ハイスクールD×D 動き始める暗雲 作:ラー
ありがとうございます。
グレイフィアの捜索隊が組まれて一ヶ月ほどの時間が経過した。
捜索隊の努力も実らず、グレイフィアの生存は絶望的だと誰もが判断をし始めていた。もちろん、グレモリー眷属やサーゼクス達は彼女が死んでいるはずがないと信じている。
閉ざされた牢獄へと一人の勇敢な捜索隊の者が覚悟を決めて突入したが結果は同じであり、廃人となった状態で外へと吐き出されていた。
「グレイフィア、君はいったいどこに居るんだ」
魔王の一人であり、グレイフィアの旦那であるサーゼクスは彼女が死んでいるはずがないと信じている。
執務室で仕事が手に付かないほど疲弊し、食欲も失せ、目には酷い隈が出来て満足に眠れていない証拠だった。自分の妻が行方不明になっているのだから当然と言えば同然だ。
自分の捜索隊に加わって彼女を探しに行きたいが、魔王という立場がそれを許さない。平和への道を維持するためには割り当てられた役割を全うしなければならないからだ。
「旦那様、少しお眠りになられてください」
「私は平気だよ。それよりもグレイフィアの事が――心配なんだ」
「……旦那様」
サーゼクスに少しでも眠ってくれと執事が告げるも大丈夫だと言って休まない。
妻のグレイフィアを心配する気持ちは理解できるが、彼自身が倒れてしまっては意味がないと言えたらどれほど楽だろうと執事は俯いていた。
その時、執務室へとノックもなしに一人の悪魔が飛び込んでくる。
「魔王様!」
「こら! ノックを必ずしなさいとあれほど……!」
「いい。どうしたんだい? 急ぎの報告なんだね」
「はい!! グレイフィア様が見つかりました!」
その悪魔から報告された内容にサーゼクスは立ち上がった。
報告をしてくれた悪魔に近寄り、両肩を掴んでどこに居るんだと詰め寄った。その報告はずっとサーゼクスが待ち望んでいたものだった。
「彼女は無事なのか!? グレイフィアはいったいどこに!?」
「お、落ち着いてください旦那様!」
「す、すまない。取り乱してしまったね、それで彼女は今どこに?」
「グレイフィア様は今、冥界の病院に運ばれて治療を受けています。彼女も無意識にサーゼクス様の名を呼んでおられました。すぐに向かってあげてください」
冷静な状態ではなかったサーゼクスを落ち着かせるため、執事が大きな声を上げる。
その声で冷静になったのか、掴んでいた悪魔を離して深呼吸を行い、心を落ち着かせた。グレイフィアは既に病院へと運ばれ治療中だと説明される。
運ばれた病院を聞くとサーゼクスはすぐにそちらへと向かう手筈を整えていた。この報告は三大勢力の代表者にも連絡されていると説明される。
「後ほど皆様の方にも正式な報告書が挙げられると思います」
「ありがとう」
「私はこれで失礼します」
現時点でわかっている情報だけを簡単に口頭で説明された。
その内容を纏めると以下のようになる。
・グレイフィアが発見されたのは冥界の森。
・衣服もボロボロになっており、激しい戦闘が行われた痕跡が見られた。
・手首や手足には聖なる力によって拘束されていた形跡あり。
・意識の混濁もあり。
病院にて治療と共に精密検査も行われており、内容はわかり次第報告されるとのこと。
□
病院に到着するとそこには既にリアスやその眷属達、アザゼルの姿も見られた。
ガラス越しにグレイフィアが治療と検査を同時進行で受けている姿があった。リアスも義姉が無事な姿を見ることが出来たためか、安堵の表情を見せていた。
「お兄様!」
「リアス、グレイフィアは大丈夫なのかい?」
「あぁ、俺も立ち会わせてもらったがそこまで酷い怪我はないみたいだぜ」
「そうか」
「だが、悪魔にとって猛毒に匹敵する聖なる力を行使された痕跡がありやがる。後遺症はなさそうだが、様子を見ることを進めるぜ」
サーゼクスの姿を見つけたリアスが抱き着いた。
