※この作品はR-18です。

異能幸運レアドロップでイキ抜く♡ピネスと校長の不気味なダンジョン冒険記Re:   作:山下敬雄

6 / 60
5♡幸運を取り巻くカオス

 ピネスの運、はたまた覚醒した実力で炸裂した緋色のクリティカル。幸運がよびこんだレアドロップのお宝に、4人の勇敢なる死者、副島たちとのふれあい邂逅。そして校長は浦木幸のただひとりの校長としての格は変わらず。

 

 2人は20Fの悪魔の像を浄化し、ダンジョンからの帰還を果たした────。

 

 

 

▼▼

▽▽

 

 

 

 いつもの正門をくぐった先────いつもそこで佇み皆を待つ女神石像の前に、2人はまばゆき光とともにワープ移動し、こんもりとした芝の安心感の上に足をつけていた。

 

「ふっふ、今日という日は刺激的な冒険だったなピネスくん」

 

「きのうよりダンゼン……っすね校長。って俺、今日2回目だった」

 

「「ははははは」」

 

 ダンジョンで運命を共にした男子生徒と校長は、再び帰ってきた不黒高校のなつかしい敷地内で、顔を見合わせてくだらなく笑う。

 

 そして2人が帰ってきてからお互いの面の次に見たのは──うれし懐かしの構える校舎。

 

 その校舎にタスキをかけるようタイミングを見計らったように、白い垂れ幕が今勢いよく垂らされてゆく。

 

 

【おめでとーーーー!!!】

 

 

 屋上から身を乗り出す勢いで、元気に手を振る制服姿の少女がいる。

 

 とてもとても手をおおきく扇ぎ振っている。濁った赤紫の異界の空をも、元気な女子成分で浄化するようだ。

 

 よく知るフレンドリーな校長のことを、誰とも知らない男子生徒のことを、白い垂れ幕の太い元気な筆字で迎えてくれている。

 

 

⬜︎タコイカ学習帳

サンチュ:

1-B

 

とにかく元気なみんなの後輩キャラ。

ミーハー気質でよく兄に呆れられている。

身近な男子を勘違いさせてしまうこと多々。

韓国語はしゃべれない。

 

願い……光になりたい。

 

★ドロップアイテム

もうだいぶ酸っぱいキムチ

まだパリパリの韓国海苔

いつぞやのプリクラ

りんごのリップクリーム

⬜︎

 

 

 ピネスはぼーっと見上げる。たぶんダンジョン帰りの2人あてである、とにかく元気でダイナミックに垂らされた力強い光景を。

 

「なんのおめでとう、なんすかね」

 

「さぁ? とにかくめでたいではないか、ははは」

 

 しばしその垂れ幕といつまでも疲れ知らずに手を振る元気のフルコースを、ピネスと校長が並び眺めていると──

 

「おっ、おにぎり!!!」

 

 突然右横からきこえた〝おにぎり〟。ポニーテールを揺らし、エプロンがけの頭巾姿が駆けてきた。

 

「なんだ? あぁー、おにぎり? バジPあれイチバン」

 

「えぇ!? ばじぃ!? じゃなくてマッ──」

 

 

⬜︎

緒方結美:

2-A

 

いつも黒髪ポニーテール。トレードマークの頭巾には、おしゃれにこだわる。

いたって普通の可愛い女の子だがおにぎりへの執着心と探究心には目を見張るものがある。

彼女がおにぎりを頬張る姿に、ひそかに恋をする男子はちらほら。

 

願い……マイ冷蔵庫がほしい。

 

★ドロップアイテム

おにぎり大図鑑

塩昆布

おしゃれな頭巾

緑のヘアゴム

⬜︎

 

 

 親指を立て、サムズアップする。ピネスが普通の顔で披露したその仕草に、頭巾娘はあたふたと反応。〝おかえり〟と言うつもりが〝おにぎり〟とアガり言ってしまったらしく、しかしそんなことは彼には伝わらない。頭巾娘は余計に取り乱した反応をみせた。

 

「きのこいかがですか?」

 

 間髪いれず今度は左手側から現れた、謎の白髪ボブ。

 

「あぁ、きのこ? たしかこれ……土産っす」

 

「わおキノコっ! のこのこお布施お恵みありがとうございます♪」

 

 

⬜︎

のこっち:

3-C

 

不黒きのこ協会に属している。

おっとりやさしい物腰だが……

 

願い……不明

 

