていく。

「その時はその時だよ」

「寂しい」

 少女は小さな声で言った。

 フミは、ゆっくりと立ち上がった。

 そして家の中へ入り、古い木箱を持って戻ってくる。

 箱の中には、小さなかんざしが入っていた。

「これはね」フミはそれを少女の髪に差した。

「昔、孫にあげようと思ってたもんなんだ」

 少女は目を丸くした。

「孫?」「ああ。でも都会に住んでて、なかなか来なくてね」

 フミは優しく笑った。

「だから、あんたにあげるよ」

 少女の目が潤んだ。

「……いいの?」

「いいさ」

 フミは縁側に座り直した。

「だって、あんたはもう、うちの孫みたいなもんだからね」

 山の夜は早い。

 空にはいつの間にか、満天の星が広がっていた。

 風鈴が、ちりんと小さく鳴る。

 座敷わらしの少女は、そっとフミの肩に寄り添った。

 山奥の静かな村で。世界から少し取り残された古い家で。

 一人の老人と、一人の妖怪は、今日も一緒に夜を迎える。

 それはきっと、誰にも気づかれない小さな奇跡だった。

 

 山奥の村に、秋の風が降りてきていた。

 棚田の稲は黄金色に染まり、遠くの山の斜面には、ところどころ赤や橙に色づき始めた木々が見える。澄んだ空気の中で、風が吹くたびに稲穂がさわさわと揺れ、その音だけが静かな村に広がっていた。

 フミはいつものように縁側に座り、湯のみを両手で包みながら山を眺めていた。

「今日はいい天気だねえ」

 そう言うと、縁側の柱の影から、赤い着物の少女が顔を出した。

「ほんとだね」

 少女は縁側にぴょんと飛び乗り、フミの隣に座る。

 赤い着物の裾が、秋の光を受けて柔らかく揺れた。

「おばあちゃん、今日は誰か来るよ」

「ほう?」

 フミは驚く様子もなく茶をすすった。

「誰だい」

「知らない人。でもね」

 少女は小さく首をかしげた。

「ちょっと変な匂い」

 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、村の入り口の方から、車のエンジン音がかすかに聞こえてきた。やがて、軽ワゴン車がゆっくりと砂利道を登ってくる。

この村に車が来ること自体、もうほとんどない。

車がフミの家の前で止まり、扉が開いた。

最初に降りてきたのは、落ち着いた雰囲気の中年男性だった。

 整えられた髪、柔らかな笑み、品のあるスーツ姿。どこか大学教授らしい知的な空気をまとっている。

 柳沢昂だった。

 彼は山の空気を一度深く吸い込み、目を細めた。

「……なるほど」

その背後から、次々と若い女性たちが降りてくる。

「うわぁ……すごい……」

 南條美和は思わず声を上げた。

 棚田と山々が広がる風景を見て、目を輝かせる。

「こんな場所、初めて来た」

 陸上で鍛えられた長い脚で伸びをしながら、空を見上げた。

 その隣で、姉川美奈子は静かに周囲を観察している。

 手には、いつもの呪符を収めた小さな袋。

「……先生」

「ええ」

 柳沢は静かに頷いた。

「いますね」

 その言葉に、美奈子は小さく息を吸った。

「かなり……古い存在です」

 すると、後ろでガタンと大きな音がした。

不破スクナが車の荷台から飛び降りたのだ。

「っしゃー!!山だ!!」

 ツインテールを揺らしながら腕を回す。

「なんか強そうなのいる!?」

「スクナさん」

 美奈子が即座にたしなめる。

 その横で、すらりと背の高い黒髪の少女が優雅に車から降りた。

 八氏役紗奈だった。

彼女は村を見回し、ふっと微笑んだ。

「……懐かしい空気ですわ」

 美和が振り向く。

「紗奈、来たことあるの?」

 紗奈は少しだけ意味深に笑った。

「さあ、どうでしょう」

 その頃、家の縁側では。

 座敷わらしの少女が、じっと彼らを見つめていた

「おばあちゃん」

「なんだい」

「あの人たち」

 少女は少しだけ眉をひそめた。

「普通じゃない」

フミはゆっくりと立ち上がった。

 

