異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re: 作:山下敬雄
トレーニングルーム②にて──。
ピネスはいつもの用務員の方ではない、最近転校して来た戦闘のプロ2号から、お互いに共通し持っているとある技に関するレクチャーを受けていた。
「お前が【サクイチゲキ】と呼んでいるこれは、【
「ましょうざん?(……力士? なわけねぇよな)」
ピネスが今白いゴーレム案山子に放った技は、翠の剣の刃から離れ青い三日月の弧を描き、対象を切り裂いた。
それを見届けたニゴゥは、ピネスの今放ったその技を【魔青斬】と、聞いたことのない技の名前で言い表した。
しかしピネスがダンジョン40階で習得したこの技は、元々黒騎士が放っていた技を勝手に倣ったもの。
裂くような雷属性の魔力を宿し飛ばすこの技は
つまり、元となるオリジナルの技を知るのは──
「減衰のないよう、刃に乗せた魔力をできる限り圧縮して放つ。刃の届かない位置にいる敵に対する有効な殺しの技だ」
ダンジョンからの転校生──ニゴゥ、彼女ひとりしかいない。
「殺しの技? え……まじ?」
「あぁ。ジョーダンというやつだ」
「ナッ、なんだじょーだんですか。ははは」
彼女はそれを殺しの技だと説くが、驚いた表情をしたピネスにすぐに冗談だとも明かした。
『校内クエストでも課されているのかな?』と、ピネスはニゴゥの平然とした面を眺めながら思った。
「本来ならば中距離から鎧を纏う敵の急所を刈り、不意を突き殺せればそれでせいぜい、かつそれで十分な威力と言えるだろう」
「なるほど? って手で出してる……」
ニゴゥは加えて説明しながら突然、左の手刀を振るう。そしてピネスに壊された物とは別のゴーレム案山子に向けて放った小さな三日月の魔力が、風に乗り──届いた。コントロールされた一つの小三日月は、白いゴーレムの首元の右に抉ったような小さな傷を付けていた。
まさに敵の急所を縫う様に狙い、その首を刈って見せたのであった。しかも腰にさげたままの刃を用いずに、そのしなやかに薙いだ左手一本をまるで鋭い刃に見立てて……。
「つまりこれは、正面から強引に敵を突破するための技ではない」
そう戦闘のプロに実践して言われてみれば、見物していた素人に毛が生えた程度のピネスは頷くしかない。元より自分の技ではないので、彼女から受けるレクチャーで、その技の性質の謎が解かされていくようでもあった。
しかし、それでもこの技を切り札のように用いてきたピネスには腑に落ちない部分も当然ながらあった。
「ぬぇ? まじすか。でも俺……ッ──!?」
「あぁ。だがここでは違う。──気をつけろ」
隣にいるニゴゥに向けて話しかけていたピネスは、上に集う殺気の束に気づいた。
星空のようにピネスの頭上に散りばめられた小三日月たちが、青く妖しく静かに瞬いている。
やがてチカチカ光り止まっていた三日月たちが、見上げて表情を歪めた彼のその面を目掛けて、降り落ちてくる。
彼の立つ足元の地を切り刻んだ、その技の取説通りとはいかない威力に────
「これもジョーダンというやつだ。私とお前以外で、この技を扱える敵にそうそう出会うことはないだろう」
「じょっ、冗談がお好きなようで……はは」
サプライズにしては静かすぎて、頭上に置くトラップは黒板消しなどの学生のいたずらでは済まない、そんな殺気と警告に満ちていた。
そんな鋭い冗談だった。
天を仰ぎ……一歩も動けなかったピネスは、ゆっくりとその汗ばんだ首を下げていく。やがて視界に映り見えてきた──こちらを見つめたまま微笑まないそんなニゴゥの顔を見ながら、ピネスは精一杯の苦笑いをお返しした。
「とはいえ、魔力の消費を抑えたやり方を覚えておいても損はないだろう。どうする。そのままの感覚を保っていたければ勧めはしないが。今のままでも威力の方は十分だ。中途半端に齧ればその技の元あった魔力コントロールを乱す可能性もないとは言えない」
あれからもう一度試し放った魔青斬ことサクイチゲキの技。ゴーレム案山子を真っ二つに切り裂いたその技の威力も、しかしまだまだ無駄が多いのだとニゴゥは言う。
