※この作品はR-18です。

異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:   作:山下敬雄

2 / 60
1 校長命令、初ダンジョン

⬜︎タコイカ学習帳

20XX年いつぞやの暑い夏休み──

地元では有名な学校である不黒(ぶくろ)高等学校に通っていた生徒たちが、見知らぬ世界へと学校の校舎ごと飛ばされてしまった。

突如暗転して始まった世界は、暗雲ただよう隔離された異境に在り。

外へと繋がる妖しげなゲートが、ぽつんと一つ……赤く唸り渦巻きつづけ、そこに禍々しい口を開けているだけであった。

 

一言でこれを表すならば

 

ダークファンタジーでダンジョンなミニチュアな断片世界

 

そんなふざけた世界……である。

 

待てども耐えども陥ったこの非現実的な状況は変わらない。

 

この先に八方塞がりの逃れられない死があるとするならば、この希望と絶望のいりまじる異能に目覚めた私は覚悟する。

 

進む道はわずか一方だけ……大口をあけ妖しく佇んでいる未知のダンジョンに、死んでいった皆で挑むと

 

 

 

不黒高等学校校長 不黒文(ぶくろふみ)

⬜︎

 

 

「ついにこの学校にのこされた男子はキミだけだ、幸(ぴねす)くん」

 

 この日校長室に呼び出された、名を浦木幸(うらきぴねす)なる男子生徒は、立派な黒いチェアーに掛ける女にそう告げられた。

 

「そうですね? なんか日に日にみんな見かけなくなったぁ? 消えましたし?」

 

「消えたんじゃない死んだんだ」

 

「死んだ? えっと……なぜ?」

 

「ダンジョンに挑んだからだ」

 

「だから、それが……なぜ?」

 

「この学校の食料や水の備蓄がもう何日ぶんもないのだよ、おかゆ薄かったろ?」

 

「あぁー……それは大変ですね? たしかに塩加減、まえより薄かったかも?」

 

「そうなのだよ、だからキミもこれから他の無念にも散っていった男子たちと同じように、ダンジョンへと向かい塩や食料をさがすべきだ、絶対服従の校長命令で」

 

 彼の目の先に居るのは右目に黒い眼帯をつけ、高級シャンプーで手入れされた豊かなプラチナロングの髪をもつ不黒高校の名物女校長。

 

 その校長いわく『眼帯をつけた校長先生がいたらおもしろいとは思わんか?』という理由で、いつもそれを装備しているらしい。

 

「それってぇ……ありなんですか?」

 

「なに? ありとは? なるほど……キミは自分の代わりにか弱きぃ……こんな事態では守るべき女子生徒たちにぃ……未知のダンジョンに行かせる気なのかピネスくん? まさか?」

 

「それはぁ……俺より体育の成績がいい女子なら(側転できない3ですし俺)そうなりますね、たぶん?」

 

「たわけ、体育の成績などダンジョンではそんなに役に立たん! 3はキャラクリの標準値だ誇れ、側転は今度私が直々に教えよう」

 

「えっとまぁ……そうですね(そうかなぁ…?)」

 

「キミは、いまいちやる気というものが感じられないな、どれどれ──」

 

 おもむろに席を立ち、ゆっくりとヒールの音を立てながら──彼女は浦木幸の方へと近づいた。

 

『ダンジョンに行ってくれたらぁ、校長せんせいがキミがおもうぅエッチなことなぁーーんでもしてあげる♡』

 

「なっ、なんですか??」

 

 さらに正面の彼をじぶんの胸へ抱き寄せ、すれちがう彼の耳元で、えっちな猫撫で声でその呪文を囁いた。

 

 浦木幸は、いきなり吹き込まれたその生っぽい微風に驚き、こそばゆくなった耳を撫で抑える。

 

 そんな初心なリアクションを見せた男子生徒の元から、鼻で笑い、口角をくいとあげた女校長は一歩離れた。

 

「ふむ……こうすれば、みんな何故か不思議とやる気をだしイクからなぁ? なんでだろうなぁ?」

 

