異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re: 作:山下敬雄
下手なラッパは鳴り響く、闘いの時は────投げつけられた。
⬜︎のこのこのーと❽
【起爆茸】:
柄のぶぶんを齧れば、柄が導火線代わりに燃えていきますっ♪おきのこさんの機嫌によりますが、だいたい5秒後に笠のぶぶんが起爆しまっす♪
⬜︎
木浪とサンチュに取説通りに齧られた【起爆茸】が5、4、3、2、1──起爆。
勢いよく腕を振り投げ捨て、通路に我先とたむろしていたモンスターたちを、いい具合に巻き込み爆発した。
しかし屍を乗り越え爆発の煙中を切り、部屋へと侵入してきたコボルトとゴブリン、モンスターたち。
そんなずけずけと許可なく迫り来るモンスターに対して、杖に込められた魔法【ロックボール3way】を木浪は手筈通りに連射。激しく爆発した喧騒を後ろに、今度はすぐさま前方から石弾が飛びゆく。
モンスターにとってもたまったものではない連鎖連続攻撃に、意気揚々と乗り込んできたコボルトとゴブリンは、腹や顔に乱れ飛ぶ石弾を直撃──。まだまだ有り余る魔力で、木浪が大盤振る舞いする地属性魔法に、リズム良く断末魔をあげ滅されていく。
しかし敵、モンスターの中にも強さのグラデーションがある。やはりいかなる策や魔法を講じても強引に突破してくるものもいる。
「やっぱかわしてんじゃないの!」
講じた策は1炸裂、2弾、3段構え。
木浪は己の異能を発揮する。その異能で引き寄せシンプルに操作するのは──後ろからの鋭い攻撃。
力強く振り回された杖は、強引に彼女の色をした魔力を通じて指揮する。向こう側、敵にとっての死角、壁際に散りばめていたレア武器の数々は、モンスターをバックアタックする鋭い奇襲と化す。
飛んできた石弾をひらりと避け舌を出しおどける小悪魔も、他のとは一味違うとニヤける体育の成績の良いゴブリンコボルトらも、不意に、背中を襲い刺されて大口を開けて絶叫しワラっている。
今できるだけ、張りめぐらされた策を効果的であろうタイミングで消費していく。トラップで現れた敵にはトラップを、休憩時間にタコイカ学習帳を読み込んでいた木浪を中心に、女子3人で即興で考えた策であった。
しかしまたも突破、石弾を浴びても背中を打たれても黒骨のナイトは止まらない。
あまりにも止まらず、引かれていた透明な線に、目ん玉のない窪んだされこうべからずっこける。
⬜︎のこのこのーと11
接着茸:
あんまりおいひふはいへふ。
へっひゃくほくはふごいのへ、はへるとひはふーひひへふははい────……
(お醤油でいただきました)
⬜︎
「アイツのアイテム全部使ってやるんだか──らッ!!」
「らッーーーー!!!」
ご丁寧に土下座し差し出されたされこうべを──叩き潰す。
豪快に打ち下ろした木浪の杖と、サンチュの剣は、粘着茸で引いた無色透明のゴールラインに辿り着いた2体のブラックスケルトンに、女子の全力で頭を撫でる褒美を与えた。
レアアイテム、レア武器を駆使して上手くいく。上手くいき涙などすっかりもう乾く。よろこびの笑顔をサンチュは見せ、隣の木浪も見合わせた。また一段と、二人はいい表情になった。
しかし戦闘はリアルタイム、女子高生が笑顔を覗かせても待ってはくれない。進入口付近、荒れ煙る中に浮かんでいた小さなシルエットが視界に見える。小悪魔はこの戦闘のうやむやに乗じて、ひそかに後衛で魔力を練り上げていた。あの油断していたピネスに浴びせた怪光線を、性懲りも無くまた発するつもりだ。
しかし突然、赤い下駄が真っ直ぐミサイルのように飛んでいき企む小悪魔の顔面、嗤う牙を砕いた。
「至極オマージュ、ふふん」
天狗下駄のop効果は、高まる風のマナと浮遊のスパイス。さらに小太刀の居合術が振り抜く水野サーガの脚に適応され、風の属性の威力が高まる。思いがけない校長の傑作和装侍ビルドであった。