★ドロップアイテム

お気に入りのしいたけベレー帽

修道服

きのこ

きのこ

きのこ

 ⬜︎

 

 

 背負ったリュックのサイドポケットから、お土産を。ダンジョンに生えていたダンジョン産の謎きのこを差し出した。珍しいきのこを両手にしたまま深くお辞儀をし、しいたけベレー帽が地にずり落ちたので、見ていたピネスはそれを彼女に拾ってあげた。

 

 何かわからないまま、きのこの納品クエストを達成していたようだ。

 

 そんな時、ピネスの耳に、突然ブク高の学校生活で聴いたことのあるようなハープの音が、遠方の空から流れ始めた。

 

「……あぁーなんかたまに、聴いたことあるやつ」

 

「ほぉ珍しい、屋上の素敵な誰かからも、キミに『おかえり』だと。──てれてれてってって……というやつだな、ふふ」

 

 

⬜︎

屋上の魔術師:

3-F

 

気が興じると音楽をときどき奏でる。

屋上のハーブ園は彼女のテリトリーであり、許可なしであまり近づいてはいけない。

違法建築のペントハウスにひそむ、ブク高でもっともミステリアスな生徒である。

 

願い……

 

★ドロップアイテム

ハーブ類

タロットカード

なぞの楽譜

⬜︎

 

 

「あなたがうわさの浦木ピーナッツですわね」

 

 今度は真正面から、金色ウェーブ髪のセンター分け。体も顔も大人びたように見える高貴な存在が、堂々ゆっくりと歩み寄り、彼の前に現れた。

 

「ぴねす、ですけど」

 

「ピネス?? 私は〝Venus〟ですわよろしく、いい名前ね」

 

「おぅよろしくな、え、ぴーなつ??」

 

 

⬜︎

Venus:

3-E

 

ブク高の圧倒的マドンナ、そのかもしだす黄金のオーラ説明はいらず。

 

願い……美

⬜︎

 

 

 『ゔいぃーーなすですわ』と丁寧に発音と舌の使い方まで訂正された。とてもいい匂いのする存在とピネスは握手、ご挨拶を淡々と済ませた。そのまま豊かで美しい金髪を爽快にかきあげ、彼女はUターンし去っていった。

 

「ふむこれは俗に言う、キミを取り巻くカオスというヤツだな」

 

「ゔぅぃぃなすね……。てか、どこにいたんすかこんなに?」

 

「ははは、キミの活躍がテリトリーにこもっていた皆を動かしたのかな。あといい加減これからは、ヒトの顔を覚える努力をしたまえピネスくん。人間関係、呆れられてからでは遅いぞぉ?」

 

「それも……そうっすね。あぁー、努力させてもらいます」

 

 

 浦木幸のもとに一気に押し寄せた、不黒高等学校の各持ち前のテリトリーに潜んでいた麗しき女子たち。

 

 ピネスは握手した生温かな手のひらに、お近づきの印であるピーナッツを一粒のせながら──

 

 今までよりも名前と顔を覚える努力をすることを、隣で笑う校長先生に誓った。

 

 

 

「そこの頭巾さんっ。きのこ、おやき」

 

「ちょっと冒険しすぎたと思っていたけど【バジP】がいちば……えっ、あはい? うわぁーーなにこのきのこ見たことない模様!! ニオイは……うん、嗅いだ事ない感じ……! え、でもこれは食しても大丈夫なのかなぁ?」

 

「焼けばわかります、さぁおやき」

 

 どこからか持ってきた七輪セットの炭火の上に、その香り、その笠の模様、全く未知の、不思議なダンジョン産きのこは焼かれていく────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⬜︎

浦木幸:

2-D

なんとなく生きている若者代表。

〝キミの夢に向けてキミを応援する場所〟

そんな生徒個人に深く寄り添う……気の利いたキャッチコピーのような取り組みをおこなっている学校、不黒高等学校に在籍し、

 

なんとなく生きている。

 

これといった誇れる趣味もなく、学業の成績もとくに誇れる尖った点はない。体育の成績にいたっては3(側転のできない)普通の男だ。

 

しかしそんなこの男の唯一誇れる〝なんとなく道〟も、ある日を境に突然終わりを迎えることになる。そうあの日の夏、補習授業を受けに来ていたいつもより静かな学校が、異界へと切り取られ閉鎖環境での生活をよぎなくされたあの日……

 