話や理論の一端をさらっと流し聞いただけでは、やはりニゴゥの技術や繊細な魔力コントロールを模倣するのは浦木幸といえど無理だろう。
しかしその技のパワーは既に十分なレベルに達しているともニゴゥは言う。ならばわざわざ燃費を抑えたやり方を学ぶ必要は果たしてあるのかどうか。
それもまた判断するのは他人ではない、自分の体のことなのだ。
ひとしきり技を磨くことのメリットと弊害の説明を終えたニゴゥは見つめたまま黙り、じっと考え込んだその剣士の返答を待った。
「いや、他人の魔力があてにできない時もあるのかなって。というのもさ、この前アイツと円形校舎でたたかった時に、ちょっと魔力が上手く練れなくて困ったんだ。だからそういう術も……うん。やっぱ〝別腹で〟あった方がいいかなって! ま、他人の魔力に寄生だとかそこまで酷く言われる筋合いはないと思うんだけど、確かにクリティカルにちょっと頼りすぎてたってところがあるからさ、俺? まとめるとなんだ? ──そうっ! 相手の魔力に左右されない自力の効率ってやつも、考えてみてもいいかもしんねぇ……なんてさ?」
ピネスは校長や用務員のように拙い言葉をツギハギしながらも自分なりに考えをまとめあげた。
黙り聞き入っていたニゴゥは彼の今導き出した答えについて、重ねて返答をした。
「確かに敵に魔力の質を変えられれば、お前の得意とするその敵の魔力のただ乗りをするのはより難しくなるだろう。お前の魔力量はこの前戦った奴や王よりも、まだ明確に少ない。そういう意味では、──いい判断だ」
「ははは、
相手の魔力に依存して放つのがクリティカル。その出来栄えは常に相手の力量や魔力量と、クリティカルを出そうとする自身の技術が介入する。
校長不黒文や悪魔サンフンに劣る魔力量のピネスは、ニゴゥから自身の技でもある【サクイチゲキ】のその無駄を省くためのレクチャーを受けることに決めた。
ピネスは握り込んでいた翠のショートソードを彼女へと手渡す。
静かにショートソードの柄を手に取ったニゴゥは、さっそく同じ得物を手にしながら同じ技を、再生成されたゴーレム案山子に向けて放ってみる。
彼女が今宙をなぞった刃が放つその魔力の質や模る技の美しさは、未熟なピネスでもそれには到底及ばないとはっきりと分かるものであった。
本物の戦士の放つホンモノの技がそこにある。
無駄に砕け散る音は鳴らない。静かに通り過ぎた三日月が、白い像をなめらかに断ち切った。
ナナメに切断されたゴーレム案山子は、やがて綺麗に魔法の刃の入ったその下半身を滑りながら、地に落ちて砕けていく。
静寂のトレーニングルームに立つ一人の戦士の佇まいは、青い三日月と鋭い刃がよく似合う。
淡く青い髪が遅れて吹いてきた風に今静かに揺れている。とても透明な肌艶は、今同じ場所にこうしているのが不思議なくらい希薄な存在にも思えた。
こことは違う、どこか知れない彼方を見ているような気がする。そんな彼女の横顔を覗きながら、ピネスもまた同じ方向を見てみる。
トレーニングルームの壁に刻まれた一筋の傷跡が、ピネスは何故だか少し寂しいもののように思えた。
ニゴゥに【魔青斬】の見本を見せてもらい、ピネスもさっそく返された同じ剣で試してみるが難しいものだ。魔力を抑えて威力を高めるというその相反する事象を抱えた難題は、言われてもなかなかできない。一朝一夕では身につかないものだ。
今彼が放った【サクイチゲキ】(魔青斬)もそう。込める魔力を抑えたあまりに、威力もその三日月の技の形が定まらずにいた。しかしそうなるのは当たり前のことであり、簡単にできるニゴゥの技術の方がすごいだけの話であった。
「やっぱ魔力が少ねぇと、こうかぁ……」
「できないのは無理もないが、筋はそう悪くはない」
「え?」
今未完成な技が命中したゴーレム案山子を見て、ニゴゥはそう言った。こしらえた三日月の形は魔力不足の不格好ながらも、狙ったターゲットにそれが命中していれば確かに御の字とも言える。
