※この作品はR-18です。

異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:   作:山下敬雄

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42 黒く解けないパズルの中で

 登りゆく階段、渡りゆく廊下。

 

 しかし、店主から借りたスマホ画面の3Dマップに赤く示されていたそのポイントの反応は、探す途中で忽然と失せていた。

 

 赤いポイントが音もなく消失した、聡明な彼女にはそれでも考えられる要因は複数ある。くろまねき商店の店主の【絶対的金銭感覚】そのレーダーに引っかかったことに気づき、対象が晒していた魔力を消したのか、既にどこかに帰り居なくなった冷やかしの珍客なのか、特殊な隠蔽武器や遮断するマントを使ったのか、それとも────

 

 

 やはり気のせいではない。先程から見知らぬ誰かの魔力の存在を感じる……。そんな見えないテリトリーに侵入したような重い感覚が、彼女にはある。自分の魔力がざわざわと乱され、定まらない。そんな……ずっと、募るイヤさ……。

 

 しかし姿はやはり見えない。この体に肩にのしかかる重々しい魔力の発生源について、しばし考え耽り彼女が立ち止まっていると……微かな足音と鳴き声が耳に響いた。

 

 背方を振り返ると──

 

 登別海は、廊下の暗がりに現れた四角いヤギ、ブク校で飼われているそのドツジの特徴的な姿と、その生き物を腕に抱えながら撫でる──謎の者の姿を見た。

 

 

「ヤギの目は四角いって知ってた? こんなに人懐っこいのに悪魔だなんて、かわいそうね」

 

 

 白いドツジと溶けあう、白き存在。とても澄んだ声で他愛のないことを宣っている。

 

 女神とも見紛うような美しさを表すその白髪その白肌とその佇まい、その白きシルエットから同時に醸し出される儚さと危うさに、自分の心臓が何故だかそっちへと引きつけられるような奇妙な感覚に陥る。鼓動する胸を一瞬手を添えて抑える──出会ってはいけないものだと、登別海は一目ソレを拝んだだけで酷く自覚する。

 

 

「……暗くなると、丸くなるわ」

 

 

 問われた登別はそう、か細い声で言葉を返した。

 

 嘘か本当か、もっともらしい雑学を耳にした女は、さっそく試す。ドツジの前に手を添えて、振りながら、ゆっくり……いないいないばあっ────

 

 

「へぇー、────ホントだ」

 

 

 右に宿す青い瞳はとても澄んでいる、ワラう少女のようだ。しかし、もう一つの四角い灰色の瞳はとても似ていて似ていない。

 

 儚げな素顔に邪を宿し、妖しげなその色を己の一部とし、馴染ませ、静観している。

 

 不気味な存在が微笑んだ瞬間、制服の内で不正確に鼓動する彼女の心臓が凍りつく。

 

 今目の前で、空気をも他者をも支配する圧倒的な魔力量を解き放つそれは────大悪魔クリアクレア。

 

 出会ってはいけない、あの日世界から消えた世界の敵。眠れし古代悪魔の眼を盗み取った、大罪人────。

 

 

 

 

 

 

 

 

▼

▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗黒巌流島で、剣と剣は合わさりもう何合目か。

 

 試し合うその度に互いのクセや性格、剣の特徴、纏う魔力の質まで、理解は図らずしも刃と刃で拒み合うほどに深くなっていく。

 

(やはりコイツ、剣を通して俺の中の魔力をいじろうとしている。気持ちが悪いな)

 

 鍔迫り合い睨み合うサンフンとピネス。しかし、これ以上ただでやるのはおもしろくない。サンフンは他人の魔力に寄生しようとするその奇剣の使い手の腹に、強烈な蹴りを浴びせた。

 

 完全に鋭い蹴りをまともにもらったピネスは、後ろへと大きく飛ばされた。

 

 すかさず高速で魔力を練り上げたサンフンにより蹴り放たれたのは【黒 不知火】さらに【橙 不知火】。黒とオレンジの2つの中玉が、コントロールされ対象へと高速で迫り追撃をする。

 

 魔力の質が違う二つの弾を浴びせる。一種ならともかく性質の違うこれを生半可な剣と技で攻略するのは至難、妥協のない悪魔じみた攻撃であった。

 

