異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re: 作:山下敬雄
この日も校内を徘徊していたピネスは、風紀委員部部長の小角灯に捕まり、一緒に校内のチェック及び巡回をすることになった。日々新しく部屋や構造がダンジョンのように拡張していくこの不黒高校の校舎は、ブク高生であっても時折迷うほどだ。よって迷子のチェックや、無許可で増えていく部室のチェックなど、校則を脱法しているものがないか確認することに事欠かない。
途中、廊下で燃え泳ぐ朱文金と転がるイワマジロたちの追いかけっこをしながらも……。辿り着いたのは、おそらく一番チェック項目が多いであろう場所。まだまだブク高の中でもクセモノが多く蔓延る、未開のフロア、地下校舎へと2人はやって来ていた。
校長から拝借した銀の鍵を使い、閉ざされていた地下への扉を開き、階段を降りていく────。
午後2時15分、地下校舎2階《くろまねき商店DP!》にて。
地下校舎で堂々と営業をする店がある。最近は店主自ら地上へと進出し、その存在感を堂々と宣伝しだした、あのくろまねき商店だ。
学校の教室をモチーフにしダンジョン構造を成す、机の中や上に商品を陳列しているお洒落なお店。さっそく、そのお店の中へと小角とピネスは入っていく。
入って間もなく部長の指示に男子生徒が従い、何か以前チェックした時と変わった所がないか調査をしていると。すぐに、2人はおかしな点を見つけることができた。
首輪をつけられたとても大きなひよこがいる。その大型のひよこのことを、2人は一旦立ち止まり観察してみることにした。
一匹のひよこが店の商品であるお菓子に触れようとすると──首輪から電流が流れた。
この光景は一体なんなのか。2人が唖然としていると、いつものちんまい店主がピネスの隙だらけの背後から現れ、話しかけてきた。
「ちょーばつや……盗人もひよこも罪つぐのぉて、きっちり利益に還元させてもらうでぇー。ちなみにこいつらひよこやなくて〝ぴよこ〟言うらしいから、こんぐらいの電気ショックじゃぴーぴーかわいく鳴くだけやで?」
ぼーっとしていたピネスの背に飛び乗って、横から顔を出したちひろちゃん店主は、悪そうな声でそう囁く。
「ちょーばつ……穏やかではねぇな……」
「悪いことしたら罰は必要なのですよ!」
「ちげぇ……ねぇのか?」
小角はちひろに同調するようにそう言った。そしてピネスは何故かその小角に、眉間にシワを寄せた上目遣いで見られた。
彼女の視線がなかなか顔から外れないのは何故だろうか。
「それより自分うすのろか? 何も与えてんのは、ちょーばつだけやないで。きっちり利益に還元する言うたろ、そっちが本題や。ウチも鬼やない、そんな引かんでええ。──ってことで、この憎たらしくもかわいいぴよこちゃんもふりたいと思わんか? 思うやろっ? そんなふれあいタイムが10秒200DP、そんで今ならお試し価格の10秒20DPでどうや?」
「ぅー……どうやっていわれても……な?」
「……です?」
「あほか! 目の前いるんはこんなビリビリさんの流れるおもちゃの首輪に繋がれた、盗人ぴよこやで! せやからさっきじぶんらに提案したんは、ちょーばつ楽する軽くするためにあんねんで、なにも商魂いやしくガメてんちゃうで? 言ったらこれは商売やないねん。考えてみぃや、こんなんで儲かるかいな? いわば罪人ぴよこたちへの、ちょっとしたお仕事で救済措置や! そーそー募金みたいなもんや! 募金箱がいっぱいになったら首輪が取れて無罪放免ッ! 解放されんねん! だからなっ、ここでこのこのこのってェ────────はぁはぁ……思いっ切りもふらんでどうすんねん! ホラ、めっちゃかわええやろ? けっこー人気なんやで?(こいつん名前はまんじゅーや、ええやろ? つっつかんで?)」
店主自ら熱弁と実演をする黄色い生物のもふり行為に…………黒髪とピンク髪のお客の2人は、また互いの顔を見合わせた。
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お支払いは首輪に刻まれたバーコードに黒い指輪を近づけ、DP払いで────