彼も抱きしめ返し、グレイフィアの姿を目にしたことで互いに安堵している。そこにアザゼルが酷い怪我ではないことを説明し、聖なる力の行使による後遺症もないだろうとサーゼクスを安堵させるように説明した。
「アザゼル、聖なる力ということはまさか……」
「いや、光の力というわけじゃない。別系統の力という方が正しいか? 堕天使や天使の仕業じゃねえな。禍の団の残党にグレイフィアを倒せる猛者が残っているとは思えねえ」
「先生、それって……俺達に恨みを持つ別の組織が存在するってことですか?」
「……断言はできねえ。俺らだって世界の全てを把握してるわけじゃない。三大勢力は別の神話体系の奴等から嫌われているからな。隙を見て狙われているって言われても不思議じゃねえが……そんな事をするメリットが思いつかねえ」
一瞬、サーゼクスは光の力を扱える堕天使と天使を疑おうとするが即座に否定された。
禍の団の主要メンバーは倒されており、グレイフィアほどの実力者を倒せる者は残っているはずがないと告げるアザゼル。
イッセーが別組織の可能性を示唆するが、現時点で断定するのは難しいと答えが返ってきた。三大勢力には敵が多く、嫌われている事実もある。
三大勢力が嫌われている理由自体は悪魔の持つ"悪魔の駒"の存在が大きい。
悪魔至上主義を掲げている貴族悪魔も少なくなく、本人の意思関係なく他種族でも優秀と見れば、悪魔の駒を使って転生悪魔へと転生させることも多かったのだ。
日本の神々や他の神話体系の神々もそれを嫌っている。
本人が承諾しているなら問題はないが、脅迫に近い形で転生悪魔へと変えられてしまう者達も少なくなかったのである。
魔王たちもわかっているが貴族たちの暴走を止めきれなかったのだ。
「治療が終わったみたいだぜ。一番初めに会うのはお前だ、サーゼクス」
「あぁ、すまない」
治療室から医師が出てきたことでグレイフィアの治療が終わった。
中に入っても良いと許可も得られたことでサーゼクスは部屋の中に入っていき、自分に顔を向けた彼女へと近づき、その存在を確かめるようにゆっくりと抱きしめた。
「グレイフィア、グレイフィア!」
「サーゼクス、ごめんなさい。私が不覚を取ったばかりに……こんなに痩せてしまって」
「良いんだ。僕は君が無事だっただけで嬉しいんだ」
もう離さないと無意識にグレイフィアを強く抱きしめるサーゼクス。
彼女もまた抱きしめ返して長い抱擁を交わす。その光景をリアスやアーシア、朱乃は歓喜の涙を流しながら嬉しそうに見ていた。
二人が無事に再会できたことに心から良かったと思っていた。普段のサーゼクスの姿を見ていただけに待ち望んだ光景だと思いをはせる。
「グレイフィア、こんな状況ですまないが何があったかを教えてくれるかい」
「そんな顔をしないで。私はあなたの立場もわかっています。あれは――」
グレイフィアはゆっくりと自分の身に起きたことを話し出した。
アザゼル達も部屋に入り、彼女の話の口から語られる言葉に耳を傾ける。記録魔法も使用し、語られる内容を逃さぬように記録していく。
「禍の団の残党を追いかけている時だったわ。閉ざされた牢獄の近くで戦闘が行われ、あと少しで付近の残党を処理できるはずだった」
「やはり、閉ざされた牢獄の近くか」
「残党の一部がその中へと逃げ込んだの。しばらくすると中から見るも無残な姿になった残党が遺跡から吐き出されたわ。それと同時に中から一人の男も一緒に出てきたの。その男は他の残党たちと違って普通の姿で現れ、私を観察するかのようにジッと見つめて来たわ」
「閉ざされた牢獄から異常もなく出てきただと?」
「そう。明らかに普通じゃない、本能的にそう感じたわ。残党以上に危険に感じた私はその男へと攻撃を仕掛けたのよ。でも結果は今の私を見て分かる通り……」
「グレイフィアが手も足も出ずに負けた……?」