 顎を手に当てた校長はおどけたように言うが、左の瞳孔が斜め上を見上げていて、どうもしらじらしい。

 その美貌とその平均よりもかなりメリハリのあるスタイルで、実にしらじらしい。

 

「もしかして……」

 

「あぁ残念だが、誰ひとりとてぇ……この手でこの胸でダンジョンにイッた生徒を『おかえり♡』と抱きしめることはなかった……かなわなかった……くぅ……」

 

 おどけて広げていた手を今、強い握りこぶしにする。校長は一転、死んでいった生徒を抱き寄せ想い、胸が締め付けられるような悲嘆の演技に暮れている。

 

「へぇー(校長のソレで俺以外の男子が全員ダンジョンに突貫して死んだってこと…? たしかに柔らかくてなんか当たっててデカくてぇ……すごく……いい匂いはしたけど……)それは気の毒に」

 

「そうだろう。だからさぁ、今度はキミがいきたまえ! ダンジョンに! 私、校長せんせいのために!♡」

 

「えっ、えぇーー……俺がぁ?」

 

 お茶目にウインクする不黒高校校長、プラチナ髪に眼帯をそえた、分類美人さん。

 

 この学校においての絶対的上位存在である彼女は、ただの黒髪をもち、ただの黒ブレザーを着こなす、一介の男子生徒役のピネスくんに、ダンジョンへ行くようにその笑顔で命じた。

 

 

 

▼

▽

 

 

 

⬜︎

まぁ待て何も手ぶらでキミをイカせるわけではない。この今キミが熱心に読んでいる薄いタコイカ学習帳には、これまでの皆でつないだ冒険の記録がある。その情報をもとにダンジョンを慎重に進めていけば、きっとキミは食料や水や塩をGETし、また愛しの不黒高校の門をくぐり無事帰還を果たすことができるだろう。

 

なぁーにこれまであつまった情報によると、ダンジョンはモンスターや宝箱のでてくるありふれたゲームのようなものだ、あまり緊張しすぎず気楽にな。

そして朗報だよろこべ男子生徒。誰にも1人に1つ、この世界に迷い込んだキミたちには【異能】というものがある。

ピネスくん、キミにもわかりやすくダンジョンで役に立つ異能がきっと発現しているはずだ、それも理解応用駆使しながら進むといい。

なぁーにこの私の慧眼がキミにその才能があると告げている、できるさきっと、挑めないダンジョンなどないのだから。

 

スペシャルな校長先生 不黒文♡

⬜︎

 

 

「うーーーーーうーーーー、なるほどっわかんね。──ま、いいやイケと言われたんだ、いさぎよくこのまま真っ直ぐ進んで──行こう。きっと食料を取ってこいは建前ってやつで、ワンチャンダンジョンで何か成果を持ち帰るのに期待して生贄に・捧・げ・るのは……理にかなっている……のか??? もしれない……。あぁー…………この学校の校長はちょっとおかしい気もするけど……とくにどこに嘆いても仕方がないな、お鉢が回ってきたっていうやつかな? 最後ぐらい、そうっ、ポジティブでいこうか」

 

 既に、校長にダンジョンにつらなると教えられた例の赤いゲートをくぐり、暗転──

 

 そこはおそらく、片手に開くタコイカ学習帳に記載されている〝ダンジョン〟その中にいるんだろう。

 

 ピネスはすこしだけ愚痴を吐きつつ、すぐにこの見たこともない環境に、追い込まれてうっすら掲げた己の覚悟と共に順応していく。

 

 そして暗い石通路をとぼとぼと慎重に歩いていた彼は、やがて暗がりから見えてきた自分より背丈の低い緑の厄介者を、その目に発見していた。

 

「とりあえず今ぶち当たった緑のこいつはきっと、あぁー……ゴブリン。戦い方はえっと」

 

 

⬜︎タコイカ学習帳

ゴブリンだ、気をつけろ!(副島)

⬜︎

 

 

「おっ、おぅ…そうだなゴブリンはゴブリンだからって気をつけなきゃ! タコイカがなきゃ激しく油断しているところだった、ありがとう卓球部のフクジマぁぁ! 話したことないけどおおおおさすまたああああ!!!」

