「エロ怖」日本の怪異を訪ねて 怖くてドエロい短篇集⭐️イラスト付き 作:みなぽん
南條美和 美奈子の同期 高校時代は、陸上部のエースだったスレンダーなスポーツ少女 ファッション雑誌の読者モデルを務める美形。明るく社交的な性格
八氏役紗奈〔はちしやく さな)謎の転入生、黒髪ロングの背の高い美少女、品の良い言葉遣いで、お嬢様風だが、大勢な食欲と可愛い少年に対して、淫らな視線を送る謎の存在。
柳沢先生シリーズ
「海から来るもの 海の禍(わざわい) ― 軒先の笊と黒い長物」
冬の日本海に面した、小さな集落。
山が海を呑み込むように迫り、わずかな斜面に家々がへばりついている。
柳沢先生は、スポーティで快活な南條美和、
そして最近、柳沢ゼミに加わった転入生――
長身で無口、黒髪ロングの 八氏役(はちしやく)紗奈 を連れて、
漁村の年中行事と禁忌について調査に訪れていた。
村には、冬至前後の数日間、「戸を閉め、軒に笊を吊るす」という習俗がある。
外に出ることは禁じられ、
その理由を聞こうとすると、村人たちは皆いっせいに口を閉ざした。
ようやく話してくれたのは、港で出会った中年の漁師・安達だった。
仕方なく、柳沢先生は居酒屋に連れ込み、酒を飲ませて美和の美貌とスキンシップと、
酒の力で聞き出したのだ。
ただし、彼は海の怪異について語ることだけは頑として拒み、顔色を変えた。
安達の語りは断片的で震えが混ざっていたが、その内容は、次のようなものだった
魔除けのため玄関に吊るされた笊。
村全体が戸を閉ざす理由。、夜の海から這い出す、黒煙のような巨大な怪異
軒先を覗き込む“顔のようなもの”。犬が錯乱し、振り返った友人が熱を出して倒れた。
そして、窓をじっと見つめる怪異。
語り終えた安達は、震える声で言った。
「あれは……マガモノだ。目ィ合わしたら、終わりじゃ……」
柳沢は、この怪異の正体が七人ミサキであると推察していた。
七人ミサキとは、海で亡くなった七人の怨霊の群れ。
元は時代を遡ること百年以上、漁村で起きた惨事が始まりだった。
――嵐の夜、七人の網元が欲に駆られ、禁じられた海域へと船を出した。
結果、全員が荒波に呑まれ、その遺体の一部も見つからなかった。
村人は彼らの強欲が招いた報いだと恐れ、慰霊の祭りを行ったが……
七人は黄泉へ還らず、この世に怨として残った。
七人ミサキは必ず列をなし、数が決して増減しない。
誰かを呪い殺せば、その死者が新たに列へ加わり、
代わりに一人が成仏して抜ける――「数を揃え続ける」化生である
そして、村人が魔除けとして笊を掲げるのは日本各地には「目の多いものは魔除けになる」という信仰がある。
笊の目は“多数の目”として怪異を牽制し、方向を狂わせるものとされるからだ。
そして日本の海村には、「海からの来るもの」の伝承が多く存在する。
対馬の“海坊主蛇”、能登の“アマメハギ、山陰の“波の下のもの”
いずれも共通するのは、
海の境界が曖昧になり、陸に“異界の存在”が干渉する日があるという思想である。
そして、l怪異の発する “耳鳴りのような声” と“強烈な生臭さ”。それは死霊が持つ共通の特徴だ。
柳沢は漁村の民宿で美和と紗奈に自説を披露しながら、宿の外側に監視用カメラを設置していた。
映像から、温度センサーまで、何らかの形で海の禍いの姿をとらえる作戦だ。
海風に揺れる古びた漁村の民宿 飯島旅館。
潮と干し網の匂いが入り混じり、遠くでカモメが鳴いている。
柳沢は机に広げた古文書を睨みつけ、眉を寄せていた。
「やはりこの村の伝承は、七人ミサキとの共通点が多いな。…」
「先生〜、こういう薄暗いところ、ちょっと怖いです……」
美和が、柳沢の袖をそっとつまんで揺らす。
その声は甘く、完全に“頼れる男性に甘えたいモード”だ。
「……おい美和君、調査中だぞ。」
「えぇ〜? だって先生のそばが一番安心するし……ふふっ」
にこにこと寄りかかってくる美和に、柳沢は顔をしかめた。
「…美和君は普段は優秀なのに、どうしてたまにだらしなくなるんだ」
「えへへ……先生が優しいからですよ〜」
そんな二人のやりとりを横目に――
反対側では、八氏役紗奈が畳の上に正座し、上品な笑みを浮かべていた。
「まぁ……美和さんは相変わらずでいらして。羨ましいことですわ…」
その声は貴族の娘のように柔らかく流麗。
しかしその手元はというと――
干物、煮干し、太巻き、いかの塩辛、村の猟師にもらった“浜で獲れた謎の貝の煮物”。
目の前に置かれたものを、次々と気品のある所作で食べ続けている。
長身黒髪美女の紗奈に漁師たちが分けてくれたものだ。
「紗奈、お前……それ全部食うつもりか」
「まぁ先生ったら。女性が食事を楽しむ姿を、どうしてそんなに咎められますの?
