※この作品はR-18です。

「エロ怖」日本の怪異を訪ねて 怖くてドエロい短篇集⭐️イラスト付き   作:みなぽん

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少女の夢の果てに 悪皿 アクロバティックサラサラ 

悪皿 ―白いリボンは泥に染まる―』

 

山あいの小さな町――朝霧町。

 

冬は厳しく、夏は短い。けれど人の温もりだけは濃い場所だった。

 

その町に、一人の少女がいた。

 

名は――白石 澪(しらいし みお)。

 

小さな頃から、彼女はくるくると回るのが好きだった。家の縁側、学校の校庭、神社の石畳。どこでも彼女は回った。転んでも、擦りむいても、また立ち上がって回った。

 

そんな彼女を見て、母は笑いながら言った。

 

「澪、あんたは風の子だね」

 

父は不器用に頭を撫でた。

 

「その回るやつ……なんていうんだ、体操か?やってみるか」

 

それがすべての始まりだった。

 

町に一つしかない古びた体育館。冷たい床。軋む梁。決して恵まれた環境ではなかったが、そこが澪の世界になった。

 

リボンを持った日、彼女の目は変わった。

 

ただ回るだけだった少女は、“魅せる”ことを覚えた。

 

手首の角度、つま先の伸び、呼吸のタイミング。

 

何度も失敗し、何度も泣き、それでも彼女はやめなかった。

 

夜遅くまで残る灯り。窓越しに見守る母。仕事帰りに差し入れを持ってくる父。

 

町の人々も、いつしか彼女を応援するようになった。

 

「澪ちゃん、頑張れよ!」

「テレビに出たらサインくれな!」

 

仲間もいた。

 

同じ体育館で汗を流す少女たち。時に競い、時に励まし合いながら、それぞれの夢を抱いていた。

 

中でも一番の親友、結衣はよく言った。

 

「澪はさ、きっと行けるよ。あの場所に」

 

その“あの場所”が、何か。

 

誰もが知っていた。

 

オリンピック。

 

遠くて、眩しくて、けれど確かに存在する舞台。

 

やがて、澪は町を出た。

 

より大きな環境へ。より厳しい世界へ。

 

東京の強豪クラブ。

 

そこは別世界だった。

 

床は完璧に整えられ、鏡は壁一面に広がり、指導者は一流。だがその分、競争は苛烈だった。

 

才能だけでは足りない。

 

努力だけでも足りない。

 

すべてを削って、ようやく立てる場所。

 

それでも澪は食らいついた。

 

朝は誰よりも早く来て柔軟をし、夜は最後まで残って反復練習を続けた。

 

足の皮は何度も剥け、血が滲んでも、テーピングを巻いて笑った。

 

「まだ、いけます」

 

その一言に、周囲の空気が変わっていった。

 

最初は無名だった少女が、少しずつ、しかし確実に頭角を現していく。

 

地方大会を制し、全国大会へ。

 

そして――

 

全国大会決勝。

 

観客席には、町から駆けつけた人々の姿があった。

 

両親、恩師、仲間たち。

 

誰もが息を呑んで見守る中、澪はフロアに立った。

 

音楽が流れる。

 

静寂。

 

そして、彼女は――舞った。

 

白いリボンが空を切る。

 

しなやかに、鋭く、時に儚く。

 

彼女のすべてが、その数分間に凝縮されていた。

 

努力、涙、痛み、願い。

 

すべてが、そこにあった。

 

最後のポーズ。

 

ぴたりと止まる。

 

一瞬の静寂の後、会場は爆発するような拍手に包まれた。

 

結果は――優勝。

 

そして同時に。

 

オリンピック強化選手候補。

 

“切符”に手をかけた瞬間だった。

 

母は泣き崩れ、父は拳を握りしめた。

 

結衣は笑いながら泣いていた。

 

澪はただ、静かに空を見上げた。

 

――やっと、ここまで来た。

 

だが。

 

その“上”には、別の世界があった。

 

選考委員室。そこにいたのは、先行委員長の岸和田、桑田、城島、

 