サーガの履いていた二つの赤下駄がアニメのように、遠方で魔力を狡猾に練り上げていた小悪魔を狙い撃ちにし、そのイタズラな企みを強く阻害した。
現在回復役のサーガからの思わぬ気の利く援護も受けて、前衛で踏ん張りがんばる木浪とサンチュたちはさらに戦闘のテンションを上げ躍動する。
姑息に迫るゴブリンはサンチュが受け持ち、鋭い爪で引っ掻かれシールド値を減らされながらも、あのツギハギの背のように肉を切らせて──斬り裂く。
黒猫の剣の威力は十分、こちらの魔法師にモンスターを近づけさせない。
そして今度はこちらがまた魔力を練り上げた石弾を放つ。3wayで水平に同時発射される石弾を、またも古杖に練り上げ溜まった魔力量分、即連射。
手痛く手堅いレア杖から発する地魔法で、向かってくる敵を一つ一つ滅していく。
しかしやはり、ゴブリンやコボルトと強度の違うブラックスケルトンは、投げつけた小石の1撃や2撃で、仕留めるとはいかない。
(この魔力量ってのが残りもう半分51……引き寄せる異能にも魔力は使ってる様子だし、なんなの? あの馬鹿みたいに頭からっぽで、全然なんとなくじゃいかないんだけどっ!)
眉間にシワをよせる木浪には見えた──。ちょうど3体骨を軋ませ仲良く並び迫る、厄介でうまそうな黒骨たちがいる。そう見えた──
そして、なんとなく今はまだと、取っておいた秘蔵の仕込みを引き寄せた。
⬜︎タコイカ学習帳
慈愛の愛してるアイシクルフレイル★★★★★★★★★★★★
縛り状態時 魔法威力大 氷+7
縛り状態時 物理威力中 光+4
通常時 魔法物理威力大減 重量中減
敵撃破時 回復中
⬜︎
ぐわり、鉄音を震わせ──木浪の立つ方へと引き寄せられた鎖は、並ぶ三体のブラックスケルトンをまとめて背から巻き付き縛り上げた。
不意の鎖に捕まったそれらが抜け出そうと暴れる頃には既に女子2人は、アイコンタクトし連携。
鎖の両端、縄跳びのような短い持ち手と持ち手を、2人はそれぞれしっかりと掴み取り、
「「せーーーーーーーーのっ!!!」」
2人協力して引っ張っていく。2人の魔力をありったけ流しながら。
2人の魔力は伝い繋がり、拘束した骨身の深くまで凍りゆく音を鳴らしひびわれる。引っ張りあげる2人の力に呼応し眩く光り輝いた、状況に適した特製チェーンが、じわじわと凍った骨身をきつく縛り上げていき────
女子より細いウエストのみっつの骨束を、一気光り切り裂いた。
激レアフレイルを用い、左右に展開した先輩と後輩が、阿吽の息を合わせなんと協力プレイ。
その武器に込められた氷と光の属性をいかんなく発揮。2人の繋がった特別な魔力の鎖で、縛り上げたブラックスケルトン3体をまとめて拘束し滅した。
「ハァハァ……もうアイツいらなくない?」
「はぁはぁ…はいっ! あははは──」
悪のラッパ音は依然鳴り響く。おそらくの敵は、呼び寄せるこの階層ダンジョン18Fのスベテ。断続的に迫る水波のように、狭い石通路から部屋へと今にも奴らが押し寄せてくる。
しかしそれでも確認する赤い学習帳に刻まれた魔力量とシールド値の限り、ブク高の誇る強き女子たちは、まだまだ浸る勝利にも敗北にも遠い、俯かない。
歯を食いしばる木浪は、迂闊に接近してきたゴブリンを杖で強スイングし向こう壁まで弾きかえす。
サンチュの剣はじゃれてきたコボルトを斬り裂き、持ち前の元気さを取り戻せば苦はない、直近の体育の成績は5。
四苦八苦、ブレンド配合した3度目の薬草茶をうなされる彼に飲ませながら、サーガは木浪の異能で回収した下駄を履き直した。
バックから取り出したきのこの柄をまたかじり、導火線と気合いに火をつける。ラッパの音をかき消す爆発音とともに、熱量を増してきた18Fの闘いはつづく。