……ん〜。この塩辛、たいへんに素晴らしいお味ですわ」
ぱくっ、と上品に口に運びながら、さらに別の皿に手を伸ばす。
「いや、多すぎるだろ」
「量を気にするのは下品だと存じますわ」
完全に論破しにきている。
そのとき、集会所の入口から、地元の少年二人が顔を出した。
中学生くらいだろうか。日焼けした肌に、まだ幼い目。
「お、お客さん……これ、村長が持ってきてって……」
紗奈の箸が止まった。
次の瞬間、ほんのりと頬を赤らめ――
にっこり笑った。
どこか貴婦人のように、しかしどこか“いやらしい気配”を漂わせながら。
「まぁ……かわいらしいこと」
少年たちが思わず身をすくめる。
その目は、宝飾店で指輪を選ぶかのように、キラキラと輝いていた。
「ねぇ、あなたたち。ちょっとお名前、聞いてもよろしくて?」
「さ、紗奈君、やめなさい、仕事中ですよ」
「先生、私、こういう村の子って……本当に……むふふ……大好きですのよ」
言いながら、紗奈は口元を隠して笑う。
その笑顔は普段のお嬢様然とした雰囲気とはまったく異なり、
“狩る前の肉食獣”のように卑しくて妖艶だった。
「ひっ……! あ、あの、これ渡したんで失礼します!!」
少年たちは、お盆を置くと慌てて逃げていった。
「紗奈……君、子供たちが怯えていたぞ。あの態度はなんなんだ」
「先生。私、かわいい子を見ると……つい、食欲以外の欲も湧いてしまいますのよ。
もちろん、捕食の意味ではございませんけれど……ふふっ」
「紗奈、怖っ!」
美和が先生の後ろに隠れつつ言うと、
紗奈はくすくす笑い、また干物に箸を伸ばした。
「さて……食べ終えましたら、わたくしたちも七人ミサキの聞き込みをいたしましょう。
海の怨霊に対して、心身ともに満ち足りた状態で臨むべきですわ」
「食い過ぎて動けなくなるなよ……」
柳沢がため息をつくと、
美和が頬を膨らませてぎゅっと腕をつかんだ。
「せんせ〜、私にも紗奈くらい構ってくださいよ〜!」
「いや、私は仕事したいんだが……!」
三人のやりとりを、古い漁村の潮騒が静かに包んでいた。
彼らの調査期間中、民宿、飯島旅館で不満げな表情をしていたのは、飯島愛莉(あいり)と飯島菜穂子(なおこ)の姉妹だった。
漁師の父が海で亡くなったため祖母の家である飯島旅館に預けられた彼女たち。同級生たちの噂話で「海から来るものが、海で亡くなった者たちの霊である」と聞いてからずっと不機嫌だった。
「だったら、お父さんが私たちに会いたくて帰ってきてるかもしれないじゃん、それをみんなで扉を閉めて見ないようにするなんてひどいよ」妹の菜穂子が涙ぐんでいた。ー
村人が戸を固く閉ざし、軒に笊がぶら下がる中。祖母は二人に言った。
「今日は……絶対に外へ出ちゃいかんよ。海の“禍さま”が巡るけぇ……」
もちろん、聞く耳を持たない。
「夜におばあちゃんに内緒で海見に行こうよ。お父さんが大好きだった。お酒も持ってさ、、」
その夕方――柳沢先生らは調査でカメラを仕掛けているときに
二人が石段を降りて海へ向かう姿を見かけてしまう。
美和が言った。
「まずい……先生、あの子たち、海に向かっているよ。……!」
風は強く、海は夜に向かって異様に凪ぎ始めていた。
日が沈み、村が息を潜めた頃。
愛莉と菜穂子は、石段の下の駐車スペースに佇み、
真っ黒な海を眺めていた。宿から持ってきたお父さんが大好きな日本酒とおつまみ、
得体の知れない恐怖を感じながらも、もしかしたら父と会えるのではないかと、期待に胸をおどらせていた。
そのとき。
――ずる……ずる……
海面から、太い黒煙のようなものが盛り上がった。
愛莉
「……何、あれ……?」
菜穂子
「え……いや……」
月明かりに照らされ、
蛇のようにのたうちながら岸へ向かってくる。
同時に、
強烈な生臭さと、耳鳴りのような振動音が二人の鼓膜を打った。
菜穂子が震えながら愛莉の腕を掴む。