全日本新体操連盟の重鎮たちだった

閉ざされた部屋。

 

笑顔の裏に潜む視線。

 

ある日、澪は呼び出された。

 

「白石さん、今後について少し話をしよう」

 

優しい声。

 

だが、その目は笑っていなかった。

 

提示された条件。

 

それは努力でも、実力でもなかった。

 

「わかるよね?君はいい選手だ。でも“枠”は限られている」

岸和田が立ち上がり、彼女の隣に座る。中年男の濃い香水の匂い。

「ここで我々と懇親を深めれば、君の代表入りは確実だよ」桑田が左隣に座り彼女の太ももを撫でた。

「あ、あの、やめてください、、。」涙で拒む彼女。

「お前のような田舎娘、干すのは簡単なんだぞ、価値のない体1つで栄光が掴めるんだ。わかってるだろう。」城島が彼女にねっとりとささやいた。

「嫌です。。私帰ります。」

必死に拒み部屋から逃げ出そうとする彼女。

しかし3人の中年男は、彼女を逃そうとはしなかった。

「ひひひ、新体操選手のしなやかな肉体は、最高の抱き心地だからな」

 

 

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城島が舌舐めずりをする。

「そうだな、毎晩、1人ずつ犯しまくってあげよう」

桑田も下卑た笑みを浮かべる。

「それじゃあ、俺らに奉仕するか、それともオリンピックを諦めるか決めろ!!」

岸和田が恫喝するように言う。

澪は絶望した顔をした。

「うそ、、こんなの、、」

「選ぶまでもないだろう?」

「お前は俺達に奉仕するんだろう?」

「早く脱いで奉仕するんだ!」

3人は笑いながら、彼女の裸にした

「ほほう、これが女子高生の全裸か」

「若いなー、エロいなー」

城島がいきなり小さな胸を鷲掴みにする。

「んっ」

「おほー、たまらんな」

桑田が横からもう片方の乳房を掴み、乳首を抓った。

「いやぁ、ぁんっ!」

「エロい声出しやがって、お前の大事な部分を見せてもらうぞ」城島が彼女唯一残されたパンティーを剥ぎ取った。そして毛が生えていないオマンコを指で割り開いた。

「おいおい、この女パイパンだぜ!!」

「いいじゃねーか、こっちのほうがエロいぜ」

岸和田が指で弄くり回した。「どうだ?ここが気持ち良いのか?」

「やだ、ぅっ!」

「たっぷり舐めて、天国にいかせてやるよ」城島は獣のように、彼女の割れ目に顔を埋めた。

「いやぁーーーーーーーーーーーー!」彼女の悲痛な叫びが、部屋にこだまする

岸和田はズボンを脱ぎ捨て、ペニスを取り出すと彼女の口元へ持っていき言った。

「ほらしゃぶれ」

「いやぁ!」

「いいから咥えろって言ってんだ!」

澪の鼻先に汚らしいモノが突き付けられる。

「んぐぅー!!」

喉奥まで押し込まれる。

吐きそうになるのを我慢しながら必死に吸う。

唾液まみれの唇からイヤらしい水音が響き渡る。

「そうだ、もっと舌を使え」

言われるまま従うしかない。

岸和田の粗野な命令に従わされるたび、澪の心の中で何かが壊れていく。

「こいつ、ちんぽしゃぶりながら濡らしてやがるぜ」城島が自らの指先を彼女に見せつけた。

愛液が糸を引いている。

「白石、おまえ淫乱なのか?」

「そういう素質があるらしい」

「見ろよ乳首だってビンビンだぜ」桑田が彼女の小さな乳房をいやらしく舐めまわす。「うぅ、やだぁ」

「おいおい泣くなよ、ガキめ!精液くれてやるよ」

岸和田は腰を動かし始めた。

彼女の頭を押さえつけて無理矢理動かす。

「んぐぉ!んごぉ!」苦悶の表情を浮かべるが、それでも逃げられない。

