仕立てからして違いが判るブランド品のスーツを身にまとい。
隣に座るチャラ男の山口が、崩れたイカの様なだらしない座り方なのもあり、
彼女のシャンと背筋を伸ばして座っているその姿は、高貴で神々しさすら感じる。
スッと鼻筋が通った顔、クリンッと大きな瞳。
愛らしく端正で美人な顔をしていて、一見してハーフだとわかる。
もう匂い立つ程、コスプレかとツッコミたくなる程に"お嬢様"の造形をしていた。
彼女の名前は、"下御領 柚葉"(しもごりょう ゆずは)。
関東で手広く不動産開発を行っている大手企業"下御領開発"のご令嬢だ。
我が社とはまったく違う業界なのに、わが社の採用試験に応募したその理由。
それは、家業を継ぐための"修業"なのだそうだ。
一般的な会社に一般社員として就職し、普通の社会を知る事。
それが志望動機らしい。
まあ、私は彼女自身にはあまり期待はしていない。
絵に描いた様な"世間知らずなお嬢様"。
だいたい、執事同伴で面接試験に来るなんて、前代未聞だ。
その執事は、彼女の斜め後ろで、ジッと面接試験を見守っている。
まあ、採用した後、我が社の男性社員と結婚でもしてくれれば、
我が社的には、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性もある。
「…まあ、働くなんて…、」
「ワタクシ、バイトすらした事ありませんけど…♪」
「こう見えましても学校では成績優秀でしたし、」
「リーダーとして、他の生徒達の上に立っておりましたの…。」
「ワタクシの信念とリーダシップを持って、どんな困難でも克服してみせますわ…っ!!」
「あ。はい、有難うございます」
「では、小沢さんのご意見は…?」
ちょっと前にも不用意に下御領サンへ話を振ったら、延々と10分間も演説された。
そんな危機を回避する為、彼女の発言を制して、次の人物へ声をかける。
話足りず不服そうな表情のご令嬢から、私は視線を最後の一人へと移した。
最後の一人は、黒髪の長髪でタイトスカートのリクルートスーツ。
まったく下御領と対局な装いの彼女は、恐縮しつつ口を開いた。
「は、はい…。」
「私は片親家庭で、二人の弟と一人の妹の面倒は私が見ていました。」
「そうした経験を活かして、地道に仕事に取り組み、会社に貢献したいです…。」
「周囲と協力しながら、誠実に仕事に取り組む姿勢をお見せできればと思います。」
前髪で隠され、更に俯いて発言している彼女。
だが、下御領 柚葉と違い、その隠された顔は、
純日本的で、凛とした強さと美しさが見て取れる。
シャープな鼻筋とスウッと切れ長の目。
白い肌は陶磁器の様で、唇は艶やかで妖艶さが混じった雰囲気を持っている。
装いは地味だが、白木の鞘に収まった日本刀の様な、
そんな、不思議な雰囲気を彼女はまとっていた。