「エロ怖」日本の怪異を訪ねて 怖くてドエロい短篇集⭐️イラスト付き 作:みなぽん
天井下がり
――憧れの田舎暮らし、その家には何かがいる。
十月の終わり。
山あいの小さな集落に、一台の白いミニバンが入ってきた。
舗装道路は途中で途切れ、車輪が踏みしめるのは、雨に濡れた土と落ち葉だった。左右には黄金色の稲を刈り取った田んぼが広がり、その向こうには、杉の木立が黒々と連なっている。
「うわあ……すごい!」
助手席から身を乗り出したのは、三十四歳の母親、真由美だった。
「見て、あなた。あの山、すぐそこじゃない。空気も全然違うわ」
運転席の健司は、満足そうに笑った。
「だろ? これで念願のスローライフだ。都会のマンションで毎日満員電車に揺られる生活ともおさらばだよ」
後部座席では、十五歳の娘、結衣がスマートフォンを片手に、窓の外を眺めていた。
「……コンビニ、どこ?」
「おいおい、着いて第一声がそれかよ」
「だって、さっきから三十分くらいコンビニ見てないんだけど」
「車で十五分も走ればあるって、不動産屋さんが言ってただろ」
「それ、近いって言わないから」
結衣はため息をついた。
彼女にとって、田舎暮らしは父親の勝手な夢だった。
父の健司は、都内の会社に勤める会社員だった。三十五歳。数年前から仕事の忙しさと都会の喧騒に疲れ、自然に囲まれた暮らしに憧れるようになった。
母の真由美も、家庭菜園や手作りの食事に夢を膨らませ、移住には賛成した。
結衣だけが最後まで反対していたが、両親の熱意には勝てなかった。
築八十年の古民家。広い庭。裏手には小川が流れ、家の前には小さな畑まである。
家賃は都内のマンションの半分以下。
これなら、父親が会社を辞めずに済む範囲で、少しずつ理想の暮らしを実現できる。
少なくとも、三人はそう信じていた。
やがてミニバンは、集落の奥にある一軒の家の前で止まった。
黒ずんだ瓦屋根。風雨にさらされた板壁。玄関脇には、太い柿の木が立っている。
縁側のガラス戸には、庭の木々がぼんやりと映っていた。
「うん。写真で見るより、ずっといいな」
健司はエンジンを切った。
その瞬間だった。
家の中から、何かが軋む音が聞こえた。
――ミシッ。
三人とも、動きを止めた。
「……今の、なに?」
結衣が顔を上げる。
健司は家を見つめた。
「古い家だからな。木が鳴ったんだろ」
「そうね。ほら、荷物を運びましょう」
真由美が明るく声をかけた。
三人は車を降りた。
誰も気づかなかった。
玄関の磨りガラスの向こう側に、ほんの一瞬だけ、異様に細長い影が映ったことに。
その影は、人間の背丈をはるかに超えていた。
そして、三人が玄関へ向かうと、音もなく消えていた。
*
家の中は、思ったよりもきれいだった。
不動産屋が手配した清掃業者が入ったらしく、床や畳に目立つ汚れはない。古い木材の匂いに、かすかな畳の香りが混じっていた。
玄関を上がると、広い土間があり、その先に居間がある。
居間には大きな座卓が置かれ、奥には床の間。廊下の左右には和室が並び、天井の高い板張りの廊下が家の奥へと続いていた。
「広いなあ……」
健司は感心したように見回した。
「これなら、友達を呼んでバーベキューもできるぞ」
「私は呼ばないけど」
「結衣、お前なあ」
「だって、みんな東京にいるし」
結衣はスマートフォンを見つめたまま、二階へ続く階段を上った。
この家には二階もある。
ただし、階段は急で、踏み板は古く、上がるたびにギシギシと音がした。
二階には三つの部屋があった。
南側の部屋は日当たりがよく、結衣の寝室にする予定だった。隣は物置。北側の部屋は窓が小さく、昼間でも薄暗かった。
「……ここ、なんか嫌だな」
結衣は北側の部屋の前で足を止めた。
天井が妙に高い。
いや、正確には、部屋の中央部分だけが不自然に高く、壁際へ向かって低くなっているように見える。
古い家だから、こんな造りなのだろうか。
結衣はスマートフォンのライトを点け、天井を照らした。
梁が何本も渡っている。
黒ずんだ木材。染みのような模様。ところどころに蜘蛛の巣が張っている。
そして、その梁の間に。
何か、黒いものが挟まっていた。
「……え?」
結衣は目を凝らした。
黒いものは、木材の隙間に押し込まれた布のようにも見えた。
しかし、よく見ると違う。
それは、髪の毛だった。
大量の、長い黒髪。
梁の向こう側から、細い糸のように垂れ下がっている。
「うそ……」
結衣は一歩、後ずさった。
そのとき、背後から母の声がした。
「結衣? どうしたの?」
「お、お母さん。これ……」
振り返って、もう一度天井を見た。
黒髪は消えていた。
そこには、古びた梁と染みのついた天井板があるだけだった。
「なに?」
「……いや。なんでもない」
結衣は首を振った。
見間違いだ。
