「俺ならぁ~、もっと具体的なテクで売りますよぉ~♪」
白いスーツの内ポケットに手を入れ、何かのチケット券らしき物を取り出す。
「これぇ、ダチの店で配ってるパー券なんスッけどっ♪」
「ボールペン買ってくれたら、コレ…、付けるっスッ♪」
にやけた表情の山口は、これ見よがしにヒラヒラとチケットを振った。
そして、山口は顎を突き出し、勝ち誇った煽り顔で志賀を見る。
「女の子も来るスッよ…♪」
「…く…っ!!」
私は勝ち誇るチャラ男山口と、何故かそれにツラれて落ち込む志賀を静観していた。
いや…、イヤイヤ、いやぁ…。
山口ぃ…。
お前の知り合いの店に興味も無いし、
知らないパーティに呼ばれても、気まずいだけだ…っ。
私の心の内も知らず、山口と志賀の間には、勝負がついた雰囲気が滲んでいる。
その均衡を崩すように、高いヒール音が会議室に響いた。
椅子から、下御領のご令嬢が立ち上がる。
そして、後ろに控えている執事から、差し出されたスマホを受け取った。
「それなら、ワタクシは…、」
「お好きな芸能人と会えるように、セッティングいたしますわっ!!」
「ワタクシ…、家柄的に交友関係も広いですし、様々な催しにも出席しますから…。」
「交友関係が広いですの…♪」
志賀と山口は、驚愕した表情で彼女を見た。
「ええっ!?マジかよー…っ!!」
よろりっとチャラ男山口は立ち上がり、すがりつく勢いで下御領柚葉の方へと近づく。
「じゃぁ…、浜部美浪ちゃんも…会えたりする…?」
彼女はスマホをイジり、アドレスを確認する。
「ええ♪お知り合いですわ♪」
「ほ、ホントかっ!?」
「いっ、幾らだっ!?」
「幾ら出せば、会わせて貰えんだ…っ!?」
「…そうですわねぇ…。」
彼女は後ろに控えた執事へ視線を向ける。
執事は、彼女の後ろから、値段を耳打ちした。
「この特典をつけて…。」
「10万でいかがでしょう…?」
「じゅ…10万円っ!?」
「ボッタくりじゃねぇか…っ!!」
希望に眼を輝かせていた山口は、膝から会議室の床へ崩れ落ちた。
うーん…。
これは会社の採用試験なのか…?
採用試験というより、デスゲームの様相を呈してないか?
それに、言い出しっぺの山口が、一番に撃沈しそうじゃないかっ…。
「も、もう少し…」
「…マケられねぇか…?」
「何を仰いますの…??」
「まあ、ワタクシが立ち会いますけど、」
「大好きな芸能人と個人的に出会えるチャンスですわよ♪」
「さあ、お二方はどうします…?」
「お買いになります?」
下御領のご令嬢は、まったく空気を読まず。
まるでお茶菓子でも薦める様に、志賀修と小沢凪の二人に声をかけた。