 

「ッ、ておれの武器は刺股なのかよ! バットより手に持ったことねーよ俺それぇ! いつ手にすんだよおおお! って今かよ!」

 

⬜︎タコイカ学習帳

あぁ、男子諸君に大人気♡な金属バットが、もうダンジョンに置き傘ならぬ置き金属バットされて売り切れていてな。ちょっくら私が一肌脱いで、事前にぃキミのためにぃ♡用務員室からよさそうなレア装備を一本拝借してきたのだーーーー。まぁこれも大切な体育の授業の一環だとおもって、刺股でゴブリンとかオークとかドラゴンの首を取り押さえる覚悟で、えいやー♡っと、がんばって障害になるモンスターを滅してくれピネスくん。

⬜︎

 

 赤い学習帳がひとりでに開き、ぽつんと立ち止まった彼の話し相手にでもなっているかのように語りかける。ノートにとっては既知の情報を羅列し、唖然とする彼の目に示されていく。

 

「めっちゃ他人事っうおおおおこうならヤケだ、さすまたあああ!!!」

 

 奇怪な声を放つのはどちらも。

 

 たった今遭遇した、鋭い爪牙と尖った湾曲ナイフを持つ恐ろしげな風貌のゴブリンを相手に、若さと勢い任せに突いた銀の刺股が唸る。

 

 

 

▼

▽

 

 

 

(刺股は思ったより使えたーー。さすが防衛グッズだけある。金属バットよりリーチがある分、側転のできない体育3の俺にはうってつけだったのかもしれない? ゴブリンの爪もナイフも届かない刺股の制圧力と圧は、モンスターに対しても有効であり、戦闘に必死の俺はこれを叩くのも有効だと途中で理解し、バシバシとその銀色のリーチでゴブリンを一方的に叩き続けた。そしていつの間にやら勝利を手にしていたようだ。あぁー……俺の異能は……【さすまたへの理解度UP】か?)

 

 攻撃を与え続け倒し終えたゴブリンは、通路の石の地に溶けゆくように沈み消えていった。

 

 少し不気味な光景だが、とりあえず得たモンスター相手の初勝利を、ピネスは自分でも驚くほど冷静に分析しよろこんだ。

 

 そして今ピネスが見届けた、溶けて失せていったゴブリンの屍。その消えゆく一匹の屍の中から、緑柄の剣が忽然とあらわれた。

 

「あ? なんだ?」

 

 

⬜︎

武器はモンスターをたおすと確率で稀にドロップする。

このそえじ…違ったタコイカ学習帳を持ちながら手に触れれば、それがどんなアイテムか詳細に分かることだろう。

ゲームでいう識別や鑑定の役割を担うといったところだな。

手に取らなければならないのは、玄人視点ではちょっと危うい手順だが……まーまー便利なものだ、ぜひとも活用したまえ。

⬜︎

 

「ぅーーなるほど……とりあえずタコイカ校長の言うとおりにやってみるか」

 

 浦木幸は、取ってくださいとばかりに落ちていたその緑の柄を拾い、握りしめた。

 

⬜︎

ゴブリンソード★★★★★★★★★★

効果

振るとファイアボールが出る。

振るとサンダーボールが出る。

振るとウォーターボールが出る。

振るとカオスボールが出る。

振るとライトボールが出る。

⬜︎

 

「星星星々ごぶり……ん? ずいぶんと★だらけだが? 文字化けかなにかか? 詳細なのかこれは?」

 

 ピネスには、そのノートに書き連ねられた星マークの意味が分からない。情報は言うとおり出るには出たきたが、ピネスはしばらくノートを睨めっこをしながら考え込んだ。

 

「武器の名前はゴブリンソード……いかにもゴブリンからドロップしたことを示すその場で取ってつけたような感じの名だが、剣ってだけで刺股よりはマシか? この刺股くんもなかなか馴染んできたんだけどなー? って刺股のことは一旦置いといてっと、えーえーなんだ? このゴブリンさんちの剣を振ると、なんか出るらしいってのが怖いが……まぁお得な通販かチャーハンぐらいに思っとくか」