武器アイテムは無限ではない。使えそうなキノコが底をつき。己にもまだあまりその真価の分からない、あやふやな条件付きで引き寄せるだけの異能では、良い武器をいくら手元に置いてもさほど上手く扱いきれる気はしない。
なおも激しくつづく戦闘状況に、手強い黒骨のモンスターと小細工なし、真っ向勝負になる場面をついに迎えてしまった。
サンチュは右上から左下へと勢いよく剣を振ったが、ひらりと後ろにスウェーしブラックスケルトンはサンチュの切りつけた単純な剣筋を避けた。
勢いあまったサンチュは致命傷になりかねない大振りの大きな隙を晒してしまう。しかし刹那、サンチュの体は危機に瀕するそのシチュエーションに反射反応する。
直近の反復動作、練習の成果というものは身に少しは染み込んでいるものだ。先輩の言葉とともに思い返し、サンチュの体が動き出す。
⬛︎⬛︎
『あぁーサンチュお前俺とおなじ右利き? ならこう斬ってからァ、避けられたらァ、目潰しッ──パッて、こうするのもいんじゃね? ひだりな』
⬛︎⬛︎
「わわこのっ目潰しッ!!!」
空振った剣柄に添えていた左手。その左手を握りからパッと開き、突然点いた光が下から相対する黒いされこうべをライトアップする。隙だらけの姿勢から手のひらを相手方へと向け、照射する異能の光。
下かは照射された光は、黒骨のナイトの返す剣よりも当たり前に速く到達する。到達した眩き光は、悪しき死者を浄化する閃光となる。
悪しき存在であるブラックスケルトンは、サンチュの刹那振り絞る異能に照らされて、闇の内在魔力を枯らし土へと還った。
「アレぇ!? 目潰し……!? ぺしゃん……???」
「ぷぷ、目潰しどころじゃないじゃん(ところで骸骨に目ぇなくない)」
▼
▽
繰り出した思わぬ光量で悪への特効浄化攻撃。ブラックスケルトンに効くサンチュの異能は、重要な技へと、嬉しい誤算にも戦いの最中にパワーアップ昇華した。だが、その光で悪を一体浄化するのに使う電力、魔力量は安くはないようだ。
木浪の魔力量も残り30%を切り心許ない。木浪はこの先のやりくりを思考するが、思考しようとする頭に響くラッパの音がそもそもうるさい。汗ばむうなじを拭い、依然迫るモンスターの波をその瑠璃色の瞳で見つめながら────
(距離によって使う魔力量がちがう? コントロールも違うし、かといってさっきのチェーンみたいな大物も一回でも自分で触れたものならたぶん、かなりコントロールしやすいとおもう? じゃー遠くて一回もさわってないものは……集中すれば? いや、それより絶対量、それにタイミングと雑でもパワーといきおい──アイツごと引っ張ったときみたいに)
宙をステップしながらラッパを鳴らす特別な小悪魔がいる。木浪は睨みターゲットする。その下手な音色を奏でつづける金のラッパを、次の息継ぎの瞬間に──釣りあげた。
木浪はここぞに杖を思いっきり振るい、多量の魔力と狙いを込めた異能で、強くアイテムを手繰り寄せる。そして不意打ちの超能力に引っ張られ、小悪魔は上機嫌に演奏していたラッパからその握っていた手爪を引き剥がされた。
「いつまでも下手で上達しないんなら、いらないでしょッこれっ!」
からんころんと地に飛び落ちた金の笛を、木浪は急ぎその手に回収する。実戦の中の危険な賭けであったが、なんと想定どおりに異能の扱いが上手くいき彼女の企みは成功した。
笛がなければ増援はないはず。木浪が勝気な良いしたり顔でうるさい笛を盗み取り、面を上げた、その時──
ご機嫌な演奏を奏でていた笛を奪われた──。紫の小悪魔はその肌を蛸のように赤く染める。
走りながらさらに茹で上げられたように、真っ赤にまで染まった怒りの小悪魔が、背に生やしていた小さな翼を今大きく広げた。そして、その大翼で風を唸らせ、宙を一直線に猛進していく。
オレンジ髪の盗人、ムカつくその面へと噛み付かんと、我を失い悪魔は襲いかかった。