引っ越しで疲れているのだ。
そう思うことにした。
*
その夜、三人は居間で鍋を囲んだ。
引っ越し初日ということもあり、食材は途中のスーパーで買ったものだ。白菜、長ねぎ、豚肉、豆腐。土鍋からは白い湯気が立ち上り、醤油と出汁の香りが部屋いっぱいに広がっていた。
「いやあ、最高だな」
健司は満足そうにビールを飲んだ。
「こういう暮らしがしたかったんだよ。窓を開ければ山が見える。夜は静かだし、空気はうまいし」
「虫が多いけどね」
結衣が箸で白菜をつつく。
「まあ、それは慣れるさ」
「あと、家が寒い」
「それも古民家の味だ」
「お父さん、何でも味って言えばいいと思ってるでしょ」
真由美が笑った。
「でも、本当に静かね。都会じゃ、夜でも車の音が聞こえるもの」
確かに、静かだった。
あまりにも静かだった。
テレビを消すと、冷蔵庫のモーター音すら、やけに大きく聞こえる。
外では風が吹いていた。
庭の木々が擦れ合う音。
どこか遠くで鳴く、鳥とも獣ともつかない声。
そして、時折。
家のどこかから、木が軋む音がした。
――ミシッ。
――ミシッ。
健司は気にしていなかった。
真由美も、古い家なのだから当然だと思っていた。
ただ、結衣だけは違った。
彼女は、鍋の向こうにある天井を何度も見上げていた。
居間の天井は、黒い梁がむき出しになっている。
照明の光が届かない梁の上側は、深い闇に沈んでいた。
その闇が、どうにも気になった。
まるで。
そこに、何かが隠れているような。
「結衣、どうしたの?」
「……ううん」
結衣は目を伏せた。
「なんでもない」
そのときだった。
頭の上で、何かが擦れる音がした。
――ズ……。
三人は箸を止めた。
音は、天井の上から聞こえた。
――ズ……ズズ……。
重たい何かが、梁の上を這っている。
そんな音だった。
「……ネズミ?」
真由美が小さく言った。
健司は天井を見上げた。
「古い家だからな。屋根裏にいるのかもしれない」
「大きくない?」
結衣の声は、かすれていた。
音が止まった。
三人は、じっと天井を見つめた。
しばらくして、健司が肩をすくめた。
「まあ、明日、不動産屋に聞いてみるよ」
彼は再び箸を取った。
真由美も、ほっとしたように笑った。
しかし、結衣は箸を取れなかった。
天井の梁。
その最も暗い場所に。
何かが、逆さまにぶら下がっているように見えたからだ。
それは、黒い塊だった。
顔のようなものがある。
いや、顔ではない。
闇の中に、白いものが二つ並んでいた。
目だ。
結衣は瞬きした。
次の瞬間、それは消えていた。
「……っ!」
声を上げそうになり、結衣は慌てて口を押さえた。
「結衣?」
「……なんでもない!」
彼女は立ち上がった。
「私、もう寝るから!」
逃げるように居間を出て、階段を駆け上がる。
その背中を、両親は不思議そうに見送った。
「思春期だなあ」
健司は笑った。
「環境が変わって疲れてるのよ」
真由美もそう言った。
二人は知らなかった。
娘が階段を上がりきった直後、居間の天井で何が起きたのかを。
梁の隙間から、一本の長い髪が垂れ下がった。
それは、ゆっくりと伸びた。
さらに伸びた。
床まで、あと少し。
黒い髪の先端が、畳の上を撫でる。
そして。
天井の闇の中から、何かが覗き込んでいた。
逆さまの顔。
血の気のない皮膚。
異様に細長い首。
顔の半分は、長い髪に隠れている。
その口元が、わずかに歪んだ。
笑ったように見えた。
*
結衣は、自分の部屋に飛び込むと、すぐにドアを閉めた。
鍵はなかった。
だから、近くにあった段ボール箱を引きずり、ドアの前に置いた。
自分でも馬鹿げていると思った。
十五歳にもなって、怪談を怖がっているなんて。
そもそも、天井から人間がぶら下がっているわけがない。
あれは影だ。
疲労と暗闇が見せた錯覚だ。
そう言い聞かせながら、布団に潜り込んだ。
スマートフォンを手に取り、友達とのグループチャットを開く。
『家、めっちゃ広い。でも田舎すぎて死ぬ』
送信すると、すぐに返信が来た。
『いいじゃん! 幽霊とか出そう笑』
結衣は画面を見つめた。
笑えなかった。
別の友達から、動画が送られてきた。
くだらない踊りの動画だった。
それを見ているうちに、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
時計を見る。
午後十時四十七分。
そろそろ寝よう。
そう思ったときだった。
天井から音がした。
――コツ。
結衣の指が止まった。
――コツ、コツ。
木を指先で叩くような音。
真上から聞こえてくる。
結衣はゆっくりと顔を上げた。
部屋の天井は白い壁紙で覆われている。古い染みがいくつかあるものの、先ほどの黒髪など見当たらない。
音も止まった。
「……気のせい」