「うおおおっ射精るっ!」ドビュッドビュッと岸和田が口内に射精する

「そろそろ本番といくか?これを飲め、処女でも腰を振る。アメリカの薬だ。」

城島が彼女の小さな身体を抱きかかえ、口写しで薬物を飲ませた。

「あ、、ああっ、、身体が変に、、」彼女の両足が生まれたての小鹿ように震えた。

まだ幼い割れ目が燃えるように、熱く愛液をほどばらせた。

「くくく、効いてきたみたいだな」

ダッチワイフでも犯すように無造作に挿入した。彼女の華奢な身体を思い切り突き上げる。

「ひっ!」「どうだ、気持ちいいだろう」

「ぁ、痛い、ぅぅぅ、、ん、、あっ!」

「ほれ、感じているんじゃないか」

彼女の膣内は熱く、きつく締め付けてきて、それでいて柔らかかった。

まるで溶けてしまいそうな程心地よい。

「白石ぃ、お前の中は最高だぞぉ、こんなにも締め付けて来て、俺のチンポを離すまいとしているようだ。どうだ、白石はぁ!!」城島は彼女の両足を抱え上げ、更に激しく抽送する。

「あっ!あっ!あっ!あっ!ああぁっ!!」

パンッ!パァン!!激しく叩きつけるような打擲音と共に結合部からは愛液が飛び散り、二人の陰毛はグチョグチョに濡れそぼっていた。「いくっ、いくぅ!あああぁぁぁ!!」彼女は大きく仰け反り背筋を痙攣させた。

「よし、次は俺だ!」

桑田が彼女をうつ伏せにして覆い被さる。

バックスタイルで突き入れると、さっきよりもさらに強く締め付けられた。

「すごいなこれは、今までヤッたどの女よりも具合が良い!」桑田は満足げに微笑むと、更に速度を上げていく。

「あっ、だめぇ、もう やめてああぁー!!」

澪の小さな身体を容赦なく貪る3人の男たち。

3人がかりでの凌辱が始まった。

「ほら、こっち向けって」城島が彼女の顔を掴み上げ、自分の股間を近づけた。「おら、しゃぶれ」

「うぅ……」

「口答えするんじゃねぇよ!」バシッ!平手打ちされ、口を開かされる。「ちゃんと喉を使うんだ」

「うっ、んっ」

「そうだ、上手いぞ」

彼女の頭を両手で掴み前後に揺さぶる。

「おほっ、おほっ」と下品な声をあげる。

「うぐっ、うぅっ、うぶっ、うぇっ」苦しそうにえずくが、構わず続ける。「くく、いいぞ、そのまま舌を動かせ」

「うぅ、うぅっ、うぶぅ」

「おっ、そろそろ出そうだ」

「あああ、。もう、ゆるし、、て」

桑田が彼女の尻たぶを掴み、膣奥まで叩き込む。彼女の胎内へ精液を注ぎ込んだ。

3人の行為は朝までを及んだ。ベッドの上では、白濁にまみれた彼女がカエルのように足を開いたまま気絶していた。

「ふぅ、流石に疲れたな」「ああ、だが最高だった」岸和田と城島も満足気に言い合う。

城島が彼女の割れ目から滴る白濁を、自らの亀頭を使って、中に戻すように塗り込めた。

「お前、妊娠しちゃったらどうするんだよ。」

「大丈夫、大丈夫、どうせ出来やしないさ。それにしてもあの薬は凄いな、こいつの幼児体型でも、膣だけはしっかり大人の身体と変わらないからな。本当にクセになりそうだ」

岸和田が意地悪そうに笑った。「よし、また明日もヤッてやろう」

「ああ、そうだな」城島が同意する。

「そうだな、これからずっと毎日犯し続けてやろう」

3人の男は笑いながら去って言った。

 

悪皿へ

翌朝、澪は、もう笑わなかった。

体育館の扉は閉ざされたまま。

リボンも、シューズも、すべて押し入れの奥にしまわれた。

 

昼間は部屋にこもり、夜になると外へ出る。

 

誰にも見られないように。

 

ただ――体が、勝手に動くのだ。

回りたい。

跳びたい。

 

東京。

 

眠らない街の上を――それは走っていた。

 