 しかし魔力と実力でピネスに勝るサンフンに知らない誤算があるとすればそれは────

 

 島の波打ち際の水面に燃えゆく漁火から……黒と橙の三日月が、真っ直ぐに飛び交う。

 

 誤算があるとすれば────この男がなんとなくコツを掴みつつあるということ。朝に比べて昼、夜の浦木幸は高みを味わい知る別人になっていた。

 

 相手の魔力・技を利用し得意とする中遠距離技【サクイチゲキ】その鋭い弧を描く二連技へと変換する。

 

 カオスに燃える怪火の中からカウンターで放たれた場違いで大雑把な三日月を、サンフンは反応し避けた。

 

 だがいくら冷静を装おうと、刹那に生じたその極僅かな動揺は隠し切れない、一瞬の隙を生み出す。三日月が黒服の横を通り過ぎた後に────突進する二刀の乱舞がサンフンを襲った。

 

 戦闘で昂るテンションのままに、見つけた好機に駆け抜けてゆく、その不意打ち荒削りの12連撃。

 

 そして13連撃目──これまで刃と刃を弾けぶつけ合い奇しくも繋がり合った互いの気を、再び強く──。

 

 重なり合わさったその緋色の剣に爆発させるように、色鮮やかに発動したクリティカル陽術【バーンファイア】で締めた。

 

 反応良く差し込まれる相手の黒剣ごとついに弾き返す。確かな手応えが、ピネスの握る緋色と翠の二刀に重く痺れて余韻となる。

 

 一矢報いる──いや、違う。何もできなかった、させてもらえなかった朝のグラウンドとは違う。砂地に溺れ這いつくばりながらも招かれた円形校舎ダンジョンの頂上、この暗黒の島地で、ヤツを狙いのクリティカルで吹き飛ばした。

 

 

「なに勝手に攻めを終わらせてる。今のでまさか息切れか?」

 

 

 しかし相手は褒めやしない。爆する緋色の景色が明けて、白煙立ち昇る砕けた黒い魔剣を手にしながら、さっさと追撃をして来ないピネスの手ぬるいやり方に皮肉を言う。

 

 そして離れて間合いを保ち、再び睨み合う戦いの最中の緊張、静寂に……。

 

 悠然と突っ立つ黒尽くめのサンフンの魔力が、ピネスの目にどんどんと高まり広がり熱帯びる。不気味な風が唸り吹いては島舞台の草地が黒く染まってゆく。

 

 

「────────【ダークピースフィールド】」

 

 

 男の立つ黒い地それが一体なんの意味を持ち、なぜ今にも止まらず広がっていくのかが、ピネスには分からない。ただ、草地が、島が、足元が、みるみると唐突な黒いジグソーパズルに呑まれてゆく。

 

「お前はこれを理解できるか? 気持ち悪りぃだろ?」

 

 ピネスは返そうとした余計な言葉を、何も言えず、乾いた口の唾を呑む。「理解できるか?」敵にそう問われ、地に広がり組まれてゆく謎の黒いピースを一度冷静に見つめるも────そんな暇はない。

 

 刃を復活された黒の魔剣がまた、ピネスの体へと瞬く間に噛みついてきた。

 

「半分どころじゃねぇ! お前という存在お前を構築する概念、そのピースすべてッ、悪魔的に全部殺してやる!」

 

 刃が自在に伸びる黒剣に、ノリにのって読めない相手の足癖。それでもピネスは反撃を試みる、だが練り上げる魔力がおぼつかず。急に己の手や体の勝手が変わったというのか、上手くいかないピネスは、反面スイッチが切り替わったようなサンフンの猛攻を受けるので精一杯であった。

 

 そしてさらに、敵は勢いを増す。

 

 飛んでくる【黒 不知火】【橙 不知火】見たことのある危険な技を避け、斬る。上がる戦闘スピードと何故だかおぼつかなくなった自身の魔力に、ピネスはそれでもなんとか緋色の技を起爆し合わせ、己の剣で相殺まで持ち込む。

 

「褒めてやろうか? ハッ──羽をばたつかせて足元がお留守だぜ?」

 

 この男が他者を褒めるのは、己が圧倒的に勝っているから。そこから来る悪戯な余裕でしかない。

 

 前しか敵しか視えていなかったピネスは、嘲笑う目先の男の醸し出す嫌な予感に、自分の今立つ足元のピースを覗いた。

 