「ねえ、お姉ちゃん、l戻ろう……これやば……」
黒いものの顔には人の顔のような、しかし歪んだ“何か”があり、
吊るされた数々の笊を覗き込むように動いていた。
愛莉
「家の中を見てる……?」
菜穂子
「だめ! 目、合わしちゃ!」
しかし――遅かった。
黒い“顔”が、ふいに二人の方へ向いた。
愛莉の膝が崩れ落ちる。
菜穂子は涙を浮かべながら立ちすくんだ。
「お、お姉ちゃん……来る!」
七つの影は、海水と血混じりの滴を引きずりながら近づく
まるで獲物を選ぶように。
最前列の亡者がひしゃげた口を開いた。
「……返せ……かえせ……」
その声は波と一緒に押し寄せるように響き、
アスファルトの道がじわりと黒い水に染まっていく。
菜穂子が呆然と立ち尽くすと、愛莉が彼女を抱き寄せ叫んだ。
「来ちゃダメ!お父さん…!」
「菜穂子、逃げなきゃ、あいつらお父さんじゃない!」
しかし亡者の眼窩の奥には、確かな“怒り”が宿っていた。
何かを奪われた者の怨念――
そして二人に向けられた憎悪は、理由すらわからないほど深かった。
七体は同時に両手を伸ばし、姉妹へ襲いかかる。
黒い亡者たちの指が、姉妹の服を紙のように裂き散らした。
愛莉が必死に妹を庇おうと覆いかぶさったが、二匹目の亡者が背後から愛莉の両腕をねじり上げる。
「あぐっ……!」
関節が軋む音。その痛みに顔を歪める暇もなく、最初の亡者が愛莉の乳房を鷲掴みにする。
「っひ……!」
冷たい屍者の掌に押しつぶされるような感触。その指先から滲む生臭い海水が、肌を焼き焦がすように沁みる。
「愛莉姉ちゃんっ!」
菜穂子が悲鳴を上げようとした刹那、三匹目の亡者が小さな口を掌で塞いだ。
「んんっ……!」
四匹目は愛莉の脇腹から腰へと指を滑らせた。硬直した指が皮膚の上で虫のように蠢く。
「ひぅっ……!」
「返せ……返せ……」
亡者は繰り返しながら、愛莉の腹部を何度も撫で擦る。まるでそこに失われた命を探しているかのように。恐怖のあまり愛莉の下肢が勝手に痙攣した。
「や……やめ……!」
嗚咽と共に漏れる制止の言葉。だが亡者たちはまるで聞こえない。むしろ興奮したかのように動きが激しくなる。
五匹目が愛莉の首筋に顔を埋め、腐臭を帯びた息を吹きかける。
「っっっ!!」
吐き気が喉まで迫り上がる。妹が泣き叫ぼうとしているのに声が出せない絶望。
六匹目は愛莉の太腿を強引に割り開き、濡れた苔のように湿った舌で内腿を這い回った。
「んっ……ぁ…!」
氷と灼熱が同時に走るような衝撃。妹の悲鳴も自分の喘ぎも混ざり合い、判別できない。
(なぜ……こんなことに……)
愛莉の思考が白濁する。それでも本能的に妹を守らなければという意識だけが火傷のように残った。
「わ……私が相手をするからっ……! お願いっ……!」
涙混じりの懇願が飛び出した瞬間──菜穂子を押さえつけていた亡者が、突然妹の腕をねじ折る寸前まで力を込めた。
「いっだああぁぁッ!!」
「やめてぇっ!!」
愛莉の絶叫。
「返せ……もう一つ……」
亡者の呟きに愛莉は気づく。「もう一つ」──これは自分の快楽の程度によって決まる選別ゲームなのだ。
愛莉は唇を噛み締め、自分の中に忍び込む亡者の手指を受け入れるフリをした。恐怖を奥歯で噛み潰しながら下半身の緊張を少しずつ緩める。
「菜穂子は許して、こっち……気持ちいいから…私を犯して…早く来て……」
吐き気を堪えて発した媚びの声。亡者たちは満足したように一斉に蠢動を強めた。
その代償に菜穂子が解放された……と思いきや、別の亡者が妹の後頭部を掴み、地面に顔を押し付ける。
「やめ……菜穂子ぉっ……!」
愛莉の嗚咽と同時に、愛莉の体内へ最初の亡者の指が無遠慮に突き刺さった。
「んあああっ!」
冷たい粘液に侵された体内が激しく収縮する。その反射が却って亡者を煽る。
七匹目──最後の一匹が菜穂子の背中に跨り、濡れた布のようなものが尻肉に押し付けられる気配がした。