敵を呼ぶ魔笛を奪い上手くいったかと思えば、それは無害に笛吹くモンスターを酷く怒らせてしまうトリガーであった。
そんな生態など知る由もない。これは少女の策にも予想にもない、聞かされていない運命の裏切りに悪寒が走る。
ご機嫌を挫かれた極限の怒りからか、小悪魔は猛スピードで宙を走る。怒りのスピードとリンクし急速に成長していく小さなそのカラダは、やがて成熟した狂気の赤き悪魔と化した。
巨大な赤いカゲが迫る、乾いた息の根が凍りつく、もう対処する術を考える間も────
うなされ震える──身を蝕んでいたバグが除かれ、おだやかな寝息を立てる男がいた。そんな呑気な男に、ながれてくる遠い遠い記憶がある。
眠っているときにはなつかしく見ていて、起きた頃には分からず失せているような、そんな。
夢とちがい現実のまぬけな自分には、ひと雫ほども覚えていない輝かしい記憶が。
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⬛︎⬛︎
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
よく遊びにいっていた部屋がある。
親たちはリビングで紅茶を飲んでいて。
あの子がミニチュアのうさぎの城で遊んでいる。
その子はよくしゃべる子だった気がする。
でもそれがフツウなもんで、俺もフツウにその子と自然に話していた。
『ちかる、おひめさまになる!』
『え、なんでぇ?』
『おひめさまになりたいのー!』
『ちかるちゃんがおひめさまぁ? ムリじゃない? アメリカってのにいかないとぉ?』
『いかないっ! おひめさまになるの! ハーすけは、おーさま!』
『えぇ……おおさま?』
『おーさま!』
『めんどくさそー。おれ、えらいのやだ』
『ええーーーー!』
『おおさまとかこくみんがめんどくさいし、あっ──そーだつよくなる!』
『え』
『おれがつよくなって、おひめさまを守ってやるよ! こっちのほーがかんたんっ!』
『……うーん? わかったぁ、いいよ! じゃーハーすけは──』
うさぎのお姫様の前には、うさぎのナイトがいる。
その子はわらっていて
あれ……? これってぇ……変わったのは────
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⬜︎
吹かれたオレンジ髪は、後ろから前へつよく靡いた。そしてまた後ろへと流れる。行ったり来たり、忙しく吹いてきた一陣の剣風に彼女の髪が騒いだ。
飛ぶ赤い翼が二つに折れ、突っ立つ彼女の両側に鮮やかに散った。
それは断末魔さえも残さない。披露された目覚めたてのクリティカルな一太刀。
勇の証であるツギハギのブレザー、雷纏うエメラルドの剣、見慣れたいつもの黒髪に──ゆっくりと振り返るあの頃のような黒い瞳の輝き。
暗色の迷宮の地に立つ背が、今、勇ましく輝いている。
みひらいた瑠璃色の瞳の前には、今、目に入るスベテがその瞬間に──
遠く夢に憶えていた、それ以上によく育った彼の姿が、
夢みたいな現実に顕れてはツギハギになった背を向けて、
それらがスベテ振り返った時には、足りていた。
「そーそー下手な悪魔の伴奏は──いらねーよなぁッ? っはっは────……わりぃ……風邪でちょっと寝てた。──木浪」
「は? 今頃? めっちゃ遅いんだけど、──ハーすけ。ふ」
まだ冴えない寝ボケ頭をかきながら、浦木幸は苦笑いで背のオレンジさんを窺う。木浪智火瑠はそんなひどく遅刻した、まだ寝ボケている彼に──両手をやれやれとひろげて微笑んだ。
木浪を理不尽に襲った悪魔もどきを、遅刻ギリギリに屠った。申し訳なさげな表情の男の元へと、散っていた足音がにぎやかに駆け寄ってくる。
幼馴染、後輩、茶人侍、華やかな仲間たちの手厚い頑張りと汗が実を結び、