結衣はスマートフォンを置いた。
布団を頭までかぶる。
すると今度は、別の音がした。
――ズ……。
何かが、天井の裏側を滑っている。
――ズズ……。
音は、部屋の中央へ移動していた。
結衣は呼吸を止めた。
屋根裏に何かいる。
ネズミかもしれない。
大きなネズミ。
そうだ。大きなネズミなのだ。
しかし、音は妙だった。
屋根裏を走り回る動物の音ではない。
もっと遅い。
もっと重い。
何かが腹ばいになり、天井の裏を這いずっているような音だった。
――ズ……ズズ……。
そして、ぴたりと止まった。
結衣の頭の真上で。
長い沈黙が続いた。
布団の中で、結衣は唇を噛んだ。
出ていこうか。
両親の寝室に行こうか。
けれど、もしも何もなかったら。
父に笑われる。
母に心配される。
そんなことを考えているうちに、音が聞こえなくなった。
やがて結衣は、少しずつ瞼を閉じた。
疲れていたのだ。
気がつくと、眠りに落ちていた。
どれくらい経っただろう。
ふと、結衣は目を覚ました。
部屋は暗かった。
スマートフォンの画面を点ける。
午前二時十三分。
喉が渇いていた。
水を飲もう。
結衣は布団から起き上がった。
その瞬間、何かがおかしいと気づいた。
部屋の中が、妙に狭く感じる。
天井が近い。
いや、天井そのものが低くなっているわけではない。
ただ、圧迫感がある。
頭の上に、何かがいる。
そんな気がした。
結衣はスマートフォンのライトを点けた。
白い光が天井を照らす。
染み。
木枠。
壁紙。
何もない。
ほっと息を吐き、視線を下ろそうとした。
そのとき。
天井の隅に、黒いものが見えた。
髪の毛だった。
一本ではない。
何十本、何百本という黒髪が、天井の隙間から垂れ下がっている。
「……え?」
結衣はライトを向けた。
髪の毛は、そこから生えているのではなかった。
天井の向こう側から、押し出されているのだ。
その奥に。
何かがいる。
結衣は動けなかった。
黒髪の束が、ゆっくりと揺れた。
風などない。
窓は閉じている。
それなのに、髪の毛は一本一本が意思を持つように、じわじわと下へ伸びてきた。
やがて、髪の隙間から白いものが覗いた。
皮膚だった。
青白く、湿った皮膚。
額。
眉。
そして、片方の目。
白目の多い、濁った眼球。
その目が、天井の隙間からこちらを見ていた。
結衣は悲鳴を上げようとした。
声が出なかった。
目を逸らせない。
眼球が、ゆっくりと動いた。
右へ。
左へ。
まるで、結衣の顔を確かめるように。
その目が、ぴたりと止まった。
結衣と目が合った。
次の瞬間。
天井の隙間が、ぐにゃりと歪んだ。
木材が伸びたのではない。
天井が、柔らかい肉のようにたわんだのだ。
そこから、顔が降りてきた。
髪に覆われた男の顔。
首が異様に長い。
その顔が、ゆっくり、ゆっくりと天井から垂れ下がってくる。
肩は見えない。
胴体もない。
ただ、長い首だけが、暗闇から伸びている。
結衣は後ずさった。
背中が壁にぶつかる。
逃げ場がない。
男の顔は、天井から三十センチほどのところで止まった。
そして、口を開いた。
歯が見えた。
黄色く変色した、細かい歯がびっしりと並んでいた。
笑っていた。声もなく。結衣を見つめながら。
やがて、その唇が動いた。
「……みぃ……つけた」
かすれた声だった。
まるで、何十年も使われていなかった喉から、無理やり言葉を絞り出したような声。
ずるり、長い舌が彼女の頬を舐めまわす。細い手は伸びて彼女の乳房に触れてくる。
「いやぁ、、」恐怖で声が出ない。
ひんやりした手がパジャマのボタンを外していく。そして長い舌が彼女の唇を割って、口の中に入ってくる。粘りつく唾液が喉を焼く。
彼女の股間がベタついてくる。そして黒い髪の男の右手が彼女のその部分を執拗に弄んでいる。乳首が硬くなり、乳房に異常に血が流れているのがわかる。そして乳首を吸われる。
彼女の秘所は男の舌によって唾液まみれにされていく。
彼女は男に舐められている唇を舌で応えてしまう。
(おかしい、怖くて気持ち悪いのに逃げられない)気がつけば、彼女はベッドの上で全裸にされていた。そして天井から降りてきたものは、体の大半を既に床の上に下ろしていた。異常に胴体と首の長い人間のようなもの、長い体で巻きついて彼女の自由を奪い、敏感な部分を刺激してくる。そして指は肛門を、乳首には冷たい唇が吸いついている。
「いやぁぁぁ、離してぇ!」叫ぶが誰も助けてくれない。両親の寝室は1階だからか。長い手は蛇のように体のどこへでも絡みついてくる。首筋、唇、乳房、へそ、腰、性器、肛門、脚、足裏、手、その長い舌がすべてを舐め尽くす。
「たすけ、、て、、」彼女は気を失いかけた。そして長い指が膣に入ってきて、舌が唾液を塗っていく。そして指は3本になりどんどん穴を押し拡げてくる。