になっても驚いたことにこの男はあまり変わらずに、なんとなく、特殊環境に適応して薄いおかゆを食らい日々生きていたようだ。

 

そして、今日この日ついに校長先生のダンジョン出航命令を渋々のみ、そこでたまたま幸運な異能に目覚め10F20Fの区切りの階層を完全制圧、制覇、2度のダンジョン生還を果たした。

 

果たしてこのラッキーボーイの不気味な冒険の行く末は……

 

なんとなくか

 

なんとかなるか

 

なんとかするか

 

 

誰も未だその未来を知らない。

彼は未知の迷宮になんとなく飛び込み、日々彷徨いまよいながらも、

 

暗がりにその光、幸運の足音をたしかに刻み、

 

ゆっくりと我が道を進んでゆくこと

 

 

 

だろう?

 

 

 

《校舎南館3階 浦木幸の部屋(物置部屋)》

⬜︎

 

 

 慣れぬ長文を読み、誘発されたあくびを消化しながら、タコイカ学習帳に記録されていた自分の項目を読み終えた。

 

 狭い物置部屋にフィットするよう敷いた敷布団の上に仰向けでいるのは、その〝なんとなく生きている若者代表〟。

 

「だれが書いてんだよこれ、校長? ソエジマかぁ? なんとなくか、なんとかするねぇ……普通にやかましいな」

 

 浦木幸は自身についてのお節介な内容が書かれたその薄い学習帳を、パッと、宙に放ち自由にさせた。

 

 ぷかぷかとゆっくり浮かびながら、タコイカ学習帳は俯瞰モードで物置部屋の状況を雑記していく。

 

⬜︎タコイカ学習帳

ダンっダダダダダダだ────!!!

 

やかましいと宙にワタシを投げ捨てるやいなや、突然鳴り響いた激しいノック音が、汚口埃っぽい物置部屋の空気を揺らした。

 

なんとなくマンの浦木幸はリアクション薄く驚き、なんとなくドア方へと向かった。

⬜︎

 

「って本当にやかましいな、なんだなんだぁ? はいはーい、そこ開いてますよー(公式公認の校長が閉めるなって言ってたんで)」

 

 訪問客とは珍しいと思いながらも、部屋主の男子は戸を横にスライドし引き開けた。

 

「なかなかのこのこ出てこないので、マシンガンノック、ごめんください」

 

「えっと、あんたはたしか、きのこの人か」

 

 ぷかぷかと浮かびすり寄ってきたノートの情報を見るまでもなく、しいたけのベレー帽を被ったしいたけ色のシスター服、ピネスがきのこの人と鮮烈に記憶する人物であった。

 

 さっそく名前と顔をおぼえた成果が出たと、ピネスはきのこの人を目の前に、手のひらの上にグー拳をぽんと叩きおいた。

 

「はいそうです私、きのこの人です」

 

 きのこの人は深々とお辞儀する──。するとまた記憶がデジャブするように、十字の切れ目の入ったしいたけベレー帽が地に落ちそうになったので。ピネスは完全に落ちるその前にそれをキャッチし、目の前のホワイトボブの女性へとお返しした。

 

「おっと失礼、慈しみいただきありがとうございます。ところで、きのこ、いかがですか?」

 

「おぅ、え? 手持ちのきのこはもうないけど? またなぞの七輪で焼くつもり……でっっ!?」

 

「いえ、ここ──生きのこ」

 

 いつの間にやら下方のズボンチャックの向こう側から出されたのは、浦木幸の生きのこと称されるもの。

 

「生きの……ごはぁぁ!? ちょちょちょ、それはきのこじゃなっ──」

 

 露出した生きのこが、屈むしいたけベレー帽の女性の真正面にある。

 

 冷たい手の感触がまとわり伝う。

 

 それはきのこじゃない、そう訴えるピネスの言葉を聞いたかきいていないのか、眼下に屈んだ女子は露出したそれを嗅ぐ。

 

「すんすん──香りはすこしおしょうゆのような…香るようです、──すんすん」

 

「いやっえぇ? ちょとちょと」

 

「ふぅー」

 

「──♡♡!?」

 

 香りを嗅ぐだけではとどまらず、きのこ女子は不意に、息をかるくふきかけた。なまあたたかな吐息の風が、亀頭、鈴口にぶつかり、びくっと思わずピネスの生きのこは反応してしまった。

 