「あぁ……やだ……やだよぉ……!」
愛莉は泣きながら叫ぶ。しかしその声は己の膣内で暴れる指の圧迫によってかき消された。
「ぐぅ……っ…んっ……!」
絶望と屈辱が胸を押し潰す。だが奇怪なことに亡者の指使いが次第に一定の律動を刻み始め、体の芯が奇妙な痺れに支配され始めた。
「やっ……あっ……!?」
愛莉の目が泳ぐ。
全身が硬直しかける一方で下腹部に生じる微細な震え。それを察知した亡者が舌なめずりするような動作を見せた。
「欲しいか?」
愛莉は激しく首を横に振る。
「違うっ……!」
しかし亡者は問答無用で愛莉の膝裏に腕を差し入れ、両脚を高く持ち上げた。
「いやぁぁっ!!」
次の瞬間、何か硬質なものが愛莉の入口へ宛がわれる。恐怖のあまり総毛立つ肌。だが亡者はそれをゆっくり……容赦なく……挿し込んだ。
「っあ゛……がああああぁぁぁッ!」
獣じみた悲鳴が喉から迸った。妹の呻きも同じ空間に響く。菜穂子も今まさに別の亡者に貫かれたのだ。
二人の苦悶が重なり合う中、七匹の亡者はそれぞれ異なる速度と角度で抽送を開始した。
「ごっ……うげぇ……」
嘔吐感が再び押し寄せる。
だが腹圧によりそれが押し留められ、酸っぱい唾液が口端から垂れた。
「嫌……やめて……」
「早く終わって……」
「菜穂子……ごめん……」
願いは虚しく潰える。
亡者たちの動作は次第に単純化していくが、そのぶん執拗さが増した。
愛莉の中で亡者が脈打つ度に冷たい体液が胎内に叩きつけられ、内臓が反応して収縮と弛緩を繰り返す。
「あっ……んくっ……!」
拒否しても体は微かに痙攣し始めた。脳裏にちらつくのは海中を漂う父の記憶。それを汚されているという罪悪感と快楽が絡み合う。
「ダメ……なのに……ぁっ!」
自嘲する意識と裏腹に、亡者の腰使いに合わせて膝がわずかに宙に浮く。
「もう……いい……」
愛莉の呟きに呼応するように亡者の動きが一段速まった。腹の奥底が鋭く収縮する。全身を包む恐怖と羞恥の中で何かが弾ける予兆。
「やめて……ダメだめ……っあ……!」
拒絶の言葉は途中で途切れ、代わりに高周波の啜り泣きとなった。
亡者の抽送が最後の一突きを放つ。同時に愛莉の内部が激しく痙攣した。
「──ッ!!」
声にならぬ絶叫。
四肢が魚のように跳ね上がる。その震えが止まらぬうちに第二の突きが穿たれた。
「また……?!」
愛莉は朦朧とした視界で妹を見やる。菜穂子も既に数度の絶頂を迎えたらしく、砂礫の上で痙攣を繰り返していた。
「おねえ……ちゃ……」
掠れた呼びかけが届く前に愛莉自身が再び波に飲み込まれる。
「ひっ……やあぁっ!」
涙と涎が混ざった液体が砂に吸い込まれる。愛莉は無意識に腰をくねらせていた。己の意思を超えた肉体の反応がもたらす悦楽と羞恥の混交。
(こんなの……おかしい……でも……止まらない……)
海からの風が血と汗と死臭を運ぶ。その中心で七人の亡者は休むことなく姉妹の肢体を蹂躙する。
闇の中、二つの震える体は夜空を仰いでいた。星など見えない。ただ月明かりだけが濡れた肌を浮かび上がらせる。
愛莉の意識が深層へ沈む直前、彼女は確かに聞いた。
「返せ……まだ足りない……」
そして亡者たちの嗤い声が響き渡った。
石段を駆け下りる二人の足音が夜の闇を切り裂いた。
「愛莉ちゃん! 菜穂子ちゃん!」
柳沢の叫びが漆黒の砂浜に響く。美和が懐中電灯を握りしめ、光を乱反射させながら駆け寄った。
しかし──
七体の黒い影が砂の上で蠢いている。
中央に横たわる二人の少女は月光を浴びて無防備に裸身を晒し、四肢は力なく投げ出されていた。
「お……お前らぁぁぁ!」
柳沢が叫ぶ前に亡者の一体が動いた。
影のような腕が砂を蹴り上げる。
「ぐあっ!」
砂礫が柳沢の頬を切り裂き、視界がゆらいだ。美和が咄嗟に腕で顔を庇うも遅い。
「先生ッ!」
