今日は朝からいい天気だ、実に気分が良い。
何故なら、私が初めて面接官として、面接試験を仕切る日。
人事部に勤めている、私のデビュー戦と言える。
事前準備に始まり、
書類選考。
筆記試験。
そして、ついに最終面接の開催まで到達した。
人事部として、わが社に新しい血を入れる…。
これほど、人事部冥利に尽きる事があるだろうか…?
今まさに、面接会場として設えた会議室で、最終面接を行っている。
灰色のフロアマットが敷き詰められた床。
白い壁とビル街を見渡せる大きな窓。
チリ一つなく、オフィス独特な雰囲気と香り。
そして、試験独特の緊張感が、この会議室には立ち込めている。
いつもならば、囲う様に配置しているテーブルを全て隅へ移動して、
余計な椅子もまとめ、私と4人の席だけを会議室の中央へ配置している。
机は私が履歴書や資料を拡げる為のひとつだけ、
それを挟んで、少し離れた位置に横一列で応募者達がパイプ椅子に座り、私を凝視している。
しかも、今回は部長に無理を言って、私の独断で選考を進め、
さらには、同僚たちの協力も辞退して、私独りでこの最終面接まで開催させた。
今までにない人選をして、違った角度から見た選考を実施しなくては、
正に革命的な選考を実施して、人事部に"この私あり"と声高く宣言するのだ。
その為には、採用対象に画一的な人間は必要ない。
数多くの応募者から、面接まで到達したのは、4名だった。
その4名は、会議室の中央で一列に座って居る。
面接も問題なく進み、終盤へと差し掛かっていた。
これまでの質疑応答で、私は採用予定者4名について、おおよその人物感を掴んでいた。
「では、アナタ方は当社に就職して、どんな貢献が自分に出来るとお考えですか…?」
私は凛とした佇まいと声で4人へ質問を問いかける。
「では、志賀さんから、ご意見をお願いします。」
「はい…っ!!」
「私は常に勉強し、新しい知識を取り入れることを好みます。」
「業務においても最新の情報を活かし、効率的かつ的確な業務遂行ができると思います。」
最初に回答したこの男性。
彼は、黒縁眼鏡の中央をクイッと、指で持ち上げて直す。
その奥に見える眼差しは、墨で一筆書きした様な細目で、
髪型は七三にピッチリに分け、以下にも神経質そうな細面の顔。
そんな彼は、私の問いに対して、満足がいく回答をしたという自負に溢れていた。
彼の名前は"志賀 修"(しが おさむ)。
見た通り、真面目一辺倒で堅物な男だ、
感情より理論と秩序を重んじ、リーダーとしての適性が高そうに見える。
だが、逆に予定に無いトラブルや緊急時には、弱さを露呈するタイプと見た。