※この作品はR-18です。

異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:   作:山下敬雄

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43 切先の先へと──

 円形校舎ダンジョン20F暗黒巌流島に、黒と白に目まぐるしく点滅し続けている大箱が構えている。

 

 島を覆い尽くす逃げ場のない決闘模様は、遅れてきた者たちを蚊帳の外に威圧し歓迎しない。2人の雄がただただ命を削り合い、かつ魔力を繋ぎ合い一つの箱を作りあげていく奇妙な有様だ。

 

 技と技、異界と異界がぶつかり合い、己の陣地を喧嘩をしながら広げていく。かみ合わせたピースを白、黒、激しく奪い合うように────────

 

「黒が勢いをッ……シャイニーにっいえ、浦木幸さんに今加勢するべきなのでは!」

 

「あーあー待ちなよ執事ちゃん。さすがにあの中にデデーンと、穴あけて飛び込むのはねぇ……。異能というより【異界】、中でバチバチパワー上げて得体が知れないことやってるよ。せめて戦闘のプロに魔力があと100ccでもあればねー(この規模のえげつねぇ魔力箱、戦闘のプロにはちょっとまだ無理だけど? ピンチのピはピネスのピ──もしかするともしかするんじゃないのお弟子さん? あの時のようにね)」

 

 船から前のめりで魔力滾る箱を見つめる執事のタガヤを、魔力すっからかんの戦闘のプロは落ち着いた様子でたしなめる。水色の帽子をくるくると指先にあそばせて被り直した。池原叉鬼は翳るその表情に、期待の笑みと一筋の汗を流した。

 

「あの箱に編まれているのは桁違いの魔力の質だ。アレがここでの戦いにおいての更なる、戦士たちの見せる本領だというのならば────目を凝らし学ぶ他ない。情報の揃わない危うきには迂闊に立ち入らないことだ。それにこれは奴の任務だ。目の前の戦いにのめり込んでいるのだろう。動きは少し危ういが、反応と威力は追いついている。それにしても戦いを透視するこれは何という魔道具だ? 随分と美麗に映るものだ」

「そうね激しく美しく火花を散らして噛み合っているわ。これ以上の余計な色は、このゲームにはいらなくて。──最新機種のパイポン18よ」

 

 ヴィーナスが手持つ最新機のスマホの画面を覗き込み、パジャマ姿の淡い青髪の女は、冷静にそこに映る戦いの模様を解説していく。

 

「どれどれぇ…………へぇー、アタシがコケにされたあのおすかしイケメンに食い下がるなんてやるわねぇー? ま、もうゼェハァ言ってて今にも負けそうだけど」

 

「は? 負け犬が何勝手にしゃべってんの? 黙って(はーすけ、なんとかヤるんでしょっ!!)」

 

「えは!? っていいからこの縄ときなさいよハイナ……ぃ! なっなんでアタシだけッこの扱いッ……他のやつらの方がヤバイでしょーに! チョコとか星とかミイラとか!!! 縛るならソッチでしょうよ!!」

 

 ロープにグルグル巻きに拘束されたメイクの滲んだゴシック服のviewtuberは、木浪に冷たく睨みつけられた。

 

「親和し共有するピースがある限りどちらに転んだとしてもおかしくはない……フッフ。せっかくの花盛りの伸び盛りだ、さすれば吉と出るよう、うちの生徒のことを応援するしかあるまい」

 

 船尾にいるミイラ男は、冷蔵庫から取り出した特製の餌だんごを、乗り合わせた仲間モンスターたちに与え、モンスターのハーレムを築き嬉しそうに囲まれている。

 

 船首で傘を差す校長は、自分に引き寄せ集めた雨飛沫に打たれながら、不要になった眼帯を海に投げ捨てた。その晒した灰色の眼で、しかと、箱の中で頑張る男子生徒のことを見つめ続ける。

 

「んっんーー。おっ? おおおお!!! そうだ星だ、星になれえええええええ!!! バランスヲッ、星をッ、このワタシと共に救うのだあああああ!!!」

 

「うっさ! なんなのこの人……!」

 

 突如ひびの入ったサングラスを地に投げ捨て、天へと雄たけびを上げる。星の男は、何かに気づきひどく興奮している。

 

「チョコっとまた荒れそうです。戦場、いえ船上の体幹調整、はいみなさんアオアシカツオドリのポーズッ、だんしんぐ!」

 

 チョコとビスケットでできた長方形の船。ビスケットをしめらせ浮かぶ即席の大船【パルフォルト号】に乗り合わせた敵と味方の大所帯は、スマホに届いた映像から箱の中を観戦する。