「そ、それでわ、私は……」
やはり閉ざされた牢獄付近がグレイフィアが行方不明になった場所だった。
遺跡の中から姿を現した男によって彼女は倒され、捕まってしまったのだと誰もが理解した。同時にグレイフィアを倒せる人物がその場所を拠点にしていることも判明する。
その男に捕まり、自分の身に起こったことを話そうとしたグレイフィアは自分の身体を抱きしめて身体を震わせ始めた。
「グレイフィア! 無理に話さなくていいんだ!」
「わ、私は……わたしは……」
その様子に異変を感じ、サーゼクスが話を中断させた。
角度で誰にも見えていないが、グレイフィアの表情が蕩けて見せられない顔になっていることに誰も気づかない。記憶に靄が掛かっていても身体に刻まれた快楽を忘れることが出来ないでいた。身体を震わせている様子を拷問された時の事を思い出して恐怖で震えているのだと誰もが勘違いした。
それと同時にグレイフィアをこんな目に合わせた男を許さないとサーゼクスをはじめ、全員がその身に怒りを抱いた。
「ご、ごめんなさい」
「すまない、僕が不甲斐ないばかりに。皆、今日はこれまでにしよう。これ以上、グレイフィアに負担を掛けたくないんだ」
「まぁ、仕方ねえな。お前ら、今日は帰るぞ。さっき医者に聞いたがグレイフィアは退院しても大丈夫だと。サーゼクスの屋敷で一緒に過ごした方が良いだろう」
「そうだね。私もグレイフィアと一緒に過ごしていたい」
「決まりだな」
そしてグレイフィアが病院に居る必要が無い以上、サーゼクスへの屋敷へと向かうことに。
屋敷の執事やメイド達も彼女の無事の帰還を喜び、豪華な料理が振舞われ久々のまともな食事を楽しむサーゼクスとグレイフィアの二人だった。
彼女が返ってきた安心からキングサイズのベッドで久々に安眠することが出来たサーゼクスだったが、隣に眠るグレイフィアは身体が火照ったように熱を持ち、荒い息を吐いていた。
「はぁ……はぁ……駄目よ。私はどうして――」
彼女の中の理性がサーゼクスを性的に襲おうとする自分を留まらせている。
閉ざされた牢獄で夜が訪れるたびに何度も何度もノアによって身体を弄ばれ、絶頂させ続けられていたことで身体が開発されしまっていた。
時折、発作のように快楽を求めてしまい、無意識に快感を齎してくれる存在を探してしまう。自分で女性器やクリトリスを刺激し、胸を揉んで自らを絶頂へと導こうとする。
しかし、ノアのテクニックと同じ女性である黒歌に身体の隅々を弄られたことで自分で満足にイクことが出来なくなってしまっていた。
どれだけ自慰行為を行おうとグレイフィアは自分を満足させられる絶頂に到達できないのだ。
「サーゼクス、許して――」
「……」
彼女は隣で眠るサーゼクスの足元へと潜り、彼の股間に手を伸ばし……。
□
グレイフィアがサーゼクスへと手を伸ばしていた頃。
冥界のとある屋敷にて異変が起きていた屋敷を守る兵士たちは次々と意識を失い、その場に倒れ伏していた。月明かりに照らされた屋敷内をノアと黒歌の二人が歩いていた。
この屋敷は上級悪魔のライザー・フェニックスの屋敷であり、冥界にある別荘の内の一つでもあった。ノアと黒歌の狙いはフェニックス家の純潔悪魔だった。
「次の狙いはフェニックス家の純潔悪魔にゃ? 回復系の神器が無ければ、フェニックス家の存在は大きいにゃ。死んでいなければ回復させることが出来る"フェニックスの涙"を生成できる唯一の悪魔だもの」
「そう。この屋敷には護衛とライザー・フェニックスの眷属が3人が休暇を過ごしていると」
「レイヴェル・フェニックスがここに居るにゃ。悪魔はグレイフィアが戻ったことで安堵して油断している。すべてを警戒することは出来ず、次なる被害を想定することはできにゃい」
「フェニックスの血を一番濃く継ぐと言われるライザーの次に血が濃いと言われるレイヴェル。掴んだ情報では一番この場所が手薄でもあったからね」
