※この作品はR-18です。

異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:   作:山下敬雄

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プロローグ

 敵を討つ剣音が響き、練り上げた魔力が高まり空気が熱くなる。鍛えた技が放たれ化物たちの断末魔を重ねる。

 

 退路を閉ざされ迷い込んだ石床の大部屋。迷宮道中で幾度も見かけた既存種のモンスターと交戦していた最中にて、──遭遇。

 

 しれっと視界に現れた一味違う邪悪ないでたちのモンスターに、パーティーの前衛役を務める男子生徒は、威勢よく発された校長の命令を受け仕掛けた。

 

 

□敵情報

new 神官ダークハートオクトパス:

黒紫の神官衣装を纏った不気味なモンスター。

現在攻略中の97F体育倉庫ダンジョン④を支配する、階層を下って冒険者を排除しに来たブックマスターである可能性が高い。

頭部は黒いハート型をしており、髪は蛸の触手のようである。

攻撃方法は不明。

□

 

 

 さっそくの先制攻撃。翠(みどり)のショートソードがその切っ先から雷撃のマジックを中距離から前方の敵へと放つが、宙に描かれた敵の防御魔法陣が放たれた雷属性を吸収した。

 

 牽制のマジックを防がれてしまうも構わず、剣士の男子生徒は雷を出し尽くした翠の剣を大胆に前方へと投げ捨て、走った。

 

 しかし魔法陣に突き刺さった乱暴な翠の刃は届かず無力。魔法の威力が不十分で、投げ捨てた刃も敵の身まで貫通せず期待通りには機能しなかった。

 

 だが──

 

「【バーンサンダー】!!」

 

 腰鞘から抜き出したもうひとつの、緋色の刃。緋色のショートソードを性懲りもなく阻む防御魔法陣へと同じように突き刺した。そして帯電し蓄積されていた翠の雷属性を強引に増幅させ、技と成した。

 

 黒紫の魔法陣を青一色に一気に染め上げ、破砕。爆発的に増幅する雷撃の勢いは、重ね展開した3枚の堅牢な防御魔法陣をも貫いた。一気に魔法の盾を失った無防備な神官モンスターを荒ぶる雷が焼き続ける。

 

 威力を上げた雷球が辺りを呑み込むように発生し、敵を逃さない。先手必勝、強引に男子生徒が斬り込んだ勢いで、勝負はこのまま痺れる籠の中で決するかのようにも見えた。

 

 しかし──急に逆立ち伸びた触手髪が、男子生徒ピネスの首に巻き付いた。

 

 こちらのターン中にまさかの反撃。怯まず仕掛けてきた神官モンスターの危険な締め技に、たまらずピネスは繋がる触手を手持ちの剣で器用に斬り裂いた。

 

 どうにか難を逃れたものの、ピネスが一息つく暇もなく。さらに神官モンスターは、いつの間にか手元に呼び寄せ装備していたダークジャベリンを薙ぎ払う。

 

 いかにも魔術師タイプ、ピネスの目にはそう見えていたモンスターが豪快に得物を横薙ぎにした。

 

 なんとか反応したピネスは剣を合わせて防御したが、思ったより膂力のある怒りのスイングを受け止め切れず、大きく体ごと弾き飛ばされてしまった。

 

「ごほっごほっ痛ててて、あんにゃろ何度もびっくりさせやっ……てェ?? うおわ!?」

 

 敵が得物にしていたダークジャベリンは、なんと分裂し、触手だらけのモンスターの頭上に浮かぶ。ご丁寧に数をそろえて並べ浮かべた闇槍が、すぐさま尻餅をつく体勢を崩したターゲットへと斉射された。

 

 風を貫く速度で飛んできたとても危険な闇色の魔法群は────なんとピネスの居る場を避けるように流れが途中で枝分かれし、直撃することなく不思議にも逸れていった。

 

「ふぅぅ間一髪ぅ……やってくれたのは? めぐるさん! か?」

 

