二次アパートの優雅な日常 作:おじ惨事
その日、僕は夏の猛暑に追いやられて自販機の僅かな影に隠れていた。閑静な住宅街には他に影もなく、木陰のある公園はちょうど今いる場所からは反対方向だ。そこまで歩くなんてことになれば間違いなく熱中症で倒れてしまうだろう。
身体の半分ほどを覆う僅かな日陰に微かな涼気を無理やり感じながら、手で汗の垂れる首元に風を送った。とてもじゃないが足りない。冷気が、癒しが欲しい。
「あ、物部くんだ。今帰り? 暑いねぇ~」
声にふと見上げると、そこにはクラスのマドンナ。井上織姫さんの姿があった。胡桃色の長髪にパッチリお目目の美少女。そしてその高校生とは思えない大迫力の双丘をお持ちの絵に描いたような完璧な女の子だ。おまけにクラスの中でも存在感が薄すぎて
尊すぎて本当に現実の存在か疑ったこともある。嬉しいことに夢では無かったけど。
「あ、あぁ。……そうだね」
彼女に気持ち悪がれないように、気の利いたことの一つも言えない自分に嫌気がさす。そんな僕を気にする様子もなく彼女も熱そうに制服の首元を大きく開けて風を送りこんでいた。微かに彼女を通した風がこちらに流れてくる。甘いようなちょっと柑橘系のような匂いにドギマギ。隙だらけで勘違いしてしまいそうになる己を必死に制した。
もはやクラス内では公然となっているが彼女には彼氏がいる。黒崎一護とかいうオレンジ頭のヤンキーのような彼氏だ。噂で聞いたことがあるが喧嘩も相当強いらしく、デカい外人の喧嘩仲間とツルんでるところも見たことがある。クラス内でのカーストも上位で俗にいう陽キャと呼ばれる集団だ。
こんなに可愛くて優しい完璧な彼女だから勘違いしてしまう男も多くいるが、そんな彼氏を恐れて誰もそういった声をかけられないのが現状。僕も勘違いしてしまったらきっと彼等に制裁を受けてしまうだろう。どこに彼等の目があるか分からない。これ以上の接触は控えるべきだ。
──そんなことは
暑さで上気する頬。首元から胸の谷間に流れ落ちる汗の雫。
Yシャツが僅かに透けて見えるピンクの生地。
汗で捲れたままのスカートから覗く白い太もも。
「……どうしたの物部くん? ひょっとして暑くて気分悪くなっちゃった!? 私、一心さんに連絡してみようか!?」
僕の無言を勘違いしたまま彼女は急いでバッグから携帯を取り出す。焦っているのだろう。目の前で大きく胸が弾む。急いで携帯を出した弾みでバッグから教科書やらレジェメやらがアスファルトに転がりおちてしまう。
流石にその時は僕も我に返り、急いで彼女のバッグから落ちたものを拾うのを手伝う。
「あ、あっ、ゴメンね。井上さん……ついついボーッとしちゃって僕……」
「いいのいいの! それよりボーっとしちゃって大丈夫? 私、それ熱中チョウ?の初期症状だって聞いたよ。やっぱり連絡したほうがっ……」
屈んで心配そうにこちらを見上げる彼女。教科書を渡そうとした僕の手が止まった。
急いだ所為か、彼女のYシャツの……一番上のボタンがはじけ飛んでしまっていた。
見下げる僕の視線は彼女の大きく空いた首元から見える胸の谷間からピクリとも外そうとはしなかった。
「物部くん……?」
──頭の奥で何かが弾けたような気がした。
不意に何故か目の前の彼女の全てを支配できるような──そんな有り得ない全能感に身を包まれる。
小学生がカンフー映画を見た次の日に包まれる無邪気な
(確かに……何を躊躇っているのだろうか僕は)
『どいて!織姫!』
『こいつ何をッ!?』
目の前で彼女の髪留めが突如光り輝き、小さな妖精のように変化し騒ぎ立てる。そんな非日常の光景すらどうでも良いとばかりに構わず僕は彼女へ手を伸ばした。
「ようこそ~我が家へ。狭いけどゆっくりしてね」
