※この作品はR-18です。

異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:   作:山下敬雄

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38 【ハイナミTVをこれからボコボコにするボコラボ生配信!!!】

 やっとこさやる気を見せ、剣を手にし勇猛に頂上を目指すナイトがいれば、また別の道から進む武装したプリンセスもいる。しかしどうやら彼女のご機嫌は斜めのようだ。

 

 サンチュ奪還パーティーの一員に名乗りをあげた木浪智火瑠は、校長の自慢げな笑みと共に見上げるほどに聳え立つダンジョンへと、堂々の割り込み入場をしたものの。

 

 結果、あれだけ結束を固めていた味方集団はどこへ飛んだのやら、見知らぬそこに立っていた時には、彼女はぽつんと独りになっていた。

 

 いつもの『は?』の短い反応の言葉と、そこそこの舌打ちを鳴らしながら、しばらくじっと待っていたものの、誰も来ず何も解決せず。

 

 賢い彼女は溜息を吐きながらも理解した。彼女はそれ以上の不満の言葉は立ち止まりながらは垂れず、待つことをやめ、迷い込んだ地を先へと向かい進んでいた。

 

 そうまで至った原動力はやはり、囚われの姫(サンチュ)を助けるというはっきりとした目的があったからか。いつもより勇ましい覚悟を決めたナイトが肝心な時に傍にいないのは腹が立つが、木浪にとってはそれが一番の前へと進む推進剤となっていた。

 

 

 そしてのらりくらり迎えた10-H階層。

 

 すいすいと進めたが、ソロでの戦闘回数は指折り片手で数えられるほどのものであった。このルートの敵対するモンスターの攻勢は特段激しいものではなかったのだ。それはそれで何か嫌な風が吹いている気がするものの、オレンジ髪の冒険者はただただ、開けある道を順調に走り抜け進んでいった。

 

 そして、薄暗い舞台袖の通路を抜けた先に待っていたのは────

 

 

 スポットライトは木目の舞台を照らし出す。どこか懐かしい深い赤のカーテンは開かれずに、まだ閉じたまま。

 

 きっと準備中であったのか、棒状のチョコ菓子をむさぼり、だがしかしメイクはバッチリの演者がパイプ椅子に座っていた。

 

 そして演者は座るパイプ椅子から、不意に舞台袖からやってきた侵入者を横目に睨んだ。

 

 謎のオフモードにお邪魔したものの、侵入者の女子高生はダンジョンにバイトの人がいるとは思わなかった。事前の情報で聞かされていたのは連れ去られたサンチュとサンチュの兄がいるということ。

 

 サンチュが、メイクを盛ってグレた目の前の小ピエロになっているとは考えられない。

 

「は? だれ?」

 

「──!? そっちこそだれ!」

 

 開けた場所に出たと思えば不意に現れた女。モンスターではなさそうな黒いゴシック衣装を着た演者に、木浪は驚く。演者の女の方もオーバーリアクションをし、それ以上に驚いているようだ。

 

「……まぁいいや、はぁ……疲れたんだけど」

 

 女演者の顔カタチ衣装や小道具をパッと眺めた後に、木浪は興味が失せたのか、ゆっくりと舞台袖にもどり、発見したパイプ椅子を持ち込み、そこに腰を下ろした。

 

 さらに手にしていた杖の先っぽのカーブで、凝っていた肩や首をもみほぐしていく。

 

 リラックス、リラックス、見知らぬ広い部屋で自分の家のようにオレンジ髪の侵入者がリラックスしていると──

 

 呆気に取られていた演者の目の色が変わった。瞬間、向けられた鋭い視線が、くつろぐ木浪の肌に突き刺さる。

 

「まぁいいやじゃ、────【ないのよ】!!!」

 

 取り出した拡声器から魔力を増幅し飛んできた大声が、さっきまで木浪が尻とスカートを乗せていたパイプ椅子にぶつかり、ひしゃげさせる。

 