 ハープ奏者の奏でた【ツバサの歌】が、飛び交った闇槍の群れをかろやかにあやつり、剣士のピネスを守った。

 

 ピネスが前方に構えていた緋色の剣は、ハープから刃に届いた音を振動し繰り返している。

 

「ふふ、彼女として当然さ。君のめぐるだからね」

 

 呼ばれて彼の元へ駆けつけた羽帽子を被った金色ショートの彼女は、そう嬉しそうに答えた。

 

「彼女じゃないでしょ。デートもまだ──じゃんっ!」

 

 じわじわと地を這いずりながら、惚気話をする2人に寄ってきていたダークスライムモドキたちは、【ストーンウォール】で踏み潰された。巨大な石壁がばたんと横倒れ、下敷きにされた黒い粘液の飛沫があちこちに飛び散っていく。

 

 鮮やかなオレンジ髪が、圧され吹き出た風に大きく靡く。女子の木浪は魔力を使い切った古杖で、凝った肩を叩いた。

 

「ははやべぇ、ナイス木浪ーー!」

 

「そうだったデート、する?」

 

「え? あぁー……でで、でえーーっと? なんつって?」

 

「は? つまんな」

「ふふ、おもしろ」

 

「はは……ってやべぇぞ!!」

 

 デートの約束など後でいい。めぐると木浪、援護してくれた女子たちの正反対のリアクションよりも、ピネスは敵のモンスターに集中した。

 

 突如急速成長しながら地と宙を伝うのは、標的を絡めんとする黒いイバラ。この見たこともないやばそうな敵の魔法は、石壁でもハープの音でも防げそうもない。

 

「【ライジングバーン】!!!」

 

 3人とその天に掲げる緋色の剣を中心に、円を描きながら螺旋状に炎蛇が飛び上がっていく。猛スピードで伝って来た棘のあるイバラは、とぐろ巻く炎蛇に食い破られるように焼かれ、届かず。

 

「ふいぃ。さすがにそろそろ気張らないとなんとなくヤバそうだ」

「これはあの時も守ってくれた赤い渦巻きの? ふふふ」

「は? 熱いんだけど?」

「無茶言うなよ。熱いんだよっ、ダンジョンだからなっ!」

「ダンジョンならそろそろひとりでなんとかすればぁー」

「なんでだよっ! ダンジョンだぞっ!」

「は、語彙力すくなっ」

「え? そんなところもかわいいのに」

「まぁ、それはね。もしかしたら変に賢いより、これぐらいが丁度いいのかも」

「「「はははは」」」

「ってあれ? 俺今ばかにされて……?」

「亭主、薬茶兵糧丸(ミラクルボール)を」

「おっ、サンキューサーガ! サプライズつづきで、ちょうど喉と魔力がやばかった!」

 

 渦巻く炎が止み、雑談の最中。ピネスはタイミングを見計らって駆けてきた異国スウェーデンの金髪茶人、水野サーガから回復薬を受け取る。

 

 薬草茶を戦闘中に飲みやすく丸めた薬茶兵糧丸を、大きくひらいて待った男子生徒の口へと、あーん……水野の摘んだ指先から放り込まれる。

 

 ピネスは連続で魔法剣を行使し失っていた魔力を補給することに成功した。

 

 

「賑やかな生徒たちだ。青い真っ只中の成長期というものは羨ましい限りだな。一国の校長ともなると、少しは達観せねばならぬからなー」

 

 前で頑張るピネスたちの後方で、護衛についていた他の生徒たちは、校長兼魔術教師の彼女へと向かってきた雑魚モンスターたちを切り払い、寄せ付けない。

 

 神官モンスターから飛んでくる広域魔法も、各々の武器と異能と魔法を駆使してガードし、いつもの作戦通りに後衛のスペシャルな魔術師が魔力を存分に練り上げる時間を作り出した。

 