 

 とりあえずものは試しだ。

 

「えいっ」

 

 ピネスが剣を軽く、通路先の暗がりに向けて試し振ると、カラフルな玉がぷかぷかと切先から浮かび進み────

 

『ぎょべええええええええ』

 

 やがて何かバケモノの断末魔らしき奇声が、ピネスの耳にするどく響き抜けてきた。

 

「…………はい? ──なんかぁ、出たな……あちっ!」

 

 ピネスは興味本位で剣の切先に触れた。目玉焼きを焼いた後のフライパンの縁でも触るように、それは熱くなっていた。

 

「ちちち……そりゃ熱いかよって。なんかすっげぇ魔法っぽいもんがドゥルドゥル出てたもんな……まぁいいや。──あぁー、それより振ると出るって条件が、なんか曖昧だな? 念じるにしても突くにしても、この感じ、剣だとおそらく狙いがつけづらいんじゃないか? さっきのもいくつかの玉はダンジョンの壁に、うん──ぶち当たっていたよなー。あ、そうだ」

 

 通路先には、幾つか小さなボールが衝突したような焼け焦げた跡が残っている。

 

 ぼんやりと熱帯びた切先眺めながら、あることを思い立ったピネスは、戦闘になるので投げ捨てていたリュックからごそごそとアイテムを取り出した。

 

 探り見つけた補修用のテープ類で、しっかりテーピングをほどこし固定していく。ピネスはなんと刺股の先に、先ほど拾い上げたゴブリンソードを取り付けていた。

 

 これで元々の長所であった得物のリーチをさらに伸ばし改善し、さらに副次効果で出るおまけの魔法玉の命中精度を上げることにも成功したように思えた。

 

 思わぬアイデア商品の爆誕に、ピネスは目を輝かせ、思わず剣とも刺股とも言えないそれを天に向かい掲げていた。

 

 

 

 

 

 

 その後────

 

 刺股改を、近づいてきた目標に対してはそのまま長いリーチを活かして突き、遠中距離の目標に対しては柄を回転させ、目視し見つけたモンスターを、放たれた先制射撃の魔弾がカラフルに滅していく。

 

 浦木幸&刺股改の破竹の快進撃はつづいた。

 

 やがて、次の舞台へと連なる暗い石階段を降りていき、辿り着いた────《ダンジョン地下10F》。

 

(単純に振ると狙いがずれるから、柄を持ちガトリング砲のように回転させる、この境地に俺は辿り着いた。もはや俺の刺股あらため刺股改あらため刺股ダブル改は、魔導兵器である)

 

 ゴブリンソードを取り付けた刺股は、トライ&エラーの末に最適な仕上がりになった。強力な武器を手にしたピネスが何度も味わうその破壊力に浮かれていると、

 

 

⬜︎

とびらミノたにきおつげdfwxjh《副島》

⬜︎

 

 

 

「……なんかここでぇ死んだっぽいな副島……書き文字から悲哀と無念が伝わってくるような……。てかここまでフクジマしか情報提供者がいないわけだが……どうなってんだ、まさか最初のゴブリンで油断して死んだわけじゃないよな他の男子ぃ。……はぁ──まぁいいや、このいかにもな扉の先が、副島のカタキだ! そんな話したことないけどぉ!」

 

 浦木幸は、副島の残した最後とおもわれる情報に従い、慎重に目の前にある重々しい血色の扉を開いた。

 

 そして、通路から脱いだ靴を一足、扉の先の景色に向かい投げ入れた。

 

 すると、宙に浮いた一足の靴は、天から降りてきたとてつもない重量の石斧に粉砕され失せた。

 

 地を揺るがす石斧の破壊力と、ここまで伝わる二足の巨足の衝撃。そして、かがむ巨大牛人間の赤目が血走る恐ろしい色合いに灯り────細い通路に構える銀槍を持つちいさな人間を、鼻息荒く睨みつけた。

 

 