頼れるナイト、頼れる先輩、頼れる亭主であるブク校唯一の男子生徒、浦木幸はダンジョンにてやっと回復復活を果たした。
「せんぱぁぁぁぁあああああ!!!」
「至極気力、喝采感嘆! ……よくぞ!!」
謎の病から復活を果たした彼の元へと、前から後ろから女子たちが集まる。しかし久々のお目覚めの美少女たちとの再会も、ダンジョンはめでたく待ってはくれない。
ピネスは近寄って来た仲間たちの顔をざっと確認し、まだまだ騒ぎ迫りくる波へと、手持つ翠のショートソードを構えなおした。
「あぁー、んじゃそろったとこで……仕切り直しといこうか」
「はーいっ♡!!」
「至極御意!」
「は? なにが仕切り直し?」
「え?? ──あぁー、じゃなくてぇとにかくえと……ぅーー……ブク高ぶっ殺せええ!!!」
「ええっー!? なっなな急に賊みたいですよっ先輩!?」
「おぉ至極……風情が……」
「ここで三下ダサ台詞はいてどうすんのよ……ぷ」
もうこれでいくしかない……。ピネスは悪役のようなダサ台詞を訂正せず、苦笑いをやがて笑わせて、いつものように先陣を切った。
走り出し、黒骨の障害をその怖気のない剣で散らした。なつかしいツギハギブレザーの背を追う光景に、女子たちもやがて呼応する。
サンチュ、木浪、サーガは彼の後へとつづいた。パーティーに唯一抜けていた前衛のピースが再び輝きハマり、一気に攻守が切り替わった。中部屋に押し寄せるモンスターたちを、ブク高の4人は士気を一層上げ押し返していく。
▼
▽
⬜︎タコイカ学習帳
サンチュ:せんぱーい♡見てください──目潰し!
ピネス:ハッ???
サンチュ:どうですかぁー♡先輩に教えてもらったヤツですっ!
ピネス:いやいや俺そんなの1ミリも教えてねーぞ(目潰しどころか跡形もねーじゃんっすごいな)サンチュおまえって……アッ!! おまえエクソシストなのか!?
サンチュ:えっえくそしす!? なんですッ!?なんですかーソレーッ!? しりませんよーーっせんぱーい!?
ピネス:お坊さん!
サンチュ:急にっ!? なんでぼんさんなんですかぁーゼンゼン普通に光ってるだけですよーー! もーぅ!
ピネス:ところで俺は何にかかっていたんだろう?
サーガ:至極色々、熱、毒、麻痺、脱力、脱水、恐怖、石化などここに記されるかぎり
ピネス:熱ぅドクぅマヒぃ……石化? え、まてまて他は常識の範囲で一旦のみこむが、俺、石化ってぇ石になってたの? ヤバくないかそれ? すんごく?
サーガ:はい靴下を拝借、脱がし確認した爪先からゴツゴツじわじわと……ですが至極ご安心、もう一度罹ってもサーガの薬草茶術が完璧にお治し
ピネス:それはすごいな……ありがたいけど、今日はもう満腹だぜ。けっこうなお点前! あっそーだ、看病回復まで……さんきゅーなサーガ?
サーガ:しっ……至極当然っ!
ピネス:気をつけろレア武器持ったゴブリンがいるぞ!
ちかる:は? あんたのせいじゃん
ピネス:俺のせい……なのか?(たしかにもとは俺の異能だ)
ちかる:まっ、ちょっとぐらいなら協力してやってもいいけど? あんた微妙に頼りないしね。──やっぱハぬけだからかな……ちょっとギガントハピネスに改名してみたらどぅ? あとそのブレザーなんなの? 貧乏?
ピネス:うーー……まてまて悪口は一個ずつ! ──貧乏ではなぁい! ってギガントハピネスってなんだらほい!
その後前衛にピネス、それに回復役から侍へと成ったサーガもその後ろにサポートし加わったことで、ブク高パーティーの火力と勢いは増大した。
先ほどまで寝込んでいたことをけろっと忘れたかのように、恐れを知らない武勇でモンスターどもを、少々なまっていたその翠のショートソードの餌とする。
もはやモンスターがただのクリティカルを出すためだけの的なのかと思えるほどの、いつも以上のラッキーな剣の調子を取り戻していく。
ピネス:そういや俺の緋色のショートソードさんがないが……まいっか!