茶目っ気たっぷりに彼女の部屋に案内された。お世辞にも女子高生の一人暮らしには向いてないと断言できるぐらいのセキュリティゆるゆるのちょっとボロめのアパート。エントランスすらない。部屋も広くはないのだけど、女の子の部屋!と分かるぐらいにはそれなりに飾られていた。彼女の独特なセンスのキモカワデザインのぬいぐるみにピンク色のシーツのかけられたソファー。誘われるままにソファーに座らせてもらう。
そして彼女の甘い匂いに包まれた部屋の香気。無意識に鼻の奥でスンスンと取り入れてしまう。そんな姿を見られてしまったのか、
「あ、そのソファーまだ臭う? 粗大ごみ置き場から貰ってきたんだ。しっかり消臭したんだけどなぁ?」
目と鼻の先まで近づいて自ら鼻先をソファーに近づけて確かめる井上さん。近くで見ると顔の偏差値の高さに改めて息を呑んでしまう。目でかっ、まつ毛長っ。
「そういえば外で汗かいたでしょ? シャワー浴びる?」
「……うん、そうだね。借りようかな」
まともに話したこともないクラスメイト。それも男子を彼氏持ちの女の子が自らの部屋に招き入れ、シャワーも使わせる。普段から天然気味なことのある彼女でさえも通常なら考えもしないことだ。
しかし、今の彼女にしてみればそんなことは当然のこと。疑問を持つという考えすら及ばないだろう。
古いからだろう。トイレ兼バスタブでトイレとの間は防水性のカーテンが塞いでいた。浴室の壁には百均でそろえたらしい吸盤付きの棚にシャンプーやリンスが色々と並んでいた。お金に困っていそうな割には高級そうなものも見られる。普段彼女と付き合っている女子連中がプレゼントでもしたのだろうかと少し思案に耽る。
生々しい彼女の私生活に異端である男の僕が侵入している……そんな実感が湧いて来て妙に興奮してしまう。
ムクムクと膨れる愚息。
「そういえば物部くん」
扉を挟んで少し霞がかった声で部屋の主である井上さんの声が聞こえて思わず愚息を手で覆い隠す。しっかりと鍵がかかっているのを確認して小心者の心臓をなんとか落ち着かせた。
「な、何かな井上さん?」
声が震えてないだろうか?
「伝え忘れたんだけど、ここシャワーが調子悪くてね。すっごい冷たいかすっごい熱いかのどっちかしか出ないの。もしあれだったらバスタブに最初熱いの溜めて後から冷たいので調整して浸かっていいからね」
「う、うん。わかった。ありがとうね」
「どもども~」
扉の奥から遠ざかる足音が聞こえてようやくドアノブから手を離す。とりあえずさっさと入ってしまおう。服を脱いで一か所に纏めて井上さんの言う通りに熱いお湯を出してから、途中で冷たい水にかえてバスタブを満たす。さんざん汗をかいたのだ。ぬるま湯より少々冷たいぐらいでちょうどいい。
雑に汗を冷たいシャワーで流して、湯船に浸かる。お昼過ぎた頃合いなので外から差し込んでくる日光と湯船の若干肌寒いぐらいの温度が相まって気持ちいいもんだ。改めてゆっくりしてるとここが井上さんの普段使っている場所なんだと意識してしまい、再び冷たさで縮こまっていた愚息が熱をもち膨らみはじめた。
「湯加減どう? 物部くん?」
「あっ、大丈夫です……だよ井上さん」
「そっかぁ。良かったぁ」
心底ほっとしたかのような井上さんの言葉にやはり彼女は優しい天使のような人間だと確信。普段彼女が付き合っている女子たちはみんな可愛いけど妙に癖と気が強くて、陰キャな僕はしり込みをしてしまう。
「じゃあ私もお邪魔しちゃおっかなぁ」
「うんうん……えっ?」
突然の彼女の言葉に一瞬動揺した。今の僕は湯船に浸かっていてドアを抑えることは出来ない。
──しかし、確かに僕は内側から鍵をかけた。だから大丈夫と安心していると、
「お邪魔します」
曇りガラスのように半透明となっている防水カーテン越しに肌色の彼女が入ってきた。
「えっ? ちょまっ……え? 確かに僕鍵を閉めた筈」