「にゅふふ、妖術と魔法を組み合わせた昏睡術式の前にただの守衛も役に立たないにゃ」
屋敷を守る守衛たちがこん睡状態にあるのは黒歌による妖術と魔法を組み合わせたハイブリット術式が原因だったのだ。
抵抗値の低い守衛達ではこの術式を防げず、気づかぬうちに昏睡させられていた。フェニックス家の血を引く悪魔であれば、誰でもよかったのだが守りの観点から一番守りが薄い場所がレイヴェルの居るこの場所だったのだ。
「どうなっているんだ……!」
「落ち着きなさい、イザベラ」
屋敷の中庭へと足を進めるノアと黒歌。
そこには倒れている守衛達の様子を見て何事だと冷静に判断を下そうとする二人の女性の姿がある。ライザー・フェニックスの眷属であり、レイヴェルの護衛でもあるイザベラと雪蘭の二人だ。
彼女達はライザーの眷属であるため、抵抗値がある程度高く、黒歌の昏睡術式を前にしても意識を保っていられた。もし、黒歌がある程度力を込めたものであるなら抵抗値が上がった所で防ぐことはできない。
「誰だ!」
「黒歌!?……SSランクに指定されたはぐれ悪魔よ」
「君達には用はないにゃん。私達が欲しいのは――レイヴェル・フェニックス」
「お嬢様を!?」
月明かりに照らされた事で暗闇の中からノアと黒歌の二人が姿を現し、イザベラと雪蘭も警戒し戦闘態勢へと身構える。
黒歌の口から語られるここへ来た目的を告げられ、一気に警戒心を跳ね上げた。レイヴェルを狙われているとわかった瞬間、先手必勝とばかりにイザベラが仕掛ける。
「はぁぁ!!」
「うん、力強い拳ですね」
「っ!!」
「イザベラの一撃を!」
「私から目を離してもいいのかにゃん?」
「しまっ……がっ!!」
イザベラの鋭い拳をノアは何事もないかのように受け止める。
その様子を見た雪蘭は驚き、黒歌から目を離してしまう。拳と足に炎を纏わせ、振り払うように振るうが避けられてしまう。
最小限の動きで躱した黒歌はそのまま雪蘭の首を掴んで持ち上げる。
炎を纏った手で黒歌の手を掴んで締め付けられた手を外そうとするも想像以上に強い力に外すことが出来ない。炎の影響もまるで受けておらず、酸素を取り込むことが出来ずに徐々に視界が真っ暗になり始めていく。
「私を甘く見過ぎだにゃん。主を殺しただけでSSランクのはぐれ悪魔に指定されるはずがないでしょ? それだけ危険だと判断されたからよ」
「ぐ、ぐるしぃ……」
「雪蘭! この!」
「焦りは冷静な判断を出来なくする。そして……」
「かはっ……!!」
同じ眷属である雪蘭がこのままでは殺されてしまうとイザベラが焦り、集中力を切らしてしまう。
ノアもその致命的とも言える隙を見逃すほど甘くはなかった。鳩尾へと魔力を込めた一撃を掌底で叩き込み、吹き飛ばして壁に激突させる。
正確に鳩尾を打ち抜かれ、叩きつけられたことで背中にも痛みが襲うイザベラは呼吸を上手くすることが出来なった。
倒れた彼女の元へとノアが歩いていき、見下ろすようにした顔を覗き込む。
内心ではライザーの眷属と言えど、この程度かという落胆と甘すぎる状況判断に戦い方がまるでなっていないと思っていた。
レーティング・ゲームという一定以上のダメージを受けるとリタイアさせられ、たまに事故で死ぬ者達が出るとはいえ本当の戦いを知らない彼女達にため息しか出なかった。
ここが戦場なら出会ってすぐにイザベラも雪蘭も殺され、今頃物言わぬ亡骸となっていると。
「それじゃ、さよならだにゃん♪」
「やめなさい!!」
その時、ゴォッと聞こえて来そうな炎と覇気を纏う声が奥から発せられた。
ノアと黒歌はその発生源へと視線を向け、そこには目的の人物であるレイヴェル・フェニックスがこちらを睨みつけるように佇んでいた。
彼女の周囲はフェニックスの炎で焼け落ち、周囲の温度も急激に上昇し始めている。