とりあえず試しに3分だけ。風紀委員部としての調査も兼ねて、ぴよことのふれあいタイムを購入した2人であったが……。
黄色い綿毛に包まれながら、ダメになっていた男はおでこを小突かれて起き上がる。どうやらお試しでぴよこをもふっている内に眠っていたらしい。
ピネスが小突かれたおでこを痛そうに抑えていると『しー……』と、人差し指を口元に当てたジェスチャーをする店主が目の前にいた。
そして店主が今指を差した方向をピネスが覗くと、ピンク髪の彼女が探偵帽を懐に抱え、黄色い毛並みにもたれながらぴよこと一緒に寝ていた。『すーすーぅ……』と静かな寝息を立てながら、気持ち良さそうに休んでいるようだ。
背の後方へと、親指をくいくいとジェスチャーする店主に従い、ピネスは少女とぴよこが眠りふける教室から抜けていった────。
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部屋を抜けた向こうで用を済ませたピネスがまた戻って来た頃には──。
一ヵ所に集った黄色たちの中で、見たことのあるピンクの毛先のアンテナがうずもれていた。
ぴよこたちはひよこのように互いの身をとても近く寄せ合い、眠っている。彼女のトレードマークの探偵帽子が、黄色いまんじゅーの頭の上に乗っている。
戻って来ていた男子生徒は苦笑いを浮かべながら、ブレザーを脱いだ。熱のこもる黄色い毛の中を掻き分け入っていった。
2分後────
ピネスは、ぴよこたちにおしくらまんじゅうされていたピンク髪を中から引っ張り出し、彼女を眠りから起こした。
そんなぼさぼさ髪で、眠気がのこる表情をまだしていた彼女に、ピネスは白い包み紙を手渡した。
「これは………なんなの……ですっ??」
「あぁー、この前全部さ食べてたろ? ちょうど、あぁーはは、時間あったからまた焼いてきたぜ」
そう言う彼の目線に促されて小角は、その寝ぼけ眼をこすり直し、縁が折られていた白い包みを開いていく。
すると、その中には星がいっぱいに積まれていた。満ちていた甘い匂いが、封を開けた中から漂ってきた。
「これは……ほし……」
「たい焼き、はは(ヒトデだけどな)」
「ってこんなにいっぱい星ばっかり焼いて何やってるのです! これはたい焼きじゃありませんよ! 前も勝手にエッチアイが作ってたヤツなのです!」
「あーーごめんごめん、その下に隠れてる。ほら、ちゃんとな──ははは」
「ナッ!? そっ、それにしても焼きすぎなのですっ! いったい誰がこんなにぃ……食べるというのですっ!」
「ええ? ええっとそれはぁー、────あぁっ、来たみたいだ」
騒ぎ出した男女2人の声に、さっきまで寝ていたぴよこたちが起きて寄ってきていた。
包みから漂う甘い焼きたての匂いへと、ぴよぴよ鳴きながら続々とその餌をせがんでいる。
また始まった黄色いおしくらまんじゅうを、なんとか2人で袋をパスし合いながら抜け出した。予想外にパワフルなぴよこたちのじゃれつき行為に、たまらず机の上にあがったピネスは、小角部長に即風紀違反だと指をさされ注意された。
やがて、電磁ハリセンを抱えて出てきた鬼の形相の店主にも助けられ、押しかけて来ていたぴよこたちはうるさい嘴を大人しく揃えて、整列した。
落ち着きを取り戻したその後は、クラシックたい焼きとカスタードクリーム味の星のたい焼き、どちらも美味しく、皆で食していった。
「星をあげよう!!!」
「なっ、なんです……?」
「いや、なんでもない。なんつぅか、最近ダンジョンでよくわかんねぇ星をもらっちまったって話」
「ダンジョンで星?? また変なことを言ってからかっているのですかぁ! ……くぬぬぅ……はむっ」
「ははは、いやほんとなんだけどなー。あ、そういや聞きたかったんだけど、たい焼きのカスタードって風紀違反?」
「ふんっ、ばからしくてなにもいえないのですっ! はむっ」
「あっ、あきれられてる……もしかして……おれ?」
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この日ピネスは珍しく、あまり深く接する機会のなかった人物の元にご招待された。南館物置部屋の寝床で目覚めたときには、枕元にあったその謎のチケットを握りしめて────