ビルの壁面を、逆さに。

 

ガラスに映るのは、人ではない“何か”。

 

長い黒髪。

 

地面に届くどころか、夜風の中で意思を持つようにうねり、広がり、絡みつく。

 

その中心で、女が跳ぶ。

 

異様な柔軟性。

 

人間の関節ではあり得ない角度で体を折り、捻り、反発し、次の動作へ繋げる。

 

まるで――終わらない演技。

 

だが観客はいない。

 

いや。

 

“いる”。

 

下で見上げる人間たち。

 

スマートフォン越しの視線。

 

噂。

 

恐怖。

 

それらすべてが、彼女の“舞台”になっていた。

 

――アクロバティックサラサラ。

 

都会に現れる、長い黒髪の女の妖怪。

 

そして彼女に触れられた者は、“身体の才”を奪われる。

 

「……なるほど。都市型怪異に変質した、というわけか」

 

夜の高架下。

 

柳沢 昂は、資料を閉じて静かに言った。

 

その周囲には、ゼミの面々。

 

姉川 美奈子は、すでに数枚の呪符を指に挟み、冷静な眼差しで周囲を観察している。

 

「被害者は全員、身体能力に依存する競技の選手です。新体操、体操、陸上……共通点は明確ですね」

 

南條 美和が軽く肩を回しながら言う。

 

「で、その能力を“奪う”ってわけね。感じ悪いなぁ」

 

その隣で、不破スクナが拳を鳴らす。

 

「奪うなら、奪い返せばいいだろ。殴って」

 

「短絡的すぎます、スクナさん」

 

美奈子がため息をつく。

 

そして、少し離れた場所で――

 

八氏役 紗奈が夜のビル群を見上げていた。

 

「……おりますわね」

 

その声は、静かだが確信に満ちていた。

 

柳沢が頷く。

 

「白石澪。いや――」

 

一瞬、言葉を区切る。

 

「アクロバティックサラサラ」

次の瞬間。

 

上空から、落ちてきた。

 

黒い影が。

 

ドン、と地面すれすれで停止する。

 

衝撃はほとんどない。

 

それ自体が、異常だった。

 

長い黒髪が、地面に広がる。

 

ゆらり、と揺れる。

 

顔は見えない。

 

だが――確実に“こちら”を見ている。

 

「……来たか」

 

柳沢が一歩前に出る。

 

その背後で、美奈子が呪符を展開。

 

空中に淡い光の結界が幾重にも重なる。

 

「結界、展開完了です。外部への影響は遮断しました」

 

「助かる」

 

美和が一歩踏み出す。

 

「ねえアンタさ」

 

軽い口調。

 

だが、目は真剣だった。

 

「それ、気持ちいい?」

 

一瞬。

 

空気が止まる。

 

髪が、ざわりと揺れた。

 

「……楽しい、わけ……ない……」

 

低い声。

 

掠れ、歪み、それでも確かに“少女”の声。

 

その瞬間。

 

スクナが踏み込む。

 

「なら終わりだな!」

 

爆発的な加速。

 

拳が唸る。

 

だが――

 

髪が動いた。

 

無数の黒い束が、壁のように広がる。

 

ドンッ!!

 

衝突。

 

スクナの拳を受け止め、逆に弾き返す。

 

「チッ……硬ぇな!」

 

その隙に、髪が蛇のように襲いかかる。

 

だが――

 

「させません」

 

美奈子の呪符が光る。

 

「オン・バザラ・ダトバン!」

 

展開された護符が、黒髪を焼くように弾く。

 

一瞬、動きが鈍る。

 

そこへ――

 

「捕まえた」

 

美和の背後に、何もない空間が“歪む”。

 

不可視の腕。

 

六本。

 

同時に伸び、黒髪を拘束する。

 

ぎし、と音が鳴る。

 

「動き、止めるよ」

 

しかし――

 

「……足りない」

 

ぼそり、と。

 

次の瞬間、髪が“増えた”。

 

いや、分裂した。

 

拘束をすり抜け、逆に美和の腕へ絡みつく。

 

