普通ならば、彼が"採用したい一番人気"となる人物だと思う。
だが、私が採用試験で選出したい人物像は、そんな"普通な人物"は必要ない。
私が人事部で手柄をあげるには、より一歩進んだ人材が必要だ。
そう考えると、志賀君は"普通過ぎる"し、インパクトがない。
だが、採用の"安全パイ"として、内々定を出しても良いとは思ってはいる。
「なるほど、わかりました。」
「では、次に山口さんは、どうお考えですか…?」
志賀君の隣に座って居る男へ、私は視線を向ける。
不遜に脚を組んでいた男は、質問を振られ、慌てて脚を組み直した。
金髪で、短髪なワイルドアップバングの髪型。
顔はハンサムとは言えず、獅子鼻と頬骨が目立つゴツゴツとした印象の顔立ち。
濃い眼差しと太い眉、そんな顔立ちから受ける印象は、ガサツな気質と推測する。
肌は日焼けした小麦色。
その肌色に似合う白いスーツが眩しい。
耳には、複数のピアスをギラギラさせている。
明らかに、会社の面接に不釣り合いな、チャラいスタイルの男。
「え~…、興味ない事に手を出すのはチョットぉ…。」
「あ。でも自分のやりたいことには本気で取り組むスッ。」
「…てっ、言うかぁ…」
「ここで何が出来るか、入ってみないとわかんないショ…!?」
彼はダチョウの様に頭を軽く振りつつ、視線を室内に泳がせながら応えた。
"山口 陽翔"(やまぐちはると)は、
今までの私ならば、もう履歴書の証明写真が目に入っただけで落とす。
だが、普通ならば、採用部門的に見向きもされない、
こんな男に可能性があるのかもしれない…。
しかし、何だ"陽翔"って…?
この漢字をどう読むと"はると"になるんだ?
キラキラネームか?
…いや、いかんっ。
私が会社に認められるには、まったく新しい可能性を見出す必要がある。
彼は、そんな"ダイヤの原石"かもしれん…。
しかし、ぶっちゃけると…。
今のふざけた回答への返答として、
彼の顔面へ履歴書を叩きつけたい気分になった。
そんな腹黒い感情を押し殺し、私は笑顔で応える。
「は、はぁ、そうですか…。」
「では、隣の下御領さんは、いかがお考えですか…?」
無礼で礼儀知らずな焦げ茶色のチャラ男…。
いや、山口陽翔を隣で訝し気に睨みつけていた女性は、
私に声をかけられて、姿勢を正した。
「ワタクシの才能を見込んで頂ければ…。」
「組織全体の力になる事、間違いありませんわ♪」
「私の優秀さで、会社の人々も必ず感銘を受ける事でしょう。」
自信たっぷりに応えたこの女性。
薄茶色の長髪にクルリッとした、ロールのパーマがかかっている。