 さらに、ゆっくりと近づいてくる。その見知らぬ女子の触れたこともない柔らかそうな唇が、きのこの先端へと──触れた。まるでご挨拶、キスをするように。

 

 段々とエスカレートする。出会ったばかりの屈む女子からの刺激の連続攻撃に、先端をやさしく2度キスされたピネスの生きのこは、完全に勃起してしまっていた。

 

「ワオっ、唇接触でかさが異様に増しました! 2倍いや3倍……ぐんぐんのこのこ成長して、なんとも可愛い食べごろです」

 

「はぁは……食べごろってぇ、だから勘違いッ、こっ、これはきのこひゃっ♡♡♡!??」

 

 香りを堪能したお次は、一気に食べごろをいただく──

 

 目の前でびくびくと硬くなり、うなずくピネスの生きのこは、あつらえたように窄まった、滑り込むO字の唇肉に一気に奥の方まで咥えられた。

 

 訳の分からない刺激が、ピネスのペニス全体にぬめりしめり、滑り走る。眼下の柔らかな口穴の中に、本当に食べられてしまった。

 

 奥までいった唇は滑り戻り、お気に召さず、咥えた口元から離れていくかと思われたが。そのまま、ぷりぷりとした食感の肉傘をねぶっていく。

 

 這いずる……

 

 押し当てる……

 

 ──肉舌の動きで、味わったことのない快感がピネスの亀頭を重点的に襲いだした。

 

「っぐぁ♡♡♡」

 

 なんとか勘違いきのこ女を制止しようとしたピネスのその弱々しい両手の動きは、思わずぎゅっと、握りグーにしてしまう程の強烈な快感に襲われた。

 

「ぷりっぶりでたくましい、じゅーしーなきのこカサで、ふじゅるるぅじゅー」

 

 ピネスのきのこを離さない。屈む白髪女子は、飴玉のようにそれを舐めしゃぶりつづける。

 

 ぷりぷりとエラ張った若い雄の雁首、そのくびれた青臭い溝を掃除するように、ねちっこく、濃厚に、きのこ女は舌肉を這わせ、舌先を溝にねじ込み味わっていく。

 

 口内で起こる、目視のできないきのこ女の予想不可の淫靡なテクニックに、びくびくとしっぱなしのピネスのペニス。今まで味わったことのない快感を味わわされる。もうこれだけで、一気に射精感が高まってきた。

 

 そして、大きく膨らんだきのこのカサ裏の部位を満足ゆくほど味わい尽くしたのか。女はピネスの腰横に手をやわく添えた。今度は亀頭をねぶるのをやめ、ストロークを開始した。

 

 首を前後にゆっくりと深く、しだい段々と速く、十分に馴染み濡れ滑る陰茎のレールを彼女の咥える唇がストロークしていく。

 

 笠から柄、柄から最奥の石突の方へと唇が届くほど。生きのこを浅く深く咥えながら、喉奥深くに仕舞い込む動作を繰り返す。

 

 添えていた両手は、その雄の震える腰を掴んで離さない、逃がさない。スピードの上がる息継ぎもない淫靡な繰り返しに、ついに────

 

「っぬふぁああーー♡♡♡♡」

 

 ピネスはきのこ女の口内に射精した。

 

 その射精の瞬間、さらにがっしりと、ピネスの腰の裏の尻まで手を回してホールドする。

 

 とてつもない濃厚なフェラ、イラマチオに、我慢できるはずはなく。びゅーっと無抵抗に、目の前の雌の口穴の中に吐き出す──腰を突き入れながらお漏らししていく。

 

 根元石突の部分まですっぽりと咥え込んだきのこから、吐き出される濃厚なミルクが、女子の喉奥にびゅーびゅーとお構いなく注ぎ込まれる。

 

 惜しげも遠慮もない射精をされ、咥えて止まっていた唇がやがて離れていく────

 

 口内から鼻に直に通り抜けるほどの濃厚な雄臭を放つソレを、天を少々仰いで飲み込む。セットした髪のすっかり乱れたホワイトボブの女子は、口内に宿る粘る食感を、喉をゆっくりと鳴らし──。

 

 涎や、分泌されたあらゆる汁でべちゃべちゃになった唇肉は、うれしそうに口角を上げ、お味の感想を言う。

 

「ごくっ────ふぅー……。たいへんのこのこびゅーびゅーーっ……お射精できましたね、きのこミルク、とってもくさい♡です♡」

 