 目にしていなくても分かるほどの恨みのこもった視線と殺気に対して、木浪は素速く反応し、挨拶代わりに拡声器から叫び放たれた珍妙な攻撃を避けることに成功した。

 

「ムカつく仕草にムカつく髪色してるわね。アンタ殺す!」

 

「は? 誰に向かって言ってるわけ?(声が、リアルに表示されて飛んできた?)」

 

「アンタよ! 【ハイナミTV】!!! その腐ったオレンジ髪、ワタシが見逃すわけないでしょ!!」

 

 向けられた存ぜぬ恨みは、殺すと言うまでに達していた。いきなり怒声を上げた女演者は、穏やかではない。

 

 そして、さっそくまた、口元に当てた天使色の拡声器から増幅した声が叫び飛んできた。

 

 飛んで来た【ハイナミ】の魔力文字を、木浪は既に杖に抜け目なく練り上げていた魔力を使い、木目の【ストーンウォール】を築き防いだ。ステージから隆起した木目の壁にぶつかった四文字の魔力文字は、うるさく砕けていく。

 

 次に、回転し向かってきた【T】と【V】を、今度は杖を用いた異能で釣り──危なくダンスしていた回転運動を上手く止めることに成功した。

 

 回転を止め、ふらふら揺れながらも真っ直ぐに向かってきた【T】と【V】の間を、オレンジ髪は前へと走り掻い潜った。

 

「ネタばらし早いんだけど、萎える北風!!! そういうのは最後までとっとく!!! 早漏すぎるじゃん!!!」

 

「ガツると思ったときに殺(ヤ)る!!! アタシは〝北風〟じゃないッッ!!! 寄るナッ、凡才ッッ、【嵐】に呑まれて吹っ飛べ漏らせええええハイエナ!!!」

 

 鈍い音を立てかち合った白い拡声器と杖。至近に詰め寄り睨み合った互いの顔は、フツウの少女たちがしていいものではない。歯を食いしばり、怒りをぶつけ合っている。

 

 やがて、お互いの武器と武器の衝撃で睨み合う至近から離れ合った時、崩れたメイクとヘアセットも気にせず女演者はすぐに更なる攻撃に転じた。

 

 事前に拡声器にストックしていた魔力を使い、舞台上に作り上げたのは【嵐】の魔力文字。

 

 したためられた特別な魔力文字はその場で静止し、一画、一画、崩れ去りながら文字の原形のない塵となり、吹き荒れる嵐と化した。

 

 飛ばすのはただの声ではない。まさかの嵐の願を持つマジックに、枯葉のように吹き飛ばされた木浪。

 

 だが、吹き荒れ押し寄せる塵礫を、木浪は吹き飛ばされながらも石の三角柱を築き上げ、凌いだ。

 

 轟音が鳴り響く。突風に激しく削り穿たれるも、修練を重ねできるようになった【ストーンウォール×3】で作った即席の城は崩れない。

 

 パワーを増幅するトライアングルの中に潜んだ木浪の身を、横殴りの嵐から守った。

 

「あたしのこと……〝凡才〟って言っていいのは天才と幼馴染だけなんだけど、あんた覚悟────いーい?」

 

 口から垂れた赤い涎をゆっくりと制服の袖に拭う。乱れていたオレンジ髪を、後ろにお団子を一つ作るように、口に咥えていたヘアゴムで固く結んだ。

 

 そして、おへそはムカつく相手にまっすぐ堂々と、先の曲がった杖をマイクで問うように向けた。

 

 崩れ散る石の城から出て来たのは、鬼か姫か、いや違う……。

 

 現れた凄むオレンジを見てたじろぐも、HIGH小悪魔GEMは、また怒りの面に切り替え、ハイナミTVのするムカつく挑発行為を睨み返した。

 

 

 

 木浪(ハイナミTV)へと一方的に向けられたHIGH小悪魔GEMの恨みと謎の執着、それらが生んだあまりにも早いネタばらしが、2人の間になりふり構わぬ展開を加速させる。

 

 一段と高い木目の壇上から見下ろせば、空席だらけのパイプ椅子が客席のように並んでいる。

 