⬜︎
「で、コイツはなにハーぬけ」
「はは、しらねぇ……お呼びでねぇ」
押せ押せムードだったブク高の面子は、退がる。突然現れた大きな黒骨の産物──その怪物に。
それが何故現れたのか、倒しすぎ積もり積もった骨たちの恨みなのか。これまでとは倍いや3倍、サイズ違いの六腕の黒骸骨、【ビッグブラックスケルトンエリート】がピネスたちの前に姿を現した。
その骨太かつ見たことのない生物の骨格構造、黒くメタリックな硬質な光沢を帯びた風格は、4人でガンガンいくというコマンドを躊躇わせるほどの聳え立つ怪物に見えた。
そんな突如現れた真っ黒なボスの厳つい全身全貌を見上げた女子たちは、彼の背におそるおそる期待して問う。
「で、ヤレんの? 引率リーダー?」
「ヤレるんですか!? せ、せんぱい!?」
「微力ながらお手伝い……? なんとも妖怪あやかしガシャドクロのたぐい……下駄を飛ばすべきでしょうか?」
「わかんねぇけど……あっちもアレが目覚めちまったからには、寝てる場合じゃないんだろうな。──あぁ、ちょっとヤラせてくれ。あとわりいけど、俺微妙に頼りないらしいからっ! 他の可愛いのを頼む。厳つい骨したアイツは──俺がまぁ、近づいたらなんとかなってるだろうー! じゃっ、ブク校よろしくっ!」
「あはは……むしろ起きてから頼りにしかならなくない? ですかぁ?」
「至極謙遜、しかしそんな亭主も行雲流水、ラーゴム」
「まぁハぬけだしね、ふっ。しかたない、寝ぼけた馬鹿を援護するか。こっちはこっちでちょっと強くなったしね!」
真っ直ぐに駆け出したその背は恐れを知らない戦士。ダンジョンに足をつけ、ダンジョンで剣を握り、持ち前のなんとなく道の精神を拡大解釈し、流れる流れに身を任せてゆく。
真っ向から向かってくるモノは腕の数だけ殺気を重ね放つ敵。戦場に落ちていた得物を手に取った目覚めたてのガシャドクロの怪物は、その剣と骨太な長腕を振り下ろした。
黒骨の行く末を見極め避ける。ピネスの雷剣は昂り、切先からのご挨拶、青雷のマジナイを撃ち放った。
▼
▽
銀の槍が投げ飛んでくる。金の斧が大地を引き裂く。
剣と剣は一瞬絡み合い、しかし骨太な大骨格から繰り出す敵の膂力に細身の青年は弾かれる。
さらに容赦のない追い討ち、魔力を補充したルビーのロッドから魔法の火炎を体勢を崩した戦士へと放射する。
陽気の魔力高まる翠の刃で、吹いてきた陰気な火炎マジックを弾き斬るも、その身に受ける熱い魔法ダメージまでは免れず。
「あっつぅぅ……!! ──まったく1人何役の骨役だよ。って……なんかまたこっちが売りつけた武器を使ってないか? 敵さん?」
「至極当然っ……六つ腕の妖怪……」
「人間ってのはなんで二本腕なのかってダーウィンさんに問いたい、けどッ……!」
凍らせたチェーンフレイルを剣柄にぐるりと巻き、ピネスは手を焼く魔法熱の余波を凌いでいた。
そして、今なんとなく手に取ったアイテムにあるプランを思いついた。そろそろだと実行に移そうと、ジャラリ、握る鎖を伸ばしながら────
普通のスニーカーは焦げた地を蹴り、前へと駆け出した。
(俺より頼れる緋色の剣は落としちまったし、さっき試した遠くからの雷マジックはあんま効かねぇご様子だ。てことは? うーー……やっぱコイツをどうにかブッ刺す、特大クリティカルしかねぇ! 待っていても杖にぐんぐん魔力が溜まってくかんなぁ! ってこういう時、校長が練り上げた魔力の色をよく見ろって!)