「やめてぇ、あそこが裂けちゃうぅ!」叫ぶ彼女の手のひらに熱く長いものが押しあてられた。触手のような生殖器だ。人間のそれとは比べ物にならない大きさ。
(こんなの無理ぃ!)彼女は力の限り抵抗した。
「痛い、やめて!」泣き叫ぶ彼女の腰をその生物は押さえ、大きく口を開ける。その牙が彼女の首に食い込んできた。
「ぎゃぁ!」痛みと共に意識が朦朧としてくる。そのまま彼女は気を失ってしまった。
気がつくと朝だった。彼女は裸でベッドの上に横たわっていた。全身に赤い痣ができている。天井をみると天井に人一人通れるぐらいの穴が開いており、そこから太陽の光が差し込んでいる。昨日の出来事は現実なのか、夢なのか。
ベッドの横に彼女は黒髪の長い人形を発見した。髪は長く、服も来ていない全裸の男の人形。そして手に持った彼女の体に巻きついてくる。
「何これ?」恐怖に身震いする彼女。昨日と同じように舌が耳を這ってくる。
「やめてぇ!」叫ぶ彼女の口は塞がれ、また乳首を吸われていく。
彼女は必死に抵抗するが無駄だった。そしていつの間にか陰部から大量の愛液が漏れ出してくる。
彼女は抵抗し続けるが、徐々に快楽を感じ始めていった。そして遂に人形は挿入してくる。
「いやぁ!そんなの入らないぃ」泣き叫ぶ彼女を嘲笑うようにそれは挿入されていく。最初は痛かったが次第に慣れていき、快感さえ感じ始めていた。そしてついに全て入ってしまった。「全部入っちゃった、、」呆然とする彼女の頭の中に男の声が響いてくる。(孕め!孕め!孕め!孕め!孕め!孕め!孕め!)そう言うと異形は激しく動き出す。そして子宮口まで届いてしまいそうなほど突かれる。(お願い、おかしくなっちゃう)しかし快楽の方が強くなっていき、意識が飛びそうになる。
(孕め!孕め!孕め!孕め!孕め!孕め!孕め!)「いやぁイク❤️」
すると突然何かが出され、子宮内に入り込んでいくのを感じた。(嘘!?中に出された!?)
そして長い性行為が終わると、彼女は気を失った。
翌朝、結衣は冷たい汗をかいて目を覚ました。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、畳の上に白い帯を作っている。
(夢……だったの?)
体を起こすと、パジャマは乱れてはいたが、着ていた。体に残る赤い痣も消えている。天井を見上げる。そこには穴など開いておらず、古びた壁紙が張られた平らな天井があるだけだ。
(やっぱり、夢……)
結衣は胸をなでおろした。しかし、あの触感、冷たい指の温度、耳元で囁かれた低い声は、あまりにも生々しく記憶に残っていた。昨夜の恐怖が嘘のように日常が戻ってきた安堵と、まだ心の奥底に鎮座する不安がない交ぜになり、結衣は呆然と座り込んでいた。
階下から漂ってくる味噌汁の匂いに、ようやく結衣は現実に引き戻された。
居間に行くと、父の健司がスーツ姿で朝食を済ませているところだった。
「おはよう、結衣。顔色が悪いぞ。やっぱり環境が変わって寝付けなかったか?」
「うん……ちょっとね」
「今日から俺は東京だ。週末はリモートで仕事をするから、また来るよ。それまで母さんを頼むな」
健司はそう言って、心配そうに結衣の頭を撫でた。白いミニバンで家を出ていく父の背中を見送ると、広い家の中に取り残されたような寂しさと、男手がなくなった不安が込み上げてきた。
「結衣、何ボーッとしてるの? ご飯にしよう」
真由美の明るい声が響く。彼女はすでに農作業用のジャージに着替え、庭の草むしりを終えてきたらしい。健康的な笑顔を見せる母を見て、結衣は少し安心した。この家に暮らすことには母も賛成したのだ。きっと自分が怖がりすぎているだけだ。
しかし、日が沈み始めると、再び結衣の心に不安が忍び寄った。
窓の外は急速に闇に染まっていく。山の稜線が黒い影となり、家全体を包み込もうとしているようだった。
「ねえ、お母さん」
夕食の片付けをしながら、結衣は切り出した。
「今日は……お母さんの部屋で寝てもいい?」
真由美は手を止めて、少し驚いた顔をした。
「どうしたの? まだ怖いの?」
「うん……やっぱり一人は嫌なの」
「しょうがないわねえ。いいわよ。お父さんもいないし、私も寂しかったの」
真由美はくすくす笑いながら承諾してくれた。
夜になり、二人は真由美の布団に入った。
一階の和室だ。隣に母の温かい体温を感じると、不思議と心が落ち着いてくる。真由美はすぐに規則正しい寝息を立て始めた。結衣もその安心感に包まれ、やがて意識が薄れていった。
どれくらい時間が経っただろうか。
結衣はふと目を覚ました。
部屋は深い闇に沈んでいる。時計のデジタル数字が青白く光っている。午前二時を過ぎていた。
(またこの時間だ……)
全身に冷たいものが走った。動こうとした。
動かない。
(金縛り……!)