 スポットライトの煌々と照らすステージの上で睨み合う、自称天才のゴシックな黒衣装と、髪を束ねた凡才オレンジ。

 

 配信の撮影は既にいたる所に計算し設置された隠しカメラを通し、始まっている。

 

 人生最大にガツるであろう、リアルとダンジョンの入り混じる特別な舞台、今日限りの特別な生配信。打ち合わせは要らない、怒る闘志に火を絶やさず、目の前の女を打ちのめす事だけを考える。

 

 viewtuber対viewtuber。遠く離れた観客を呼び込み、ズタボロに破れた幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 待ってはいない、あくまでオレンジが向こうからやってきた。しかしここで会ったが百年目、風化せず残っていた積年の恨みを晴らす。

 

 走り抜けると、自分の濃いファンがダンジョンの途中でご丁寧にカメラをあちこちに回し、待ち受けていた。黒いゴシック衣装に身を包む小悪魔のことなど知らない。

 

 遭遇した理由はどうであれ奇しくも今同じ舞台で、viewtuberの2人が声を張り上げ、ひとつのコンテンツを生み出すため──ぶつかり合う。

 

「あははは〝他人(ひと)様の動画見てる動画〟を上げるだけの笑うハイエナのアンタも、無許可で勝手にコラボされる身になってみなさい! 名付けて【ハイナミTVをこれからボコボコにするボコラボ生配信!!!】よ! アンタだけは許さないハイナミTV!!!」

 

「は? 身に覚えがありすぎてないんだけど! ここまでガイドラインを逸脱して収拾つけられるの、北風が?」

 

「アンタみたいな腐った蜜柑が今更ガイドラインなんて笑わせるなッ、ゴミの収拾はこうやってツけるのよッッ!!! 【ひとがはいる】!!! 【変換】【Enter】!!!」

 

 腹の底から声を出し拡声器へ、拡声器から増幅し宙へ、文字として浮かび上がった【ひとがはいる】は、

 

 魔力をさらに支払い──【人が入る】と変換される。役に立たない【が】と【る】の魔力文字は、払いの脚に蹴り飛ばされた。

 

 したためられた【人】【入】の魔力漢字は、ひとりでに動き始めた。

 

 サッカーボールのように飛んできた【が】と【る】を避けて、木浪は前を見据える。

 

 整列されていたパイプ椅子を暴れ蹴散らしながら、魔力漢字が走って来た。これまで文字が飛んでくることはあっても、意志をもったように走ってくることはなかった。

 

 しかし動きが緒方結美の異能冷蔵庫よりどこか硬く甘い。つけ入る隙はある、そう直感した木浪はパイプ椅子の海をかきわけ猪突猛進して来たその2文字を、単純に避けた。

 

「【口を追え】【口っく追ん】!!!」

 

 【人】【入】に突撃させ、直後GEMが拡声器から放つ飛び道具を交えた攻撃。

 

 まるで即席パーティーのような動きで木浪に仕掛けたが、これも狙いが甘い。

 

 魔力を消費することなく避けれるものは避ける選択をし、大味な連携攻撃を抜けた木浪は、好機とばかりに前へと走り出した。

 

 学校の体育館のようなステージ。ひしゃげたパイプ椅子の地を駆け抜けて、再び舞台上に待つゴシック衣装の小悪魔の元へと木浪は握りしめた杖を片手に詰め寄っていく。

 

 しかし、前を走っていた木浪は気づけば宙を漂っていた。

 

 前へと向かっていた背と尻を不意に蹴られ、吹き飛ばされた木浪は、再び──スポットライトの照らす木目のステージに伏す。

 

「あーはっはっはーーーー!! いい撮れ高だわーー。これ傑作じゃん────ネェ?」

 

 ちょこまかと遊んでいた客席から引きずりだし、今、同じ壇上。されど対照的。その無様になった姿を見下ろしニヤけるGEMに、頭を垂れるオレンジ髪がいる。

 