「あれ? 知らないの? トイレの鍵ってヘアピンで簡単に外から開けれるんだよ」
「いやいやいや」
そういう問題ではない。裸で浴室に入って来るのがそもそもの──
「お邪魔しま~す」
足を延ばした先の方から裸の彼女が防水カーテンを手で押しのけてバスタブに侵入してきたのだった。
──おっぱいだった。普段と違って彼女は髪を後ろで束ねてお団子のようにして入ってきた。普段の髪も彼女に似合ってるけど正面から綺麗なうなじを覗けるその姿はとても可憐だった。
──おっぱいだった。普段抑えられてるその双丘はブラジャーという名の束縛から解き放たれて、彼女の微かな動きにも反映して大きく揺れ弾む。その先端はピンク色の少し大きめの乳首が催眠術師の五円玉のように僕の目を捉えて離さない。
──それはおっぱいだった。ゆったりと湯船に沈み込んだ魅惑の風船はその尋常ならざる浮力で水面下に隠れることを拒み。彼女がシャワーを自らに振りかけると水面が揺れてピンク色の乳頭が水面上に出たり下がったりと幸せのメトロノームを演出する。
僕も男子の中では背が高いほうではないけど、さすがにこの狭いバスタブの中を高校生の男女が二人も入り込めば自然と体のどこかが接触する。嬉しい誤算しかない。
手の先が、膝の先が彼女の魅惑の肉体と接触する。彼女の脚が触れたとき、絹のハンカチでなぞられたかのようなこそばゆい快感がはしる。膝の先が彼女の双丘と、その先端と触れ合うと歓喜と気怠い程の極楽を感じる。
「やっぱりちょっと……狭いね」
裸のクラスメートがちょっと失敗したかなと正面で頭をかく。照れたような表情を浮かべる彼女。成功だッ!!他のどんなに偉い学者が理論的に反論したって大成功に決まってるッッツ!!!!!!!
「やっぱりデッドスペース? があるからいけないんだよ」
彼女が浴槽の端を両手で掴んでお尻を上げる。制服越しでも分かっていた彼女のスタイルの良さ。そんな大きさと柔らかさを伴ったお尻が水面すれすれまで浮かんでこちらをじろっと見つめた。見つめあった。
お尻の肉タブが横に広がって視界の半分を埋めた。真っ白い、シミなんてひとつもない芸術品。そうしてそれは再び水面に沈む。当の僕に至ってはここまでの間、頭の処理能力が現実に追いつかなくて硬直したままだ。それほど目を、脳内を惹き付ける魅力の過剰摂取。
「これで良し! だね?」
彼女は僕の太ももの半ばほどにそのまま腰を下ろし、柔らかすぎるクッションで着地。
つまりそれは僕がバスタブで足を延ばしたまま椅子のように上から彼女が座ったということで……。
「……これが……幸せってことなのかな」
「ん~?」
彼女のうなじが僕の目の前にある。もうシャンプー以外の良い匂いが彼女の首筋から漂ってくるのが分かる。後ろからみると彼女のうなじ、バストウエストヒップのラインが芸術的なのがいやがおうにも理解出来た。背中からでも正面の彼女の胸が左右にはみ出しているし、ウエストは驚くほどに細い。更に大きくそれらを受け止めるお尻。トランジスタグラマーな彼女の魅力を余すところなく鑑賞できるのは正にこの位置からでないと不可能だったろう。よくよく観察すると大きな胸の下と腋の端は薄っすらと青い静脈が浮き出ている。それだけ大きなものをぶら下げていると当然肌全体が張ってしまうからだろう。
そんな彼女は若干座り心地が悪かったのか、ベストな場所を探そうとお尻を上げて重量感たっぷりな水風船が僕の太ももの上を右往左往する。そんな動きをされて興奮しない男がいるだろうか?
あっという間に大きく、反り返るようにビキビキと愚息……最早愚息と表現することすら生温い魔羅が天を突く。お尻の間を何かが通り抜けていったのに気づいた井上さんが首だけ後ろを向いて不思議そうにこちらと目を合わせた。
駄目だ。こんなの我慢できる筈がない……
次回本番