 お味はとってもくさい♡、涙を目元に溜めて、そう言い──。フェラ行為中に落ちてしまっていた大事なしいたけベレー帽を、彼女は目尻をさっと指で拭い、おもむろに拾いあげた。

 

「ふふふ──。これからも、のこのこどしどし珍しいきのこを、不黒きのこ協会のわたしに、お布施お恵みよろしくお願いします。では」

 

 はしたなく光る口元を拭った彼女は、帽子を両手前にし、ぺこりと深くお辞儀をした。

 

 そして、お気に入りの帽子をさっと被り直してその場を後にした。

 

 まるで何事もなかったかのように切り替え早く、物置部屋の扉前から廊下へと、修道服のその女の背が振り返らず遠くなっていく。

 

 

⬜︎タコイカ学習帳

ぬめった生きのこを露出しっぱなしのピネスは、放心────動かない。

 

なんの意図があったのか。ダンジョン産の珍しいきのこを持ち帰るクエストを、浦木幸へと依頼し、彼女はただのそよ風のように彼の元から去っていった。

 

《午後6時55分 3-Cのこっち突然の南館3F物置部屋訪問》

 

⬜︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おきろーーーーー!!! 2-D浦木幸せんぱい、ただちにグラウンドに集合ですっ!!! 3分いなーーーい!!!』

 

 

 時刻は午前6時、そりゃ迷惑。

 

 スピーカーから放送される、誰か知らない女子の大声、頼んでいないモーニングコールに起こされて────

 

 

 

▼

▽

 

 

 

 寝癖頭を跳ねさせて、南館3Fからグラウンドに集合。朝礼台の上に待っていた体操服姿の黒髪女子は、そこからかろやかに飛び降りた。

 

「あっっ先輩ほんとに来ました! うん──2分57秒、合格ですっ!」

 

 手持ちのストップウォッチで計測していた女子は、ピネスの叩き出した好タイムに頷いた。

 

「わざわざ計ってたのか。てか近所のおじいちゃんかよさすがに早起きすぎるぞ、あと3時間は──」

 

「あはは──あっネグセ」

 

「あぁ?」

 

 ナチュラルなかんじで近づいて来た女子は、男子のとびでた寝癖を撫でながら整地する。そしてマシになった出来栄えに頷いてみせると、ピネスの目の前の女子は笑っていた。

 

 今お直ししたはずの寝癖が、ぴょこん、また元に形状記憶し戻っていたからだ。

 

「ほらね、寝癖も寝たりねぇーんだよ。ほぁー……俺も?」

 

「あはははごめんなさぁーい! でもでもっ来たからには、付き合ってもらいますよ?」

 

「あぁ? なにに付き合うの」

 

「それはもうっ朝早起きといえば……わかるじゃないですかぁ~──ラっジオ体操ーー!!!」

 

「だれもきてないの?」

 

 寝起きで反応回路の調子がイマイチなのか、ピネスは目の前ではしゃぐ女子のテンションを無視し、きょよきょろと白々しく辺りを見回した。

 

「なんと、今日からはじめたからですっ!」

 

「そりゃ急だな? ラっ……ジオ体操かー、そういや俺の近所の浜でもむかしやってたな。たしかスタン」

 

「そうっそうそうそうっ!!! このスタンプカード! ────スタンプを21個あつめるとなんとなんとサンチュ特性、韓国海苔イチマイっ!」

 

 ででんっ、自慢気にもその女子は朝礼台に置いていたスタンプカードなるものを取り出した。そしてその手作り感のあるスタンプカードを、ピネスの首に授与するメダルのようにかけた。

 

「は? んだそれ……めちゃくちゃお得ほしいじゃねぇか。バジPや、おにぎりに巻くか……いや、おかゆにぱらぱらと、いっそそのままパリッと……ははは夢がひろが──そういや俺スタンプカードの類って全部あつめた試し、一回もねぇな……。なんかさぁ、そこのスタンプカードのスタンプを支配するおばちゃんがさ、融通きかねぇのなんの、夏休みに4、5回休んだ分をおまけして押してくれなくてさー、結局お菓子ももらえずただの無駄に早起きした馬鹿に────」

 

「急に鬱エピですねっ!? じゃじゃー! おまけでわたしっ、今日はふたつ、おしときますよ先輩♡」

 

「まじかよ、お前やさしいな」

 

「えへへぇ、それほどでもぉ」

 