 隣接する全ての大きな黒ピースには、グレーに灯る数字がある。その謎の数値が刻刻とピネスが驚き瞬きしない間にも、減っていく。

 

 3、2、1────────

 

 カウントダウンは仕掛け通りに爆発する。凄まじい黒炎が、必死にもがきまんまと誘われた浦木幸を、連鎖爆発し呑み込んだ。

 

 

「立つ地を知らず。アタマ空っぽの才能だけで勝とうとする馬鹿め」

 

 地を燃やし尽くした黒炎がやがて、もくもくと揺らぐ黒煙となる。

 

 まさかの時間差で起爆した罠に迂闊にもシールド値を削られ、よろよろと立ち上がったピネスは、それでもまだ死んではいない。

 

「逐一馬鹿にしてっけど……ハァハァ……まだ、ヤレてねぇけどっ……」

 

「まだ、欲しいか? ハッハッハ、ならヤルよ────その、舌先まで焦げ尽くすまでな」

 

 黒い地と天は解かれてゆく、そして宙に浮かび上がる幾多のピースボム。

 

 黒煙が明けると──気づけば島全てを黒く覆われていた……。

 

 ピネスはこの黒いジグソーピースで接がれ形成されたこの四角い箱こそが、サンフンの技なのだと、口答えをした今になって漸く理解をした。

 

「あぁーっ!? …………んなの、ありかよ……!」

 

「相当に、馬鹿だろ。熱にうなされ勝機でも視えたか? ハッハッハ」

 

 技の規模、技を成す魔力の規模、そして囲まれただけでたじろいでしまうほどの脅威。

 

 全てが想像以上の規格外、真の強者が真の強者としての実力を晒し出せばそこに弱者が敵う術はない。

 

 しかし、ピネスはそれでも剣を構えた。反抗的な冒険者に悪魔サンフンはニヤリと嗤う。

 

 向けられた黒い魔剣の切っ先でタクトを振るう。従えたピースを接がれ出来上がった悪魔の両翼がはばたき、ちっぽけな剣を構えた冒険者を襲った────────。

 

 

 

 

▼

▽

 

 

 

 

 鬼と化し愛を操り昂る怒りの末……エメラルドの幸運な輝きは失せ、元の水色の衣装へと、魔法がとけていく。

 

 

「なぁんで、負けるかねぇ、はは」

 

 

 地に大の字になっていたのは一人の用務員。折れていたのはシンプルに立ち並んでいたステージの柱と【E:エクスプロージョン】の出力に耐え切れなかった愛武器の刺又。

 

 その武器の中に詰め込まれていた特注のビー玉は砕けて、熱されたステージ内にできた窪みへと転がっていく。

 

 そして、眩く熱いエメラルドの閃光を浴び────最後まで立っていたのは、スーツを着たナイト。

 

 よろけた様子もなくガードした姿勢を解き、地につけた彼女の耳に足音がゆっくりと近づいてくる。

 

 見上げる天と聞こえる地の響きが意味するものは、もはや明らか。この先の運命は、相手次第。今持てる全ての完全なるチカラを出し切った池原叉鬼に不思議と悔いはない。全力全霊を叩き込み完膚なきまでの敗北を喫する、それはいっそ清々しくも思えた。

 

 やがて耳を打つ重たい足音が止まる。

 

「これは────不完全な技だ」

 

 完全なるチカラではない不完全な技だと、ナイトは一言つぶやいた。そして聞こえる足音の一足、一瞬に、しみじみと思いを巡らせていたその地に寝転ぶ彼女のことを否定した。

 

「ん? ふかん……ぜん?」

 

 チカラを魔力を出し切り、脱力する大の字の敗者は勝者が放ったその言葉を問い直した。

 

 するとナイトはおもむろに透明な空き瓶をひとつ取り出しながら、語りだす。

 

「火の吹く赤い村に駆けつけたとき────俺が見たアレはバケモノだった。行軍中に気晴らしに仲間たちと立ち寄った街の占い屋で俺は、近く多大な悔いを残して必ず死ぬと言われていた。それがこの事だとまさに自覚し、俺は己の手にしたその剣に己の汗粒の一滴も残らないよう全霊を込めたが…………握りしめた占いの結果は、そのバケモノの首を落とし、俺は焼けるような熱さの血の雨をその体に浴びていた」