「お……嬢様……。お逃げ……下さい……こいつ……らの……目的は……あなたです」
「我らの事は……構いません。早くライザー様の元へ……」
「私に二人を見捨てろと言うの? 馬鹿にしないで! 同じ仲間を見捨てる貴族など真なる貴族ではないわ。あなた達の目的は私なのでしょう?」
自分達は見捨てて逃げてくれと言うイザベラと雪蘭。
しかし、レイヴェルは目の前で苦しむ同胞を見捨てるなど貴族ではないと言い切ってノア達の前にゆっくりと歩みを進める。
進んでくる際に部屋を覆うような炎の渦が荒れ狂うがノア達は涼しい顔をしている。イザベラ達はライザーの眷属であり、炎に対する耐性を備えているため大丈夫なのだが……。
ノアと黒歌の二人はどのように防いでいるのか、分かっていなかった。
余裕そうな表情を見せるノア達はただただ不気味な存在だった。レイヴェルは状況を把握しているため、二人を助けるための最善の選択を行うつもりだった。
たとえ己の身を犠牲にしても彼らは自分を殺さないという確信めいたものを感じていたからだ。
「二人を殺したら私は自害しますわ。再生能力を持つ私でも鉄の意思を持って能力を抑え込めば、死ぬことも難しくありませんもの」
「二人を助けるために自らを差し出すというのですか?」
「私は信じていますの。たとえ私が誘拐されようともお兄様やイッセー様達が必ず私を助け出してくれると。たとえ私が穢されようとも心まで支配されることはありませんわ」
「貴族としては心構えは素晴らしいにゃ。私が殺した当時の上級悪魔にもあなたの爪の垢を煎じて飲ませてやりたかったにゃん」
「お嬢様、いけません! この二人は……!」
「黙ってるにゃ。口出しは駄目だなにゃん」
二人を助けるために自分の身を差し出すというレイヴェル。
彼女はイザベラと雪蘭を助けるためにノア達へ最強のカードを切ってきたのだ。レイヴェルを求めてここまで足を運んでいる二人が一番避けたいのは彼女が自害するという状況。
それを見抜くまでは出来ても自分を差し出すという選択を簡単にすることはできない。
即答に近い形で答えたレイヴェルにノアは素直に感心した。黒歌もまた即答した彼女に交渉の仕方をわかっていると頷いている。
「いいでしょう。僕達の目的はもとよりレイヴェル・フェニックスです。あなたが手に入るのなら二人をどうこうするつもりもありません」
「交渉成立ですわね。契約魔法を用いて正式な契約を結びましょう」
「強かですね、契約魔法とは」
「淑女として当然ですわ」
「私も内容は確認させてもらうにゃ」
契約魔法によって交わされた契約内容は以下の通りだった。
・レイヴェル・フェニックスがノア達のものになる代わりにイザベラと雪蘭に手を出さない。
・イザベラと雪蘭の安全を保障する代わりにレイヴェルは自害しない。
・この契約はノアの拠点へと到着した時点で破棄される。
つまりこの場限りの契約ではあるが確実に二人の安全を守ることができるものだった。
この契約内容に互いに不満はなく契約結ばれた。イザベラと雪蘭は不満を隠せない様子だが、レイヴェルの覚悟を無駄にすることは出来なかった。
この出来事を報告することは禁止されていないのでライザー達に報告されるのは間違いないだろう。
その選択が彼らの最善の選択になるとは限らない。
「イザベラ、雪蘭。私はイッセー様達を信じています。彼らならきっと私を助けてくれるはずですわ」
「レイヴェル様、我らは必ず!」
「我らは必ずお前達を――」
「誰のおかげで殺されていないかを理解した方がいいにゃ」
契約が結ばれているおかげでノア達は二人に手を出すことは出来ない。
無理矢理契約を破る方法もなくはないが目的が達成された今、無駄な事をする必要がないからだ。こうしてレイヴェルはノア達によって連れ去られ、ライザー達にはレイヴェルが攫われたという連絡がイッセー達へと届くのだった。