 ディテールをもって語った悲しき過去の効果か、さっそくサンチュ後輩に、二つのスタンプをスタンプカードに押して貰った。押された二つの赤と青色の兎のスタンプを見て、ピネス先輩はテンションを少し上げよろこんだ。

 

▼

▽

 

 午前6時15分、予定通りのラジオ体操がはじまる。朝礼台に元気に飛び乗ったサンチュは、さっそくスピーカーに接続したスマホを操作し、ミュージックをかける。

 

 流れてくるアップテンポなポップなメロディーに────

 

『だいすきって大声でいってみてーーー♡空が晴れてく 曇りを裂き大きな先へと ナイスデスティニー★コウカイな迷宮days♪つながってゆく あなたとわた──』

 

「おいっ! どうおどんだ!!! なんのアニソン」

 

「あっわわ間違えましたーー!!! えっとえっと……おかなしえいこでした!」

 

 登録したセットリストから、組んでもいないのに流れてきた謎の曲をストップ──。すぐさま別の曲をあわてるサンチュは、スマホを操作し直し流していく。

 

「誰だよそれ……1ミリも俺の耳に聴いたことねぇな。──おぅ、そうそう踊りたくなるこういう感じの……って、ラジオ体操ってこんなんだっけ?(尻も?)」

 

「こんなんですよっ! さぁやりましょーー!」

 

 尻からはじまるラジオ体操は初めてだと思いながらも、ピネスは見よう見まねでサンチュ後輩の尻の動きをふりふりと真似していく。

 

 午前6時、先輩と後輩ふたりだけのラジオ体操、激しくながれるKPOPにのって────踊る。

 

 

 

 

▼▼

▽▽

 

 

 

 

 時刻は午前10時、体が温まってきた絶好のダンジョン日和。相変わらず晴れない赤紫の異界の天の下、正門前へと現れた浦木幸は、門の先に渦巻く赤いゲートを見つめる。

 

 そして、ふらふらと校舎側から舞い飛んできた赤いちょうちょを、その手に捕まえた。

 

⬜︎タコイカ学習帳

前回の冒険は予定通りに上手くいったが、この先ピネスくんと私、2人だけでは何があるかわからない。

幸いピネスくんキミの異能のおかげで、ダンジョンにお出かけする際の装備品にはあまり困らなくなった。

 

そこで、不黒ダンジョンに挑む希望者を試しに2名あらたに募ったので、ここらでラッキーボーイであるキミを仮のリーダーとし、彼女らを10F辺りまでそうっ……引率してみてくれ。新たなるおもしろい異能が発現すれば、後々それらを組み合わせることにより先のダンジョン攻略が有利に働く場面もあることだろう、と私は推測する。

 

『アレっ校長先生は?』

 

と、おそらくキミは今頃姿の見えない私にひとりごち、寂しそうに問うている事だろう。

 

実のところ今、ダンジョンを攻略することで溜まるDP(ダンジョンポイント)を用いた、ぽこぽこ湧いてきた新たな要素を検証中でね。

まぁなにぶんキミのただひとりの校長先生は、がむしゃらにダンジョンのモンスターと戦うしか能がないわけではないのだよ。

女子生徒たちのことも、キミのことも、ダンジョンのことも、新要素のことも、抜き打ちメンタルチェック、お風呂のじかんの管理、その他提出された書類点検などなど……いやぁー、校長先生はつらいつらいなのだ★

 

 

では、私は私でキミはキミで、共に働きつづける表と裏として! 思う存分がんばりたまえ~~

⬜︎

 

 

「うーーーうーーーーー……まじかよ。てか、かるく遠回しに俺、馬鹿みたいにゴブリンと戦うしか能がないとか言われているのか? まぁ週刊少年ジャイアントもここじゃ読めないし、物置部屋のジグソーパズルを組み立てるか、ダンジョンに出向くぐらいしか、毎日これといってやることはないのはたしかだが……。てか、そのダンジョンポイント(DP)ってどこ? 俺のだけ期限切れでポイント失効したり……してない?」

 

 そうこうピネスが、校長から預かった伝言に色々と独りごちていると────突然、金の鍋頭が黒い尾を揺らし、立ち止まるピネスの元に走ってきた。

 

「おっ……あんたは……だれ?」

 

「おっえっ!? いやおっ、おっあ痛だっ!?」

 

「ところでそれ……私服?」

 

「ちっ、ちがう……。不黒校長先生が私のビルド?が、これだって」

 