次の瞬間、柳沢の巨躯が空中に舞った。亡者の剛腕に薙ぎ払われたのだ。
「がはっ……!」
コンクリート壁に叩きつけられた柳沢は肺から空気を絞り出され、膝をつく。
「やめ……ろ……」
声にならない呻き。眼前では亡者の一体が美和へと腕を伸ばす。
「いやッ!」
美和が反射的に懐中電灯を振りかざした。
懐中電灯が亡者の顔面を直撃する──が、
「効かない……?」
黒い面が一瞬歪んだだけで、すぐに再び腕が伸びてくる。
「くっ……!」
美和は懐中電灯を捨て、距離を取ろうとした。しかし亡者は既に間合いに入っていた。
「させるか!」
柳沢が砂を蹴り立ち上がる。全力で亡者の胴へタックルを仕掛けるが、亡者の膝が鳩尾へと正確に突き刺さった。
「うぐっ……!」
衝撃で胃液が逆流する。美和の悲鳴が遠のく。
「先生ッ! 助けてぇ!」
声は波の間に掻き消えた。美和は亡者の掌に捕らえられ、首筋を締め上げられている。
「ぁっ……はぁ……!」
苦悶の息遣い。亡者は獲物を確かめるように顔を覗き込み──口角を吊り上げた。
「……美味そう……」
低く乾いた声が闇に溶ける。
柳沢は血の混じった唾を吐き捨てた。
「……クソッ……!」
足に力を込め立ち上がろうとするが、肋骨が軋み激痛が走る。
その隙に亡者は美和のシャツを引き裂いた。
「いやあぁっ!」
白い肌が月光に露わになる。胸元に張り付いた汗が無数の銀糸となり散った。
「美和ッ!」
柳沢の叫びは届かない。亡者は美和の両腕を背後で捻り上げると、残る亡者たちが輪を作るように取り囲んだ。
「やめろ……やめろ……!」
柳沢の視界が怒りと悔恨で燃え上がる。だが脚は震え動かない。己の無力さが全身を縛る鎖となって絡みついた。
「離して……!」
美和が最後の抵抗で爪を立てる。しかしその細い指は亡者の袖を僅かに引っ掻いただけだった。
「……可愛い……」
亡者が嘲るように呟く。そしてその指が美和の乳房を強く揉みしだいた。
「っん……!」
美和の喉から鈍い声が洩れる。耐え難い屈辱と恐怖。肩が小刻みに震えた。
「ダメ……やめて……!」
亡者は答えず、むしろ嬉々として次なる手を伸ばす。
下着の端に指がかかり、一気に引き摺り下ろした。
「いやあああッ!」
美和の絶叫が砂浜に谺する。その悲鳴を合図に亡者たちが一斉に躍りかかった。
「やめろおおぉぉぉ!!」
柳沢の咆哮が轟く。
しかしそれは闇へ吸い込まれるだけだった。第一の亡者は美和の左膝を掴み高く掲げる。
「先生……見ないで、目をつぶって……!」
美和の瞳が涙で滲む。柳沢は拳を握りしめ震えた。全身が凍りつきながらも視線を逸らせない。
「見るな……見たくない……!」
理性と感情が相反して爆ぜる。美和は目を閉じようとしたが瞼が固まっていた。目の端からは新たな涙が溢れる。
第二の亡者は美和の右腕を固定し、第三の亡者が背後から髪を掴んで上体を起こさせる。
第四の亡者が美和の胸へ手を這わせ弄ぶ。
「いや……イヤ……!」
涙混じりの声が掠れる。第五の亡者が美和の下腹に冷たい掌を滑らせた。
「んっ……!」
反射的に全身が強張る。
第六の亡者は砂に跪き、美和の両脚をさらに開かせた。
第七の亡者は中央に立ち、獲物の状態を確認するように周囲を見渡す。
「まだ……足りぬ……」
低く響く声が美和の鼓膜を侵食する。その声音には飢餓感と愉悦が混在していた。
柳沢は這いずるように前進するも、あと数メートルの距離が果てしなく遠い。
「美和……美和ぃ……!」
声が枯れる。美和の名前が砂塵と混ざり闇に溶ける。
「助けて……先生……」
美和が喉から絞り出す。しかしその言葉はすぐさま亡者の呟きにかき消された。
「貰う……全部……」
亡者の冷たい指が美和の最も繊細な部分へ触れる。
「ひっ……!」
美和の腰が大きく跳ねた。未知の刺激に対する生理的な反応。
「……気持ち良くなってくれて嬉しいよ……」
亡者の嘲笑。その声に合わせて指が浅く沈む。