「そうかい」そして杖もつかず、ゆっくりと玄関へ歩いていく。

戸を開けると、柳沢たちがちょうど庭へ入ってくるところだった。

柳沢は深々と頭を下げた。

「突然失礼いたします」

 柔らかな声だった。

「私は民俗学を研究しております、柳沢昂と申します」

 フミは目を細めた。

「大学の先生かい」

「ええ」

 柳沢は穏やかに笑った。

「この村に、古い伝承が残っていると聞きまして」

 その言葉に、フミの後ろで、少女がぴくっと肩を震わせた。

 柳沢の視線が、ほんの一瞬だけその方向へ向く。

「もしよろしければ、お話を聞かせていただけませんか」

 フミは少しだけ考えたあと、ふっと笑った。

「立ち話もなんだね」

 そして家の中を指さす。

「お茶でも飲んでいきな」柳沢は再び深く頭を下げた。

「ありがとうございます」

 その様子を、座敷わらしの少女は柱の影から見ていた。

 柳沢の目が、また一瞬だけこちらを見る。

 そしてほんの少しだけ――微笑んだ。

 少女は小さくつぶやいた。

「……あの人、見えてる」

 秋の山の空気は澄み渡り、

囲炉裏の火が、ぱちり、と小さくはぜた。

 

 山奥の古い家の中は、夕方の柔らかな光と薪の匂いに包まれている。柳沢昂とそのゼミの学生たちは、フミの家の座敷に招かれ、素朴なお茶と漬物をごちそうになっていた。

「まあ、こんな山奥までわざわざ……大学の先生も大変だねぇ」

 フミは笑いながら湯のみを差し出す。

 姉川美奈子は丁寧に両手で受け取り、頭を下げた。

「ありがとうございます。とても落ち着くお家ですね」

「古いだけだよ」フミは肩をすくめる。

 そのとき、ふと南條美和が首をかしげた。

「……あれ?」彼女は座敷の隅を見た。

「今、誰か……」そこには、着物の少女がちょこんと正座していた。

 美和は一瞬きょとんとしたが、次の瞬間ぱっと顔を輝かせた。

「えっ、子供いたんだ!」

 少女は驚いたように目をぱちぱちさせる。

 普通の人間には見えないはずの存在だ。だが美和の体には、姦姦蛇螺の巫女の力が宿っている。霊的な存在を感じ取る感覚が、人よりも鋭い。フミは苦笑した。

「まあ、うちの子みたいなもんさ」

 その言葉に、少女は少し照れたようにうつむく。

 柳沢は穏やかな目で少女を見た。

「やはり、いましたか」

少女はびくっとした。「やっぱり見えてる」

柳沢は小さく笑った。

「ええ。私は日本の民俗学を研究する傍ら、怪異のもたらす事件にも関わっていますので」

紗奈は少女の前にしゃがみ込み、優雅に首を傾げる。

「あなたが、この家の座敷わらしですのね」少女は少し警戒した目で彼女を見る。

 だが、その視線の奥にある「何か」を感じ取り、ぽつりと言った。

「……あなた、人間じゃないでしょ」紗奈はくすりと笑った。

「まあ、似たようなものですわ」

スクナは座布団にあぐらをかきながら、興味深そうに少女を見る。

「へー、これが座敷わらしか。初めて見た」

美和は嬉しそうに少女の隣に座る。

「ねえねえ、お名前あるの?」

 少女は少し考えた。

「……ない」

「そっか。じゃあさ、ミコって呼んでいい?」少女はきょとんとする。

「ミコ?」

「巫女っぽいし、なんか可愛い」

少女は少しだけ笑った。

「……いいよ」

 囲炉裏の火が温かく揺れる。

 久しぶりに家の中に人の声が満ちていた。

 フミはその様子を見て、目を細める。

 まるで昔、子供や孫たちが集まっていた頃のようだった。

 しかし。柳沢は湯のみを置き、静かに口を開いた。

「……ただ」

 その声の調子が、少し変わった。

 部屋の空気がわずかに引き締まる。

「残念ながら、今日は世間話だけのために来たわけではありません」

 フミは顔を上げた。

「……どういうことだい」

 柳沢は窓の外の山を見た。夕暮れの影が、山の斜面をゆっくりと覆っている。

「この村には、古い祠があるはずです」

 フミは静かに頷いた。

「ああ……山の奥にね」

「そこに封じられていた存在がいます」

 美奈子が小さく呟く。

「一本タダラ……」

 フミの表情が変わった。

「……一本タダラ?」

柳沢は頷く。

「山の怪異です。一本足の巨人の妖怪。古い伝承では鍛冶の神とも言われますが、多くの場合、暴れる災厄として恐れられてきました」

 美奈子が続ける。

 