青いカーペットの敷かれた様相のちがう学校の廊下を通り……訪れた約束の場所、リラクゼーション室エステPにて。
暖色の明かりの下、アロマか何かとても良い匂いのたちこめる空間で。現在、ピネスはゆったりとした椅子に座りつつ、部屋主の女子生徒に言われたとおりに足を差し出し、その爪先まで丹念にマッサージされているところだ。
ピネスをここへと招いた部屋主のヴィーナス生徒は、いつもとは雰囲気が少し違う。より落ち着いたように見える、金髪を左肩から垂らすおさげにした彼女がいる。
そんな彼女から小話を聞かされながらも、冷たくて心地の良いマッサージはつづく。特製のピーナッツオイルを垂らし塗り込みながら、ガサガサで硬いダメージだらけの男の足を手で揉み、なめらかに補修していく。
「────それで初めて貰えたのがカミソリ会社の広告の仕事で、それからずっとインヅダのネームをVenuskamisoにしているわ。……そうね、あなたもやるんでしょゲン担ぎ」
「ゲン担ぎ? あぁーー、そう言われるとそうだ……ガッ!? ────そうだな……俺にはそっちは分からねぇ世界だけど」
彼女の語る小話にも出て来たそのおもいでのカミソリをちょうど今取り出して、目の前に聳えた毛の生えた足を丁寧に剃り、つるつるに仕上げていく。
頼んではいないものの、右を剃られたなら左も剃らなければいけない……。あまりにもすんなり剃られてしまったピネスは、驚き開いていたその口を閉じる。そして、自分の足をなぞるこそばゆいその感覚を受け入れた。
諦め伸ばされた男の足にカミソリを当てながら、微笑むヴィーナスは悠然と話を続けた。
「あら、あなたも人気じゃない。最近は〝エッチアイ〟だとかみんなに親しみ呼ばれていて」
「だからソレはさぁッ、何度違うからって訂正しても、ビュアーって奴らにそう呼ばれちまうんだから仕方ねぇだろ……。なんかもう諦めてるし、名付けの部長さんにもずっとそう呼ばれてるし、慣れちまったのかあんま違和感もないってなー。──って、俺のはまた人気とは随分違う意味な気がするんだが……」
「フフ、何をしても目立つことは大事じゃない? 世の中には目立とうとしても、どうにも目立てない人もいるんだから。運のいいことよ」
「運……なのか? まぁそれは置いといて、なるべく空気でいたいんだけどな、あそこでは。戦闘のプロの用務員にも『あたしのviewtubeではあたしが主人公だから、よっ、アシスタントくんッ! 悪ぃ、ねっ!』とかよく分からねぇこと言われてるし。なんとなく喋ったらしゃべったで、木浪が『は?』だしな……」
「陰で愚痴っていてはダメよピネス。もっと前向きに常に美しく心掛けないと、広告の仕事をもらえないわよ」
「あれだけの女子軍団を差し置いて俺を起用したい奴はいないと思うが、はは」
「さっきも話したように、美しさは全てを叶える魔法よ。当然、あなたにも等しく」
「すべてか……。まったく考えたこともないしそれはあったとしたらすごい魔法だけど、なんつぅか、妬まれもしそうで大変だな。ほら、そんなに綺麗だとさ?」
「フフ、分かりきったお世辞はいらないわ」
「はは、たしかに、ごめん」
「謝るのは失礼よピネス。綺麗なものに綺麗と言うことが、あなたの役割なんだから」
「ど、どっちなんだ……」
「急に言わないことね、これからは求められたときに〝きっぱり〟言いなさい。あやふやに出した足に棘を刺したくないならね。そういう意味ではviewtubeの時のチカルも、きっとそう言いたいのね」
「りょ、了解……! なるほどな……」
「フッ……さぁ終わったわ」
「え、もう? ──ってなんじゃこりゃ!?」
「フフ。まるでピーナッツね、皮付きの」
自分から出たものとは思えないほどの山盛りの量の垢に、ピネスは驚くしかなかった。
これにてヴィーナス先輩の施すマッサージは完了──今まで手入れのされていなかった男子生徒の右も、左も、美しく整えられた。
余計なものをこすりあげ、一皮剥けた両脚が彼の眼下に映る。そのすーすーする慣れぬ脚も、自分のものとは思えない。
「次はどこを美しくされたい?」ヴィーナスはそんな冗談を言いつつ笑った。
彼女が手に取った銀色に煌めくカミソリの刃を見る。毛なしになった両脚を両手ですりながら……浦木幸は苦笑いをお返した。