「あぁー……とりあえずさ、それ外した方がよくね。ビルドかなんかしらねーが絶対見えないだろうに、前」

 

 金の鍋を被った頭は視界不良で、性能が良くてもダメだろ? ピネスは冷静にそう判断し、今頭をぶつけ鳴らし駆けてきた謎の人物に頭のそれを外すよう促した。

 

 たしかによく考えるとおかしい。言われた通りに彼女は、頭を何度かぶつけたソレを地にどけた。代わりに手慣れたように、ポッケにあった頭巾を黒髪の頭に結んだ。

 

「おっ? あー、おにぎり頭巾の人ぉお!!」

 

「え?? あはい。おにぎり頭巾の……人? (それわたし?)ですけど……?」

 

 金の鍋頭ではそれが誰か皆目分からなかったが、ポニーテールの髪型の上に彼女が頭巾を巻いた途端、ピネスは彼女が誰かをはっきりと思い出した。

 

 まさか頭巾のあるなしで認識されているとは──

 

 1人で納得して喜んでいる様子の男子に、おにぎり頭巾の人である緒方結美は、とりあえずの苦笑いを浮かべた。

 

「ちょいと頭巾さん、男子さん。のこのこ来させてもらいました、今日はスペシャルなきのこ狩りツアーに案内してもらえるとのことで」

 

 初対面の男女2人が、まじまじ、おずおず、互いの顔を見つめ合っていると、ちょうど緒方結美の背からひょっこり顔を出し、しいたけセットを装備したシスターが現れた。

 

 背にしょっていたご大層な大斧を女子らしく両手に手に取り持ち、きのこ狩りの準備はバッチリである。

 

「いやっ、全然そんなのくわだててねーよ。まぁ……ダンジョンの隅っこに稀に生えてたりしてたけど? 満足いくツアーができるかどうかは運しだ」

 

「えっあるんだ!!」

 

「ん? あるけど? なんだぁ? あんたも好きなの? きのこ(おにぎりの山じゃなくきのこの里派か?)」

 

「え、ええっと正直きのこはほしいかも……。昨日、七輪で焼いたヤツも、めちゃくちゃ味が濃厚でそのままでもほんと美味しくて(ちょっと、そのおにぎりの山ときのこの里がなんなのかわかんない……)」

 

「なんだと……アレ、そんな美味なものだったのかよ。そりゃ食ってみてぇな」

 

「決まりましたね、きのこ狩りツアー」

 

「あぁ、じゃ行くか」

 

「え、きのこ狩りツアーなの?? だんじょっ……」

 

「あぁ、俺がきのこ狩りツアーにあんたら引率するらしいぞ。校長命令でな」

 

「えぇ。各自、きのこさんを見つけたら私にご報告、お願いします♪」

 

「あぁ、そりゃいいけどできるだけアッチじゃ固まっていこーぜ。校長も言ってるとおもうけど、ダンジョンには他の集団もいるからでくわしたら気をつけねーとな。ゴブリンらの集団やらコボルトらの集団とか」

 

「わかりました、善処しましょー。さぁ、きのこ狩りツアーの引率、男子さん本日はどうぞよろしくお願いします♪」

 

「わっわたしもよろしくっ! えっと浦木くん(こんな感じでホントにだいじょうぶかなぁ…)」

 

 2-A緒方結美(おがたゆみ)と3-C榎田椎名(えのきだしいな)、2人を引率することになった浦木幸は、親指をかるく立て、こくりと頷く。

 

 緒方結美はそんな男子のサムズアップしてみさた親指に、拭いきれない一抹の不安を抱きながらも──。

 

 いざ、『ガラガラ』と重い鉄の音を立て、引き開けられた校門。その解放された期待感とドキドキの序章をくぐり────

 

 静かな振動音を立てながら渦巻く赤い妖しげなゲートまで向かう。慣れたように黙々と進んでゆく唯一の男子のブレザー背を追って、新入りの緒方も付かず離れず進んでゆく。

 

 実績のついてきた緋色のショートソードと、新たな武器を両腰のホルダーにぶらさげて、

 

 大斧をいまかいまかと素振りしながら鼻唄混じりに、

 

 おしゃれな勝負頭巾をぎゅっと、もういちど締め直して、

 

 渦巻く赤い魔の門の彼方へと────────不黒高等学校に属する3人の生徒たちは、もう一度お互いに頷き合い、きえていった。

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