 

「この地域では、昔の山伏たちが祠に封じた記録が残っています」

 柳沢は静かに言った。

「しかし最近、この山では林業がほぼ途絶えています」

「……そうだね」

 フミは遠くを見る。

「若いもんがいなくなって、山も手入れされなくなった」

「その結果、斜面の土が崩れ、祠が壊れた可能性があります」

 柳沢の声は静かだった。

「つまり封印が解けたってこと」

 スクナが拳を鳴らす。

 フミが息を呑んだ。

「それって……」

 柳沢ははっきり言った。

「一本タダラはすでに山を徘徊しています。2日前に登山客が襲われ一人がその場で食い殺されました。」

 ミコが、ぎゅっとフミの袖を掴んだ。

「……怖い」

 フミはその手を優しく撫でた。

 柳沢は静かに立ち上がる。

「私たちは、それを退治するために来ました」

 スクナがにやりと笑う。「ぶん殴ってやるぞ。」

 美奈子は呪符の袋を握り直す。「許せない」

 紗奈の目が静かに細くなる。「ですわ」

 柳沢はフミに深く頭を下げた。

「ご迷惑をおかけしますが、しばらく山へ入ります」

フミはゆっくり頷いた。

「気をつけな」

 柳沢たちは夕暮れの山へと向かっていった。

 その背中を、ミコは縁側からじっと見送っていた。

 

 そして夜が来た。山の闇は深い。

 虫の声が消え、風も止まり、静寂が村を覆う。

 そのときだった。

 ――ドン。   ドン   ドン  ドンドンドン

 地面が揺れた。

 フミは顔を上げた。

ドンドンドン

 ミコが震える声で言う。

「……来た」次の瞬間。

 森の奥から、邪悪な影が現れた。

 一本の足。鬼の身体。歪んだ顔。

 ――一本タダラ。

 それは、山の闇からゆっくりと現れた。

 

 

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 目は赤く、体からは腐った肉のような臭いが漂う。

 そして。

 その視線が、家を見た。

「女どもの匂いがすると思ったら、人が居るな!」

 ミコは立ち上がった。

「おばあちゃん、逃げて」

「ミコ」

「早く!」

 一本タダラが地面を踏み鳴らす。

 家が揺れる。

 ミコは小さな体で、庭へ飛び出した。

 着物が夜に揺れる。

「ここだ!」

 怪異の目が彼女を見る。

「どんな女がいるかと思えば、ガキか?だが、霊力は高いようだな。」

 巨大な腕が振り下ろされた。

 ミコは転がるように避ける。

 だが、衝撃だけで吹き飛ばされた。

「……っ」

 地面を転がる。

 小さな体が土に叩きつけられる。

 それでも立ち上がる。戦う力など持ってはいない。

 でも震えながらも、両手を広げた。

「……おばあちゃんの家……」一本タダラが迫る。

 巨大な拳が振り下ろされる。

 ミコは何度も吹き飛ばされる。

 地面に叩きつけられて、着物が破れ、体が血に染まる。

 それでも。それでも。

 立ち上がった。

「おばあちゃんは私が守る」

「ひひひ、ガキめ!裸に剥いてしゃぶり尽くしてくれるわ」

 

 