「やめ……っ…!」
美和が必死に膝を閉じようとするが他の亡者たちに阻まれる。
「先生……助けて……!」
柳沢は血を吐く思いで手を伸ばした。爪の間に入った砂が鋭く痛む。
「美和ッ……!」
もう一度叫ぶ。
しかし現実は冷酷だった。亡者の指が二本に増え深く抉る。
「んぁあああっ!」
美和の嬌声と悲鳴が複雑に絡み合う。下半身から湧き上がる鈍い痺れが思考を麻痺させる。
「もっと……もっとだ……」
亡者はまるで玩具を扱うように指を捻る。その度に美和の腰が反射的に上下した。
「んっ……んくっ……!」
涙と唾液が混ざり美和の顎を伝う。柳沢は拳を何度も地面に叩きつけた。
「畜生……畜生ォ!」
怒りと悔恨が熱く燃え盛る。それでも己の脚は動かない。
亡者が指を引き抜くと透明な糸が月光に煌めいた。
「素晴らしい……」
満足げな呟きと共に亡者は衣類を脱ぎ捨てる。その露わになった股間には人ならざる硬質な器官が屹立していた。
「美和……逃げろ……!」
柳沢の声は震えていた。美和は茫然とそれを見つめるしかない。
「先生……助けて……お願い……」
掠れた祈り。しかし亡者は既に美和の腰を掴んでいた。
「行くぞ……」
冷たい宣言と共に凶器が美和の中心を狙う。
「いやああぁぁッ!」
抵抗も虚しく亡者の腰が強く押し出された。
「──!!」
美和の全身が弓なりに跳ね上がる。骨盤が砕けそうな衝撃。
「あ゛……ぐっ……!」
呼吸が途切れる。喉奥から吐瀉物が逆流する。
柳沢はその全てを目撃した。怒りも憎しみも超えて涙が零れた。
「美和ァァ!!」
亡者は容赦なく抽送を開始する。内部で肉が擦れ合う卑猥な音が砂浜に響く。
「んあっ……あっ……!」
美和の唇から唾液と呻きが交互に溢れる。恐怖と苦痛で強張るはずの身体が徐々に痙攣を帯び始める。
「感じるか?」
亡者の嘲笑。
「感じないっ……!」
美和は歯を食いしばる。しかし亡者の動きが一変した。
角度を変えてより深い箇所を抉る。
「ひっ……!」
抑えきれぬ声が漏れる。柳沢は怒号を上げようとしたが喉が詰まり言葉にならない。
「先生……見てる……?」
美和の瞳が助けを求め涙を零す。
柳沢は絶句した。ここで目を逸らせば美和を更に傷つける。
「見てる……絶対に助ける……!」
誓うように叫ぶ。その声に亡者が冷笑した。
「無理だ……」
断言と共に動きを加速する。パンパンと肌を打つ乾いた音。
「んっ……んあっ……!」
美和の鼻腔から甘い呻きが漏れる。亡者は楽しげに囁いた。
「さあ……味わおう」
唐突に亡者の動きが止まり、柳沢の眼前で腰を震わせた。
「なっ……?」
次の瞬間、美和の腹が小さく波打つ。
「やっ……止め……て…!」
熱い飛沫が体内に放出される感触。美和の顔から血の気が引いた。
「俺ももらう」
別の亡者が待ちきれないとばかりに美和の口に己の器官を捩じ込む。
「んん──!!」
呼吸困難に陥る美和。目を見開き涙を散らす。
「やめろおおぉぉッ!!」
柳沢の絶叫が夜空に谺した。
しかし現実は残酷だった。亡者は喉奥まで侵入し激しく抽送を開始する。
「んぐ……うっ……!」
美和の両手が虚空を掴もうと彷徨う。柳沢はその光景を凝視するしかなかった。
「俺も……」「私も……」
残る亡者たちが順番待ちとばかりに並び始める。
美和の体は既に限界を超え震えていた。それでも尚陵辱は続く。
「嫌……やめて……!」
弱々しい抵抗。柳沢は血を吐く思いで前進を試みる。
「あと少し……!」
しかしその時、最初の亡者が再び美和の中へ突き刺さった。
「ひっ……!」
美和の全身が強張る。
「さあ……もう一度だ……」
亡者の宣告と共に陵辱が再開された。
「もう……許して……!」
美和の叫びが砂塵と共に掻き消える。柳沢の視界は涙で霞んでいた。
「畜生……畜生ォ……!」
己の無力さに悔しさが募る。
それでも諦めきれない。
(必ず……必ず助ける……!)