「ならばそろそろ頃合いだろう。よくやったブク高パーティー。フッフ──合わせろよ?」

 

 今、天へと花開き上ったのは校長の武器である黒傘。その黒傘はダンジョンの天井の中へと溶け込み、また不意に天から再び現れては──標的の蛸頭の上へと影を差した。

 

【雷雷(らいらい)と擂(す)り潰せ、クラウディシャドウボルト!】

 

 落とされた影に、黒傘から繋がり落ちる黒雷の威力。一気に轟いた魔力を圧縮した雷撃、その強襲が、ターゲットを痺れるほどに焼いていく。

 

「やはり魔法耐性持ちともなると、練り上げている敵の魔力を消し飛ばせど致命傷には至らん。こればかりは魔術師にとっては厄介、──だが?」

 

 しかし怒号をあげるようにフラッシュしたその黒雷は──敵の視界と注意を奪うには十分。

 

 合わせた第二の矢が、じっくりと構えた弓から美しい所作で放たれた。

 

 気の散った獲物の胸に見事に突き刺さった氷の矢を、遠方より笑い見るのは、黄金の瞳をもつ美のアーチャー、3年生のヴィーナス生徒。

 

 ヴィーナスが残心のかわりにウィンクをし、つづく第三の矢が、止んだ雷の後ろから現れた。

 

 白いマッシュヘアーと、その上に乗っかるのは艶やかな水色の髪。榎田椎名(えのきだしいな)は、愛用するしいたけベレー帽を背に乗せた水色の髪の者から受け取った。そして、その帽に魔力を注ぎ、水に戻したように大きく育った【きのこの盾】とし装備した。

 

 そして肩車をしながら、きのこの盾を前方の敵の背へと構えた。

 

「【風のカロリー】! はにゅっと──!!!」

「のこっと……【かっとび茸】!!!」

 

 

□榎田椎名《下》&紫紫檀(むらさきしたん)《上》

★異能冷蔵庫にてアイテム合成

クリティカルPオイル(Venus)×風のカード+42(登別海)×幸せのおにぎり(緒方結美)=幸せの風Pおにぎり

 

【かっとび茸】:

笠から突風を発するきのこ。

笠の部分は大変美味であるが、食べようとすると顎が吹き飛ぶので注意。

特殊武器のしいたけベレー帽の盾を通して、茸アイテムの効果を発動している。

 

【風のカロリー】:

華奢だが食いしん坊のシタンお嬢様が、風属性のおにぎりを食べたときに発動できる。

体内の魔力とカロリーを消費する大技。

隣接する者も含め風属性を大幅に高める。

□

 

 

 風属性を強化されたきのこの盾から【かっとび茸】の突風が巻き起こる。前方への激しいトルネードが、後ろで手下のモンスターを召喚し魔法を乱れ撃っていた邪悪な神官モンスターを巻き込み、吹き飛ばした。

 

 そしてその風のつくった道に待ち受けるは────当然、このブク高パーティーにおける唯一の男手。巡ってきた大チャンスに緋色の剣が煌めき、ぐっと柄を握りしめ構えた。

 

 雷に撃たれ、氷矢を射られ、突風に呑まれ────そのまま待ち受ける炎剣のフルコースなど冗談ではない。

 

 ドクンドクンと速く脈打ったハート型の顔が、怒り膨らみ赤く染まる。頭部から生える蛸足を腕から体からも無茶苦茶に展開し、神官モンスターは逆にこのさらされた風を利用して、剣士のピネスに襲い掛からんとした。

 

 厳かな神官服を突き破る数多の触手。邪悪な蛸は、もはや何振り構わず。その男の高まる危険な殺気をどうしても受けたくないと、己の殺気を四方八方に乱れ咲かせながら、おぞましい威嚇をする。

 

 縦横無尽に伸びる蛸足は────突如、宙に散りばめられた美しき青い小三日月の大群に切り裂かれた。

 

「おぉ、ニゴゥさん!」

「ヤレっ」

 