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タダラの巨腕がミコの華奢な体を掴み上げた。

「離して!」必死の抵抗は虚しく、古びた着物の裾が裂ける。

「儂の瘴気に酔え」タダラの掌から滲み出す漆黒の妖気。ミコの肌に触れると同時に甘美な痺れが走った。

「あ……ぅっ」

脳髄を直接撫でられるような官能が、幼い身体を蝕んでゆく。意思とは裏腹に蜜が溢れ出し、太腿を伝った。

「ミコ!」

縁側で震えるフミが叫ぶ。杖を支えに立ち上がろうとする老婆の姿に、タダラは涎を垂らした。

「ヒヒヒ!ババアを喰らう前にまずはこの娘を目の前で犯してやろう」

岩盤のような膝の上でミコを仰向けに寝かせると、爪先で彼女の秘処を浅く抉る。

「んあっ!? や……やだ……っ」

抗う動きが却って滑らかな内腿を見せてしまう。タダラの分厚い舌がじっくりと舐め上げた。

「清らかな霊気に混じる…いいぞ」

涙と共に溢れる羞恥と屈辱。だが妖気は容赦なく快感中枢を侵し始めていた。

ミコの膣奥を突くような圧迫感──タダラが自身の一部を露わにした。

「見せてやろう。この娘が儂の胤を受け止め堕ちるさまをな!」

「ミコ逃げるんじゃ、わしなどうなってもええ、やめておくれよぉっ!」

フミが膝を折りながら這い進む。嗄れた叫びが闇に反響する。

一方でミコの理性は溶けかけていた。全身の痙攣を堪える術がない。

(ダメ……もう……)瞼の裏にフミの顔がちらつく。(でも…助けがけけつけるまでの…時間を……!)

タダラが結合点を晒す!ほっそりとした少女の体を肉棒が貫いていた。

「ひぎぃいいいいっ!」ミコが悲痛な叫び声を挙げる

一本タダラの荒々しい楔が、未熟な身体を容赦なく押し広げ、最奥へと打ち付けられる。骨が軋むような衝撃。内臓が押し潰される激痛に、ミコの華奢な体は弓なりに仰け反った。着物はほとんど引き裂かれ、白い肌が月明かりに照らされる。そこには赤黒い痣が浮かび上がり、無垢だった秘部からは鮮血が筋となって流れ出ていた。

「おお……よい啼き声だ」

タダラは恍惚とした表情で涎を垂らし、さらに深く腰を沈める。

「小さな体だが……霊力の質が良い。極上の器になりそうだ」

「おばあちゃんは、私が守る!あああああっひぃ!」

「ミコォッ! やめろ…逃げるんじゃ……!」

フミが枯れ枝のような手を伸ばす。涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、ミコに向かって這いずっていく。だが、老いた体は言うことを聞かない。杖は転がり、咳き込むばかりだった。

「ヒヒヒッ! 見ろ! この婆が貴様の惨めな姿を焼き付けてくれるぞ!」

タダラはミコの両腕を掴み上げ、獣のように何度も何度も激しく突き上げる。結合部からは絶え間なく粘液と血が混じり合い、湿った打擲音が闇夜に響き渡る。

ミコの意識が朦朧とする。視界が白濁していく。だが、タダラの妖気が与える痛みとは異なる奇妙な感覚が、身体の奥底で渦巻き始めていた。

(な……何…これ……)

苦痛と屈辱のはずなのに、ぞわりと背筋を這い上がる未知の熱。タダラの瘴気が皮膚を通して神経を侵し、徐々に快楽へと書き換えられていく。涙で滲んだ視界の端で、フミが泣き叫ぶ声が遠く感じる。代わりに自分の口から漏れるのは、否定しようのない嬌声だった。

「あっ……や…あああっ……んぅっ」

「いいぞ、効いてきたようだな。儂の精でその身を満たし、人形の如く操ってくれる」

タダラの抽送が加速する。ミコの細い腰が激しく打ち据えられ、幼い乳房が痛々しく揺れる。

意識の大部分を奪われながらも、ミコは僅かに残る力を振り絞り、タダラの汚らわしい腕を弱々しく掴んだ。

(負けちゃ……だめ……助けが……来るまで……)