指一本動かせない。声も出ない。呼吸さえも浅くなっていく。
恐怖で心臓が早鐘を打つ中、結衣は異変に気づいた。
隣の布団から、奇妙な音が聞こえるのだ。
クチャ……クチャ……
濡れた何かが擦れ合うような、粘着質な音。そして、甘い吐息。
「んっ……あぁ……」
それは母の声だった。しかし、結衣が聞いたことのないような、甘く濁った声だった。
結衣は必死に目だけを動かして横を見た。
暗闇の中に目が慣れてくるにつれ、信じられない光景が浮かび上がってきた。
真由美の布団は大きくめくれ上がり、彼女の裸体が露わになっていた。
そしてその上に。
あの異様に長い体を持つ『何か』が絡みついていた。
黒い髪の塊のような頭部が真由美の胸元にあり、長く伸びた舌が彼女の乳首を執拗に舐め回している。異様に長い指は太腿の内側を撫で上げながら、股間を弄んでいた。
「あぁん……だめ……そんなとこ……」
真由美は快楽に身をよじらせていた。本来なら恐怖で叫ぶはずの状況なのに、彼女の顔には恍惚とした表情が張り付いている。
天井下がりの冷たい手が真由美の秘所に侵入すると、彼女の腰がビクンと跳ね上がった。
「ひっ! あぁっ! 来る……来るぅっ!」
母の痴態を間近で見せつけられながら動けない結衣の目から涙がこぼれ落ちる。あの怪物は結衣だけでなく、母をも捕らえていたのだ。
「いやぁ……おかしくなっちゃう……おかしく……あぁぁぁっ!」
真由美の悲鳴にも似た喘ぎ声が部屋中に響き渡る。天井下がりの体は蛇のように彼女に巻き付きながら、さらに深く激しく責め立てていた。
結衣はただただ恐怖し、無力な自分を呪うことしかできなかった。そして視界の端で、天井下がりが真由美の首筋に噛み付くのが見えた。母の目が見開かれ、白目を剥いて激しく痙攣する。
真由美の痙攣が収まると同時に、彼女の体に異変が起きた。
天井下がりの長い舌が首筋から離れると、真由美はむくりと起き上がった。その動きは人間のそれではなかった。関節が軋むような不自然な角度で体を捻り、四つん這いになる。
「お母さん……?」
結衣が震える声で呼びかけたが、真由美の反応はなかった。彼女の瞳は虚ろで、焦点が定まっていない。白目の部分が不気味に潤んでいた。
天井下がりは真由美の背後に回り込むと、異様に長い指で彼女の腰を掴んだ。その瞬間、真由美が獣のような唸り声を上げた。
「あぁぁ……熱い……お腹の中が……熱いのぉ……」
彼女はケモノのように腰を振り始めた。自ら天井下がりの異形の生殖器を受け入れんとするかのように、激しく前後させる。その動きは常軌を逸していた。人間離れしたスピードで腰をくねらせ、背中を弓なりに反らせては快楽を貪る。
「いい……いいわぉ……もっと……もっと奥までぉ……」
真由美の口から漏れる言葉は、もはや母の言葉ではなかった。本能のままに快楽を求めるメスの声だった。だらりと垂れた舌から涎が糸を引き、汗と何かの体液で濡れた体が闇の中で妖しく光る。
天井下がりは低く笑うと、その異形の生殖器を真由美の秘所に押し当てた。異常な太さと長さのそれが、濡れそぼった肉穴をこじ開けていく。
「ぐっ……あぐぅぅぅっ!」
真由美の口から悲鳴が漏れたが、それは痛みだけではない。快楽の悲鳴だった。彼女の腰は止まらない。むしろ侵入してくる異物をさらに奥へと迎え入れようと、ケモノのように激しく腰を打ち付ける。
「入ってくる……お腹の中に……何かが入ってくるぅぅ! すごい……すごいわぁぁ!」
パン!パン!パン!
