「あー、もしもしぃ?」
「うん、オレオレ♪」
「あ?今ヒマじゃねぇよ…っ!!」
「何ぃ?遊びに行こうっ?ばぁかっ♪」
「それよりも、助けてくれよぉーっ。」
「うん…。うん。今よぉボールペンを売りたくてぇ…。」
「何か高く売る方法ない…?」
「あっ!?だから、遊びにはいけないって…っ!!」
どうやら、山口は外に助けを求めることにしたようだ。
確かに自分独りで困難を解決するより、複数人で知恵を出し合った方が良い事もある。
だが、山口はうまく電話先の相手へ現状を説明出来ない様子だ。
面接をそっちのけにして、スマホで会話を続ける山口に、業を煮やした柚葉がスマホを取り上げた。
「あっ!?何すんだっテメェ…っ!?」
「アナタの方が何をしているの…っ!?」
「今は面接試験中なのよ、なのにスマホで通話するなんて、非常識ではなくってっ?」
「それに、面接の課題を他人に教えを乞うのも、NG行為じゃなくって?」
「試験以前にマナー違反ですわよっ!!」
「うっ…!?ぐうぅ…っ」
確かに今が仕事の打ち合わせならば、
スマホで助けを呼んだり、
問題解決の為に協力を乞うのは、間違いではない。
だが、今は面接試験であり、試験の答えを外に聞くのは違反といえる。
しかも、面接試験の最中にスマホを使うなんて、完全なマナー違反だ。
さすがにチャラ男山口も、そんな良識は持ち合わせていたようで、
顔を真っ赤にしながら、俯いたままで柚葉の叱責を聞いている。
「ちぃ…っ、うるせぇなぁ…っ!!」
そう告げると、山口は彼女から背を向ける。
「何ですか?うるさいとは…っ!?」
背を向けた彼を、再び引き留めようと柚葉は手を伸ばす。
その手を弾き飛ばしながら、山口は再びスマホを耳に当てた。
「おぅ★ オレオレぇ♪」
「やっぱ、今から遊ばねぇ…?」
「んー…?」
「もう、用事は済んだからさぁ♪」
一瞬だけ、山口はこちらに視線を送り、一直線に出口へと進んで行く。
その一瞥で、私は山口の意図を理解した。
彼はドアを大きな音を立てながら閉め、自ら試験を辞退した。
会議室に残された我々三人は、呆然と山口が出て行く姿を見送っていた。
いや、柚葉の後ろに控えている執事を含めれば、全員で4人か…。
「…お、」
「おーほっほほほっ♪」
「これで、残りは貴女お一人になってよっ!!」
山口の怒りを買ったことに戸惑いながらも、
柚葉は勝利が目前なのを確信した。
そして、高らかに笑いながら、取り出した扇子を拡げ、軽く自分の顔を仰ぐ。
うーん…。
何か思っていた面接試験とは違う気がする…。
元々は何気ない質問のひとつだったのが、
ボールペンを売り切れば、即・採用みたいになっている。