全てができていないゼロな訳ではない。まだまだ完成品には遠く及ばないながらも筋はそこまで悪くないとニゴゥは言いたいようだ。
「王に聞くところお前はずっとあのダンジョンで任務を遂行してきたのだろう。ならばそれにアジャストした戦い方を自ずとお前の体は知っているはずだ。お前だって全ての敵に対して全力であたる訳じゃないだろう」
「言われてみればたしかに? ダンジョンの階層ボスはどいつも強力だし、道中はそれに備える感じっつぅかナメてはねぇけど意識はしてるよな。そうそうそれまでに剣を温めるっつぅか……そんな感じで戦ってはいるような?」
「今聞いた話でもつまり、お前の剣にはムラがあるということだ」
「え、無駄?」
「ムラだ。同じようだがそれは違う意味だ」
「ムラか……。それって、どうすればなくせる?」
「なくす必要はない。要らないものをマイナスしてプラスしろ。ムラという言葉には最大値がある、無駄を省ければその山はもっと高く鋭くなり得る。その山をなだらかにするのではなく、剣を温めるためのスピードを常に意識しろ。わざわざ高い山に不便だからという理由でトンネルを通し、目指したその向こう側は──きっと凡百の兵士の姿だ。お前はその先を剣に加えてさらにスコップを手にして掘り進めたいか、それとも不要な物を整理してもっと身軽にして登りたいか。どちらの景色が美しいと思えるか、例えるならばそういう話だ」
「トンネルの先じゃない……山の最大値…………それならなんか分かるかもしれない」
ニゴゥの語った例え話は、何故かピネスにもすんなり理解できたようだ。
ムラ、つまりその山の頂上、力のピークに持って来るまでの速度を上げるためにできることがまだある。それは言わば要らぬ荷を減らして山を登り易くすることであり、別のコツを知りスコップで山に穴を掘削し抜け道を通す技術とは異なるのだ。
どちらも何かを削ることではあるが、道を進み到達するその高さやそれに伴う労力は随分と違っている。
ならば目の前の師がおっしゃる様に、今自分が目指すべき答えは一つ。ピネスは、もう一度休めていたその右手の剣をしっかりと握り直した。
「よし、ならスコップの方はもう少し……ごちゃついたリュックの中を整えてから考えてみることにする! 整理整頓は風紀の基本だってコズミも言っていたからな」
「いい判断だ」
ムラという言葉にはポジティブな要素もある。ピネスはその言葉を信じて、一旦、最大値に到達するためのスピードを磨くことにした。
「アレ、でも山の最大値じゃなくて肝心の省エネは?」
「整理整頓し身軽にさえなれば、それで省エネになるだろう」
「っ……確かに!! ──でりゃぁぁ!!!」
師の言葉に迷いの失せた若者は剣を振るった。青く荒々しい三日月が、遠方に立つ白いターゲットを粉々に砕いた。
狙いを外してしまった。翠のショートソードから放った歪な雷撃は集中を欠き、ゴーレム案山子のターゲットの元から大きく逸れた。
集中が切れ身に入らない修行は続けてもあまり意味がない、それに魔力も随分と消費した。今日のレクチャーはここまでなのかもしれない。そう思った指南役のニゴゥは、肩で息をするピネスの元へと近づいた。
「新しいことをすぐにできるようになる必要はない。確かにお前はその点は器用なようだが、練習と実戦は物の身につき方が違うことだろう。ここまででも十分だ」
「はぁ……はぁ……そうすか……」
「あぁ、いかに優れた戦士も技術の体得には時間を要するものだ。進む速度は一定じゃない。今までが上手くいきすぎていた、そういうこともあるだろう」
「なっ……なるほど……」
今までピネスがダンジョンでの冒険や、同じクリティカル使いの池原叉鬼との戦いを通じて体得してきた技術。それらをすんなり体得できたのは、本当に運や環境やその場の条件が良かっただけかもしれない。
『今までが上手くいきすぎていた』そのニゴゥの言葉を聞いた時、どこか安心している自分がいた。ニゴゥのような戦闘のプロでもそういった感覚を持ち合わせていることに、ピネスはどこか共感を抱いてしまった。