 

 黒い悪魔の猛攻を迎え撃つ臨場感とスピードのある映像に、剣を握る少年の荒い息遣いが生々しく聞こえる。

 

 決闘の繰り広げられる島を目指し賑やかに浮かび進む帆船、魔力と熱気に溶けていくチョコとプレッツェルの帆、再び大波を描き荒れていく海。

 

 やがて鎮座し構える巨大な箱が、点滅しながら、濁るように暗色に染まっていく────。

 

 

 

 

▼

▽

 

 

 

 

「なんだお前は! 性懲りもなく寄生するか! 運だけの野郎が! これでもまだ俺に噛みつくかああああ! 弱いヤツが調子に乗って俺の猿真似をするナァ!」

 

「はぁはぁ……あんたが強さが正義なら……あぁ、俺はここまでもってきた運が正義だ! ゲン担ぎって知ってるか! ジグソーパズルはあいにく俺も得意! そんな遊びやすくして真似される方が悪いんだぜ!」

 

「持ってきたのが運だと? 運が正義だと? なら相当にクソったれたお前のスベテを、狂った強さで塗りつぶす!!! 悪魔による特別な死をもってな!!!」

 

「まだ運(ピース)はあるってのに、凄まれて死んでやるかよっ!」

 

 ピネスは突如溜めて放たれた居合斬りを避けた。どこまでも伸びる黒い剣は彼方まで水平に薙いだ。サンフンの放ったそれは剣というよりはビーム、戯言をぬかす男を真っ二つにせんとしたが、辛くも寸前で跳躍し避けられた。

 

 逆に長剣を振り抜いた相手に対して大きなチャンスを得たピネスは、呼び寄せ集めた白いピースへと、宙で逆さになった足底を接地させた。

 

 さらに、その天地が逆転した姿勢から何かを繰り出そうと、赤い剣の切っ先を素速く向けたが────

 

 足を着けていた白い浮地が砕け散る。ピネスは突如上から迫った黒い壁にぶち当たり、地へと真っ逆様に弾き飛ばされた。

 

 左に薙ぎ斬った長剣の後に、燕が舞うように直ぐ右へと切り返し舞ったのは──黒い翼。

 

 サンフンが右へと捻った体から伸び、天に留まる羽虫へと打ち下ろされた〝悪魔の片翼〟だった。

 

 さらに、その翼に黒いピースは集いだし大きくなる。大きくなる翼に呼応するように、ピネスがこれまで描いていた白い陣地が塗りつぶされていく。

 

「地球に蔓延るその他屑どものように、のうのうと実力の伴わない正義を騙るか? しかも辿り着いたのが──運、だと? その空っぽの白い焦燥の産物がか? ──分かった、何を担いでもお前にはなんもねェ、上の存在に常に寄生するしか能のない能無しだ! だが、そんなにお望みならば俺が試して壊してやるよ、そのちっぽけな何の意味もねぇ〝正義〟をなッ!! はははは」

 

 悪魔サンフンの編む魔力の質が、また上がった。寄生する白い輝きは押しのけられ、辺り一面のピースはより強い黒に支配されていく。

 

 茶番や反抗はあれど、これより先──逆転はない。順調に染まりゆく黒の陣地。そして集めて作った左の片翼には、数字が刻まれた。全てのピースの集合体が【4】を表し、10から数えていたカウントダウンを止めた。

 

 カウントダウンを止めたその【4】のみのピースマインで出来た片翼は、ただ欠片を寄せ集め邪悪さを模しただけの翼ではない。異能を広げれば己を満たし相手を抑え付ける〝異界〟と化し、異能を固く編み上げればそれは、超硬度を誇る〝異物〟新たなる己の武器と化す。

 

 全てが連結し、連動する。黒雷を纏い揺れる片翼が、死の魔力のそよ風を冷たく吹かせ、不吉な音を唸らせる。

 

 

「〝悪〟と名付けてやる、お前のしつこい運すらも今から俺のモノだ。そして粉々になった悪運の尽きが、本当の迎えるお前の死だ【悪魔的100%:4(シ)ノ翼ァ】!!!」

 

 

 とんでもなく粘り強い悪運を持つ剣士ですら、底知れなく強いその悪魔にはもはや敵わない。

 

 最後の1ピースを精密に嵌(は)め込む。離れ業を披露した悪魔サンフンは嗤う。そして、悪しき雷のエンジンを唸らせ始動した悪魔の翼を、今、大きく前へとはためかせ、敵を打った。