 何が起こったのか。木浪は確かに後ろから蹴られ、再びこの舞台にダメージを受けて戻っている。

 

 蹴られたのはきっと──。木浪は今階段を器用に上がり戻って来た【人】【入】と、その2文字の後ろに控えて自分を見下す黒い小悪魔を、垂れ下がり湿ったオレンジの暖簾の隙間から目に入れた。

 

「あははアンタ引き寄せることしかできないのねっっ、逃げてばかりなのにチグハグな異能で皮肉ねぇ! 対してアタシはビュアーたちが望むコンテンツの発信者! その差がここにも現れているのよ、はははははーー! 受け身よ受け身ー! そのくだらない壁もゼーンブ!!! ヤケになってちゃちな石ころ投げ入れても効くわけないじゃない、この復活したviewtuberのHIGH小悪魔GEM様に!!! 地力と才能がちがうのよ」

 

 高らかに笑い、勝ち誇る。GEMはその才能の差を現実に示し、目の前の敗者に残酷な言葉を浴びせつづける。

 

「────そうね? だからアンタ、そのびゅーびゅー馬鹿にした口をもう一度ひんまげて、かるく許しを乞いなさい。viewtuberごっこのヤツに、最初から勝ち目なんてないのよハイナミTV! そんな下らないちゃんねるで知恵も魔力もアイデアもッ無駄遣いするぐらいなら、アタシのアシスタントとして、死ぬまでこき使って許してあげる」

 

 地に苦しく項垂れるオレンジの様を見て、勝利を確信する。

 

 HIGH小悪魔GEMはカメラに収め2人で激しく作り上げたこのコンテンツの終わりを、これ以上ない配信タイトル通りのとても気持ちいい結末で締めようと、地にみっともなく伏す人間に対して悪魔の契約を持ちかけた。

 

 今までの腐ったプライドを売り、新たに才あるviewtuberのアシスタントをするだけで許す。この場で煮て殺すよりも、とてもやさしくリーズナブルな提案だ。鬼叉ちゃんねるなどのぽっと出の出涸らし女の元ではない、HIGH小悪魔GEM様の元でその微力を貸すだけでいいのだ。

 

 GEMは取り巻きの後ろで控え、なおも隙を与えない。

 

 もはや完勝の構図は崩れない。止まない小悪魔の高笑いに────そっとオレンジは微笑った。

 

「────……そんなつまんないことしない……」

 

「あははは──は?」

 

「ハーーイ本日の北風ちゃーん、ちょっとびゅーびゅーラッキーゾーンまで吹いただけじゃぁん? ツーアウト満塁っ、大波小波ハイナミはここからでしょ! こんな風に──ねっ!!!」

 

 よろよろと杖つく老人のように立ち上がり、勢いあるviewtuberのように無法に名乗り吠える。

 

 木浪智火瑠の目は死んでいない。むしろ生き生きと輝くオレンジに潜んでいた瑠璃色の瞳は、堂々と前を向き燃えている。

 

 一発二発、尻を蹴られただけではviewtuberは折れない。ハイナミTVは勇ましく逆転の杖を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 遠く差し伸べられた臆病な悪魔の手に向けるのは、いただきもの、ご愛用のレアな魔法の杖。

 

 そして引き寄せいただくは、LIVE配信をその目に見て分析した、キーとなる相手の強みと弱点。

 

「しマっ……!???」

 

 特殊な召喚魔法もどきを使い魔力のありかを分割したことで、最大魔力の薄まっていた天使色の拡声器を、魔力最大・異能全開のチカラを行使し奪取に成功。

 

「そろそろ【入浴】のじかんでしょーーーーーーしょっ!!!」

 

 木浪はくすねたその拡声器で、向かって来ていた【人】【入】の2文字に【入浴】の指示を出した。

 

 走るのをやめ、やがて立ち止まった【人】は、そういえば走り疲れた気がすると、顔を見合わせた【入】の魔力漢字へと目掛けて走っていった。

 