「うわっ……!」

 

動きが鈍る。

 

「力、抜ける……これ……!」

 

柳沢が静かに言う。

 

「奪っているんだ。筋力、バランス感覚、反射……“身体操作そのもの”を」

 

そのとき。

 

一歩、前に出た影があった。

 

紗奈。

 

「……わたくしが参りますわ」

 

空気が、変わる。

 

背が――伸びる。

 

いや、本来の“高さ”へ戻る。

 

圧倒的な霊圧。

 

空間が軋む。

 

黒髪が、一瞬だけ揺らいだ。

 

「同じ“都市の怪異”として……見過ごせませんわ」

 

ゆっくりと手を上げる。

 

その瞬間、空間が歪み――

 

一歩で距離を詰めた。

 

怪力。

 

黒髪ごと、澪の体を掴み上げる。

 

「おやめなさい」

 

その声は、静かで――絶対的だった。

 

「あなたは“見られるため”に、歪んだのではないでしょう?」

 

沈黙。

 

抵抗が、止まる。

 

柳沢が近づく。

 

「白石澪」

 

今度は、はっきりと名前を呼ぶ。

 

「君は、何を望んでいた?」

 

長い沈黙。

 

そして――

 

「……ちゃんと……見てほしかった……」

 

ぽつり、と。

 

その言葉と同時に。

 

黒髪が、崩れた。

 

ばさり、と地面に落ちる。

 

異様な関節の動きが止まり、体が人間の形に戻っていく。

 

紗奈が、そっと手を離す。

 

そこに残ったのは――

 

泣き崩れる、一人の少女だった。

 

こうして悪皿は白石澪から離れた

 

それは、静かに始まった。

 

誰にも気づかれない場所で。

 

あの夜、崩れたはずの“黒髪”の一部が、確かに残っていた。

 

床に落ちた一本。

 

誰も気づかず、誰も拾わなかったそれは――

 

ゆっくりと、這った。

 

まるで意思を持つように。

 

そして、向かった。

 

“あの部屋”へ。

都内高級ホテルの最上階。

 

オリンピック選考の役員たち、岸和田、城島、桑田がいた。

 

シャンデリアの光、グラスの音、笑い声。

 

「いやぁ、今年はいい人選でしたな」

「話の分かる選手で助かりましたよ。白石澪の時ははちょっとレイプっぽくなっちゃいましたからね。」

「今回の娘は白石の代わりに代表入りさせてやると言ったら、喜んで体を開くことを承諾しましたよ」

濁った笑い。

 

グラスがぶつかる。

 

その中心に、一人の若い女性がいた。

 

代表入りを果たした新体操選手。

 

だがその目は、どこか虚ろだった。

 

「ほら、君も飲みなさい」

「君のおかげで、我々も助かっているんだから」

肩に置かれる手。

逃げ場はない。

 

そのとき。

 

彼女の足元で――

何かが動いた。

黒い、細いもの。

糸のような。

髪のような。

それは音もなく、彼女の足首に絡みついた。

 

ぴくり、と彼女の体が震える。

 

「……あれ……?」

 

次の瞬間。

 

ぶつり、と音がした。

 

彼女の視界が、一瞬で反転する。

 

床が天井に、天井が床に。

 

体が勝手に動く。

 

「え……なに……?」

 

誰も答えない。

 

いや――

 

“何か”が、答えた。

 

耳元で。

 

「――ねえ」

 

ぞわり、と全身が粟立つ。

 

「あんたら、こんなことして気持ちいい?」

 

その声は、彼女のものではなかった。

 

もっと冷たく。

 

もっと、歪んでいた。

 

「やめ……て……」

 

体が、跳ねる。

 

床から、垂直に。

 

ありえない高さへ。

 

ドンッ!!