「タコイカ学習帳おおおおおお!!!」

 

 

 ゴブリンソードを2本、U字に又分かれした刺股の先端に取り付けた銀槍は、ピネスの叫びに呼応するように回転しだした。

 

 色鮮やかな魔法弾を射出するガトリング砲となり、今彼が真っ直ぐに刺し示した巨大ターゲットに向かい、連続炸裂していく。

 

 

 

▼

▽

 

 

 

 命を賭けた勝負とは時に呆気なく──

 

 通路先の遠距離から一方的に魔法弾で狙撃された、巨大牛人ミノタウルス。ミノタウロスは登場間も無く怒り現れ、真っ直ぐ冒険者に走り迫り仕掛けるも既に遅く、カラフルな魔法弾を浴びせられ続けたその焼き焦げた巨躯は、やがて力なく地に伏した。

 

「おー……おおおおおーーー、やったよ副島、俺やったよ。なんか廊下から一方的に終わっちゃったけど副島おまえ、もしかしてまだどっかで生きてる? ねぇ? 先イッた?」

 

 あまりにも呆気なく終わったので、浦木幸はおそるおそる周囲に他に潜むモンスターやトラップ、男子生徒の副島がいないか目視確認しながら、ミノタウルスを屠ったその大部屋の中へとお邪魔していった。

 

「んっアレは」

 

 しかし、副島らしき人物の姿は見つからず。大部屋の中でただ見つけたのは、広々な空間にぽつりと佇む邪悪でグロテスクな悪魔石像。

 

 ピネスは今目に入ったそのシンボルが、とても気になってしまい、

 

 同時に何故か芽生え始めた使命感におそるおそる、その禍々しき彫像に触れた。

 

 指先が触れたそばから、目の前が白く浄化されてゆく────。

 

 

 

 

▼▼▼

▽▽▽

 

 

 

 

 すこしこんもりと盛り上がった芝生の小丘に憩うのは、不黒高校のシンボルである女神石像ガイア。

 

 その女神様に、黒スーツ、白のブラウスを纏う教師姿で念入りに祈る人がいる。

 

 プラチナ髪は今不意にふいた不気味な風になびき、それが胸中にあるいっそうの悲しみを掻き立てる。

 

 ゆっくりと目を瞑り、決してピクニック気分ではない青いビニールシートの上に両膝をつく。小さな十字架のアクセサリーをぎゅっとその手に握る。そして彼女はつい先刻、生で会ったばかりの彼の顔を頑張って思い浮かべてみる。

 

「あぁピネスくん。キミはなんとなく生きている感じの死んだ目をしたごくごく平凡な体育3のせんせーの目を見ず谷間とおっぱいばかり見て話す応援しがいのある可愛い生徒だったが……その死にゆく勇姿を」

 

『なんの十字架』

 

「をわ、わたぁ……?」

 

「それ、なんの十字架?」

 

 女神が発する男らしい呼び声に、トツゼン体外へと汗がじわりと分泌される。握りしめる黒く染まった十字架に、熱心なこの祈りが通じたのか。

 

 今、目の前、女神の肩の隣に友達のようにもたれているのは誰か。ぶわりと──顕現し、お姿を現しになられたのは、さっき彼女が思い浮かべたそんなツラ。

 

 いやそんな顔よりももっと、死んだゴミを見るようなどぎつい黒目をしていた。

 

 背負うリュックを見るからにパンパンに太らせて帰還を果たした男子生徒。浦木幸は、目の前の両膝をつき上目遣いでいる、眼帯プラチナ女のことを訝しみ見下す。

 

「……ピネスくんおかえり! はいこれ────おっぱい♡」

 

「とりあえず黙れぇいオンナ」

 

 ウインクしながら舌をぺろり、ブラウスを指かけ下げて、深い谷間を強調する。その校長もといオンナの、媚びた上目遣いのセクシーポーズで披露された、悪気のないおかえり♡に。

 

 浦木幸、ピネスくんはとても冷静な声色で、豊かに揺れる、汗ばむ谷間の肌を見ながらツッコんだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。