 【人】が【入】へと走り向かう、珍妙でダイナミックな入浴の方法だ。目の当たりにしたまさかの光景に、彼ら文字モンスターたちの本物の主人であるGEMは、奪われた拡声器を諦め、生の大声を張り上げ別の指示を出した。

 

「【入るなーーーーーー!!!】……コノッ【野人】!!!」

 

 【人】は己が本来【野人】であると思い出した。しかし、野人として汗臭いのは気にしないものの、何故か今日は久々にさっぱり【入浴】もしたい気がする。

 

 汗を沸かし戸惑う【入】、右往左往考える【人】。次々と下されていく魔力のこもった2人の女主人からの熱い指示に──

 

「【入るナっつってんの!!!】」

 

「【入れっつってんの!!!】 ────入れや!!!」

 

 最後は、木浪の異能で強引に引き寄せられた【人】と【入】は、がっちんこ────お互いに激しくぶつかり、バラバラに弾けながら入浴した。

 

 

 しゃべりで勝り、チカラでねじ伏せる。大勝利と代償の真っ赤な鼻血を垂らしながら、木浪は笑った。

 

「はぁはぁ……野人でも風呂には入るでしょ、ふっ」

 

「ハァハァ……こっ、このっ!!? マダヨっ!!! マダここからよ! たかだか文字が二文字砕けただけじゃない! ワタシは無傷よッ! もう一回吹き飛ばしてやる! マイクがなくたって、あんたももうボロボロで魔力がヤバイんでしょーー──へっ!??」

 

 たとえ喉が潰れ壊れてもviewtuberとしてGEMは負けない負けられない……。また腹の底にある魔力を振り絞り、声として吐き出す言葉のマジックを形作ろうとしたその時──白いマイクが、小さな羽を広げ懐へと飛んできた。

 

 飛んできた自分の大切なモノを、しっかりとその両手にキャッチしたのはGEM。そして、ラッパ状に開いた拡声器の白い大口から、潜めていた悪意ある石ころが、持ち主の腹を目掛けて吐き出された。

 

 ただでお返しはしない。ハイナミTVに遵守(じゅんしゅ)するガイドラインなどはない。小癪なやり方でも〝効いている〟ならばそれでいい。

 

「は──ふぐっっ!??」

 

「大波小波ハイナミTV! ガツってない北風はゼンブわたしのお金と餌ーーー!!!」

 

「マっ──マッ!???」

 

 

 【古杖一閃】──。

 

 堂々と駆けるオレンジの繰り出した大振りに、弾き飛ばされた小悪魔は、後ろに用意された石壁の硬いクッションにぶつかり、激しく地へと崩れ落ちていく。

 

 豪快にスイングし決まった大ダメージの一撃に、石埃が舞う。敗北の色とニオイが煙たくただよう埃の中、ぼんやりと揺れ浮かぶシルエットが冷たい足音を立てて近づく。

 

 やがて、詰め寄る影がオレンジに色づいていく。

 

 振り上げ、振りかぶった古杖に、倒れたままGEMは目を瞑った。

 

 

「そういえばさっき思い出したんだけど? 随分久しぶりじゃん──【てんてんてんじぇるのメグちゃんねる】。はぁ……相変わらずその泣き芸。ふっ、────傑作じゃん?」

 

 見上げ見開いた小悪魔の瞳から、やがてあふれ、黒く滲んだ涙が流れたのは、きっとチリとホコリが目に入って痛いから。

 

 スマホのカメラを地に向けながら笑う、オレンジ髪の少女が今差し伸べた一本の杖を、被っていたメイクが溶け、情けなく倒れていたMEGは知らず掴んでいた。

 

 viewtuber対viewtuber。そんなまだまだ無名の者たちの諍いの結末は、人々が知らぬところでも。

 

 遠く離れたモニターの上ではなく、彼女たちはまた奇妙な舞台の上で出会った。

 

 そして、両者の間にあったとても些細な因縁の決着を、全力と全力でつけたのであった。

 

 

 

 

 

「は? なにその手? これからまだシバくんだけど? あと、ひゃっぱつ」

 

「ふぇ────!??」

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