 

 黒雷纏う4ノ翼が、ちっぽけな剣を構え続けた敵へと激しくぶつかり、弾き生み出した黒い雷柱の威力を天へと迸らせる。

 

 耳をつんざく轟音を上げ地を天までを焼き尽くし貫いた。そんな未だかつてない轟雷の手応えに、悪魔の嗤い浮かべた笑みは────

 

 

 緋色に燃ゆる景色に爆ぜて崩れた。

 

 

 とてつもない死の風を浴びても、突然の不条理な黒雷に打たれても────負けることはない、その悪運は燃え尽きない。

 

 ピンチをチャンスに変える方法を、彼はその手に知っているからだ。ボロボロになるまで握り続けたその剣を離さない。待ったなしに押し寄せる恐怖脅威へと、逸らさずに凝らし続けた黒い瞳が、溢れる闘志に燃えている。

 

 

 一体何が起こったというのか、何故ヤツは剣を構えたまま其処に立っているというのか。今、鈍くひび割れた100ピースもの膨大な力を編み込んだ翼へと、返った奇妙な感触に、悪魔は分からず狼狽える。

 

 そしてそんな翼の生えた悪魔へと、一人のラッキーボーイが、今手にした赤い剣をおもむろに掲げながら教える。

 

 天へと繋がり迸った悪魔の黒雷をも吞み込んだ、その大きな〝星のありか〟を。

 

 

 

 

 

 指し示す切先の先を見上げると、ジグソーパズルの描く巨大な星のカタチが、天に一つある。

 

 雷に焼かれ真っ黒に焦げついたその星が、やがてひび割れながら殻を破り、ツギハギのひびの中から少しずつ光がこぼれた。

 

 一筋、二筋、また一筋、悪魔の支配していた異界へと細い光が差し込む。

 

 ありえない──染まり始めたそんな反逆の奇跡に、唖然とする悪魔はまだ理解(わ)からない。この不可思議な光景が一体何を意味しているのかを。

 

 

 

「【バスターファイア……」

 

「バスター……ファイア!? 虚仮威しがッ、貴様にそんな技はない!! なのに……なんだ……あの星、コイツから溢れる鬱陶しいこの魔力は!! 今更何を隠して、何を描こうが、何も描かせねェ!!! その運だけでッ、もう一遍シんでみろおおおおお!!! ──ナッ!?」

 

 掲げる天より下ろした緋色のショートソードは真っ直ぐに、その向けた熱い切っ先で悪魔を指差すように。

 

 そして、真っ直ぐに止めた赤い刃へとゆっくりと上から添えたもう一刀……。

 

 今合わせた二つの刃に宿る極限まで反発し高まった期待感。それをまるで弓を引くように、翠のショートソードを緋色のレール上へと一気に滑らせ、力強く擦り合わせた。

 

 

 天にあり、彼らを見下ろしていた特大の黒い運星が、その雄叫びに呼応するように幸運の光を呼び込む。

 

 潜めていた黒いベールを拭い去り、発する七色の後光をやがて、箱庭の戦場にひろく光り放った。

 

 

「バーーーーーーーーン】!!!」

 

 

 二刀に宿す魔力を一刀へと預け託す。雷電を帯び真っ直ぐに疾る緋色の炎────緋色の刃にノセた極限の魔力の塊が、今盛大に解き放たれた。

 

 熱波、熱源、槍の如き鋭き火炎が迫る。そんな刹那の瞬間にもがき重ねたのは、黒き悪魔の両翼。

 

 前方に身を守るように動かし重ね合わせた両翼、しかしその超硬度を誇る【4】のピースの壁でさえ、【5】……じわり炙り上げ、【6】……ぶつかり続ける赤き魔力が悪戯をし急かす。そして勝手に進み刻まれた数字は、カウント【7】──出鱈目かつラッキーに壁を突破し貫いていく。

 

 プライドで固めた黒き悪魔の翼は今、激しく穿たれた。勢い止まらぬ炎熱が目指すは切先の先。射線上に捉えたその悪しき身、敵対する2人が戦い作り上げたジグソーの箱の果てまでも──────

 

 出会った知らない星のパワーをも味方につけ、ダンジョンへと覚悟し持ち込んだ己の運・技を全て試し──発揮する。

 

 浦木幸、魂のクリティカルショット。己の持ちうる異能・魔力・幸運を高次元に掛け合わせたその秘技。

 

 推定破壊力2000%【バスターファイアバーン】──炸裂!

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