肉と肉が打ち合う卑猥な音が静かな家の中に響き渡る。真由美は自ら腰を振りながら天井下がりの首に腕を絡めた。その表情は完全に恍惚としていた。
結衣は目の前で繰り広げられる光景に戦慄した。優しくて健全だった母親が、目の前で異形の怪物と交わり、ケモノのように腰を振っている。その事実が結衣の心を絶望の淵へと突き落とした。
「お母さん! やめて! お願いだからやめてぇ!」
叫ぼうとしたが、金縛りで声が出ない。ただ涙を流して見つめることしかできなかった。
真由美の喘ぎ声はどんどん大きくなり、獣の遠吠えのように響き渡った。
「あぁぁぁ! 壊れる! お腹が壊れちゃうぅぅ! でも……でも気持ちいいぃぃ! もっと! もっと犯してぇぇぇ!」
天井下がりは真由美の腰を強く引き寄せると一気に最奥まで突き上げた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
真由美の背中が弓なりに反り上がり、白目を剥いて激しく痙攣した。同時に天井下がりも低い唸り声を上げると真由美の胎内に大量の何かを吐き出した。
真由美の下腹部が不自然に膨らんでいくのが見えた。異形の種が注ぎ込まれていく。彼女は痙攣しながらもケモノのように腰を振り続けその全てを受け止めていた。
やがて真由美はガクンと力を失い布団の上に倒れ込んだ。
「お母さん……お母さん……」
真由美の体は汗と体液でぐっしょりと濡れていた。彼女はうっすらと目を開け虚ろな瞳で結衣を見た。
「……結衣…逃げて…」
母の掠れた声が、凍りついた空気を切り裂いた。
その言葉が呪いを解いたのか、あるいは天井下がりが新たな獲物に興味を移したのか、結衣の体に掛かっていた見えない重圧がふっと消えた。
次の瞬間、天井の闇から垂れ下がっていた異形の長い腕が、音もなく結衣へと伸びてきた。
「ひっ……!」
結衣は悲鳴を上げる暇もなく、本能的に身を翻した。
掴みかかる黒い指が、結衣の髪の先を掠める。冷たい湿った感触が首筋を撫で、背筋に悪寒が走った。
「いやぁぁぁぁっ!」
結衣は転がるようにして母の部屋を飛び出した。廊下を駆け抜け、階段を駆け下りる。古い板が悲鳴を上げる音と、背後から迫る「ズズズ……」という湿った這う音だけが耳を支配する。
玄関の引き戸を乱暴に開け放ち、結衣は夜の闇へと飛び出した。
冷たい夜気が肺を刺す。十月の終わりの夜風は、すでに冬の気配を孕み、半袖のパジャマ姿の結衣の肌を容赦なく凍らせた。
足元には刈り取りを終えた田んぼが広がっている。収穫後の湿った土の匂いと、稲藁の腐敗臭が鼻をつく。
助けを求める場所は一つしかない。集落で一番近い隣家、高田さんの家だ。距離にして三百メートルほど。
「高田さーん! 助けて! 誰かぁ!」
叫ぼうとしたが、喉が引きつって声が出ない。ただの引きつった喘ぎ声しか漏れない。
結衣は裸足のまま、ぬかるんだ田んぼのあぜ道を走った。
泥が足に絡みつき、何度も転びそうになる。それでも必死に走った。
振り返ってはいけない。あれが追ってきているのがわかるから。
背後から聞こえるのは、自分の荒い息遣いと、風に揺れる藁の音だけ。いや、その奥で、かすかに木が軋むような音がする。
「ズ……ズズ……」
屋根の上を這っているのか、それとも長い腕を伸ばして追いかけてきているのか。想像力が恐怖を煽り、足がすくみそうになる。
暗闇の中、前方に微かな灯りが見えた。
高田さんの家だ。築八十年の古い日本家屋で、ご夫婦二人で暮らしているはずだ。
あと少し。あそこまで行けば、大人がいる。助けてもらえる。
結衣は最後の力を振り絞り、高田さんの家の庭先へと飛び込んだ。
「たす……」
助けを求める声を上げようとした瞬間、結衣の足首に冷たく硬いものが絡みついた。
「え……?」
見下ろすと、真っ暗な地面から伸びた黒い影のような腕が、結衣の足首を掴んでいた。それは人間のものではない。異様に長く、節くれだった指が蛇のようにねっとりと肌に食い込む。
「いや……来ないで……!」
必死に足を振りほどこうとするが、その力は信じられないほど強かった。
ズルリ。
足元から引きずり倒され、結衣は無様に泥の中に転がった。
冷たい泥水がパジャマを濡らし、全身を包み込む。
そして、上から降ってきた。
「ミシッ……」
月明かりに照らされた庭木の影から、天井下がりが音もなく降下してきた。
長い首が異様に伸び、髪に覆われた顔が結衣の目の前に突き出される。濁った白目が、獲物を捉えた捕食者のようにぎらついていた。