血の混じった唾を吐き捨て、柳沢は最後の力を振り絞った。しかしその背後から冷たい声が響く。
「諦めろ……」
振り返れば別の亡者が静かに佇んでいた。
「貴様も貰う」
突如柳沢の首に冷たい腕が巻き付く。
「がっ……!」
息が詰まる。視界が狭まる。
「先生……!」
美和の悲鳴が遠のく。意識が暗闇へと沈みゆく中、柳沢は最後に見た光景を呪った。
亡者たちが美和の体を蹂躙する様。
そして──美和の意識も闇へと溶けていく!
柳沢の意識が暗闇に沈みゆく瞬間——
月光が裂けたかのように、漆黒の砂浜を照らした。
「民族学の1人者がずいぶんだらしないことですわ」
そこに立っていたのは——八氏役紗奈。
長い黒髪が風に舞い、背丈は尋常ではなかった。190cmをゆうに超えている。
いつもの儚げな微笑みは消え、代わりに唇が歪むように吊り上がっていた。
まるで、獲物を見つけた肉食獣のごとく。
「あらあら……?」
声が低く、粘つくように響く。
「随分と粗末な宴会ですわね? この子たち……」
「しゃ……紗奈……君…?」
柳沢が掠れた声を絞り出す。
「先生……ごめんなさい。お腹が空いて……ちょっと遅れてしまいましたの」
紗奈は微笑みながら歩を進めた。その一歩ごとに砂が波紋のように割れ、海が静寂に飲まれる。
七体の亡者が異様な威圧に反応し、一斉に紗奈を取り囲んだ。
「人間ではない……」「忌まわしきもの……!」
亡者の一体が鎌のような腕を振り下ろす——
しかし。
その腕は途中で凍りついたように止まった。
紗奈の右手が優雅に宙をなぞった刹那——
「爆ぜなさい」パチン
指を鳴らす音。同時に亡者の首が刈り取られた。
血ではなく、黒い腐汁が噴き上がる。顔面が爆ぜる音が空を裂いた。
「ほらぁ……騒がしいですわ」
紗奈の踵が軽く砂を蹴る。
そこから波紋状の衝撃が走り、近くの亡者たちが十文字に切り裂かれた。
「ぐぎゃああっ!」
断末魔の声とともに亡骸が砕け散る。
残る亡者が怨嗟の叫びを上げながら紗奈へ雪崩れかかる。
彼女は動じず、ただ首を傾げて囁いた。
「せっかくだから……味見させてくださいまし」
紗奈の足が砂を掬い上げるように一閃した。
その軌跡が黄金の稲妻のように走り——
亡者二体の胸郭が粉砕され、臓腑が黒泥と混ざりながら散った。
「お味は……」
紗奈の舌がぺろりと唇を舐める。
「ぬるくて生臭くて……イマイチですわね? これじゃ三杯酢にしたほうがマシですわ」
その時、残った亡者が天を仰ぎ絶叫した。
「化生の上に化生が居るなど——っ!」
最後の亡者の頭部へ、紗奈の拳が優美に弧を描いた。
「ほぅら……幕引きです」
白い掌が亡者の額に触れた瞬間——
「グシャァッ!」
頭蓋が柘榴のように爆ぜた。
黒い霧となって消えていく亡者。砂浜には何も残らなかった。
全てが終結すると、紗奈はくるりと振り返った。
月光に照らされたその姿は——人型ではあったが、どこか非現実的な大きさだった。
柳沢は目を見開く。彼女の足下に美和が倒れている。
「先生……大丈夫ですか?」
紗奈の声が一転して穏やかに戻った。
柳沢はよろめきながら立ち上がり、美和のもとへ駆け寄った。
「美和……っ!」
彼女は意識を失っていたが、呼吸はある。
安堵する柳沢の視界に——
紗奈の背後から、月を遮るほどの巨大な影が現れた。
闇よりも濃い黒。人型でありながら規格外の体躯。
髪は床まで垂れ、その奥で赤い灯火が瞬いた。
〈我は汝らが「八尺様」と呼ぶモノ〉
紗奈の喉を通し、別次元の声が唸る。
