実は、履歴書で初めて彼女を見た時、ビビッとした衝撃が私の身体を走った。
これが"一目惚れ"なのか、
採用担当者としての勘なのか。
他の3人には感じない"何か"、
それの正体を確かめたくて、私は彼女を最終面接まで残した。
いゃ…。
一目見て、好意を持ったとか、
こうして、面接試験中も気になってドキドキしたりとか、
彼女の声を聞き、その仕草を観る度に愛おしさが募っているとか、
そんな邪な気持ちだけで、採用の合否を決める気はない。
だが…。
もし…。
もしも、彼女を不採用にしたなら…。
その時は、個人的に連絡するとしよう。
これは、公私の区別で、
決して、職権濫用とか公私混同ではない。
…たぶん。
…おそらく。
…。
…違う、よな…?
意識を堂々巡りさせていた私は、ふと手にしていたボールペンが目に留まった。
クルリッと手の上でそれを一回転させ、何気なく質問を呟いた。
「ここに、ボールペンがありますが…。」
「これを一万円で売るとしたら、どうしますか…?」
よく聞く面接の質問だ、面接指南書にも書かれている様な陳腐な質問。
だが、この4人なら、斜め上な回答をしてくれるかも知れない。
4人はジッと私が手にしたボールペンを見詰めた。
そして、それぞれが考え込み、会議室はシンッとした静寂が支配する。
「はい。」
真面目が特徴の志賀修が小さく手を挙げた。
私は目配せで、彼の発言を許可する。
「何か"付加価値"をつけるのは、どうでしょう?」
「あとは、ボールペン自体を限定品として、特別な外装やデザインに変更するとか…?」
…浅い。
…浅すぎる。
彼の回答は模範的だが、意外性が皆無で面白みが欠けている。
正に面接指南書そのままの回答だ、
私が求める人材に、そんな普通は必要無いのだ。
「おぃおい~っ、」
「そんなんじゃぁ、駄目だろがぁーっ♪」
志賀の隣で聞いていた山口は、身体を動かして軽く志賀へとタックルをかます。
そして、更に彼の肩を軽く自分の肘で小突いた。
「もっと、しっかり考えなきゃダメだろぉ~っ??」
「それにぃ、1万円って決めるより」
「儲けられるだけ、儲けた方が良くないスッか…?」
いやいやいや。
何、お前が仕切ってるんだ…!?
…いや。
…これ…。
これが、新しい…のか…?
普通と違う面接、
もっと、具体的なアイディアを求める事があっても良い気がする。
形に嵌まっていたら、優秀な素質を見逃す可能性もあるって事か…??
「いいですねっ…!!」
「ぜひ、そうしましょう。」
「このボールペンを一番高く売ってください…っ!!」
私は山口の提案に乗っかった。
認められた山口は、得意げに脚を組む。
そして、更に椅子の背もたれへ大きく体を預けた。