「無駄な足掻きだ。だがそれがまた愛い」

タダラがミコの唇を貪るように塞ぎ、濃厚な瘴気を流し込む。喉を灼くような悪寒と甘美な酩酊が同時に襲いかかる。

「んむぅう……っ…ぷはっ……おば……ぁ…ちゃ……」

呼びかける声は掠れ、もはや言葉にならない。膝がガクガクと震え、全身の力が抜けていく。タダラの猛攻に抗う術もなく、為されるがままに弄ばれる。

フミは無我夢中で叫び続けた。

「お願い……やめておくれ……ミコ…っ! ミコ! 誰か助けて!」

老婆の哀願も虚しく、ミコの瞳からは光が急速に失われていく。代わりに宿るのは、タダラと同じ暗く澱んだ情欲の色だった。指先がぴくりと痙攣し、タダラの肉棒を締め付ける。その従順な反応にタダラは歓喜し、さらに深く深く抉り込んだ。

「極めよ! 儂の胤を受け、共に永遠の悦楽に溺れるがよい!」

ドクンッとタダラの体内で脈動が起こり、決定的な瞬間が近づく。ミコの身体は全てを拒む力を失い、ただ本能的に痙攣するだけの生き人形と化していった。

「ああぁあぁっ! おば……あ……」

最後の言葉が虚空に散る寸前。

遠く、闇の彼方から微かな気配が奔った。

「一本タダラ、見つけたぞぉぉお!」

スクナの雄叫びが夜を切り裂く。一本タダラの巨大な背中に思いっきり飛び蹴りをかました。

「チィッ! 邪魔者がァ!」

タダラの狂乱した咆哮が轟く。

ミコを抱えたまま咄嗟に体勢を変えようとした刹那。

「そこだっ!」柳沢がミコの身体をタダラから奪い取った!

「ポポポポ」八尺様がタダラに挑みかかる!

「援護するよ!紗奈!」美和の見えざる手がタダラを殴る!

「おのれぇ、まとめて孕み袋にしてくれるわ!」

一本タダラは狼狽えながらも禍々しい巨体で応戦し始めた……

夜闇が裂ける。飛び込んできたのはツインテールを翻す小柄な影——スクナだった。

「この糞野郎!タコ殴りにしてやる」

タダラの剛腕を寸前で躱し、肘打ちを胸板に叩き込む。甲冑のような肉がギシリと軋む。

タダラは嗤った。「羽虫が。まとめて嬲り潰してくれる!」

足元から触手が噴出!四方八方からスクナを絡め取る。

「危ないですわ!」 八尺様がスクナを庇うが触手に捕まった!

「役立たずが!これで串刺しだ!」

太い触手が空中で束となり尖塔を成す! その先端には無数の棘!

「させないっ!」 美和が見えない拳を構えそれを砕くが砕いた瞬間、分散して彼女も触手に絡め取る。

 

 

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残された美和、紗奈、スクナは、一本タダラの無数の触手によって宙高く磔にされていた。

「ヒヒヒッ……よく暴れたなぁ」

タダラは涎を垂らしながら愉悦に浸る。その巨眼には三つの獲物が映っていた。

「まず、その凛々しい剣士風情の女からだ」タダラの視線が紗奈に定まる。

「放しなさいませ!」紗奈は冷静さを保とうと努めるが、ドレスの裾から侵入した触手が太ももを這い上がり、薄いストッキングを容易く裂いていく。冷たくヌルリとした感触が直接肌を撫で、彼女は思わず息を詰めた。

「ほう……その高慢な目付きが好ましい」

触手が背中に回り、複雑な編み上げになっているドレスの結び目をあっという間に解いていく。コルセット状の下着が露わになると同時に、両腕を固定していた触手が動き、豊かな双丘が窮屈そうに上下に跳ねた。

「……っ!」紗奈の顔に朱が走る。こんな辱めは想像したこともなかった。必死に体を捩るが、万力のような力で拘束は緩まない。

「まだまだこれからだ」触手の先端が割れ、ピンク色の吸盤のようなものが二つ現れる。それは紗奈の露わになった胸の頂点を目指し……粘着質な音を立てて吸い付いた。

「んあっ!」短い悲鳴が零れる。吸盤は機械仕掛けのように小刻みに振動し、時折強く吸引したり、舌のように内側の器官で突起を転がしたりする。紗奈の意思とは無関係に乳首が硬く勃ち上がり、ドレス越しの下腹部が微かに疼いた。