柳沢は息を呑んだ。紗奈の首が、まるで操られるようにこちらを向く。
〈汝の信念——『怪異に抗う』という強い意志こそが、我を呼び寄せたり〉
次の瞬間、紗奈の身体から霧が抜け出し、海へと溶けていった。
「ふふっ……驚きました? 先生」
振り返った紗奈は、元の美しい少女の姿に戻っていた。背丈も縮んでいる。
「今日はもう寝ましょう? 私のお腹……まだ満たされてませんもの」
彼女は柳沢の腕を軽く引き寄せた。
「続きは明日。それまでは……秘密にしてくださる?」
囁く声に含まれた甘さと凄みが、夜風に溶けた。
柳沢は混乱しながらも頷いた。
今は——ただ犯された美和とこの子達を救うことだけを考えるべきだった。
エピローグ―海辺の祠にて
七人ミサキの騒動が収束し、村に静けさが戻った夕暮れ。
柳沢は、一人で海を見つめていた。
潮は満ち、太陽は赤く海面を染めている。
波はただ寄せては返し、そのたびに透明な光を残していった。
美和と紗奈は、村人の手伝いで浜の後片づけをしている。
二人の声が遠くから聞こえてくるが、柳沢はあえて耳を澄ませない。
今はただ、この海の音を聞きたかった。
――七人ミサキ。
海で亡くなった者の霊が、七人一組の“ミサキ”となって彷徨うという古い伝承。
死者が生者に取り憑き、また新たな死者が七人に加わっていく。
海辺の村には、どこも似たような話が残っている。
しかし柳沢は、今回の一件を通して思った。
(これは単なる怪異譚じゃない。
海とともに生きてきた人々が、どうしても語らずにはいられなかった“記憶の形”だ)
漁師は、嵐の前に戻らない。
子どもは、満潮の渦に消える。
若い衆は、霧の中で船の位置を誤って岩礁にぶつかる。
死は、突然で、理不尽で、誰も説明できないまま家族を奪っていく。
残された者にとって、それは「名前のない喪失」だ。
理屈ではなく、意味のない悲劇。
だからこそ、彼らは“七人ミサキ”として語るしかなかった。
――誰かの死を、ただの事故として終わらせないために。
海を見つめる柳沢の胸に、静かな痛みが走った。
「七人ミサキなんてものは、きっと昔の人たちの……祈りの形なんだろうな」
ぽつりと呟く。
この海で暮らす者は、誰かの死を恐れながら、今日も網を投げる。
誰かが帰らない夜は、灯台に火を灯し続ける。
そしてまた、海から明日をもらうために、海へ出る。
命を奪う海でありながら、同時に命を与える海。
その矛盾を抱えて生きるために、伝説は生まれ、語られ続ける。
(人は……どうしても、意味を探してしまう生き物なんだ)
柳沢は、海風に当たりながら静かに目を閉じた。
やがて、美和が弾む足取りで駆け寄ってくる。
「先生ー! 村の人が夕飯、ご馳走してくれるって!」
「そうですわ先生。今日は深海魚の煮付けもあるそうですのよ。
……あら、先生。少し泣いていらっしゃいますの?」
「泣いていませんよ、潮風がしみただけです。」
柳沢がそっぽを向くと、美和と紗奈は顔を見合わせて笑った。
暮れなずむ海は、まるで何事もなかったかのように穏やかだ。
だが柳沢には、その波の奥に“七人ミサキ”の影がゆらめいているように感じられた。
それでも海へ向けて、柳沢はそっと頭を下げた。
「偉大なる海よ、、この村から誰も奪わないでください
この村の人たちの明日を……できれば、守ってやってください」
波が返事をするように静かに寄せてくる。
こうして、漁村の七人ミサキ騒動は幕を閉じた。
海は今日も、太古の昔から変わらない、命と死を抱いた広大な世界として――
そこにあり続ける。