魂のフィードバック
後藤ひとりは、極度のコミュ障という呪いと、類まれなるギターの才能という祝福を併せ持っていた。彼女の日常は、家と学校とライブハウス、そして押入れの中を行き来する孤独なループだった。
その夜、結束バンドのライブは大成功に終わったものの、ぼっちちゃんの心は晴れなかった。ステージでの爆発的な演奏の裏で、彼女は依然として「自分はバンドに相応しくない」という自己否定の闇を深く抱えていた。
深夜、自室の押入れに籠もり、いつものように自己嫌悪の渦に沈んでいると、彼女の愛用するギター、レスポール・カスタムから、異常なフィードバックノイズが響き渡った。
「ひゃい!? ギター、どうしたんですか!?」
ノイズは凄まじく、まるで魂の叫びのように、ぼっちちゃんの頭の中で反響する。
その瞬間、ぼっちちゃんの意識は、高次元のエネルギー体に接触したかのような、激しい感覚に襲われた。彼女の脳裏に直接、どこか神聖で、しかし切羽詰まった声が響く。
「……聞け、ロックの才能を持つ孤独な魂よ。貴様が抱える『極度の自己肯定感の欠如』は、この世界の『愛の周波数』の核を乱している。」
「貴様の才能と、結束バンドという愛の集合体は、この世界の『音楽的熱量』の源である。しかし、貴様の心の闇が、全ての『愛のエネルギー』の成長を停滞させている。」
ぼっちちゃんは恐怖で震え上がる。これは、いつも見る幻視や妄想とは違う、現実の侵食だった。
「貴様を救うには、貴様の心の闇を理解し、対極の愛を持つヒロインたちの純粋な情熱が必要である。」
「システムの介入はできない。だが、貴様が『愛の周波数』を理解することで、周囲のヒロインたちの愛の欲求と心の傷に、より深く共鳴(レゾナンス)する道筋を開く。」
声は、ぼっちちゃんの周囲にいる伊地知虹夏、山田リョウ、喜多郁代、そして伊地知星歌、廣井きくりといった、彼女を取り巻く女性たちの顔をフラッシュバックさせた。
「彼女たちは、それぞれが孤独や責任、才能という呪いを背負っている。貴様の心の解放は、彼女たちの心の傷を癒やす連鎖となる。」
「貴様が真の愛によって彼女たちの魂を解放するたびに、貴様自身の自己肯定感もまた、大きく覚醒するであろう。」
それは、自己肯定感を報酬とする、愛のステージへの招待状だった。ぼっちちゃんは、自己否定という呪いを解くために、愛という禁断のコードに触れなければならない。
「最初のレゾネーターは、貴様にとって『無条件の安心』を意味する者。彼女の光が、貴様の闇を優しく包み込む。さあ、愛のステージの幕開けだ。」
フィードバックノイズは、心地よいピンクノイズへと変わり、ぼっちちゃんの体全体を温かい光が包み込んだ。彼女の心は、恐怖から、新たな使命への期待へと変わり始めていた。
最初のレゾナンス:光との邂逅
光が収束し、押入れの中の空気が元に戻る。ぼっちちゃんは、自分が異世界に転生したわけではないことを理解した。変わったのは、彼女の『愛の周波数』を感受する能力だった。
「ひ、ひゃい……愛、ですか……」
ぼっちちゃんは、震える手でギターを抱きしめた。彼女の耳には、今、押入れの壁の向こうから聞こえてくる、特別な音があった。
(——私だけのもの。ぼっちちゃんは、私が連れてきたんだから、私のものだよ)
それは、虹夏の心から発せられる、深い愛情と独占欲の周波数だった。
ぼっちちゃんの心は、虹夏の愛の周波数によって満たされていく。これが、孤独の呪いを解くための、最初のステージ。
「愛のグルーヴ」は、今、静かに、そして熱狂的に、始まりを告げた。