 

「俺は不死身になった。きっとあの時占われた死する運命すら、己の天武で逆らい切り裂きバケモノの血を全身に浴びたからだ。これは天命に違いないと、それからの俺は赴く至るところで今まで以上の武功を上げ続けた」

 

「しかし気づけば俺はどうでもいいところに収まった。天命どころではない、とある城のとある一衛兵。戦場で生きて帰ってきては死神と忌避された俺の行きついた先は、金持ち貴族の道楽であつめた珍しい駒の一つ」

 

「今思えばその時点から俺という生き物は緩やかに死んでいたのかもしれない。あの街の占いの結果の通りに、浴び授かったはずの力に傲り、悲しみ、ただただ立ち止まっていた。そして────」

 

「俺の誰にも望まれないこの身体は、どうやら運よく死に行きついた今世では、俺がまた望んでいたようだ」

 

「お前はそれで────完全か? ……また改めて問う日があれば、もっと痺れる答えをこの身体に浴びているのかもな」

 

 空き瓶に、飛び散ったメタルツールを構成していた粘液が集っていく。銀色の沈んだ瓶にコルクの栓をし、男はおもむろに破れた兜を脱いだ────。

 

 足音は遠ざかる。その去っていく背、首筋……肩口に、青に光る一筋の傷跡を見せて────────。

 

 

「えっ、はは、こりゃ……。予想外のおしゃべりイケメン……はいぼくの……放置ぷれい……たはぁーー……」

 

 

 用務員池原叉鬼は鉄兜の男に、波瀾万丈の池原叉鬼史にのこる……完全なる敗北を喫した。

 

 池原は暗がりに溶けゆくその男の背を最後まで見つめる。そして深く長いため息と共に、水色の大の字をまた地に描いて……熱されすぎたおでこに手を当て、天を仰いだ──。

 

 

 

 

▼

▽

 

 

 

 

「俺を試すだって、試しているのはどっちだ? 試されて急かされているのはどっちだ?」

 

 【悪魔的19%:ピースマインウイング】──悪魔サンフンの広げた黒い両翼、見せつけるその片翼の集合体から、ピースが分離しピネスへと襲いかかる。

 

 走り回るピネスは向かって来るピースをどうにか避ける。しかし攻撃は正面から飛んでくるピースマインだけではない。まさに戦い立つこのフィールド自体がピースマインの地雷原だ。地に足を着ける度に地雷のタイマーが3、2、1と作動し、そこに悠長に留まることを許さずピネスを試しつづける。

 

「試した感想を一つ教えてやろうか。やはりお前一人に大したチカラはありはしない。未だにその剣から俺の魔力にどうにか寄生しようと考えているんだろうが、この異界【ダークピースフィールド】の中じゃお前の練り上げる技は俺の数ピースにも満たねぇ。今こうしているのが、衣を剥がされた丸裸の実力だ。だが安心しろ、俺は強いお前は俺より弱い。ただそれだけの理屈で支配される至極単純な悪魔的世界が、貴様の棲む歪んだ世界を駆逐し待っていることを!」

 

 ピースは直撃する前に爆発させることでその奇剣に利用させない徹底ぶり。地に仕掛ける【ピースマイン】にはタイマールールを付与することにより、トリッキーで発動簡易な時限式となり、かつカウントダウンの間は他の魔力に干渉されない高硬度を維持する。

 

 さらにこのサンフンの異界【ダークピースフィールド】内では、ピネスの内在魔力量は常にサンフンの圧倒的クオリティで築き上げた魔力フィールドにジャミングされつづけ、抑えつけられる。つまり、この島を覆う黒い籠の中にいる限り、相手の魔力を利用したピネスの本領を発揮することは難しい。

 

 そして空と地のピースの爆撃を避け続けるピネスにも限界が来る。気づけば周りは数値1だらけの時限式の地雷原、飛び交う翼のピースを避けている間に足元の注意は遅れ、ついに追い詰められた。

 

 やがて、容赦なく連鎖爆発する黒い爆炎の中に──────一瞬燃え盛る、緋色の炎。

 