「みぃ……つけた」
乾いた声が耳元で囁かれると同時に、結衣のパジャマの上着が乱暴に引き裂かれた。
ボタンが弾け飛び、薄い布が夜風に舞う。
「やめて! 離して! 高田さーん!」
必死に叫び、隣家の玄関の方へ手を伸ばす。しかし、灯りは点いたままだが、反応はない。助けは来ない。この集落の闇は、あまりにも深い。
天井下がりの長い舌が、泥で汚れた結衣の頬を舐め上げた。ザラリとした感触と、カビ臭いような生臭い匂いが鼻を突く。
「あああっ……いやぁ……」
冷たい指が胸元を這い、無理やり乳首を摘み上げる。母がされていたのと同じ、執拗でねっとりとした愛撫。
「お母さんみたいに……お前も……孕む……」
怪物の声が頭の中に直接響くようだった。
足を広げさせようとする力が強すぎて、結衣の抵抗は虚しい。
泥濘の中で、冷たい異形の体が覆いかぶさってくる。
「お願い……誰か……助けて……」
涙と泥でぐしゃぐしゃになった顔で、結衣は空を仰いだ。
星のない空。ただ深い闇が広がっているだけ。
そして、太い異形の楔が、結衣の未熟な体を無慈悲に貫いた。
「あぐぅぅぅぅっ!!」
悲鳴が夜空に吸い込まれていく。
田んぼ道を渡る冷たい風だけが、結衣の絶望的な叫びをかき消していた。母と同じ宿命が、今まさに結衣の体に刻まれようとしていた。
「あぐぅぅっ!!」
泥濘に押し付けられ、冷たい土の感触が背中に食い込む。
それ以上の熱が、下腹部を焼き尽くそうとしていた。
人間のものとは思えない異形の楔が、結衣の未成熟な秘所を無理やりこじ開け、最奥まで打ち込まれたのだ。裂けるような痛みが脳髄を走り、視界が真っ白に弾けた。
「いだい…… やだ…… ひぎぃっ!」
助けを求める声は、すぐに悲鳴へと変わった。
天井下がりは容赦しない。
結衣の細い腰をガッチリと掴むと、腰を引き戻すようにして激しく打ち付け始めたのだ。
ズン! ズン! ズン!
重たい肉の塊が、結衣の体の奥底を砕くような勢いで突き上げてくる。
物理的な衝撃に耐えきれず、結衣の体は泥水の中で小舟のように揺さぶられた。パジャマの生地は泥にまみれボロボロになり、露わになった白い肌に冷たい泥が跳ねる。
「あぁっ! あぐっ! んんっ!」
息をする間も与えない猛烈なピストン。
ただの暴力ではない。その動きには、確実に雌を屈服させるためのねっとりとした執拗さがあった。
長い異形の体が蛇のように結衣に巻き付き、逃げ場を塞ぐ。冷たい指は胸の膨らみを鷲掴みにし、硬くしこった乳首を無慈悲に捏ね回した。
「いやぁ…… こんなの…… おかしくなっちゃう……!」
痛みと恐怖で泣き叫んでいたはずの結衣の声に、いつしか甘い響きが混じり始めた。
子宮の入り口という一番敏感な場所を、怪物の先端が正確に叩き続けている。打ち付けられるたびに背骨を駆け上がる痺れのような電流が理性を削り取っていく。
(お母さんも…… これで……)
視界の端に映る自宅の屋根。あの中で母はケモノのように腰を振っていた。
あんな恥ずかしい姿になっていたのか。
いや違う。あれは意志の力ではどうにもならない快楽の奔流だったのだと、今の結衣には痛いほどわかっていた。
ズチュ! ズチュ! ズチュ!
粘着質な水音が耳障りに響き始める。
結衣の体が異物を受け入れ始め、卑猥な愛液を分泌し始めたのだ。
怪物はそれを待っていたかのように、さらにピストンの速度を上げた。
「あぁぁっ! だめ! そこらめぇ! 壊れちゃうぅぅっ!」
頭を振り乱し拒絶しようとするが、腰は無意識に怪物の動きに合わせて揺れ始めていた。
人間としての尊厳が泥にまみれていく。
恐怖と嫌悪は確実に快楽へと塗り替えられていた。
「あつい…… おなか…… あついのぉ……」
結衣の瞳から光が消え始めた。
焦点が定まらなくなり、だらしなく口が半開きになる。
そこからは快楽に溺れるただのメスの顔だった。
天井下がりの長い舌が結衣の開いた口にねじ込まれ、口中を蹂躙する。
結衣はもう逃げなかった。むしろ自ら舌を絡め、その不気味な味を貪るように吸い返した。
「んっ…… んぅっ…… もっと…… もっとぉ……」
脳裏に響く怪物の命令。
『孕め』
その言葉がもはや呪いではなく至上の喜びへと変わっていく。
「はぁぁっ! きてぇ! おくまで! ぶちこめてぇっ!」
結衣は自ら足を大きく開き、襲いかかってくる怪物の腰に必死にしがみついた。
泥と汗と体液にまみれた体で、母と同じようにケモノのように腰を振り続ける。