「美しいな……その蕩けそうな表情」タダラは満足げに舌なめずりをする。次いで別の触手が割れ目に沿って這い上がる。ショーツのクロッチ部分を食い破り、敏感な花芯を剥き出しにされた瞬間――紗奈の理性が大きく揺らいだ。

「あぁっ……くっ……やめ……なさ……いっ……」

言葉尻が震え、腰が自然と浮き上がる。触手の分泌液が媚薬作用を発揮し始めているのだ。冷たいはずの異物がもたらす熱。拒絶したいのに、身体は電流のような快感を受け入れてしまっている。

一方、スクナは最後まで抵抗を続けていた。

「離せ……っ!」獣じみた低く唸る声と共に全身を捩じる。しかし彼女の力を奪うべく、特殊な細い触手が絡みつき、血管の太い箇所から直接精力を吸い上げていた。

「ハッ……体力バカが……もう限界か?」

スクナの額には汗が滲み、荒い呼吸と共に動きが鈍くなる。特攻服は既に半分以上脱がされ、日焼けした健康的な肌が晒されていた。短パンの裾から這い込んだ触手が股間をぐっと押し上げ、内腿を粘液で濡らしていく。

「っ……ぐ…触ん……な…」スクナは奥歯を噛み締め耐える。だが妖気の影響で肌は桃色に紅潮し、腹筋の凹凸に透明な汗が滴った。

タダラが大きな掌を広げると、そこから別の触手がスクナの股間へと伸びる。細長い触手は無防備な陰核を探り当てると、表面に生えた細かな毛で磨くように擦り始めた。

「ひあぁっ!?」思わず素っ頓狂な声が出る。

スクナの膝がガクガクと震え、背筋が反り返る。タダラはニヤリと笑い、さらに刺激を強めた。

敏感な芽が皮から剥き出しにされ、直接的な快感が脳天を突く。

「フヒヒ……強がりも長くは続かんよ」

スクナの視界が白く弾け、何度目かの痙攣と共に股間から蜜が滴り落ちる。意志とは裏腹に身体は浅ましくもさらなる刺激を求めているのが分かる。屈辱と羞恥で涙が滲んだ。

「まだ……負けて……ねぇ……」喘ぐような声で虚勢を張るも、身体は正直に反応し続けた。

そして、美和は恐怖で固まっていた。

「い……いやぁ……っ!」服は破かれ、白いブラウスとチェックのミニスカートが中途半端に身体に引っ掛かっているだけ。剥き出しになった太ももは無数の触手によって縄のように締め付けられ、身動き一つ取れない。

タダラの視線が美和の肉体を這う。「どれ……一番瑞々しい霊気を持っているお前から試そうか」

触手がブラウスを一気に引き千切り、可愛らしいブラジャーを外す。小ぶりだが形の良い胸が震えながら現れると、タダラは感嘆の声を漏らした。

「素晴らしい……まるで生贄そのものだ」

一本の太い触手がゆっくりと美和の花弁に触れる。まだ誰にも許したことのない領域。恐怖で固まったそこに、冷たい粘液が塗り込まれていく。

「や……やめて……お願い……!」美和は必死に首を振るが、タダラは聞く耳を持たない。むしろその怯えすら美食のスパイスだとばかりに嗤った。

「痛いのは最初だけだ。すぐに愉しませてやる」

触手が秘裂を分け入り、ズブリと侵入を開始する。

「あ゛あ゛あ゛あ゛―――ッ!」絶叫が山肌に木霊する。無慈悲な挿入。初体験の痛みと快楽の波が交互に押し寄せ、美和の心を粉々に砕いていく。

「ひひ……処女膜を破るのが最高だ!」タダラが陶然とする。溢れる血液を啜り取るかのように、触手内部が蠕動する。痛みと痺れが混ざり合い、美和の理性はあっという間に瓦解していった。

「もっとだ……もっと悶えろ!」タダラが命令すると、美和の口にも触手が押し込まれる。喉奥まで届くような質量。異臭と吐き気に咽せながらも、妖気が肺を満たし全身に巡り始める。