 己の魔力を随分と込めた【バーンファイア】。無理やり練り上げたその独りよがりの自爆行為で、なんとかダメージの減衰を図った。しかし焦燥の中導き出した必死のアンサーも、貰った黒いピースの威力を全て払いのけるには至らない。

 

 黒い爆弾に焦がされ、肩で深く息をする冒険者の様を見て、悪魔はまたニヤリと嗤う。

 

「どうだ、これがお前が再確認したがっていた俺とお前の差だ。必死に全力を出しても今の甘い人間のやり方じゃ変わらねぇ、ましてや青臭いお遊戯会の延長で何ができる何を成すなんもねェだろ? お前らのやっていることは、まるで厚い氷の表面でのうのうと生きて何も本質を育んじゃいねぇ、今まで何を習った? 弱っちく生かされて何も知らないまま利用され、そのくせ常にくだらねぇ制限だけが病原菌のように付き纏うだろ? ハハハ────全てが片付くまでおとなしく席に着け。くだらねぇ遊びも役に立たないフザケた半分女の学校も、もうお終いだ。必要なのは弱ェ奴等の手助けじゃねェ、世の中には斬るべきもっと腐った根っこがある。せっかく手に入れた異能チカラだ、自由につかってシンプルにクズを間引いて──いかねェとな?」

 

 小さなピースで組み立てたのは、ひとつの黒い椅子、ひとつの席。悪魔は見るからに消耗し尽くしたピネスに聞こえるように囁く、お前はただそこに座ればいいのだと。

 

 今目の前にあるのは黒い席。そして熱帯び痛む体で考える、ピネスの脳裏に浮かぶのは────

 

「席ナラはぁはぁ……2-Dの窓際のうしろ。今は南館3階の物置部屋。これでも結構……毎日朝から付きまとってみんなに構ってもらえて、あぁー……はは──たのしいんだぜ?」

 

 導き出した答えを握りしめ────目の前に置かれた黒い席を、ピネスはその剣で迷わず下から払いのけるようにぶった斬った。

 

「はははははそれが最後の返答か? そんなにまだ試してほしいか? ナラ──死ね!!!」

 

 生意気な返答を聞いた悪魔が、両翼を羽ばたかせようとしたその時──。

 

 椅子を払いのけ振り上げたままの右の剣、前に余らせたくたばり損ないの左手が今、黒いヤツのことを真っ直ぐに指差し笑っている。

 

 指を差された瞬間、嗤う悪魔は不思議な風を浴びた……。一体何をされたのか分からない。

 

 ハッタリ野朗の指先から向かい流れる、今散らばり返された小さな黒いピース。

 

 そんなもの、羽虫がただ飛んでいるに過ぎない。

 

 だが、表、裏と、ひらひらと回転し舞い続けるその羽虫の如き小さなピースに、悪魔サンフンは鋭いその眼を見開き、目撃する────

 

 回転を続ける小さな黒はやがて、異なる表情を一瞬、一瞬──見せる。そして回転速度を増しながら、得体の知れない発光を始めた。

 

 すると表も裏も全て不思議と、塗り潰されて染まる。白いピースの粉雪が、羽を広げる黒い悪魔の目の前を舞い、追い越した──。

 

 

「【クリティカルラッキーフィールド】──────」

 

 指を差し痛快に笑う、その光景はハッタリではない。

 

「ってことで一つ、土壇場で分かったらははは、あれよあれよとなんとなくっ、次のピースも想像……いや創造ついちまった?? あぁーはははは、だから──俺も混ぜろよ! そのジグソーパズル! こっから先は俺の陣地、ははは!!」

 

「ナっ!?? ナニィーーッ!!?」

 

 死に損ないの剣士が今一つのピースの地に突き刺した翠の刃、そこから流れ続ける電撃のマジック。

 

 その青く速い流れは、黒いピースの繋ぎ目を高速で伝達伝播し、次々と、大きな黒いジクソーパズルの全貌を解き明していく。

 

 カタチ、魔力、肌触り、隣り合う1ピース1ピースの輪郭を拙くなぞる魔法の電流と共に、自分色に塗り替える。

 

 白く強引に染まりゆくその不完全なエリアの名は【クリティカルラッキーフィールド】。

 

 土壇場で倣い生み出した繋ぎ目だらけの新技が、剣を手放さず諦めない冒険者に、悪魔の異界に対抗する超幸運な〝鍵〟を授けた。

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