理性の灯火は完全に消え失せた。ただ子宮の奥に注がれる熱だけを求めて喘ぎ叫ぶただの雌だった。
「あぁぁぁっ! イクッ! イクイクイクぅぅぅっ!!」
結衣は白目を剥き、泥の中で激しく痙攣した。
同時に天井下がりも低い唸り声と共に止めどないほどの汚濁を結衣の胎内へと注ぎ込んだ。
膨れ上がる下腹部。注がれる熱。
結衣は絶望の中で最高の歓喜を感じながら深い闇へと落ちていった。
翌朝。健司は疲れ切った体を引きずりながら、再びこの山あいの集落へと戻ってきた。
東京のオフィスでの激務を終え、終電に揺られ、始発に乗り継いできたせいでまぶたは鉛のように重い。
しかし、家族の待つ家を思うと足取りは自然と速くなった。
「ただいまー」
玄関の引き戸を開ける。
返事はない。
家の中はしんと静まり返っていた。
「おーい、真由美、結衣。帰ったぞー」
靴を脱ぎ、廊下を進む。
いつもなら朝食の匂いが漂ってくるはずの時間だが、今日は異様な静けさが支配していた。
居間の襖が少し開いていた。その隙間から薄暗い室内の様子が見える。
「なにやってんだ、寝坊したのか?」
健司は苦笑しながら襖を開け放った。
そして、その笑顔が凍りついた。
部屋の中は異様な光景だった。
薄暗い室内で、母娘が向かい合って座っている。
二人ともパジャマの上着は肌蹴、だらしなく胸を露出させていた。そして何より信じられないのは、その腹部が異様に膨らんでいたことだ。まるで臨月の妊婦のように、はち切れそうに膨張している。
「……な、なんだこれは……」
健司の口から掠れた声が漏れた。
恐怖よりも理解不能な状況への困惑が勝っていた。
二人は健司の声に反応してゆっくりと顔を向けた。
「あ、あなた……お帰りなさい」
真由美が言った。その顔は土気色で、目の下には濃い隈ができていた。しかし、その口元は妙に緩み、へらへらと笑っていた。
「お、お父さん……」
結衣も同じように笑っていた。焦点の合わない瞳で、見知らぬ人間を見るような目で父親を見つめている。
二人の手はそれぞれの膨らんだお腹を撫でていた。
クチャ、クチャと卑猥な水音が指の間から漏れている。
そしてその膨らんだお腹の中で、何かが蠢いているのがわかった。
「お、お前たち……どうしたんだ! 病院だ、病院に行くぞ!」
健司は震える手でスマートフォンを取り出そうとした。
その瞬間だった。
上から、音がした。
ギギギ……ギギギ……
見上げると、黒い梁の上から、ぬるりと何かが垂れ下がってきた。
それは長い黒髪に覆われた異形の頭部だった。逆さまになった顔が、ニタリと笑った。濁った白目が健司を捉える。
「ひっ……!」
健司は腰を抜かしそうになった。
怪物は天井からぶら下がったまま、細長い腕を伸ばし、母娘の肩を優しく撫でた。
すると二人はまるで暗示にかかったように、さらに深く笑みを浮かべ、怪物の腕に頬を擦り寄せた。
「いいでしょう? あなた。これが……これが私たちの赤ちゃんよ」
真由美が恍惚とした表情で呟く。
「お兄ちゃんよ。お腹の中で動いてるの。すごいでしょ?」
結衣も虚ろな目で続けた。
「うん。すごい……あったかいの……。もっと欲しい……もっと、孕みたい……」
健司は絶句した。
言葉がでない。頭が理解を拒絶している。
「な、なにを言ってるんだ……! お前たち正気か!」
その叫びを嘲笑うかのように、天井から声が響いた。
「クックック…… ヒヒヒヒ……」
人間のものとは思えない、湿った笑い声。
天井下がりの顔がさらに下に伸びてくる。
長い舌がべろりと出て、真由美と結衣の膨らんだ腹を交互に舐め回した。
母娘はその感触に身を震わせ、甘い声を漏らした。
「あぁん…… あなたも……あなたも私たちの家族……」
真由美は狂気じみた笑みを浮かべ、健司に手を差し伸べた。
「さあ、あなたもおいで。一緒に……一緒に、幸せになりましょう……」
天井からは不気味な笑い声が止まらない。
「ヒヒヒヒヒ…… ヒャヒャヒャヒャ……」
健司の足元から力が抜けていく。
目の前で繰り広げられているのは、完全な狂気と狂宴だった。
最愛の家族はもういない。
そこにいるのは、ただ怪物に孕まされ快楽に溺れるだけの雌だった。
「あぁ…… あぁぁぁ……」
健司は腰を抜かし、その場にへたり込んだ。
逃げなきゃ。逃げなきゃ。
頭ではそう思うのに体は動かない。
天井下がりの視線が、今度は確実に健司を捉えていた。
「ヒヒヒ…… あなたも…… 仲間入り……」
怪物の長い腕が、音もなく健司の方へと伸びてきた。