 頼りになる大人の女性、戦闘のプロ2号の放つ斬撃技が蛸をぶつ切りに料理しアシストする。絶妙なタイミングの援護射撃で、ピネスを目の前の任務へと集中させる。

 

 さらに間髪を入れず、輝く緑のドッジボールが飛んできた。虎視眈々と手柄を狙っていたのはこの女、元祖戦闘のプロ、池原叉鬼。ブク高で働く用務員が、もう1人の頼れる大人として男子生徒へ続けざまのアシストをする。

 

「にゃははは、しぶとくしくじったかー、──ヤッレぇ!」

 

「はは……じゃ!」

 

 危険な緑の全力魔法弾を、モンスターが咄嗟に起動展開した多重防御魔法陣が受け止めている。

 

 そんな並々ならぬ威力の弾を喰らいながら、赤く茹で上がる必死のモンスターの形相に、死が足音を立てていく。

 

 魔力と魔力がぶつかり合い激しくフラッシュする光景に、男は剣を握りしめ臆せず飛び込んだ。

 

 

「【エメラルドバーーンファイア!!!】」

 

 

 味方の魔法に突き刺した緋色のショートソードは同じ色に染まり、やがて混じわり────爆ぜる。

 

 爆光を上げるエメラルドにひろがる光景は……目の前のモンスターを消し飛ばす──眩しき勝利の色。

 

「フッフ。最後もピネスくんの鮮やかなクリティカルだな」

「ぬすんだあたしのお株が、よくもまぁ育ったねぇー」

「育っていない者はいない。それがお前たちブク高パーティーだろう」

「おぉ、校長よりいいこと言ってねっ? ニゴゥ? ねっ?」

「フッフ。そうだ、それが我々ブク高パーティーだ!」

「それなんも言ってないのと同じじゃん。繰り返しただけ、ブク高の校長」

「ふふふ木浪キミは……上手いこと言うな? フフ、私の気の利いた名言お株を奪うとは、成長したなニゴゥ生徒も」

「あっ、なんか落ちたよ校長」

「なんだシタンちゃん生徒? っておおっ!!! ふむ。長かったこのダンジョンも、いよいよクリアといったところかな、フフフ」

 

 激しい緑の爆光が明ける……戦闘は終了。やがて、強敵を討ち滅ぼしたダンジョンからのご褒美に、豪華絢爛なドロップアイテムの数々が焼け焦げた石床の上へと散らばっていく。

 

 此度の皆の活躍を、不黒文校長の手持つタコイカ学習帳は、まっさらなページに忘れずに自動記述していく。

 

 

□体育倉庫ダンジョン❹戦闘ログ

校長は勝利を確信し妖しく微笑んだ。

榎田椎名はダンジョン隅に見つけたきのこの救済に成功!

池原叉鬼の全力魔法【E:エクスプロージョン】、炸裂!!

浦木幸、魂のイチゲキ【E:バーンファイア】!!! 塵も残らぬほどに敵を焼き尽くした。

 

★ブク高パーティー…

池原叉鬼

浦木幸

榎田椎名

緒方結美

木浪智火瑠

ニゴゥ

Venus

水野サーガ

めぐる

冷蔵庫

不黒文校長先生たちは、戦闘に勝利した。

遭遇したこのダンジョンを支配するブックマスター神官DHOからドロップした珍しいお宝と、〝ブック〟を回収に成功。

 

これにて長きにわたり攻略された体育倉庫ダンジョン④は、完全にクリアされた。

 

 

《97F神官ダークハートオクトパスの大部屋にて》

□

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は──彼、彼女らがダンジョンに挑み続け見事な成長を遂げた、そんな勇敢な若かりし冒険者たちのお話のもう少し前まで遡る……。

 

 折られた赤表紙の古きページが、今、あなたの手に捲られていく──────。







本編、第1話はこの後から。様々なキャラクターが徐々に登場していくのでお楽しみください。
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