「う゛ぅ……ふ…っ……ぐうぅ……」

苦しみから解放されようと無意識に舌を動かせば、触手が悦びに震えさらに奥へ潜り込む。美和の瞳から光が失われ始めた。

――そこから先は地獄絵図だった。

タダラは三者の反応を一つ一つ味わいながら、その精神を徹底的に破壊していく。

紗奈は絶頂を迎えさせられるたびに、彼女の高貴な声は艶めかしい喘ぎに変わる。

スクナは敏感な部分を集中的に攻められ、ついには自分から腰を動かし始める。快感に溺れまいと抗うも、理性は泡のように弾けて消え、獣じみた呼吸だけが残る。

・美和は胎内深くに触手を埋め込まれ、強制的に絶頂させられる。失神しても次々と与えられる快感で叩き起こされ、涙と涎で顔をグチャグチャにしながらただ痙攣し続けるだけの抜け殻となっていた。

「ハーッハッハッ! これだこれだ! 残虐と快楽が交差する時こそ、最も濃厚な霊気が搾り取れる!」

タダラの哄笑が辺り一面に響く。その巨体は快感に打ち震え、まるで達しているかのようであった。三者の肉体から純粋なエネルギーが吸い上げられ、タダラの存在が膨れ上がっていく。このままでは全員がタダラの眷属となり、ただの快楽奴隷として使役されることとなる……

その時。

フミの家の中から微かな光が灯った――

「美奈子っ!今ですよ」

柳沢の呼びかけと共に放たれた閃光が闇を貫く。

タダラは驚愕の叫びを上げた。「な……なんだこの光は!?」

三名が拘束されている場所を中心に巨大な魔法円が展開する。地面が金色に輝き、無数の梵字と呪文が浮かび上がった。

姉川美奈子の姿が円の中心に現れる。凛と立ち、両手に複雑な印を結んでいた。

「――オン・キリキリ・ウンハッタ」

澄んだ声が空気を震わせる。柳沢から預かった秘伝の札が円の中で高速で舞い踊り、強力な封印術を形成していく。

「クソッ!黄様、隠れて術式を編んでいたか !その程度の術式で儂が縛れると思うな!」

タダラが触手を叩きつけて円を破壊しようとするが、美奈子の詠唱が加速すると同時に強度を増す。

「この魔法円は単なる防御陣じゃない。対象を『固定』『隔離』『分解』の三段階で封印する多重構造……あなたの瘴気はここで完全に浄化されます!」

美奈子の額には珠のような汗が浮かんでいる。この術の消耗は尋常ではない。だが今は引くわけにはいかない。

タダラの巨大な腕が円の壁を打つたびに美奈子の全身に衝撃が走る。膝が震え、吐血しそうになるのを必死で堪える。

「美奈子!」柳沢が叫ぶ。

「先生……大丈夫です。私はまだ……!」

その刹那――限界を迎えたかのように魔法円が煌めきを失う!