しかし鍛錬を一時取りやめ安心した、それだけではなく、受け答えするピネスの様子がどこかおかしいことにニゴゥは面と向かい彼と話している途中に気づいた。
「どうした? 本当にダメなようか?」
「いや、ちょっと……つかれって!? な、なんっ」
ピネスのもっと近くへと歩み寄ったニゴゥは、突然おでことおでこを合わせる。
疲れた様子で立っていたピネスは、彼女が突然取った行動に驚いた。
「あれだけ技を繰り出せばこの熱は当然だが。ン──魔力の波長も乱れているな」
魔力の波長が乱れているのが、頭と頭をこうしてくっつけていれば彼女は診断できるのだと言う。そして、その原因についてもう一つ……思う節があったニゴゥは──
「なにを……っ」
「それでは鍛錬に身が入らないだろう。無駄を省くには仕方がない」
ニゴゥはゆっくりと彼の制服のズボン、その股間の辺りをまさぐった。
青髪の端正な顔がものすごく近くにある。雪のような肌ととても静かな吐息が、こんなにも近くに……見て感じられる。
湖のように冷たく澄んだその青い瞳に見つめられると目を逸らすことはできない。おでこを合わせ急接近したとても美しい存在。その睫毛の数まで詳細に分かる距離でドキドキと高鳴る鼓動。その血の巡るリズムと共に、はち切れそうにまで勃起した若い雄の肉棒がゆっくりとチャックを下ろし現れる。
とても冷たく細いニゴゥの指先が、熱い脈動を起こす竿に絡みついた。
下は冷たい指先に絡まれながら、眼前にある真っ直ぐに突き刺さる彼女の青い目から離れられない。
彼女の面は精巧な雪の彫像のようで、とても現実味が薄い。異国の者とも違うもっと別の世界の住人のような、そんな他の者にはない儚くて淡い美しさを持っていた。
放っておくと雪のように溶けてしまいそうなその存在に、指を肉棒に絡められている。始動した指先で形作る手筒は、単調な動作だけではなく男を飽きさせないような複雑な動きをつづけた。
強くもなく弱くもない。そんな彼女の指々が行き来し裏筋を睾丸までもを届き這う度に、ピネスの肉棒は膨張しつづけた。そしてそれ以上膨らみきれなくて、びくびくと興奮し頷きながら、彼女の手の中で透明な涙を垂らして喜んだ。
手のひらや指を汚す、鈴口からだくだくと流れる透明な露も構わず一緒に絡めていく。しだい滑りが良くなり、熱い肉棒を包み受け取る刺激がぞくぞくと増していく。
片手一つで成す手筒にいい様にやられてしまう。彼女がマスターしているのはひょっとして戦闘術だけではないのか。ニゴゥの披露する妖しい指先と手のひらを上手く使うテクニックに、男子高生のピネスが長く耐えきれるはずもなく──。
分かりやすくピネスの息がまた一段と荒くなる。だが目の前に立つ彼女は、そんな男の情けなく漏らす熱息が自分の面にかかろうとも動じずに観察をつづける。
冷たく淡い青い瞳に見つめられたまま手で肉棒を休みなくしごかれていく。まるで男の反応と弱点を窺いながら、吐く息の荒さに伴い前後するその手筒の動きは、さらに激しさを増した。
「あぁっ……もうだっっ」
「いいぞ、そのまま
緩急を置き去りに最後はスパートをかける。濡れた手筒に擦られて促されるがままに、ニゴゥの声と命令を聞きピネスは射精した。
鈴口から吹き出し、びゅーびゅーと放つ熱い昂りをニゴゥは左の手のひらに受け止める。
しかし、受け止め切れない。迸る勢いは緑の作業着の左袖を汚した。
射精中も裏筋を複数の指で刺激し促しつづけた長い長い射精が終わると──緑の腕のレールの上を白濁の線が引かれていた。とてつもない興奮度と、まるで若い雄の勢いを表すその淫靡な印を下に見たニゴゥは……。
「これは、まだ無駄な魔力がありそうだな」
熱い熱い濃厚な魔力が宿るザーメンを手に絡めながら、ニゴゥはそう呟いた。そして汚れてしまった緑の作業着をおもむろに、その場に脱ぎ捨てた。
ピネスは息を荒げたまま返事もできない。心地よい射精に導かれて、もはや何も思いつかない。
ただ眼前の彼女の魅惑的なその青い目を、瞼を下げじっと見つめながら、ただ気持ちよい方へとまた、絡みつく彼女の手に引かれ流されていく────。