 

天井すれすれで体を折り、回転し、着地する。

 

ヒールのままで。

 

バランスを崩さない。

 

完璧な――異常。

 

「な……何だ!?」

 

ざわめき。

 

だが次の瞬間。

 

彼女の体は、笑った。

 

口が裂けるように。

 

「ねえ……もっと見てよ」

 

そして――

 

始まった。

 

それは“演技”ではなかった。

 

破壊だった。

 

机を蹴り飛ばし、壁を蹴り、柱を駆け上がる。

 

人間の限界を超えた動きで、空間を跳び回る。

 

黒い髪が――増えていく。

 

彼女の頭から。

 

いや、違う。

 

どこからともなく、湧き出るように。

 

それは意思を持ち、伸び、絡みつく。

 

「う、うわあああ!!」

 

最初に捕まったのは、年配の岸和田だった。

 

黒髪が首に巻きつく。

 

ぎり、と締まる。

 

「や、やめ……!」

 

持ち上げられる。

 

空中へ。

 

そのまま――

 

叩きつけられた。

 

骨が砕ける音。

 

悲鳴。

 

逃げ惑う城島と桑田

 

だが、逃げられない。

 

ドアが――開かない。

 

「どうして……」

 

桑田が呟く。

 

その答えのように。

 

彼女が、ゆっくりと振り向いた。

 

髪の隙間から覗く目。

 

それはもう、人のものではなかった。

 

「だって……あなたたち……」

 

一歩、踏み出す。

 

「奪ったでしょ?」

 

次の瞬間。

 

髪が、爆発的に広がる。

 

無数の黒い束が、蛇の群れのように蠢き、襲いかかる。

 

「ぎゃああああ!!」

 

腕を絡め取られ、引きちぎられるような痛み。

 

足を掴まれ、床に叩きつけられる。

 

逃げようとした城島は、壁に貼り付けられ、そのまま――

 

ぐしゃり、と潰された。

 

音がする。

 

骨の音。

 

肉の音。

 

桑田が泣き叫ぶ

「た、助けて……!」

 

その声に、彼女はゆっくりと近づく。

 

ヒールが、血で濡れている。

 

「助けて……?」

 

くすり、と笑う。

顔を近づける。

その瞬間。

 

その男の体が、びくん、と跳ねた。

 

何かが――抜ける。

 

目の光が消える。

 

そのまま崩れ落ちる。

 

生きている。だが――

もう立てない。

もう、何もできない。

 

数分後。

会場は、静まり返っていた。

動く者はいない。

ただ、壊れた男たちが転がっているだけ。

その中心で。

彼女は、ゆっくりと回る。

そして――

ふっと、止まった。

黒髪が、音もなく消えていく。

その場に残ったのは――

気を失った、一人の選手だった。

 

 

後日。

 

事件は「原因不明の集団事故」として処理された。

 

だが、関係者は全員――

 

再起不能。

 

表舞台から、完全に姿を消した。

 

都内の体育館。

 

静かな朝。

 

白石澪は、フロアに立っていた。

 

審査員。

 

観客。

 

そして――公平な空気。

 

もう、裏はない。

 

柳沢 昂は、観客席の隅で静かに見ていた。

 

その隣に、ゼミの面々。

 

「……始まりますね」

 

美奈子が呟く。

 

音楽が流れる。

 

澪が、動く。

 

以前よりも、力強く。

 

以前よりも、しなやかに。

 

迷いがない。

 

誰にも奪われない動き。

 

スクナが小さく笑う。

 

「いいじゃねぇか」

 

美和が頷く。

 

「うん、速いし、綺麗」

 

紗奈は目を細める。

 

「ええ……これは、選ばれますわね」

 

演技が終わる。

 

静寂。

 

そして――

 

拍手。

 

純粋な拍手。

 

結果は、すぐに出た。

 

合格。

 

正規選考通過。

 

オリンピック代表候補。

 

澪は、静かに頭を下げた。

 

その目に、もう迷いはない。

 

柳沢は、ゆっくりと立ち上がる。

 

そして、いつものように呟いた。

 

「怪異は、常に我らの傍にある」

 

わずかに微笑む。

 

「だが――それがすべてを決めるわけではない」

 

フロアでは、澪がもう一度、リボンを握り直していた。

白い軌跡が、空を描く。

今度は、誰にも歪められない。

まっすぐな、未来へと。

 

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