「おのれぇえ! 小賢しい真似を……」

タダラの触手が美奈子へと伸びる。封印が解除されようとしたまさにその時。

「美奈子さん、下がってください!」

ミコの声。

弱り果てながらもフミの支えで立ち上がった彼女が、最後の力を振り絞って両手を組む。

「おばあちゃんの家に……近寄るな……!」

純粋な怨嗟。座敷わらしである彼女の渾身の怒りが瘴気の壁を突き破る。

「今です!」

美奈子の声に応えるように柳沢が懐から水晶を取り出し、呪文と共に投げつけた。

「急急如律令!」

水晶は魔法円の中央に落下し、眩い光を放って術を完璧なものとする。

タダラの巨体が円の中に固定された。

「がああああっ! 出せ! この封印を解きやがれええっ!」

怪物は暴れ狂い円の枠に激突するが、美奈子と柳沢の詠唱が重なることで円の強度は更に増していく。

「終わりだ一本タダラ。君の悪行もここまでだ」柳沢の眼差しは冷静だった。

美和たちは意識を失いながらも救出され、安全な位置で介抱されている。

夜明け前の冷たい空気の中、長い戦いに終止符が打たれようとしていた……

ミコがぼんやりとした意識の中で見ているのは、光の中に囚われた一本タダラの姿だった。フミがその小さな肩を支えている。

「おばあちゃん……」

「よく頑張ったね」

フミの手がそっとミコの髪を撫でる。その指先にはもう震えはない。

術式が完成し光が収縮していく。タダラの断末魔が空間を揺るがす中、魔法円は跡形もなく消え去り、残されたのは静寂だけとなった。

「終わったか……?」

スクナが重い体を引きずりながら顔を上げる。憔悴しきった美和と紗奈も弱々しく頷く。

柳沢が一同に向き直り静かに告げた。

「終わったよ。皆さんの協力のおかげだ」

美奈子が深々と頭を下げる。

「ありがとうございました……みなさんのおかげです」

誰もが安堵の溜息をつこうとした瞬間――

「……まだですわ」

紗奈の冷ややかな声が響いた。一同がハッとして振り返ると、彼女は一点を見つめている。

朝靄の中に微かな蠢きがあった。光の中に消えたはずの瘴気が再び凝固し始めている。

「まさか……再生?」美和が息を呑む。

「いや違う……あの感じは……」

柳沢の表情が曇った。

「一本タダラの本体は確かに滅した。だが……残留思念というべきか。未練や執着心が瘴気となって具現化した存在だ。形としては『タダラの怨霊』といったところだろう」

その説明に合わせるように、瘴気は歪な人型をとり始めた。輪郭は朧げだが明らかにタダラを想起させるシルエットを持つ。そしてゆっくりと顔を上げ――その中心には深淵のような漆黒の空洞がぽっかりと開いていた。

「ヒヒ……ヒヒヒ……」

不気味な笑い声が漏れる。そこに感情はなく、ただ飢餓と執着だけが蠢いているようだった。

「どうすれば倒せるんですか?」スクナが歯を食いしばる。

「本体とは違い実体はない。物理攻撃は通じない」柳沢は答える。「封印するなら先程以上の準備が必要だ。しかし……」

彼の視線がミコへと移る。

「もしかしたら、彼女の力なら……」

ミコは怯えた様子でフミの後ろに隠れていたが、その名を呼ばれて顔を上げた。

「わたしが……?」

「君はこの土地の守り神だ。もし君の力が純粋であれば……あの怨念を浄化できるかもしれない」

ミコの小さな拳が震える。そんな力が自分にあるとは信じられない。けれど背中には確かな温もりがあった。

「怖がらなくても大丈夫だよ」フミの声は優しく包み込むように響く。「お前さんはこの家を守ってくれた。次は山全体を守る番だね」

「おばあちゃん……」

ミコが一歩前に踏み出す。その瞬間――怨霊が猛然と襲い掛かった!

「きゃあっ!」

咄嗟に身を固くするミコ。だが瘴気の刃が彼女を切り裂く寸前――フミが杖で阻んだ!

「危ない!」

「おばあちゃん!!」

ミコの瞳から涙が溢れる。その時だった。彼女の身体から淡い光が放たれ始めた。

「これは……」柳沢が目を見開く。

怨霊の動きが止まった。ミコの全身を包む柔らかな光が瘴気を押し返しているのだ。それは座敷わらしとしての本来持つ守護の力。恐怖ではなく慈愛を原動力とした純粋な霊力だった。

「わたしは……守りたい」

ミコの声が力強く響く。

「このお家も、山も、そしてみんなも……」

光が眩く膨張し怨霊を飲み込んでいく。悲鳴にも似た声を上げながら瘴気が四散する中で、ミコは両手を広げて祈った。

(どうか安らかに眠って……)

最後の一筋の煙が空に昇ると同時に、朝日が山々を照らし始めた。

「終わった……本当に」美和が息をつく。

スクナはガッツポーズをして笑い、「やっぱ座敷わらしすげぇな!」と叫ぶ。

紗奈も疲れた顔で微笑む。「ええ、素晴らしい光景でしたわ」

柳沢はミコの頭をそっと撫でながら呟いた。「君の勇気が勝ったんだね」

ミコは照れくさそうに俯いた。そしてフミに向き直ると、満面の笑みを見せた。

「おばあちゃん。ありがとう」

「こっちこそだよ」

二人は互いに微笑み合う。そこには確かな絆が生まれていた。

朝靄が晴れていく。

緑の山々が黄金色に染まり始めた。村には日常が戻りつつある。しかしこの出来事は確実に何かを変えた。小さな守り神の成長と共に――

 

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