※通常魔力を練り上げる際、その杖や剣の武器入れ物を色付きの水が伝い底から満たすような兆候がある。魔力のある者ならばよく目を凝らせば、ソレを可視化することができる。つまり相手の魔力残量に注視することは、ダンジョンの戦闘においてなかなか重要な事なのである。
ガシャドクロはしれっと使える六つ腕のうちレアな杖を2本に換装した。杖の中を質の良い魔力を練り上げながら、器用に満たしていく。杖に仕込まれた魔法の発動条件を満たすためのいわばエネルギーを充填していく。
ピネスが蛮勇にも突っ込み仕掛けたのは迷っている時間をかけるほど、手痛い魔法がまた飛んでくるから。裏を返せば魔法を練り上げているときはその二つの腕はお飾り、残る四つ腕との勝負だ。
そしてここが勝負時というものを独自のセンスと、もらった熱をアイシングしたその手で判断した。
放たれた投げ槍と投げ斧を紙一重で潜り抜け、刻々と迫り迎えた勝負時。
ガシャドクロは左右から同時に、剣を地に水平に滑らせ、向かって来た人間をギロチンに処すように挟み込む。
勝手に敵の手に盗られた威力十分の双剣が、その幸運の持ち主を真っ二つにせんとする瞬間。殺気交わる刃が迫る、鋭く危うい光景を──
「よっとォォ!! 盗みは手錠だぜ」
迫る双剣のギロチンに対して鋭くスライディング──鉄と鉄の交わるスレスレを擦れ、滑り避けた。
さらに、クロスした隙だらけの骨腕に、氷の手錠をとても器用にかけた。
幸運か無謀か嘲笑うような回避運動を成功させ、まだまだノッてきたこの男のテンション勢いは止まらない。
骨の手首に繋いだ氷のチェーン、それをそのままブランコ代わりにして、股下を通り抜けた勢いのままぐわり──そびえる背骨のコースに添い上昇する。
それはあまりにも一瞬の駆け引き、あまりにも一瞬の駆け引きを可能にするスピードバフに乗って。
パチパチと虚空を叩き鳴り響く、痒い背に向けて器用に合わさる残り四つの骨手は、もはや勢いに乗り上昇する自分への拍手応援にしか聞こえない。
全ての骨の手拍子を潜り抜けて、ピネスは一角の骸骨悪魔のテッペンへと躍り出た──
⬜︎不記載
スライディングスピード125%
空中破壊力251%
空中クリティカル破壊力527%
※しあわせ茶 レベルアップ状態+1
⬜︎
舞い降りた逆さの剣は、ツノ付きのされこうべへと、垂直落下──。理屈ではない、魂をありったけ込めて、その極限以上に昂る雷刃を黒い頭へとブッ刺した。
「【ピネスサンダーーーーァ】!!!」
クリティカルで数多の雑魚を討ち、極限までストックされた質のいい雷は、大物にブッ刺した今が本当の使いどき。
伝う雷は巨大骨格を青く染め上げ満たし、満たすだけでは飽き足らず。青い大骨の電柱と化し、ボスの率いる眷属とピネスの敵をターゲットする。青雷を蜘蛛糸のように広げ繋がり、てっぺんから目につく全ての敵に感電させていく。
「さすがにいつまでもゴブリンさんちのシチューやサンダーってのも──なっ?」
青く染まった痺れる骨の電柱は、地を這う小物もろとも剛雷を喚び、爽快に一掃する。
激しく炸裂したのはクリティカル陽術【ゴブリンサンダー】あらため【ピネスサンダー】。
氷のチェーンで天高く舞い上がった浦木幸は、舞い降りる。
この日出た最大のクリティカルは、悪魔もゴブリンも小骨も大骨も、仇なす部屋中の敵をスベテ滅する勇ましき雷剣であった。
化物を屠った戦士にささる、あの頃のような瑠璃色の眼差し。その轟きに吹き飛んだ藁の笠からこぼれる、異国の金色の髪のかがやき。ぴょんぴょんと大いに喜び飛び跳ねる、後輩からの万雷の拍手が流れる。
ブク高の4人を襲った長々しい戦いはたった一振りの幸運と実力の剣で捩じ伏せられ、痺れる刺激的な終わりを迎えた。
大敵の討伐のあかしである黒い一本角が、やがてからりと音を立て、地に刺さり落ちた。
⬜︎タコイカ学習帳
発動、極大雷魔法。
巨敵ガシャドクロBLACKのされこうべにブッ刺した魂のイチゲキは、彼に仇なす全てをもろとも葬った。
浦木幸、サンチュ、木浪智火瑠、水野サーガは戦闘に勝利した。
×ビッグブラックスケルトンエリート
あらため
○ガシャドクロBLACK
《不黒ダンジョン18F中部屋》
⬜︎